サイトテック錠の効果と副作用【胃薬】

サイトテック(一般名:ミソプロストール)は1993年から発売されている胃薬です。

「プロスタグランジンE1(PGE1)誘導体」という種類に属し、主な作用はプロスタグランジンE1という物質を増やす事ですが、それ以外にも様々な作用があり総合的に胃を保護するはたらきを持ちます。

サイトテックはどのようなお薬で、どんな患者さんに向いているお薬なのでしょうか。サイトテックの効果や特徴・副作用などについて詳しくみていきましょう。

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1.サイトテックの特徴

まずはサイトテックの特徴について、かんたんに紹介します。

サイトテックは 胃酸の分泌を抑えたり・胃粘膜の保護する力を強めたりなどといった複数の作用により総合的に胃を保護するお薬になります。ただし非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)によって生じた胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療にしか使えません。

サイトテックには複数の作用機序があり、様々な作用によって総合的に胃を保護してくれるのが特徴です。

通常の胃薬というのは、

  • 攻撃因子抑制薬:胃を攻撃する因子を減らすお薬
  • 防御因子増強薬:胃を保護する因子を増やすお薬

のどちらかに分類できます。

前者には、

  • プロトンポンプ阻害薬(PPI):タケプロン、タケキャブ、パリエット、オメプラール、ネキシウムなど
  • ヒスタミン2受容体阻害薬(H2ブロッカー):ガスター、タガメット、アシノン、ブロテカジン、ザンタックなど

などがあり、これらは強力な酸である胃酸の分泌を抑える事で胃を保護します。

後者には

  • ムコスタ、ソロン、セルベックス、アルサルミン、マーズレン、プロマックD

などがあり、これらは胃壁を守る物質を増やす事で胃を保護します。

胃腸に異常が生じた時は、攻撃因子を減らした方がいいのか、それとも防御因子を増やした方がいいのかを判断し、最適な治療薬を選んでいきます。

しかしサイトテックは、この両方の作用を持つ胃薬です。胃酸の分泌を抑える作用もあるし、胃粘膜の血流を増やしたり胃酸を中和する重炭酸イオンの分泌を増やす事によって胃粘膜を守る力を増強するはたらきもあります。

特に非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)という痛み止めの長期服用に伴って生じる胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対して優れた効果を発揮する事が確認されており、PPI(プロトンポンプ阻害薬)に匹敵する効能を有しています。

それ以外にもアルコールやステロイドなどの服用で生じた胃潰瘍・十二指腸潰瘍にも効果がある事が確認されています。

デメリットとしては、お薬を使用できる適応が「NSAIDsで生じた胃潰瘍・十二指腸潰瘍」に限られている事が挙げられます。つまりそれ以外の病態には使えないのです。厳密に言えば、NSAIDsで潰瘍が生じていないと使えず、潰瘍が生じないようにするために予防的に投与する事はできません。そのため使用できる機会が極めて限られるお薬となります。

また1日4回服用しなくてはいけないという手間もあり、このようなデメリットから優れた胃薬であるにも関わらずあまり普及していない胃薬です。

更に子宮を収縮させる作用があるため、妊婦の方や妊娠の可能性のある女性は服用できません。妊娠中に子宮を収縮させてしまうことで流産などを引き起こす危険があるためです。

以上からサイトテックの特徴として次のようなことが挙げられます。

【サイトテック(ミソプロストール)の特徴】

・胃酸の分泌を抑える事で胃を保護する
・胃粘膜の血流を増やしたり、重炭酸イオンの分泌を増やす事で胃を保護する
・適応疾患が限られている(NSAIDsで生じた潰瘍のみ)
・1日4回服用しないといけない
・妊娠中は使用できない

2.サイトテックはどんな疾患に用いるのか

サイトテックはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】
非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の長期投与時にみられる胃潰瘍及び十二指腸潰瘍

非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)というのは、いわゆる「熱さまし」「痛み止め」として使われているお薬の事で、風邪を引いた時の解熱剤、あるいは頭痛や腰痛などに対する痛み止めとしてよく処方されているお薬です。

代表的なNSAIDsとしては、

  • ロキソニン(一般名:ロキソプロフェンナトリウム)
  • ボルタレン(一般名:ジクロフェナクナトリウム)
  • ブルフェン(一般名:イブプロフェン)
  • モービック(一般名:メロキシカム)
  • セレコックス(一般名:セレコキシブ)

などがあります。

NSAIDsは優れたお薬ですが、長期間あるいは大量に服用し続けていると胃腸を痛めてしまうという副作用が生じる事があります。これはNSAIDsがCOX(シクロオキシゲナーゼ)という物質をブロックするはたらきがあるためです。

COXはPG(プロスタグランジン)が作られる時に必要な物質であるため、COXがブロックされるとPGの量も減ります。

サイトテックがPGを増やす作用がある事からも分かるように、PGは胃粘膜を保護するはたらきをもちます。

そのため、NSAIDsによってPGが減少すると、胃腸障害が生じるのです。これを「NSAIDs潰瘍」と呼びます。

サイトテックはPGを増やす事によってNSAIDs潰瘍を予防する効果に優れます。

NSAIDs服用中の方に生じた胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対するサイトテックの有効率は、

  • 胃潰瘍に対する内視鏡判定治癒率は65.7%、有用率は76.4%
  • 十二指腸潰瘍に対する内視鏡判定治癒率は83.3%、有用率は66.7%

と報告されています。

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3.サイトテックにはどのような作用があるのか

サイトテックは複数の作用機序によって胃を保護するお薬ですが、具体的な作用は次の3つが挙げられます。

サイトテックの主な作用について詳しく紹介します。

Ⅰ.胃酸の分泌抑制作用

サイトテックは、胃酸の分泌を抑える作用があります。

これはサイトテックが、胃壁細胞にあるプロスタグランジンE受容体に結合する事で生じます。

サイトテックによってプロスタグランジンE受容体が刺激されるとcAMPという胃酸分泌を促すシグナルが抑制され、これによって胃酸の分泌量が減ります。

胃酸は強力な酸です。

胃酸がある事で、胃の中には通常のばい菌は生息する事ができず、これにより身体の中にばい菌が侵入するのを防ぐ役割があります。

しかし胃酸の分泌量が多くなりすぎてしまうと、強力な胃酸は、今度は胃の壁を傷付けてしまいます。すると胃炎や胃潰瘍が生じてしまうのです。

サイトテックは胃酸の分泌を抑える事で、このように生じる胃炎・胃潰瘍を改善させる作用があります。

Ⅱ.胃粘膜の血流を増やす

サイトテックは、胃粘膜の血流を増やす作用もあります。

血液中には栄養やばい菌と闘うための白血球など、たくさんの物質が流れています。そのため、胃粘膜の血流が増えると、胃はその機能を十分に発揮しやすくなり、胃炎や胃潰瘍などを起こしにくくなります。

Ⅲ.重炭酸イオンを増やす

サイトテックは胃や十二指腸において、重炭酸イオンの分泌を増やす作用もあります。

重炭酸イオンはアルカリ性であるため、胃酸を中和するはたらきがあります。

強力な胃酸が胃壁を攻撃しようとしても、胃壁から重炭酸イオンが分泌されれば、酸は中和されてしまうため、胃壁は守られます。

4.サイトテックの副作用

サイトテックにはどのような副作用があるのでしょうか。

また他の胃薬と比べて副作用の頻度や程度はどうなのでしょうか。

サイトテックの副作用発生率は11.6%前後と報告されています。頻度だけを見ると多く感じるかもしれませんが、生じる副作用はほとんどが軽いものです。

具体的には、

  • 下痢、軟便
  • 腹痛
  • 腹部膨満感
  • 嘔気
  • 消化不良

といった症状や、

  • 肝酵素の上昇(AST、ALT、LDH、ALP上昇)

といった検査異常になります。

ほとんどは重篤なものではなく、全体的な安全性は高いと考えてよいでしょう。

稀ですが重篤な副作用の報告もあり、

  • ショック、アナフィラキシー様症状(呼吸困難、ふるえ等)

が報告されています。臨床で見かける事は滅多にありませんが、一応の注意は必要です。

注意点として、サイトテックは子宮を収縮させる作用があるため、

  • 妊娠中の方には禁忌(絶対にダメ)
  • 妊娠の可能性のある方には原則禁忌(極力使ってはダメ)

となっています。子宮収縮作用により、妊娠中の方が服用してしまうと流産や子宮出血が生じる危険性があるからです。

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5.サイトテックの用法・用量と剤形

サイトテックは、

サイトテック錠 100μg
サイトテック錠 200mμg

の2剤型があります。

サイトテックの使い方は、


通常、成人には1回200μgを1日4回(毎食後及び就寝前)経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。

となっています。

1日4回も服用しないといけないのは、やや手間となります。

6.サイトテックが向いている人は?

以上から考えて、サイトテックが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

サイトテックの特徴をおさらいすると、

・胃酸の分泌を抑える事で胃を保護する
・胃粘膜の血流を増やしたり、重炭酸イオンの分泌を増やす事で胃を保護する
・適応疾患が限られている(NSAIDsで生じた潰瘍のみ)
・1日4回服用しないといけない
・妊娠中は使用できない

というものでした。

サイトテックは優れた胃薬ですが、臨床で用いる事は多くはありません。

その理由としては、2つのデメリットがあるからです。

1つ目は、厳密に言うと「NSAIDsで潰瘍が生じた時」しか用いる事ができない点です。出来れば、NSAIDsで潰瘍が生じないように予防的に用いたり、他の胃腸障害で用いたいところですが、保険的にはそれは認められていません。

実際、添付文書には、

本剤は原則として非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)を3ヵ月以上長期投与する必要がある関節炎患者等の胃潰瘍及び十二指腸潰瘍の治療にのみ用いること。

と書かれています。

実際はNSAIDs潰瘍を起こしてからでは遅いため、「起こさないように」使いたいのですが、サイトテックだとそれが出来ないため、PPIなどの胃薬を用いる事が多いのです。

また、サイトテックは1日4回も服用しないといけないため、これは結構な手間になります。これもPPIなどであれば1日1回で済みます。

NSAIDsによる潰瘍が生じた場合は、第一選択として考えて良い優れたお薬ですが、使用上の使い勝手が悪いため今一つ用いられる事の少ない胃薬なのです。

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