エンペシドクリーム・外用液(クロトリマゾール)の効果と副作用

エンペシドクリーム・エンペシド外用液(一般名:クロトリマゾール)は病院で処方される塗り薬で、「イミダゾール系抗真菌薬」という種類のお薬になります。1976年から発売されており、世界で最初に開発されたイミダゾール系抗真菌薬の塗り薬になります。

抗真菌薬とは要するに、真菌(カビ)をやっつけるお薬です。エンペシドは塗り薬ですので、主に皮膚に感染した真菌(皮膚真菌症)に対して用いられます。

日常で感染する皮膚真菌症には、白癬(いわゆる水虫)やカンジダなどがあり、エンペシドはこのような真菌をやっつけるために用いられます。

抗真菌薬にもいくつかの種類があります。どれも総合的な有効率に大きな差はないとも言われていますが、それぞれのお薬ならではの特徴もあります。

エンペシドは抗真菌薬の中でどのような作用を持っていて、どのような効果が期待できるお薬なのでしょうか。

エンペシドの効果・効能や特徴、副作用についてみてみましょう。

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1.エンペシドの特徴

まずはエンペシドの特徴をざっくりと紹介します。

エンペシドは、白癬・カンジダ・癜風など各種真菌に対して、幅広く効果を示します。またその効果も強く、殺真菌的に作用します。

エンペシドはイミダゾール系という種類の抗真菌薬になります。

抗真菌薬には「真菌の増殖を抑えるもの(静真菌作用)」と「真菌を殺すもの(殺真菌作用)」がありますが、基本的にはイミダゾール系は後者であり殺真菌的に作用します。(正確には低濃度では静真菌的に作用し、高濃度では殺真菌的に作用します)。

そのため効果も強力であり確実な効果が期待できます。

塗り薬であるため、全身にお薬が回ることが少なく、大きな副作用がない点も良い特徴です。

デメリットとしては、1回塗っただけでは効果は1日持続しないため、1日2~3回に分けて塗ることとされており、これは人によっては手間に感じるかもしれません(近年の抗真菌薬は1日1回の塗布で良いものが主流です)。

エンペシドをはじめとした皮膚真菌症に対する塗り薬は効果に大きな差はないため、極論を言えばどれを用いても大きな間違いはありません。

その中でエンペシドの特徴を強いて挙げると、次のようなことが挙げられます。

【エンペシドクリーム・外用液の特徴】
・白癬・カンジダなどに対して殺真菌的に作用する
・1日2~3回塗る必要がある
・細菌に対してもある程度の増殖抑制効果を有する
・塗り薬で全身に作用しないため、副作用も少ない

2.エンペシドはどのような疾患に用いるのか

エンペシドはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

下記の皮膚真菌症の治療

・白癬:足部白癬(汗疱、趾間白癬)、頑癬、斑状小水疱性白癬
・カンジダ症:指間びらん症、間擦疹、乳児寄生菌性紅斑、皮膚カンジダ症、爪囲炎
・癜風

抗真菌薬であるエンペシドは、皮膚に真菌(カビ)が感染してしまった時に用いられます。

日常において、皮膚に感染する可能性のある真菌というのはほとんどが白癬菌(皮膚糸状菌)になります。

白癬菌が足に感染すると「足(部)白癬」(いわゆる「水虫」)と呼びます。「汗疱」というのは主に足底(足の裏)に出来る白癬で小さな水膨れや膿胞を認めるタイプです。趾間白癬というのは文字通り、足の指と指の間(趾間)に出来る白癬です。

「頑癬」というのは最近はあまり使われない用語ですが、「股部白癬」のことで、 白癬菌が股(また)に感染することを言います。いわゆる「いんきん」とも呼ばれています。

「斑状小水疱性白癬」も最近はあまり使われない用語ですが、「体部白癬」とほぼ同様の意味で、主に身体に感染する白癬のことです。「たむし」と一般的に呼ばれることもあります。

エンペシドはこのような白癬菌感染症に対して殺真菌的に作用します。

また、カンジダ菌は健常人の腸内にも常在している「常在菌」ですが、これがしばしば悪さをしてしまう事があります。特にストレスや疲れなどで免疫力が低下している時に発症しやすくなります。

具体的には、水仕事をしている方などの指の間に生じやすい「カンジダ性指間びらん症」や爪周囲に生じやすい「カンジダ性爪囲炎」、陰部・股間・脇・乳房の下などの密閉された環境で生じやすい「カンジダ性間擦疹」などがあります。

また乳児はまだ免疫力が低いためカンジダに感染してしまう事があり、これは乳児寄生菌性紅斑と呼ばれます。特にアトピーなどで皮膚にステロイドを塗っていたりすると、生じやすくなります。

また女性では膣内でカンジダが増殖してしまう事もあります。この場合はエンペシドの膣錠がありますので、それを用いて治療します。

エンペシドは、カンジダ菌に対しても効果を示します。

癜風も真菌(カビ)であるマラセチアが原因となる皮膚真菌症ですが、自覚症状が乏しいため気付かれにくい傾向があります。皮脂の多いところに生じやすく、脂漏性湿疹の原因にもなります。

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3.エンペシドにはどのような作用があるのか

エンペシドには、どのような作用があるのでしょうか。

エンペシドの作用は真菌(白癬・カンジダなど)をやっつける事ですが、どのような機序で真菌をやっつけているのでしょうか。

エンペシドは主に3つの作用から抗真菌作用(真菌をやっつける作用)を発揮します。

1つ目は、真菌細胞の細胞膜を変化させる作用です。エンペシドは、高濃度下において真菌細胞の細胞膜に結合し、膜透過性に変化を与えます。簡単にいうと、真菌の細胞膜に「穴をあける」ようなイメージを持って頂いて良いかと思います。

真菌細胞の細胞膜に穴があくと、真菌細胞の細胞内にある成分が細胞外へ流出し、真菌細胞が壊れてしまうというわけです。

2つ目は、エンペシドは低濃度下において真菌細胞膜の重要な構成成分であるエルゴステロールの合成を阻害し、細胞膜を「もろく」する作用があります。

抗真菌薬は真菌細胞を殺すお薬ですが、同時に「人の細胞」も殺してしまう可能性があります。そのため真菌にだけ効いて、人の細胞には効かないような工夫が必要になります。

エルゴステロールは真菌細胞の細胞膜に存在する物質ですが、人の細胞には存在しません。そのためエルゴステロールを標的にすれば、真菌細胞のみ効率的にやっつけることができるのです。

3つ目は、真菌細胞が栄養を取り込むのをブロックする作用です。

エンペシドは、真菌がアミノ酸や糖質などの栄養源を細胞内に取り込むのをブロックします。すると真菌細胞は栄養不足に陥り、死んでしまうのです。

この3つの作用から、エンペシドは真菌をやっつける効果を発揮しています。

また、エンペシドは真菌だけでなく、細菌やトリコモナス原虫に対しても増殖を抑制する効果があることが確認されています。ブドウ球菌、レンサ球菌、バクテロイデスといった菌やトリコモナスという原虫に対して、増殖抑制効果が報告されています。

4.エンペシドの副作用

エンペシドの副作用は多くはありませんが、真菌を「殺す」お薬であるため、時にヒトの身体にも害を及ぼすことがあります。

エンペシドは塗り薬であり、全身に投与するものではないのでその副作用も局所に留まる事がほとんどです。

そのため、全身性の重篤な副作用はほとんどありません。

報告されている副作用としては、

  • 接触性皮膚炎
  • 刺激感
  • 発赤・紅斑
  • びらん
  • 丘疹

などの局所の副作用です。

いずれもエンペシドが皮膚を攻撃してしまうために生じます。重篤となることは少なく、多くはエンペシドの使用を中止すれば自然と改善していきます。

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5.エンペシドの用量・用法と剤型

エンペシドは、

エンペシドクリーム1%(クロトリマゾール) 10g
エンペシド外用液1%(クロトリマゾール) 10ml

と2つの剤型があります。

エンペシドの使い方は、

1日2~3回患部に塗布する。

と書かれています。

エンペシドは1日に2~3回塗らないといけず、これはやや手間になります。現在使われているほとんどの抗真菌薬の塗り薬は、1日1回の塗布で1日中効果が持続するため、エンペシドの作用時間の短さは1つの欠点かもしれません。

ちなみに塗り薬には、「軟膏」「クリーム」「外用液」などがありますが、これらはどう違うのでしょうか。

軟膏は、ワセリンなどの油が基材となっています。保湿性に優れ、刺激性が少ないことが特徴ですが、べたつきは強く、これが気になる方もいらっしゃいます。

クリームは、水と油を界面活性剤で混ぜたものです。軟膏よりも水分が入っている分だけ伸びがよく、べたつきも少なくなっていますが、その分刺激性はやや強くなっています。

外用液は水を中心にアルコールなどを入れることもある剤型です。べたつきはほとんどなく、遣い心地は良いのですが、保湿効果は長続きしません。刺激性が強めというデメリットがある反面で、浸透力が高く、皮膚が厚い部位でも効果が期待できます。

それぞれ一長一短あるため、皮膚の状態に応じて主治医とよく相談し、使い分ける事が大切です。

エンペシドには軟膏がありません。そのため、もし軟膏の方が適切な部位に生じた皮膚真菌症であれば、エンペシド以外のお薬の方が良いこともあります。実際、エンペシドクリーム・外用液適用上の注意として「著しいびらん面には使用しないこと」と記載されています。

軟膏のメリットは保湿性に優れ、刺激性が低いことですので、クリームや液剤を塗ると刺激感が強かったり痛かったりするような部位であれば、エンペシド以外で軟膏剤がある抗真菌薬を選択した方が良いかもしれません。

6.エンペシドが向いている人は?

以上から考えて、エンペシドが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

エンペシドの特徴をおさらいすると、

・白癬・カンジダなどに対して殺真菌的に作用する
・1日2~3回塗る必要がある
・細菌に対してもある程度の増殖抑制効果を有する
・塗り薬で全身に作用しないため、副作用も少ない

というものでした。

強いての特徴を挙げましたが、皮膚真菌症に対する塗り薬は極論を言えばどれを使っても大きな違いはありません。

「この水虫は絶対にエンペシドじゃないとダメだ!」というケースはほとんどなく、実際はどれを使っても改善が得られます。

そのため、自分の使いやすさや好みである程度選択しても構わないでしょう。

エンペシドは刺激性の低い軟膏剤がないため、刺激感が強い部位への塗布はあまりお勧めできません。著しいびらん面や、敏感な部分(陰部など)に塗布する場合は、刺激感が気になるようであれば軟膏剤のある抗真菌薬の方が良いでしょう。

またエンペシドはブドウ球菌・レンサ球菌・バクテロイデスといった細菌に対しての増殖抑制効果も報告されているため、真菌のみならず細菌の感染も併発しているようなケースでは良い適応かもしれません。

ちなみに他の抗真菌薬に細菌抑制効果があるのかどうかというのは、そういった研究をしていないため「分からない」というのが答えになります。同じイミダゾール系抗真菌薬であれば、作用機序はだいたい同じですので、同様に細菌抑制効果がある可能性は十分あります。しかし、実際にそれを確認した研究をしていないため、確証はありません。

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