エリキュース錠(アピキサバン)の効果と副作用

エリキュース錠(一般名:アピキサバン)は2013年に発売された抗凝固薬で、「直接Ⅹa阻害薬」という種類に属します。

抗凝固薬というのは、血液の「凝固(固まること)」を抑えるお薬で、血液を固まりにくくするお薬です。血栓を作らないようにするために役立ちますが、反対に傷からの出血が止まりにくくなってしまうというデメリットもあります。

以前は抗凝固薬と言うと「ワーファリン」というお薬しかありませんでしたが、最近では「新規経口抗凝固薬(NovelOralAntiCoagulants:NOAC)」と呼ばれる新しい抗凝固薬が次々と発売され、エリキュースもその1つとなります。

血液を固まりにくくするお薬にも、「抗血小板薬」「抗凝固薬」などいくつかの種類があります。また抗凝固薬にも何種類かのお薬があります。

この中でエリキュースはどんな特徴のある抗凝固薬で、どんな患者さんに向いているお薬なのでしょうか。エリキュース錠の効果・特徴や副作用についてみていきましょう。

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1.エリキュース錠の特徴

まずはエリキュース錠というお薬の特徴についてみてみましょう。

エリキュースは、「新規経口抗凝固薬(NovelOralAntiCoagulants:NOAC)」と呼ばれる、新しいタイプの抗凝固薬になります。

以前は、抗凝固薬には「ワーファリン」というお薬しかありませんでした。ワーファリンは良いお薬ですが、

  • 納豆・クロレラなど相互作用する食品が多い
  • 頻回に血液検査をして効き具合を確認しないといけない
  • 効きすぎて反対に出血がを生じてしまうことがある

などといった問題点がありました。これらを改善するために開発されたのがNOACです。NOACにはエリキュース(アピキサバン)の他、

  • プラザキサ(一般名:タビガトラン)
  • イグザレルト(一般名:リバーロキサバン)
  • リクシアナ(一般名:エドキサバン)

などがあります。NOACは、ワーファリンと比べて、

  • 納豆・クロレラなどを食べても大丈夫
  • 定期的に血液検査で効きを確認する必要がない

というメリットがあり、またワーファリンよりもピンポイントで血液を固まらせる因子をブロックするため、出血の副作用も少なめになっています(起こさないわけではありません)。

しかし、デメリットとしては

  • ワーファリンと比べて薬価が高い
  • 血液検査で効きを測れない

という事が挙げられます。

以上からエリキュースの特徴として次のような事が挙げられます。

【エリキュース(アピキサバン)の特徴】

・心房細動で血栓ができるのを抑えてくれる
・(ワーファリンと比べて)食事制限がない
・(ワーファリンと比べて)血液検査を頻回にする必要がない
・(ワーファリンと比べて)値段が高い

2.エリキュース錠はどんな疾患に用いるのか

エリキュースはどのような疾患に用いられるのでしょうか。エリキュースの添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制

とても難しい用語が並んでいますね。

エリキュースは基本的には「心房細動」という疾患の方に用いられます。非弁膜症性というのは、大動脈弁狭窄症などの弁膜疾患が原因でない心房細動ということで、要するに「弁に原因があるわけではない普通の心房細動」ということです。

心房細動という疾患は、心臓にある部屋の1つである「心房」が不規則に収縮してしまう疾患です。心臓は本来、洞結節という部位から信号が発信され、規則的に収縮するのですが、心房細動では心房が勝手に収縮してしまうため、規則的な収縮が行われません。

不規則に収縮するため、心臓の中で乱流が生まれてしまい、乱流によって血栓(血の塊)が作られやすくなります。これが心臓から全身に飛んでしまうと大きな問題を起こします。

血栓が脳に飛んでしまうと脳梗塞(虚血性脳卒中)が起こりますし、心臓を栄養する冠動脈に飛べば心筋梗塞を起こします。

心房細動の方が脳梗塞を起こす頻度は、心房細動のない方の約5倍とも言われています。

エリキュースは血液を固まりにくくすることで、心房内に乱流が起こっていても血栓が出来ないようにします。すると、脳梗塞などを起こしにくくなるというわけです。

エリキュースは古くからある代表的な抗凝固薬であるワーファリンと比べて、「よりしっかりと血栓を抑制してくれる」という優越性が確認されており、また副作用としての出血もワーファリンより少ない事が示されています。

ちなみに血液を固まりにくくするお薬には、「抗凝固薬」と「抗血小板薬」がありますが、これらはどのように異なるのでしょうか。

血液が固まる仕組みには大きく分けて、「一次止血」と「二次止血」があります。一次止血は、血管の傷ついた部位に血小板が集まり、凝集することで行われる止血です。二次止血とは、一次止血が行われた後、よりしっかりと止血するためにフィブリンという物質を作りそれが血餅を作ることで行われる止血です。

ざっくり言えば、一次止血を起こしにくくするのが抗血小板剤で、二次止血を起こしにくくするのが抗凝固剤になります。

原則としては、抗凝固薬は静脈や肺動脈の血栓に用います。抗血小板薬は動脈の血栓に用います。

動脈などの血流が速い部位で生じる血栓というのは血小板が活性化してできることが多いため、抗血小板薬を用いた方が効果が高く、静脈などの血流が遅い部位で生じる血栓はフィブリンによって形成されることが多いため、抗凝固薬を用いた方が効果が高いからです。

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3.エリキュース錠の作用機序

エリキュースはどのような機序で血液を固まりにくくしているのでしょうか。

血液が固まるためには、血液凝固因子という物質が関わっており、これらが複雑に作用して血液の凝固が生じます(これを凝固カスケードと呼びます)。

凝固カスケードの詳細な機序はここでは省略しますが、その凝固因子の1つである「第Ⅹa因子(FⅩa)」のはたらきをブロックするのがエリキュースのはたらきです。

FⅩaはプロトロンビンという物質をトロンビンという物質に変えるはたらきがあります。トロンビンはフィブリノーゲンという物質をフィブリンに変えるはたらきがあり、このフィブリンは繊維状タンパク質で、血餅を作り血液を固めるために役立ちます。

エリキュースによってFⅩaのはたらきがブロックされると、フィブリンが作れなくなります。すると血餅を作れなくなり、血液が固まりにくくなるというわけです。

エリキュースはFⅩaを選択的に狙ってはたらきを阻害します。また阻害するのはエリキュースが効いている間だけで、エリキュースの効果がなくなればFⅩaのはたらきは元に戻るため、「可逆的な」阻害となります。

4.エリキュース錠の副作用

エリキュースにはどのような副作用があるのでしょうか。

エリキュースは血液を固まりにくくすることで、血栓を防ぐ作用を持っており、これが時に副作用としてはたらいてしまいます。

具体的には「出血」が主な副作用になります。血液が固まりにくくなれば、血栓は出来なくなりますが、出血はしやすくなります。

そのため、元々問題となるような出血傾向のある方や、出血リスクの高い方はエリキュースの使用は推奨されないこともあります(具体的に自分が該当するかは主治医に確認下さい)。

具体的な出血の副作用としては、

  • 鼻出血
  • 血尿
  • 血腫
  • 貧血
  • 皮下出血
  • 結膜出血

などが報告されています。これらの副作用が生じた場合は、エリキュースが効きすぎている可能性もありますので、主治医に速やかに報告する必要があります。

また、頻度は少ないですが重篤な副作用として

  • 頭蓋内出血(脳内で出血してしまう)
  • 消化管出血(胃や腸管から出血してしまう)
  • 間質性肺疾患

などが報告されています。

エリキュースは古い抗凝固剤であるワーファリンと異なり、定期的に血液検査をしてお薬の効きを確認することをする必要がなく、これは手間を少なく出来るというメリットになります。

しかし逆に言うと、ワーファリンはプロトロンビン時間(PT)値を見て、効きを判断できますが、エリキュースは効きを確実に判断できる数値がないため、臨床所見から慎重に判断しないといけません。

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5.エリキュース錠の用法・用量と剤形

エリキュースは、

エリキュース錠(アピキサバン) 2.5mg
エリキュース錠(アピキサバン) 5mg

の2剤形があります。

またエリキュースの用法・用量は次のようになります。

通常、成人には1回5mgを1日2回経口投与する。なお、年齢、体重、腎機能に応じて、1回2.5mg1日2回投与へ減量する。

具体的に、用量の減量をすべきケースとして次のように書かれています。

次の基準の2つ以上に該当する患者は、出血リスクが高く、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、1回2.5mg1日2回経口投与する

・80歳以上
・体重60kg以下
・血清クレアチニン1.5mg/dl以上

高齢の方、痩せている方、腎機能障害がある方(クレアチニンが高い方)は減量する必要がある可能性があります。

ちなみにエリキュースは粉砕しても大丈夫なのでしょうか。高齢者が服用する場合「錠剤だと飲みにくいから、粉に出来ないか」と希望を頂くことがあります。

エリキュースは、粉砕しても少なくとも4時間は含有成分がほとんど変化しないことが確認されています。そのため粉砕して服用することが可能です。

ただしエリキュースは基本的には粉砕せずに飲むものですので、粉砕の希望があるときは主治医に必ず了解を取る必要があります。

またエリキュースは食事の影響を受けるお薬です。エリキュースは食前・食後どちらに服薬すべきかの指示は記載されていませんが、空腹時の方が食後服薬よりも血中濃度が1~2割ほど高くなることが報告されています。

6.エリキュース錠の作用時間

エリキュースは半減期が8~14時間ほどと報告されています。半減期とはお薬の血中濃度が半分に下がるまでにかかる時間のことで、お薬の作用時間を知る1つの目安になる値です。

半減期と作用時間は正確に一致するわけではなく、あくまでも目安に過ぎませんが、エリキュースは半日程度の薬効と考えられ、1日2回投与が指示されています。

7.エリキュース錠が向いている人は?

以上から考えて、エリキュースが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

エリキュースの特徴をおさらいすると、

・心房細動で血栓ができるのを抑えてくれる
・(ワーファリンと比べて)食事制限がない
・(ワーファリンと比べて)血液検査を頻回にする必要がない
・(ワーファリンと比べて)値段が高い

というものでした。

エリキュースは心房細動の患者さんの血栓が出来るのを防ぐお薬になるため、基本的には心房細動の患者さんに使われるお薬になります。

古い抗凝固薬であるワーファリンと比べると、薬価は高いものの全体的な性能は高くなっているため、薬価が高くても良い方はエリキュースなどのNOACから始めるのも良いでしょう。

また、

・納豆・クロレラなどの食事制限をしたくない
・頻回(数か月に1回程度)に採血をしたくない

という方もエリキュースのようなNOACが向いているかもしれません。

NOACは2011年にプラザキサ(ダビガトラン)が発売されたのが最初で、まだ数年の歴史しかないお薬です。徐々にエビデンスも蓄積されてはいますが、1962年より発売されているワーファリンと比べるとエビデンスが少ない点は否めません。

全体的にみてNOACが徐々に主流となってきてはいますが、エビデンスが豊富なお薬を使いたいという事であれば、ワーファリンを選択するのも方法の1つです。

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