アクトス錠・OD錠の効果と副作用

アクトス錠・アクトスOD錠(一般名:ピオグリタゾン塩酸塩)は1991年から発売されている糖尿病の治療薬になります。糖尿病の治療薬の中でも「チアゾリジン系」という種類に属します。

アクトスはインスリン抵抗性を改善する(インスリンの効きを良くする)ことで糖尿病を改善させてくれます。しかし心不全などの副作用も報告もあり、注意しながら使用すべきになります。

糖尿病治療薬にもたくさんの種類のお薬があります。これらの中でアクトスはどのような位置付けになるのでしょうか。

アクトスの効果や特徴、どのような方に向いているお薬なのかについてみていきましょう。

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1.アクトスの特徴

まずはアクトスの特徴について、かんたんに紹介します。

アクトスは末梢器官(筋肉や脂肪など)に糖が取り込まれやすくすることによって血糖を下げてくれるお薬になります。

またそれ以外にも肝臓に貯蔵されている糖の放出を抑えるはたらきもあり、これも血糖を下げるはたらきとなります。

血糖を下げるホルモンであるインスリンも血糖を末梢器官に取り込ませるのがはたらきであるため、アクトスはインスリンの作用を助け、インスリンの効きを良くするお薬だという事も出来ます。これを「インスリン抵抗性の改善」と呼びます。

アクトス錠は「チアゾリジン系」と呼ばれる種類の糖尿病治療薬になります。アクトスは元々は高脂血症の治療薬を探している過程で見つかったお薬です。その作用はPPARɤという酵素を活性化させることで、これにより上記のインスリン抵抗性の改善が発揮されます。

糖尿病のお薬にはいくつか種類がありますが、大きく分けると2つの機序に分けられます。

1つ目が、血糖を下げるホルモンである「インスリン」の分泌を促すことで血糖を下げようとするお薬です。これには「スルホニル尿素(SU)薬」「速効型インスリン分泌促進薬」「DPP4阻害薬」「GLP1作動薬」などがあります。

インスリンというのは私たちの身体に元々備わっているホルモンで、血糖を下げる唯一のホルモンです。インスリンは、血液中の糖(血糖)を筋肉などの末梢組織に移動させることで血糖を下げます(そして末梢組織に運ばれた血糖は、生命活動のためのエネルギー源となります)。

2つ目は、インスリンに頼ることなく血糖を下げるお薬です。これには「ビグアナイド(BG)剤」「チアゾリジン誘導体」などがあります。インスリンに依存せずに血糖を下げるため、インスリンが欠乏してしまうような病態でも効果が得られます。

その他にも血糖の吸収を穏やかにする「αグルコシダーゼ阻害剤」や、尿から糖をたくさん出すようにする「SGLT2阻害薬」などもあります。

このように糖尿病治療に役立つアクトスですが、副作用には一定の注意が必要です。特に注意すべきは心不全のリスクを増やしてしまうことです。このためアクトスは心不全の方に用いることは出来ません。また体液量を増やすことで浮腫(むくみ)を増やす作用があったり、体重増加を認めることもあります。

そのためアクトスは、副作用を慎重に考えながら使っていくお薬で、現在の糖尿病治療においては最初から使われることは少ないお薬です。

他の糖尿病治療薬を使っても効果が不十分な時に検討されるという位置づけが多いと思われます。

以上からアクトス錠の特徴として次のようなことが挙げられます。

【アクトス錠の特徴】

・チアゾリジン系に属するお薬である
・血液中から末梢組織(筋肉や脂肪など)へ糖を移動させる
・肝臓にある貯蔵されている糖の放出を抑える
・むくみの副作用が多い
・心不全のリスクがあるため注意

2.アクトス錠はどんな疾患に用いるのか

アクトス錠はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

2型糖尿病

ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られずインスリン抵抗性が推定される場合に限る。

①食事療法、運動療法のみ
②食事療法、運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用
③食事療法、運動療法に加えてα-グルコシダーゼ阻害剤を使用
④食事療法、運動療法に加えてビグアナイド系薬剤を使用
⑤食事療法、運動療法に加えてインスリン製剤を使用

アクトス錠は血糖を下げる作用を持つお薬ですから、糖尿病に使われます。

糖尿病には1型と2型があります。

1型は遺伝性の疾患で、膵臓に存在するβ細胞と呼ばれるインスリンを分泌する細胞が破壊されてしまっている疾患です。β細胞が破壊されてしまっていればインスリンが分泌できないため、血糖は高くなってしまいます。

2型は一般的な糖尿病で、糖分を摂取しすぎることで生じてしまうものです。

アクトスは2型糖尿病に対して用いられます。そして2型糖尿病ではまずはお薬を使う前に食事療法(規則正しくバランスの良い食事を指導する)や運動療法(適度な運動を指導する)が行われます。

これら食事療法や運動療法を行っても改善が得られない時、アクトスのようなお薬が検討されます。

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3.アクトスにはどのような作用があるのか

アクトスはインスリンが効きやすいような状態を作ることによって糖尿病を改善させます。

インスリンというのは、膵臓から分泌されるホルモンで血糖を下げるはたらきがあります。インスリンが効きやすくなれば血糖が下がりやすくなるため、糖尿病が改善するというわけです。

ではアクトスはどのような作用があるのでしょうか。アクトスの詳しい作用について紹介します。

Ⅰ.インスリン抵抗性改善

アクトスは、筋肉や脂肪組織などの末梢器官に、血糖を取り込まれやすくする作用(インスリン抵抗性の改善)があります。

組織に取り込まれた糖分はエネルギー源となり、身体活動をするためのエネルギーとして使われます。血糖が臓器に取り込まれやすくなると、血糖は下がりやすくなるため、糖尿病の改善が得られます。

この作用は、アクトスがPPARɤという受容体を活性化させるためです。PPARɤが活性化するとTNF-αという物質のはたらきを抑えてくれます。

TNFαには様々な作用があるのですが、その1つにインスリンの効きを悪くしてしまう作用があります。筋肉組織や脂肪組織に血糖が取り込まれないようにしてしまうのです。

アクトスはこのTNFαのはたらきを解除するため、インスリン抵抗性の改善が得られます。

Ⅱ.肝臓からの糖放出抑制

肝臓には糖分が貯蔵されています。

糖は体内では「グルコース」として存在していますが、これは肝臓において「グリコーゲン」として貯蔵されています。グリコーゲンはいざという時の予備のエネルギーとして取っておいてあるのです。

アクトスは肝臓のグリコーゲンがグルコースに分解されて血液中に放出されるのをブロックします。

この作用も、血糖の上昇を抑えてくれるため糖尿病の改善に役立ちます。

Ⅲ.脂質を下げる作用

アクトスはPPARɤを活性化させることにより血糖値を下げるはたらきがあります。

PPARɤの活性化は同様に脂質を下げる作用もあり、これによりアクトスはコレステロールや中性脂肪などの脂質を低下させる作用も有します。

実はアクトスは最初は脂質を下げるお薬を探している中で見つかったお薬なのです。そのため、脂質を下げる作用も認められます。

Ⅳ.アクトスは膀胱癌を増やすのか?

数年前、「アクトスは膀胱癌の原因となる」という研究報告がなされ、大きな話題となりました。

現時点では「アクトスが膀胱癌の関係は明らかではない」というのが大筋の結論となっています。しかし長期間投与すると、そのおそれはゼロとは言えないため一定の注意は必要になります。

アクトスの発売元である武田製薬は、アクトスと膀胱癌について次のように記載しています。

海外で実施した糖尿病患者を対象とした疫学研究において、本剤を投与された患者で膀胱癌の発生リスクが増加するおそれがあり、また投与期間が長くなるとリスクが増える傾向が認められているので、以下の点に注意すること。

1)膀胱癌治療中の患者には投与を避けること。また、特に膀胱癌の既往を有する患者には本剤の有効性及び危険性を十分に勘案した上で、投与の可否を慎重に判断すること。

2)投与開始に先立ち、患者又はその家族に膀胱癌発症のリスクを十分に説明してから投与すること。また、投与中に血尿、頻尿、排尿痛等の症状が認められた場合には、直ちに受診するよう患者に指導すること。

3)投与中は、定期的に尿検査等を実施し、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。また、投与終了後も継続して、十分な観察を行うこと。

ちなみに糖尿病自体も癌のリスク因子であり、糖尿病の経過が不良であると大腸がんや膵臓がんなどの癌を発生しやすくすることが指摘されています。

そのため「アクトスを使わなければ、癌になりにくくなる」と一概に言えるものではありません。

4.アクトス錠の副作用

アクトス錠は副作用に注意が必要なお薬です。副作用の頻度自体も多いのですが、ちゃんと使い方を守らないと重篤な副作用が出てしまうこともあります。

アクトス錠の副作用発生率16.3~26.6%前後と報告されており、副作用は少なくありません。

もっとも多い副作用は

  • 浮腫(むくみ)

になります。むくみは特に女性、インスリンを併用している方、高用量のアクトスを使用している方で生じやすくなります。

その他生じうる副作用としては、

  • 湿疹
  • 悪心
  • 胸やけ
  • 腹痛
  • めまい
  • 体重増加

などで、消化管系の副作用が多くなります。症状がひどい場合は減量あるいは中止となりますが、症状が軽度であればそのまま様子をみることもあります。

また検査値の異常が出現する可能性もあります。

  • BUN、Cr上昇(腎臓系の酵素)
  • AST、ALT、ɤGTP上昇(肝臓系の酵素)
  • BNP上昇(心臓系の酵素)
  • 赤血球、白血球、血小板減少
  • カリウム上昇
  • 心拡大
  • 心電図異常

このため、アクトス服用中は定期的に血液検査や胸部レントゲン、心電図検査を行うことが望ましいでしょう。アクトスは特に心不全のリスクには注意は必要です。

またアクトスは注意点をよく守らないと時に重篤な副作用を起こすことがあります。

  • 低血糖
  • 肝機能障害
  • 心不全
  • 間質性肺炎
  • 胃潰瘍
  • 横紋筋融解症

などが生じる可能性が稀ながらあります。

アクトスは投与してはいけない方がいます。下記に該当する方はアクトスを服用できませんので、該当しないかどうか注意しましょう。

  • 心不全の患者さん(心不全の既往のある方も含む)
  • 重篤な肝機能障害のある患者さん
  • 重篤な腎機能障害のある患者さん
  • 妊婦又は妊娠している可能性のある方

また下記に該当する方は、アクトスで治療するのではなくより厳格な治療が必要になり、同様にアクトスを使用することは出来ません。

  • 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者さん
  • 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1 型糖尿病の患者さん

このようにアクトスは副作用には注意が必要なお薬になります。

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5.アクトスの用法・用量と剤形

アクトスは、

アクトス錠 15mg
アクトス錠 30mg

アクトスOD錠 15mg
アクトスOD錠 30mg

の4剤があります。

OD錠というのは「口腔内崩壊錠」のことで、これは口の中で溶けるお薬のことです。OD錠は水無しで服用できるため、出先で服用する機会の多い方や飲み込む力が低下している高齢者に向いた剤型になります。

アクトスの使い方は、

【食事療法、運動療法のみの場合】
【SU剤又は αGI若しくはBG系薬剤と併用する場合】
通常成人には15~30mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、性別、年齢、症状により適宜増減するが、45mgを上限とする。

【インスリン製剤を使用する場合】
通常成人には15mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、性別、年齢、症状により適宜増減するが、30mgを上限とする。

となっています。

アクトスは副作用で浮腫が多く、特に投与初期やインスリンと併用する時、高用量を使う時は多く浮腫が生じる傾向があります。また女性の方で生じやすい傾向があるため、女性がアクトスを使用する場合は特に注意です。

アクトスは血糖を下げる作用もしっかりしており、非常にざっくりした言い方ですが、血糖の平均値であるHba1cをおおよそ1前後下げることが出来ます(30mgの服用を一定期間続けた場合)。

6.アクトス錠が向いている人は?

以上から考えて、アクトス錠が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

アクトス錠の特徴をおさらいすると、

・チアゾリジン系に属するお薬である
・血液中から末梢組織(筋肉や脂肪など)へ糖を移動させる
・肝臓にある貯蔵されている糖の放出を抑える
・むくみの副作用が多い
・心不全のリスクがあるため注意

というものでした。

アクトスは血糖を下げるお薬としては役立つものですが、副作用に注意すべきお薬になります。

特に心不全のある方は絶対に用いてはいけません。また同様に腎不全や肝不全、妊婦の方も用いてはいけません。

使用中は定期的に血液検査、心電図、胸部レントゲン写真で副作用が出ていないか確認する必要があります。また男性であれば念のため膀胱癌が生じていないかの確認も推奨されます。

このようなことを考えると、使い勝手としては他の糖尿病治療薬に劣るという印象は否めません。

もちろん正しく使えば有用なお薬なのですが、このような理由から近年では最初から選択させるお薬にはなりにくい傾向があります。

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