ドパストンカプセル・ドパストン細粒(レボドパ)の効果と副作用

ドパストン(一般名:レボドパ)は1972年から発売されているお薬で、主にパーキンソン病の治療薬として用いられています。

ドパストンは「レボドパ製剤(L-Dopa製剤)」であり、レボドパというのはドーパミンの前駆物質になります。「前駆物質」というのはドーパミンになる前の物質だという意味で、レボドパは脳で「レボドパ脱炭酸酵素」という酵素によってドーパミンに変換されます。

パーキンソン病は脳(主に中脳黒質-線条体)のドーパミンが減少する事で生じると考えられているため、脳でドーパミンとなるドパストンを投与するとパーキンソン病の改善が得られるのです。

レボドパはパーキンソン病における重要な治療薬ですが、近年ではドパストンが単剤で使われることは少なくなってきています。その理由は、レボドパだけを使用し続けていると様々な副作用が出現してしまうからで、現在ではレボドパと副作用を抑える物質を配合したお薬が主に用いられるようになっています。

パーキンソン病の治療薬にはたくさんの種類があり、どんなお薬をどんな時に用いているのかが分かりにくいものです。パーキンソン病治療薬の中でドパストンはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここではドパストンの効能や特徴、副作用などを紹介していきたいと思います。

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1.ドパストンカプセル・ドパストン散の特徴

まずはドパストンの特徴を紹介します。

ドパストンは、ドーパミンの前駆体「レボドパ」であり、脳でドーパミンに変換されます。そのためドパストンは、脳にドーパミンを補う事でパーキンソン病を改善させるはたらきがあります。

ドパストンは主にパーキンソン病に用いられているお薬ですが、パーキンソン病は脳(特に中脳黒質や線条体)のドーパミン量が減少する事で生じると考えられています。ドパストンは足りなくなっているドーパミンを直接補うというはたらきがあるのです。

ドーパミンが足りないのであれば、ドーパミンの前駆体ではなくドーパミンそのものを投与すればいいじゃないか、と考える方もいらっしゃると思いますが、実はドーパミンというのは脳に入ることができない物質なのです。

血液が脳に入る時、BBB(Blood-Brain Barrier、血液脳関門)というシステムがあります。脳は大切な臓器であるため、悪い物質が入らないようにBBBが厳しいチェックをしており、問題があると判断された物質は脳に入ることができません。そしてドーパミンはBBBでブロックされてしまう物質になるため、脳に入ることができないのです。

しかし、ドーパミンの前駆体である「レボドバ」はBBBを通過することができます。そして脳に入ったレボドパは脳内で「レボドパ脱炭酸酵素」によってドーパミンに変換されます。そのため、ドーパミンではなく、レボドパを投与するのです。

ドパストンは少なくなっているドーパミンを直接的に補うはたらきがあるため、パーキンソン病をダイレクトに改善させる効果があるのが利点です。

デメリットとしては、ドーパミンを薬で補うことを続けていると、様々な副作用が出てきてしまう事です。胃腸のドーパミンが増えることで吐き気や食欲低下が出現したり、長期使用により「wearing-off現象」「delayed-on現象」「on-off現象」などの問題が生じます(これらの現象についての詳細は後述します)。

そのため、現在ではレボドパに様々な副作用止めを加えたお薬が主流となっており、レボドパだけを単剤で用いることは少なくなっています。もちろん副作用止めを使ってもこれらの副作用が出てしまうことはあるのですが、副作用止めを使うことにより副作用の程度を軽くしたり、副作用が生じるまでの期間を延長することができます。

以上からドパストンの特徴として次のような点が挙げられます。

【ドパストンの特徴】

・脳内でドーパミンに変換されるため、少なくなったドーパミンを直接補える
・ドーパミン補充を長期続けていると、様々な副作用が生じやすい
・現在ではドパストン単剤で使用されることは少ない

2.ドパストンカプセル・ドパストン散はどんな疾患に用いるのか

ドパストンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。ドパストンの添付文書には、次のように記載されています(2015年7月現在)。

【効能又は効果】

パーキンソン病、パーキンソン症候群

ドパストンはドーパミン製剤であるため、投与すると体内のドーパミン濃度が増えます。

パーキンソン病は、主に中脳黒質という部位のドーパミン不足で生じると考えられているため、ドーパミンを増やすドパストンなどはパーキンソン病を改善させることが期待できます。

ちなみにパーキンソン病とパーキンソン症候群は何が違うのでしょうか。

パーキンソン症候群とは、パーキンソン病とは別の原因によって中脳黒質のドーパミンが減ってしまう状態を言います。例えば、

・お薬の副作用で、ドーパミンが不足してパーキンソン症状が出てしまった
・脳炎や脳腫瘍などで脳が障害され、ドーパミン不足となりパーキンソン症状が出てしまった

などがあります。

原因は異なれど、どちらも脳のドーパミン不足で生じていることに変わりはないため、ドパストンはパーキンソン病でもパーキンソン症候群でも使用することができます。

しかしパーキンソン症候群の場合、明らかな改善できる原因があるのであれば、まずはそちらの原因除去が第一になりますす。例えばお薬の副作用でパーキンソン症候群になっているのであれば、まずすべき事はドパストンのようなお薬を投与することではなく、パーキンソン症候群の原因となっているお薬を中止することです。

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3.ドパストンカプセル・ドパストン散にはどのような作用があるのか

ドパストンは、主にパーキンソン病の治療薬として用いられています。

パーキンソン病は、主に中脳黒質-線条体という部位の神経細胞が変性してしまうことによって、ドーパミンが少なくなってしまう疾患です。ドーパミンが少なくなる事によって、

・振戦(手足のふるえ)
・筋固縮(筋肉が固まったように動かしにくくなる)
・無動(表情が乏しくなったり、動きが乏しくなる)
・姿勢反射障害(身体のバランスを保ちにくくなる)

などの症状が出現します。

ドパストンは、ドーパミンの前駆体である「レボドパ」であり、これは脳に到達するとドーパミンに変換されます。中脳黒質-線条体系のドーパミンを増やしてあげる事でパーキンソン病症状を改善させることが期待できます。

4.ドパストンカプセル・ドパストン散の副作用

ドパストンにはどんな副作用があるのでしょうか。

ドパストンはドーパミン製剤ですので、投与すると体内にドーパミンが増えることになります。パーキンソン病の脳においてはドーパミンが少ない状態ですので、ドーパミンが増えるとちょうどいいのですが、その他の臓器においてはドーパミンが増えすぎてしまう事で副作用が出現してしまう事があります。

比較的多いのが気分不良・嘔吐・食欲低下などの消化器症状です。胃や腸といった消化管にもドーパミン受容体があるため、ドパストンが消化管に作用してしまうために生じると考えられています。

また、精神症状も時に認められ、幻覚・興奮・不眠などが生じる事があります。重篤な場合は異常行動による事故や自殺企図などに至る可能性も稀ながらありえます。

ドーパミンは興奮・快楽に関係する物質であり、その量が増えすぎると興奮したり幻覚が生じたりすることがあるのです。例えば覚せい剤を使用した人には幻覚が生じますがこれは脳内ドーパミン量が増えたためだと考えられています。また、幻覚が生じる統合失調症の原因もドーパミンの過剰ではないかとも指摘されています(ドーパミン仮説)。

これらの例から分かるように、ドーパミンは増えすぎると幻覚・興奮などの精神症状を引き起こす可能性があります。

その他の副作用としては、

・白血球減少
・不随意運動(身体が勝手に動いてしまう)

などもしばしば認められるため、定期的に血液検査をしたり、身体所見を診察してもらう必要があります。不随意運動は手足がクネクネ動いてしまったり、口をモグモグ動かしてしまったりといった、自分の意志と関係なく身体が動いてしまう現象です。ドーパミンが少なくなると起こりやすく、統合失調症の治療薬(抗精神病薬)の副作用としてよく認められます。

ドパストンは基本的にはドーパミンを増やす方向に働きますが、ドーパミン濃度を変動させるお薬であるため、時に不随意運動が出現してしまう事があるのです。

その他も頻度は低いのですが、重篤な副作用として、

・血小板減少、溶血性貧血
・突発的睡眠
・悪性症候群(急激にドーパミン量が増減すると生じることがある)

などの報告があります。

またドパストンのようなドーパミン製剤は長期服用していると、いくつかの問題が出てくることがあります。代表的なものとしては、

【wearing-off現象】
レボドパによるドーパミンの補充を続けていると、次第にレボドパの薬効が短くなっていき、お薬が切れたときの症状が強まってしまう現象

【delayd-on現象】
レボドパによるドーパミン補充を続けていると、、次第にお薬の効きが悪くなり、効果発現に時間がかかるようになってしまう現象

【on-off現象】
レボドパによるドーパミン補充を続けていると、服薬時間に関わらず急に症状が改善したり悪化したりが出現する現象

などがあります。

このような問題から、現在ではパーキンソン病を治療する際の第一選択薬として、レボドパではなく「ドーパミンアゴニスト」を使うように推奨する専門家もいます。しかしレボドパがパーキンソン病に有効な治療薬であることに間違いはありません。どのお薬にも一長一短あるため、パーキソン病治療薬を上手に使い分け、なるべく問題が生じないように工夫していくことが大切です。

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5.ドパストンカプセル・ドパストン散の用法・用量と剤形

ドパストンは次の剤型が発売されています。

ドパストンカプセル 250mg
ドパストン散 98.5%

の2剤型が販売されています。

ドパストンをパーキンソン病に用いる際には、

通常成人には1日250~750mgを1~3回に分けて食後直ちに経口投与する。その後2~3日毎に1日量として250mgまで増量し、症例毎に最適投与量を定め維持量とする(標準維持量1日1.5~3.5g)。なお、年齢・症状に応じて適宜増減する。

と書かれています。

ドパストンは、ドーパミンを直接体内に補充するため、ダイレクトな効果が期待できます。そのため服薬を始めてから効果を感じるまでの時間も短く、早い人だと1週間以内に効果が認められることもあります。患者さんの半数以上は2週間以内に効果が認められます。

ドパストンは半減期が約1.5時間ほどのお薬です。半減期とは、お薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、そのお薬の作用時間の一つの目安になる数値です。ドパストンは半減期が短いため、1日複数回の投与が指示されることがあります。しかしドパストンは神経に作用するお薬であるため、血中濃度の変動よりも脳脊髄液濃度が重要だと考えられており、血中半減期は1つの目安にしかすぎません。

6.ドパストンが向いている人は?

ドパストンはどのような時に検討されるお薬なのでしょうか。

実はドパストンは現在ではほとんど用いられることがなくなっています。

ドパストンはパーキンソン病の治療薬として非常に重要な位置づけのお薬なのですが、上記の長期使用に伴う副作用の問題があるため、「ドーパミンアゴニスト」というお薬が用いられたり、ドパストンに副作用を穏やかにするお薬を配合されたお薬が用いられることが多くなっています。

例えば、メネシットというお薬は、レボドパに「レボドパ脱炭酸酵素阻害薬」というお薬が配合されています。これは、脳以外の末梢においては、レボドパがドーパミンに変換されないようにするお薬です。これが配合されていると脳のドーパミンは増えるけど末梢のドーパミンは増えないため、消化器症状などの副作用が軽減されます。

またコムタン(一般名エンタカポン)という、レボドパの分解を抑えるお薬があります。レボドパとコムタンを併用すれば、レボドパの薬効が長くなり、上記のwearing-off現象の改善が期待できます。

スタレボというお薬が2014年に発売されましたが、このお薬は「ドパストン(レボドパ)」と「レボドパ脱炭酸酵素阻害薬」と「コムタン(エンタカポン)」の3つのお薬を配合したお薬であり、これも副作用の軽減が期待できます。

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