メトホルミン錠の効果と副作用

メトホルミン錠は「ビグアナイド剤」と呼ばれる種類のお薬で、糖尿病の治療薬になります。このお薬はジェネリック医薬品であり、1961年から発売されている「メトグルコ」のジェネリックです。

メトホルミンは長い歴史を持つ古いお薬ですが、現在でも多くの糖尿病患者さんに使われている優秀なお薬です。注意すべき副作用はありますが、正しく使えば安全に糖尿病を治療することができます。

また糖尿病を改善させる作用以外にも興味深い作用の報告もあり、古いお薬でありながら今後の研究報告が楽しみなお薬でもあります。

糖尿病治療薬にもたくさんの種類のお薬があります。これらの中でメトホルミンはどのような位置付けになるのでしょうか。

メトホルミンの効果や特徴、どのような方に向いているお薬なのかについてみていきましょう。

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1.メトホルミンの特徴

まずはメトホルミンの特徴について、かんたんに紹介します。

メトホルミンはインスリンに頼ることなく、様々な機序によって血糖を下げてくれるお薬になります。

メトホルミンは「ビグアナイド剤」と呼ばれる種類の糖尿病治療薬になります。ビグアナイド剤は、元々は植物から抽出された成分になります。

中性のヨーロッパでは、マメ科の植物のフレンチライラックが糖尿病の症状(口渇や多尿など)に効くという事が経験的に知られていました。

そこでフレンチライラックの成分を調べたところ、「グアニジン」という物質が血糖を下げるはたらきがあることが発見され、グアジニンに似た物質である「ビグアナイド剤」が糖尿病の治療薬として使われるようになりました。メトホルミンもその1つになります。

メトホルミンは古いお薬であり注意すべき副作用はあるのですが、血糖を下げる作用に優れていること、その他の付加的な効果がいくつも報告されていることから、現在でも広く用いられている糖尿病治療薬になります。

糖尿病のお薬にはいくつか種類がありますが、大きく分けると2つの機序に分けられます。

1つ目が、血糖を下げるホルモンである「インスリン」の分泌を促すことで血糖を下げようとするお薬です。これには「スルホニル尿素(SU)薬」「速効型インスリン分泌促進薬」「DPP4阻害薬」「GLP1作動薬」などがあります。

インスリンというのは私たちの身体に元々備わっているホルモンで、血糖を下げる唯一のホルモンです。インスリンは、血液中の糖(血糖)を筋肉などの末梢組織に移動させることで血糖を下げます(そして末梢組織に運ばれた血糖は、生命活動のためのエネルギー源となります)。

2つ目は、インスリンに頼ることなく血糖を下げるお薬です。これには「ビグアナイド(BG)剤」「チアゾリジン誘導体」などがあります。インスリンに依存せずに血糖を下げるため、インスリンが欠乏してしまうような病態でも効果が得られます。

その他にも血糖の吸収を穏やかにする「αグルコシダーゼ阻害剤」や、尿から糖をたくさん出すようにする「SGLT2阻害薬」などもあります。

メトホルミンは、血糖を末梢の筋肉や脂肪組織に取り込まれやすくしたり、肝臓にある貯蔵されている糖が放出されるのを抑制したり、腸管の糖の吸収を抑えたりすることで血糖を下げます。1つのお薬にこのような複数の血糖を下げる作用があるのです。

またそれ以外に意外な作用として、抗がん作用やアンチエイジング作用も報告されており、面白い特徴を持ったお薬になります。

メトホルミンは古いお薬であり、副作用には一定の注意が必要です。特に注意すべきは「乳酸アシドーシス」という副作用になります。同じビグアナイド剤の「フェンホルミン」による乳酸アシドーシスによって死亡者が出たこともあり、一時期ビグアナイドはあまり使用されなかった時代があります。

しかしメトホルミンは適切に使用すれば十分安全に使えるお薬です。重篤な副作用のほとんどは、適応とされる患者さん以外に使用した事で生じているため、医師の指示に従って適切に使えば安全に使用することは十分可能です。

以上からメトホルミンの特徴として次のようなことが挙げられます。

【メトホルミン錠の特徴】

・ビグアナイド剤に属するお薬である
・血液中から末梢組織(筋肉や脂肪など)へ糖を移動させる
・肝臓にある貯蔵されている糖の分解を抑える
・小腸からの糖の吸収を抑制する
・意外な作用として抗がん作用、アンチエイジング作用がある
・古いお薬であり、注意すべき副作用は多い
(ただし、しっかりと適応を守って使用すれば十分安全)
・ジェネリック医薬品であり、安い

2.メトホルミンはどんな疾患に用いるのか

メトホルミンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

2型糖尿病

ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る。

(1)食事療法・運動療法のみ
(2)食事療法・運動療法に加えてスルホニル尿素剤を使用

メトホルミンは血糖を下げる作用を持つお薬ですから、糖尿病に使われます。

糖尿病には1型と2型があります。

1型は遺伝性の疾患で、膵臓に存在するβ細胞と呼ばれるインスリンを分泌する細胞が破壊されてしまっている疾患です。β細胞が破壊されてしまっていればインスリンが分泌できないため、血糖は高くなってしまいます。

2型は一般的な糖尿病で、糖分を摂取しすぎることで生じてしまうものです。

メトホルミンは基本的には2型糖尿病に対して用いられます。そして2型糖尿病ではまずはお薬を使う前に食事療法(規則正しくバランスの良い食事を指導する)や運動療法(適度な運動を指導する)が行われます。

これら食事療法や運動療法を行っても改善が得られない時、メトホルミンのようなお薬が検討されます。

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3.メトホルミンにはどのような作用があるのか

メトホルミンは様々な作用を持つお薬です。

具体的にどのような作用を有しているのでしょうか。メトホルミンの作用は、AMPK(Adenosine5′ Monophosphate activated Protein Kinase)という酵素を活性化させることだと考えられています。AMPKの活性化により次のような作用が期待できます。

Ⅰ.インスリン抵抗性改善

メトホルミンは、末梢臓器において、血液中の糖(血糖)が筋肉や脂肪組織に取り込まれやすくするようにはたらきます。

組織に取り込まれた糖分はエネルギー源となり、身体活動をするためのエネルギーとして使われます。

血糖が臓器に取り込まれやすくなると、血糖は下がりやすくなるため、糖尿病の改善が得られます。

なお血糖を下げるホルモンであるインスリンも、「血液中の糖を臓器に吸収させる」はたらきをもっているため、メトホルミンはインスリンの効きを良くするという見方も出来ます。

これを「インスリン抵抗性の改善」と呼びます。

メトホルミンのようなビグアナイド剤は、グルコーストランスポーターという糖を血液中から組織へ輸送するシステムに直接作用するため、インスリンがない状況でも筋肉・脂肪に糖を取り込ませることが出来ます。これをインスリン非依存性と呼びます。

インスリンに頼ることなく血糖を下げれるため、インスリンの分泌能が弱くなってしまった方にも向いているお薬なのです。

Ⅱ.肝臓からの糖放出抑制

肝臓には糖分が貯蔵されています。

糖は体内では「グルコース」として存在していますが、これは肝臓において「グリコーゲン」として貯蔵されています。グリコーゲンはいざという時の予備のエネルギーとして取っておいてあるのです。

メトホルミンは肝臓のグリコーゲンがグルコースに分解されて血液中に放出されるのをブロックします。

この作用も、血糖の上昇を抑えてくれるため糖尿病の改善に役立ちます。

Ⅲ.消化管からの糖吸収抑制

私たちは糖分を食事から摂取します。食物中の糖分は、主に腸管から体内に吸収されます。

メトホルミンは小腸にも作用し、小腸が糖を吸収するのを抑えてくれるはたらきがあることが動物実験において報告されています。

似たような作用機序を持つお薬に「αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)」がありますが、αGIとは異なる機序で小腸からの糖吸収を抑制するようです。

Ⅳ.食欲抑制作用

メトホルミンは食欲を抑える作用があることが知られています。

なぜメトホルミンが食欲を抑えるのかは不明なところもありますが、「グレリン」という食欲を上げる物質に作用するのではないかと考えられています。

グレリンは胃から分泌されるホルモンで、視床下部の食欲中枢を刺激して食欲を亢進させるはたらきがあります。メトホルミンは食後のグレリン上昇を起こしにくくする作用があることが報告されており、これによって「食べ過ぎ」を防げるのではないかと考えられます。

また、近年糖尿病を治療するお薬として「DPP-4阻害薬」が発売されました。DPP-4阻害薬は安全にインスリンの分泌を促すため、しっかりと血糖を下げてくれる割に低血糖が起こりにくいお薬です。DPP-4阻害薬はGLP-1という物質のはたらきを強めるのが主な作用機序なのですが、このGLP-1も食欲を抑えるはたらきがあります。

メトホルミンは、DPP-4阻害薬と同じようにGLP-1のはたらきを強めるという報告もあり、これも食欲抑制に関係している可能性があります。

「メトホルミンは食欲を抑える」という事実は古くから知られており、そのため「痩せ薬」としてメトホルミンの処方を希望される方が時々いらっしゃいます。しかしこのように食欲を適切に抑えてくれるはたらきであり、過度に体重を落とせるお薬ではありません。

Ⅴ.抗がん作用

メトホルミンの意外な作用として、抗がん作用が報告されています。

元々、糖尿病の方は癌の発生率が高いという事が知られていますが、メトホルミンを服薬していると膵臓癌や前立腺癌の発生率増加を抑えられことが報告されています。

なぜ癌を抑えるのかについては様々な推測がされていますが、やはりAMPKの活性化によって何らかの作用をもたらしているのだと考えられます。

しかし現時点では抗がん剤として使えるほどの根拠があるわけではなく、この作用はあくまでも「こういった作用も報告されているよ」という程度のものです。

Ⅵ.抗老化作用

メトホルミンは動物実験において「寿命を延ばす」ことが知られていました。これもAMPKの活性化によるものと考えられます。

現在、海外で人への使用に向けて臨床試験が始まっています。

もし人においても同様の効果がしっかりと認められたらメトホルミンは世界初の「寿命を延ばす薬」になるかもしれません。

Ⅶ.動脈硬化を防ぐ

メトホルミンは糖尿病の治療薬ですが、最近の研究では動脈硬化を防ぐ効果があることも示されています。

血管壁を傷付ける原因となるMDA-LDL(マロンジアルデヒドLDL)を有意に低下させることが報告されています。

4.メトホルミンの副作用

メトホルミンは副作用に注意が必要なお薬です。副作用の頻度自体も多いのですが、ちゃんと使い方を守らないと重篤な副作用が出てしまうこともあります。

メトホルミンはジェネリックであるため、副作用発生率の明確な調査は行われていません。しかし先発品のメトグルコにおいては副作用の発生率は、10~60%前後と報告されており、メトホルミンもこれと同じ程度だと考えてよいでしょう。副作用は多めのお薬となっています。

生じうる副作用としては、

  • 下痢
  • 腹痛
  • 食欲不振
  • 悪心、嘔吐
  • 発熱

などで、ほとんどが消化管系の副作用になります。あまりに症状がひどい場合は減量あるいは中止となりますが、症状が軽度であればそのまま様子をみることもあります。

またメトホルミンは注意点をよく守らないと時に重篤な副作用を起こすことがあります。

メトホルミンで特に注意すべきなのは、乳酸アシドーシスです。しかし日本における乳酸アシドーシスの頻度は10万人に1人程度と報告されており、極めて稀です。乳酸アシドーシスは死亡率が50%とも言われているため、絶対に起こさないよう注意して使用する必要があります。

特に肝機能・腎機能の悪い方、心臓・肺が悪い方、高齢者、脱水が疑われる方では乳酸アシドーシスを起こしやすいためメトホルミンを使っても大丈夫か慎重に判断しなくてはいけません。

実際、乳酸アシドーシスを発症したケースのほとんどが、このような本来メトホルミンを投与すべきでない人に投与されていた事が確認されています。

またそれ以外にも

  • 低血糖
  • 肝機能障害
  • 横紋筋融解症

などが生じる可能性が稀ながらあります。

メトホルミンは、投与してはいけない方がいます。下記に該当する方は乳酸アシドーシスのリスクが高くなるためメトホルミンを服用できませんので、該当しないかどうか注意しましょう。

  • 乳酸アシドーシスになったことのある方
  • 肝臓に障害のある方(重度以上)
  • 腎臓に障害のある方(中等度以上)
  • 心機能に障害のある方
  • 重篤な肺疾患がある方
  • アルコール多飲者
  • 脱水の方
  • 妊婦

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5.メトホルミンの用法・用量と剤形

メトホルミンは、

メトホルミン錠 250mg
メトホルミン錠 500mg

の2剤があります。

メトホルミンの使い方は、

<成人>
通常、成人には1日500mgより開始し、1日2~3回に分割して食前又は食後に経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、通常1日750mg~1,500mgとする。なお患者の状態により適宜増減するが、1日最高投与量は2,250mgまでとする。

<小児>
通常、10歳以上の小児には1日500mgより開始し、1日2~3回に分割して食前又は食後に経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、通常1日500mg~1,500mgとする。なお患者の状態により適宜増減するが、1日最高投与量は2,000mgまでとする。

となっています。

メトホルミンは用量依存的に血糖を下げると言われています。これはつまり「量を増やしたら増やしただけ血糖が下がる」という事です。副作用の問題もあるため、安易にどんどん増やせるお薬ではありませんが、自分にとっての最適な量を主治医とともに慎重に判断していきましょう。

血糖を下げる作用もしっかりしており、非常にざっくりした言い方ですが、血糖の平均値であるHba1cをおおよそ1前後下げることが出来ます。

6.メトホルミンが向いている人は?

以上から考えて、メトホルミンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

メトホルミンの特徴をおさらいすると、

・ビグアナイド剤に属するお薬である
・血液中から末梢組織(筋肉や脂肪など)へ糖を移動させる
・肝臓にある貯蔵されている糖の分解を抑える
・小腸からの糖の吸収を抑制する
・意外な作用として、抗ガン作用、アンチエイジング作用がある
・古いお薬であり、注意すべき副作用は多い
(ただし、しっかりと適応を守って使用すれば十分安全)
・ジェネリック医薬品であり、薬価が安い

というものでした。

メトホルミンは古いお薬ですが、適応を間違えなければ安全に、そしてしっかりと血糖を下げてくれるお薬です。また抗がん作用やアンチエイジング作用も報告されており、服用するメリットが高いお薬になります。

肝臓、腎臓や心臓・肺などが悪い方や高齢者の方は使用を慎重に判断する必要がありますが、メトホルミンを使っても問題のない方であれば、ある程度積極的に使用しても良いお薬でしょう。

ただしこのお薬へのある程度の知識は必要です。例えば脱水時は乳酸アシドーシスのリスクが上がることなどは服用者は必ず知っておかなくてはいけないでしょう。

例えばメトホルミン服用中の方が、風邪や胃腸炎などにかかってしまって脱水状態になってしまった時、状況によってはメトホルミンを中止した方がよい場合もあるからです。

7.先発品と後発品は本当に効果は同じなのか?

メトホルミンは「メトグルコ」というお薬のジェネリック医薬品になります。

ジェネリックは薬価も安く、剤型も工夫されているものが多く患者さんにとってメリットが多いように見えます。

しかし「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」とジェネリックへの切り替えを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。

ジェネリックは、先発品と比べて本当に遜色はないのでしょうか。

結論から言ってしまうと、先発品(メトグルコ)とジェネリック(メトホルミン)はほぼ同じ効果・効能だと考えて問題ありません。

ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。

発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、

ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。

しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば飲み心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。

これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。この多少の違いが人によっては大きく感じられることもあるため、ジェネリックに変えてから調子が悪いという方は先発品に戻すのも1つの方法になります。

では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。

先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから実は発売までに莫大な費用が掛かっています。有効成分を探す開発費用、そしてそこから動物実験やヒトにおける臨床試験などで効果を確認するための研究費用など、お薬を1つ作るのには実は莫大な費用がかかるのです(製薬会社さんに聞いたところ、数百億という規模のお金がかかるそうです)。

しかしジェネリックは、発売に当たって先ほども説明した「生物学的同等性試験」はしますが、有効成分を改めて探す必要もありませんし、先発品がすでにしている研究においては重複して何度も同じ試験をやる必要はありません。

先発品と後発品は研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてそれが薬価の差になっているのです。

つまりジェネリック医薬品の薬価は莫大な研究開発費がかかっていない分が差し引かれており先発品よりも安くなっているということで、決して品質の差が薬価の差になっているわけではありません。

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