コデインリン酸塩の効果と副作用

コデインリン酸塩(一般名:コデインリン酸塩水和物)は1975年から発売されているお薬です。いわゆる「咳止め」で、専門的には「鎮咳薬(ちんがいやく)」と呼ばれます。

咳という症状は多くの疾患で認められる症状ですので、咳止めは臨床においてよく処方されるお薬です。

コデインリン酸塩は咳を抑える作用は強力ですが、副作用には注意が必要です。「麻薬性」に属する咳止めであり、その副作用は非麻薬性の鎮咳薬と比べると多くなります。そのため安易に使えるお薬ではなく、他の咳止めでは咳が十分に収まらず、かつどうしても咳を止めてあげる必要がある時にのみ慎重に用いるお薬になります。

コデインリン酸塩はどのような効果・特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。

今日はコデインリン酸塩の効能・特徴や副作用などを紹介させて頂きます。

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1.コデインリン酸塩の特徴

まずはコデインリン酸塩の特徴をざっくりと紹介します。

コデインリン酸塩は麻薬性の物質であり、咳を強力に抑える作用を持ちます。しかし耐性・依存性といった副作用をはじめ、吐き気・便秘などの副作用もあり、慎重に使用する必要があります。

咳止め(鎮咳薬)は大きく分けると、「麻薬性」と「非麻薬性」があります。両者の違いをかんたんに言うと、

  • 麻薬性は、効果はしっかりしているけども耐性や依存性があり、便秘などの副作用も起こりやすい
  • 非麻薬性は、効果は麻薬性には劣るが耐性や依存性はなく、副作用も少ない

となります。

このうちコデインリン酸塩は麻薬性に属します。咳を抑える作用は強力ですが、一方で副作用にも注意が必要なお薬なのです。

短期的に問題となるのは便秘や吐き気、眠気などの副作用です。更に連用を続けると長期的には耐性や依存性が生じることもあります。そのため服用はなるべく短期間に留めるようにしなければいけません。

ちなみに耐性というのは、お薬を連用していると身体がお薬に慣れてしまって徐々に効きが悪くなってくる事です。また依存性というのは、そのお薬に心身が頼り切ってしまい、お薬を止められなくなってしまう事を言います。

また、コデインはモルヒネなどと同じ麻薬(オピオイド系)になります。そのためモルヒネと同じように鎮痛作用(痛みを抑える作用)も持っており、癌患者さんの痛み止めとしても用いられることがあります。

以上からコデインリン酸塩の特徴として次のような点が挙げられます。

【コデインリン酸塩の特徴】

・咳を抑える作用がある
・麻薬性であり、効果は強力だが副作用に注意
・副作用として便秘・吐き気や眠気、耐性や依存性などがある
・鎮痛作用もあり、がん患者さんなどに対する痛み止めとしても用いられる

2.コデインリン酸塩はどんな疾患に用いるのか

コデインリン酸塩はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

各種呼吸器疾患における鎮咳・鎮静
疼痛時における鎮痛
激しい下痢症状の改善

臨床的には、咳に対して最も多く用いられます。ただし麻薬性であるコデインリン酸塩は副作用の問題から、咳に対して最初から投与するお薬ではありません。

他の非麻薬性の鎮咳薬(咳止め)ではどうしても改善できず、かつ咳をどうしても抑えてあげる必要がある時にのみ検討されるお薬になります。

非麻薬性の咳止めでも作用がしっかりしたものはあるため、コデインリン酸塩を使う頻度は多くはありません。

ちなみに咳が出たら全て咳止めを飲まないといけないというわけではありません。基本的に咳というのは「痰を除去する」「ばい菌を体外に追い出す」ために必要な生理反応であり、止めない方がいいものなのです。

風邪や肺炎で気管に菌やウイルスがいるのに、お薬で咳を止めてしまったら、菌やウイルスが体外に排出されず、病気の治りも悪くなってしまいます。

咳を止める必要があるのは、

  • 咳があまりにひどくて、かえって気管を傷付けてしまっている場合
  • 咳があまりにひどくて、夜眠れない場合

など、咳によって菌やウイルス・過剰な痰を排出するというメリットよりも、咳のデメリットが上回っている場合に限ります。

またコデインは麻薬性であり、「モルヒネ」などと同じオピオイドになります。そのため、鎮痛作用(痛みを和らげる作用)も有しており、がん患者さんなどの身体の痛みの緩和に対して用いられることもあります。

麻薬は腸管の動きも抑制するため、下痢がひどい患者さんにも効果が期待できます。

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3.コデインリン酸塩にはどのような作用があるのか

主に咳止め(鎮咳薬)として用いられるコデインリン酸塩ですが、どのような機序で咳を抑えているのでしょうか。

また咳を抑える以外にはどのような作用があるのでしょうか。

コデインリン酸塩の作用について紹介します。

Ⅰ.咳中枢を抑制する

私たちが咳をするのは、脳の「延髄」と呼ばれる部位にある咳中枢が深く関わっています。

本来、咳というのは気管に入ってきた異物を排出するという生体の防御システムです。

咽頭や気管に異物が入りこむと、その信号は咳中枢に送られます。信号がある閾値以上に達すると、咳中枢は「咳をして異物を排出する必要がある」と判断し、呼吸筋や横隔膜などに信号を送り、「咳」をするように指示するのです。

私たちの身体はこのような咳中枢のはたらきによって、異物を排出することが出来るのです。

コデインリン酸塩は、オピオイド受容体という部位に結合することでその作用を発揮します。オピオイド受容体のうち、特にκ(カッパ)受容体は咳反射を起こしにくくさせる作用があります。またコデインリン酸塩は延髄の咳中枢に直接作用するはたらきもあると考えられています。

ちなみにコデインリン酸塩はモルヒネなどと同じ麻薬性物質(オピオイド系)になります。

コデインはモルヒネと比べると咳を抑える作用は同等なのですが、それ以外の作用が弱いという特徴があります。

  • 鎮痛作用(痛みを和らげる作用)はモルヒネの1/6
  • 眠気はモルヒネの1/4
  • 呼吸抑制はモルヒネの1/4、
  • 吐き気・便秘などもモルヒネの1/4以下

であり、麻薬性物質の中では咳のみを選択的に抑える時に向いています。

Ⅱ.痛みを緩和する

コデインリン酸塩は麻薬性物質であり鎮痛作用があります。

コデインは体内で代謝される過程でモルヒネになります。このモルヒネが鎮痛作用を持っているため、コデインを服薬すると鎮痛作用が得られると考えられています。

モルヒネはオピオイド受容体という部位のμ(ミュー)受容体に結合し、これが主に鎮痛作用を発揮します。

このような理由から、コデインはしばしばがん患者さんなどに対しての「鎮痛剤(痛み止め)」として用いられることがあります。

しかしコデインは麻薬性物質の中では鎮痛作用は弱めになっています。

麻薬性(オピオイド)はその鎮痛作用の強さによって弱オピオイドと強オピオイドに分けられますが、コデインは弱オピオイドに分類されています。

Ⅲ.下痢を抑える

コデインをはじめとした麻薬性物質は、消化管の動きを抑えるはたらきがあります。

通常これは吐き気や便秘といった困った副作用として現れてしまうのですが、下痢がひどいような状態ではコデインを投与することで下痢症状の改善が得られることがあります。

下痢止めとしてコデインを使うというのは臨床上は多い使い方ではありませんが、このような効果も期待はできます。

4.コデインリン酸塩の副作用

コデインリン酸塩にはどんな副作用があるのでしょうか。

コデインリン酸塩は麻薬性の鎮咳薬に属するため、副作用には注意が必要です。

生じえる副作用としては、

  • 嘔気・嘔吐
  • 食欲不振
  • 眠気
  • 血圧低下、めまい、ふらつき

などが比較的多い副作用になります。

また、麻薬性物質の副作用で注意しなくてはいけないのが、

・耐性
・依存性

です。

耐性というのは、お薬を連用していると身体がお薬に慣れてしまって徐々に効きが悪くなってくる事です。効きが悪くなると、同じ効果を得るためにはよりたくさんのお薬を飲まないといけなくなります。これを繰り返していると次第に服薬量が増えてしまい、お薬で得られる効果よりも副作用のリスクの方が高くなってしまいます。

また依存性というのは、そのお薬に心身が頼り切ってしまい、お薬を止められなくなってしまう事を言います。依存性が形成されると常にお薬が身体に入っていないと落ち着かなくなってしまい、その物質を得ることが中心の生活になってしまいます。

このような耐性・依存性を起こさないように、麻薬性物質は必要時のみ使用すべきで、必要がないのに漫然と長期間使用すべきではありません。

また重篤な副作用としては、

  • 呼吸抑制
  • 錯乱、せん妄
  • 無気肺
  • 気管支痙攣
  • 喉頭浮腫
  • 麻痺性イレウス
  • 中毒性巨大結腸

が報告されています。

また次のような状態にある方は、麻薬性物質のコデインを服用することで症状を悪化させる恐れがあるため、コデインを服用することは出来ません。

  • 重篤な呼吸抑制のある方
  • 気管支喘息発作中の方
  • 重篤な肝障害のある方
  • 慢性肺疾患に続発する心不全の方
  • 痙攣状態にある方
  • 急性アルコール中毒の方
  • アヘンアルカロイドに対し過敏症の方
  • 出血性大腸炎の方

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5.コデインリン酸塩の用法・用量と剤形

コデインリン酸塩は

コデインリン酸塩錠 5mg
コデインリン酸塩錠 20mg

コデインリン酸塩散 1%
コデインリン酸塩散 10%

コデインリン酸塩末

といった剤型が発売されています。

コデインリン酸塩の使い方は、

通常成人には、1回20mg、1日60mgを経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

と書かれています。

コデインリン酸塩は服薬後、30~45分ほどで効果が発現されます。そしてその効果の持続時間はおおよそ4~6時間程度だと考えられています。

用法を見ると基本的には1日3回投与ということになりますが、実際の服薬回数はご自身の症状に応じて主治医と相談しながら増減されます。

例えば咳止めとして用いる際も、1日を通してしっかりと咳を抑えたいのであれば1日3回に分けた服用回数が良いでしょう。

しかし特定の時間だけの咳を抑えたいのであれば、主治医と相談の上で1日1回投与とすることもあります。「夜寝る時だけ咳を抑えたい」という事であれば1日1回就寝前投与としても良いわけです。

6.コデインリン酸塩錠が向いている人は?

以上から考えて、コデインリン酸塩錠が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

コデインリン酸塩錠の特徴をおさらいすると、

・咳を抑える作用がある
・麻薬性であり、効果は強力だが副作用に注意
・副作用として便秘・吐き気や眠気、耐性や依存性などがある
・鎮痛作用もあり、がん患者さんなどに対する痛み止めとしても用いられる

などがありました。

コデインリン酸塩は麻薬性の鎮咳薬であり、非麻薬性の鎮咳薬では効果が不十分な時や非麻薬性がどうしても使えない時に限って検討されるお薬になります。

鎮咳薬を使う時は、まずは非麻薬性の鎮咳薬から開始し、それでも咳が抑えられない時に限ってコデインリン酸塩などの麻薬性鎮咳薬を使用するようにします。

効果は強力ですが、副作用も軽視できないため慎重に用いる必要があります。また症状が落ち着いたら速やかに中止を検討すべきであり、漫然と投与を続けることは推奨されません。

ここから、

  • 中等度~重度の咳症状を認める場合
  • 非麻薬性の鎮咳薬では効果が不十分であった場合
  • 眠気や便秘が生じるリスクを取れる場合

に検討されるお薬になります。

耐性・依存性を生じさせないためにも必要な期間のみの服用を心がけるようにしましょう。

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