グルコバイ錠・グルコバイOD錠(アカルボース)の効果と副作用

グルコバイ錠(一般名:アカルボース)は1993年から発売されているお薬で、糖尿病の治療薬として用いられています。2010年には口腔内崩壊錠であるグルコバイOD錠も発売されました。

糖尿病治療薬にもたくさんの種類がありますが、その中でグルコバイは「αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)」という種類に属します。現時点でαGIはグルコバイの他にもベイスン(ボグリボース)、セイブル(ミグリトール)がありますが、グルコバイが一番古いαGIになります。

この種類のお薬は、食物中の糖分が腸から吸収されるのを抑えるはたらきを持ち、この作用から血糖の上昇を抑えて糖尿病を改善させてくれます。

糖尿病治療をしている患者さんは多いですが、糖尿病治療薬にはたくさんの種類があり、それぞれがどんなはたらきを持つお薬なのかは分かりにくいものです。

糖尿病治療薬の中でグルコバイはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここでは、グルコバイの効能や特徴、副作用などを紹介していきます。

スポンサーリンク

1.グルコバイ錠の特徴

まずはグルコバイの特徴を紹介します。

グルコバイは、食事に含まれる糖分が腸から体内に吸収される時に、吸収をゆっくりにすることで血糖を上げにくくします。

グルコバイをはじめとしたαグルコシダーゼ阻害薬(αGI)は、この「腸管からの糖分の吸収をゆるやかにする」という作用機序を持ち、これにより血糖の上昇をゆるやかにして糖尿病を改善させます。

時々、グルコバイのようなお薬を「腸管から糖分を吸収させなくする」お薬だと勘違いしている人がおり、「これは痩せ薬になる!」とダイエット目的で処方を希望される人がいますが、あくまでも吸収を緩やかにするだけで時間をかけて結局はゆっくりと吸収されます。

体内に吸収される総カロリーを減らすわけではありませんので、当然痩せ薬にもなりません。くれぐれもダイエット目的で入手しようとしないようにお願いします。

その効きは穏やかであり、劇的な血糖改善作用はありませんが、安全性に優れるお薬です。

血糖を下げる糖尿病治療薬は、時に血糖を下げ過ぎてしまって「低血糖」にしてしまう危険があります。極度の低血糖になると意識を失ったり場合によっては命の危険もあります。しかしグルコバイはそのような副作用を起こす心配はまずありません。そもそも糖分の吸収を穏やかにするという作用であり、血糖を下げる作用ではないためです。

αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)にも何種類かお薬があります。どれも大きな差はないのですが、強いて差を挙げると、

【グルコバイ(アカルボース)】
・αグルコシダーゼ以外にαアミラーゼも阻害するため作用も副作用も多い。
・他剤と比べて便秘が多い

【ベイスン(ボグリボース)】
・保険上、唯一糖尿病の予防にも投与できる
・もっとも穏やかに効き、副作用も少なめ
・ほとんど体内に吸収されないため妊婦に唯一使えるαGI

【セイブル(ミグリトール)】
・体内に多少吸収されるため、肝機能障害・腎機能障害が他剤と比べてやや起きやすい
・他剤より即効性に優れ、食後すぐ(1時間)の血糖上昇を抑える作用に優れる
・効果はαGIの中でもっとも強いと言われる
・他αGIと比べて下痢が多い

といったことが挙げられます。

以上からグルコバイの特徴として次のような点が挙げられます。

【グルコバイ(アカルボース)の特徴】

・腸管から糖分が吸収されるスピードをゆるやかにする
・一番古いαグルコシダーゼ阻害薬
・糖尿病を改善する効果は弱め
・αグルコシダーゼ以外にαアミラーゼにも作用する
・下痢も生じるが、αGIの中では便秘も生じやすい

2.グルコバイ錠はどんな疾患に用いるのか

グルコバイはどのような疾患に用いられるのでしょうか。グルコバイの次のような疾患に用いられます。

【効能又は効果】

糖尿病の食後過血糖の改善

グルコバイは、腸管から糖分が吸収されるスピードをゆるやかにするお薬ですので、糖尿病の中でも特に食後の血糖が高い患者さんに向いたお薬です。食後高血糖を改善させることにより糖尿病の改善も得られることが確認されています。

【効果又は効能】には但し書きとして次のようにも書かれています。

ただし、食事療法・運動療法によっても十分な血糖コントロールが得られない場合、または食事療法・運動療法に加えて経口血糖降下薬もしくはインスリン製剤を使用している患者で十分な血糖コントロールが得られない場合に限る

この但し書きのおおまかな意味は、「いきなりお薬を始めるのではなく、まずは食事の改善、運動習慣の改善を行って、それでもダメならお薬を考えて下さい」という意味になります。

どんなお薬でもそうですが、いきなりお薬を考えるのではなく、まずは生活習慣の見直しから行うことを忘れてはいけません。

スポンサーリンク

3.グルコバイ錠にはどのような作用があるのか

グルコバイの主な作用について紹介します。

Ⅰ.食後高血糖改善作用

グルコバイは、主に糖尿病の治療薬として用いられています。糖尿病はその名の通り、血液中の血糖が高くなりすぎてしまう疾患です。

血糖が高くなり過ぎると何が問題なのでしょうか。

糖分は身体が活動するためのエネルギーとして大切な栄養素ですが、多すぎると身体に毒となります。

具体的には血管を痛めて、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めたり、腎臓や眼、神経といった身体の諸臓器を傷付けて腎不全や白内障、神経障害などを引き起こします。

高血糖が続くと全身の臓器の障害はゆるやかに進行していきます。最初は自覚症状もないため危機感を感じにくいのですが、数年~数十年かけてジワジワと身体を傷付けていきます。

困ったことにこの高血糖によって生じた臓器障害は、いくら血糖を改善させても元に戻らないものが多いのです。例えば糖尿病によって白内障になってしまったら、それを治すためには手術をするしかありません。腎障害が出現して透析になったら、その後はほぼ一生透析のお世話にならないといけません。

そうならないためには、血糖を正常値にとどめておく必要があるのです。グルコバイはそのために役立つお薬になります。

では、グルコバイはどのように糖尿病を改善させるのでしょうか。

その主な作用は小腸の粘膜上皮に存在する「αグルコシダーゼ」という酵素のはたらきをジャマする(ブロックする)ことです。

αグルコシダーゼには「スクラーゼ」「ラクターゼ」「マルターゼ」「イソマルターゼ」などいくつかの種類があり、これらは摂取した様々な糖分を分解するはたらきがあります。糖分は大きいままでは体内に吸収できないため、αグルコシダーゼが吸収できる大きさにまで分解してくれるのです。

グルコバイはαグルコシダーゼのうち、主にマルターゼ、スクラーゼのはたらきをブロックします(イソマルターゼのはたらきも若干ブロックすることが確認されていますが、その作用は非常に弱いため除外しました)。

またαグルコシダーゼ以外にもαアミラーゼ、グルコアミラーゼもブロックする作用があり、これはαGIの中でもグルコバイに特有の作用になります。

アミラーゼは唾液腺や膵臓から分泌される酵素で、大きい糖質であるデンプンを分解するはたらきを持ちます。

グルコバイによってこれらの酵素のはたらきがブロックされてしまうと、糖分が吸収しやすいものまで分解されないため、吸収がゆっくりになるのです。

しかし全く吸収されなくなる、というわけではありません。グルコバイの薬効がなくなるにつれて、αグルコシダーゼ、αアミラーゼのはたらきは再び活性化するため、糖分が吸収されるようになります。

グルコバイの薬効は約4時間ほどであり、しばらく経てば薬効は消失していきます。

そのため、グルコバイはあくまでも糖分の吸収を「ゆるやかにする」お薬であって、糖分の吸収を「しなくなる」お薬ではありません。

しかしグルコバイのはたらきで糖分が吸収されにくくなると、食後の血糖の上昇も緩やかになり、これは糖尿病の改善につながります。

Ⅱ.脂質改善作用

グルコバイをはじめとしたαGIは、糖代謝を改善することにより副次的にコレステロール値の改善も軽度得られることが確認されています。

あくまでも副次的な効果ですが同種のαGIであるベイスン(ボグリボース)には、

・中性脂肪(TG)を下げる
・善玉(HDL)コレステロールを上げる

といった効果が報告されており、グルコバイにも同様の効果があることが推測できます。

4.グルコバイ錠の副作用

グルコバイにはどんな副作用があるのでしょうか。

基本的にグルコバイをはじめとしたαグルコシダーゼ阻害薬は安全性が高く、重篤な副作用はほとんどありません。しかし副作用自体がないわけではありません。

グルコバイで生じる副作用は、ほとんどが胃腸系の副作用であり、

・鼓張(腹部膨満)
・下痢
・放屁

などが認められます。これはグルコバイが腸管内に存在する糖分の分解酵素をブロックするため、未消化の糖分が腸内細菌によって分解・発酵される結果生じると考えられています。

また、特に他の糖尿病治療薬と併用することで

・低血糖

を起こすこともありますが、グルコバイ単剤ではあまり起こしません。グルコバイで低血糖が生じたとしても自覚症状を認めない程度のものがほとんどで、重篤になることは稀です。

グルコバイは一番古いαGIということもあり、副作用はやや多めです。他のαGIと同じく下痢を起こすことも多いのですが、反対に便秘になってしまうこともあります。また体内に多少吸収されるため、肝機能障害や腎機能障害に注意する必要があります。

かなり稀ですが、重篤な副作用として高アンモニア血症の報告もあります。

なお、グルコバイは妊婦への安全性は確立されていないため、妊娠中の方は服薬することができません。

スポンサーリンク

5.グルコバイ錠の用法・用量と剤形

グルコバイは次の剤型が発売されています。

グルコバイ錠(アカルボース) 50mg
グルコバイ錠(アカルボース) 100mg

グルコバイOD錠(アカルボース) 50mg
グルコバイOD錠(アカルボース) 100mg

の計4剤型(錠剤2剤型、OD錠2剤型)が販売されています。

OD錠というのは「口腔内崩壊錠」のことで、唾液に反応して溶けるタイプのお薬のことです。錠剤と違って水なしでも飲めるため、外出先で服薬することが多い方や、粒を飲み込む力が弱くなっている高齢者などに向いている錠形になります。

グルコバイの使い方は、

成人では通常1回100mgを1日3回、食直前に経口投与する。ただし、1回50mgより投与を開始し、忍容性を確認したうえ1回100mgへ増量することもできる。なお、年齢、症状に応じて適宜増減する。

と書かれています。

グルコバイの使い方の注意として、食事に含まれる糖分の吸収を抑えるお薬ですから、食前に服薬しないといけません。多くのお薬は食後に服薬するため、ここは間違えないように気を付けてください。

ただし、万が一食べる前に服薬を忘れてしまった場合は、食後すぐであればある程度の効果が得られると考えられます。食事中や食後に服薬することで害があるわけではありませんので、食後すぐに飲み忘れに気付いた場合は、急いで服薬した方が良いでしょう。

6.グルコバイが向いている人は?

グルコバイはどのような時に検討されるお薬なのでしょうか。

グルコバイをはじめとしたαGIは糖尿病に対する効果の強さは弱いものの、安全性に優れるお薬です。また血糖を下げるというよりは、食後の血糖の上昇をゆるやかにするお薬ですので、糖尿病の中でも特に「食後高血糖」を指摘されている患者さんにも向いているでしょう。

αGIの中では便秘が時々起こることがあるため、元々便秘がちの方は別のαグルコシダーゼ阻害薬(商品名:セイブル、ベイスンなど)を試してみてもいいかもしれません。

αGIは効果が弱いからといって必ずにも「軽症」に用いるわけではありません。αGIの機序である「食後の血糖上昇をゆるやかにする」といった作用に沿って、主に食後の高血糖が目立つ糖尿病患者さんに使うと良いお薬です。

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
こちらの記事も是非ご覧下さい