セイブル錠・セイブルOD錠(ミグリトール)の効果と副作用

セイブル(一般名:ミグリトール)は2006年から発売されているお薬で、糖尿病の治療薬として用いられています。

糖尿病治療薬にもたくさんの種類がありますが、その中でセイブルは「αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)」という種類に属します。

この種類のお薬は、食物中の糖分が腸から吸収されるのを抑えるお薬であり、この作用から血糖の上昇を抑えて糖尿病を改善させるはたらきがあります。

糖尿病治療をしている患者さんは多いですが、糖尿病治療薬にはたくさんの種類があり、それぞれがどんなはたらきを持つお薬なのかは分かりにくいものです。

糖尿病治療薬の中でセイブルはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここでは、セイブルの効能や特徴、副作用などを紹介していきます。

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1.セイブル錠・OD錠の特徴

まずはセイブルの特徴を紹介します。

セイブルは、食事に含まれる糖分が腸から体内に吸収される時に、吸収をゆっくりにすることで血糖を上げにくくします。

セイブルをはじめとしたαグルコシダーゼ阻害薬(αGI)は、この「腸管からの糖分の吸収をゆるやかにする」という作用機序を持ち、これにより血糖の上昇をゆるやかにして糖尿病を改善させます。

時々、セイブルのようなお薬を「腸管から糖分を吸収させなくする」お薬だと勘違いしている人がおり、「これは痩せ薬になる!」とダイエット目的で処方を希望される人がいますが、あくまでも吸収を緩やかにするだけで時間をかけて結局はゆっくりと吸収されます。

体内に吸収される総カロリーを減らすわけではありませんので、当然痩せ薬にもなりません。くれぐれもダイエット目的で入手しようとしないようにお願いします。

その効きは穏やかであり、劇的な血糖改善作用はありませんが、安全性に優れるお薬です。

血糖を下げる糖尿病治療薬は、時に血糖を下げ過ぎてしまって「低血糖」にしてしまう危険があります。極度の低血糖になると意識を失ったり場合によっては命の危険もあります。しかしセイブルはそのような副作用を起こす心配はまずありません。そもそも糖分の吸収を穏やかにするという作用であり、血糖を下げる作用ではないためです。

αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)にも何種類かお薬があります。どれも大きな差はないのですが、強いて差を挙げると、

【ベイスン(ボグリボース)】
・保険上、唯一糖尿病の予防にも投与できる
・もっとも穏やかに効き、副作用も少なめ
・ほとんど体内に吸収されないため妊婦に唯一使えるαGI

【グルコバイ(アカルボース)】
・αグルコシダーゼ以外にαアミラーゼも阻害するため作用も副作用も多い。
・他剤と比べて便秘が多い

【セイブル(ミグリトール)】
・体内に多少吸収されるため、肝機能障害・腎機能障害が他剤と比べてやや起きやすい
・他剤より即効性に優れ、食後すぐ(1時間)の血糖上昇を抑える作用に優れる
・効果はαGIの中でもっとも強いと言われる
・他αGIと比べて下痢が多い

といったことが挙げられます。

以上からセイブルの特徴として次のような点が挙げられます。

【セイブル(ミグリトール)の特徴】

・腸管から糖分が吸収されるスピードをゆるやかにする
・糖尿病を改善する効果は弱めだが、αGIの中では強い
・副作用は少ないが、αGIの中では多め
・αGIの中でも下痢の副作用が多め

2.セイブル錠・OD錠はどんな疾患に用いるのか

セイブルはどのような疾患に用いられるのでしょうか。セイブルの添付文書には、次のように記載されています(2015年8月現在)。

【効能又は効果】

糖尿病の食後過血糖の改善

セイブルは、腸管から糖分が吸収されるスピードをゆるやかにするお薬ですので、糖尿病の中でも特に食後の血糖が高い患者さんに向いたお薬です。食後高血糖を改善させることにより糖尿病の改善も得られることが確認されています。

【効果又は効能】には但し書きとして次のようにも書かれています。

ただし、食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合、または食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア剤、ビグアナイド系薬剤もしくはインスリン製剤を使用している患者で十分な改善が得られない場合に限る

この但し書きの意味は、「いきなりお薬を始めるのではなく、まずは食事の改善、運動習慣の改善を行って、それでもダメならお薬を考えて下さい」という意味になります。

どんなお薬でもそうですが、いきなりお薬を考えるのではなく、まずは生活習慣の見直しから行うことを忘れてはいけません。

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3.セイブル錠・OD錠にはどのような作用があるのか

セイブルの主な作用について紹介します。

Ⅰ.食後高血糖改善作用

セイブルは、主に糖尿病の治療薬として用いられています。糖尿病はその名の通り、血液中の血糖が高くなりすぎてしまう疾患です。

血糖が高くなり過ぎると何が問題なのでしょうか。

糖分は身体が活動するためのエネルギーとして大切な栄養素ですが、多すぎると身体に毒となります。

具体的には血管を痛めて、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めたり、腎臓や眼、神経といった身体の諸臓器を傷付けて腎不全や白内障、神経障害などを引き起こします。

高血糖が続くと全身の臓器の障害はゆるやかに進行していきます。最初は自覚症状もないため危機感を感じにくいのですが、数年~数十年かけてジワジワと身体を傷付けていきます。

困ったことにこの高血糖によって生じた臓器障害は、いくら血糖を改善させても元に戻らないものが多いのです。例えば糖尿病によって白内障になってしまったら、それを治すためには手術をするしかありません。腎障害が出現して透析になったら、その後はほぼ一生透析のお世話にならないといけません。

そうならないためには、血糖を正常値にとどめておく必要があるのです。セイブルはそのために役立つお薬になります。

では、セイブルはどのように糖尿病を改善させるのでしょうか。

その主な作用は小腸の粘膜上皮に存在する「αグルコシダーゼ」という酵素のはたらきをジャマする(ブロックする)ことです。

αグルコシダーゼには「スクラーゼ」「ラクターゼ」「マルターゼ」「イソマルターゼ」などいくつかの種類があり、これらは摂取した様々な糖分を分解するはたらきがあります。糖分は大きいままでは体内に吸収できないため、αグルコシダーゼが吸収できる大きさにまで分解してくれるのです。

ちなみにセイブルはαGIの中でも多くのαグルコシダーゼを阻害する作用を持っており、これもセイブルが効果が高い1つに理由だと思われます。

<阻害する主な酵素>
セイブル:スクラーゼ、マルターゼ、イソマルターゼ、ラクターゼ、トレハラーゼ
ベイスン:スクラーゼ、マルターゼ
グルコバイ:スクラーゼ、マルターゼ.(他にαアミラーゼ、グルコアミラーゼも阻害する)

セイブルによってこれらの酵素のはたらきがブロックされてしまうと、糖質が分解されなくなるため、吸収しにくくなり吸収がゆっくりになるのです。

しかし全く吸収されなくなる、というわけではありません。セイブルの薬効がなくなるにつれて、αグルコシダーゼのはたらきは再び活性化するため、糖分が吸収されるようになります。

セイブルの作用時間は約3時間ほどとされており、薬効が弱まり消失すれば糖分はまた吸収されていきます。そのため、セイブルはあくまでも糖分の吸収を「ゆるやかにする」お薬であって、糖分の吸収を「しなくなる」お薬ではありません。

しかしセイブルのはたらきで糖分が吸収されにくくなると、食後の血糖の上昇も緩やかになり、これは糖尿病の改善につながるのです。

Ⅱ.脂質改善作用

セイブルをはじめとしたαGIは、糖代謝を改善することにより副次的にコレステロール値の改善も軽度得られることが確認されています。

あくまでも副次的な効果です同種のαGIであるベイスン(ボグリボース)には、

・中性脂肪(TG)を下げる
・善玉(HDL)コレステロールを上げる

といった効果が報告されており、セイブルにも同様の効果があることが推測できます。

Ⅲ.心筋梗塞巣の縮小

またセイブルの意外な作用として、「心筋梗塞が生じた時の被害を小さくする」という作用があります。これはセイブルがアミロ-1,6-グルコシダーゼという酵素を阻害し、それにより心筋梗塞部位のグリコーゲンの分解や乳酸の蓄積を抑制するからではないかと考えられています。

しかしセイブルは腸管に作用するお薬ですので、そこまで多く血中に移行しないこともあり、糖尿病治療として用いられる用量では、この作用を十分に得るには少ないようです。あくまでも「セイブルをより高用量で使うとこういう作用もあるらしいよ」という豆知識になります。

4.セイブル錠・OD錠の副作用

セイブルにはどんな副作用があるのでしょうか。

基本的にセイブルをはじめとしたαグルコシダーゼ阻害薬は安全性が高く、重篤な副作用はほとんどありません。しかし副作用自体がないわけではありません。

セイブルで生じる副作用は、ほとんどが胃腸系の副作用であり、

・鼓張(腹部膨満)
・下痢
・放屁

などが認められます。これはセイブルが腸管内に存在する糖分の分解酵素をブロックするため、未消化の糖分が腸内細菌によって分解・発酵される結果生じると考えられています。

また、特に他の糖尿病治療薬と併用することで

・低血糖

を起こすこともありますが、セイブル単剤ではあまり起こしません。セイブルで低血糖が生じたとしても自覚症状を認めない程度のものがほとんどで、重篤になることは稀です。

セイブルはαGIの中では効果は強いのですが、副作用もやや多めです。下痢を起こす頻度が比較的多く、また体内に吸収される比率が高いため、肝機能障害や腎機能障害に注意する必要があります。

なお、セイブルは妊婦への安全性は確立されていないため、妊娠中の方は服薬することができません。

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5.セイブル錠・OD錠の用法・用量と剤形

セイブルは次の剤型が発売されています。

セイブル錠(ミグリトール) 25mg
セイブル錠(ミグリトール) 50mg
セイブル錠(ミグリトール) 75mg

セイブルOD錠(ミグリトール) 50mg
セイブルOD錠(ミグリトール) 75mg

の計5剤型(錠剤3つ、OD錠2つ)が販売されています。

ちなみにOD錠というのは「口腔内崩壊錠」のことで、唾液に反応して溶けるタイプのお薬のことです。錠剤と違って水なしでも飲めるため、外出先で服薬することが多い方や、粒を飲み込む力が弱くなっている高齢者などに向いている錠形になります。

セイブルの使い方は、

通常成人には、1日50mgを1日3回毎食直前に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら1回量を75mgまで増量することができる。

と書かれています。

セイブルの使い方の注意として、食事に含まれる糖分の吸収を抑えるお薬ですから、食前に服薬しないといけません。多くのお薬は食後に服薬するため、ここは間違えないように気を付けてください。

ただし、万が一食べる前に服薬を忘れてしまった場合は、食後すぐであればある程度の効果が得られると考えられます。食事中や食後に服薬することで害があるわけではありませんので、食後すぐに飲み忘れに気付いた場合は、急いで服薬した方が良いでしょう。

6.セイブルが向いている人は?

セイブルはどのような時に検討されるお薬なのでしょうか。

セイブルをはじめとしたαGIは糖尿病に対する効果の強さは弱いものの、安全性に優れるお薬です。また血糖を下げるというよりは、食後の血糖の上昇をゆるやかにするお薬ですので、糖尿病の中でも特に「食後高血糖」を指摘されている患者さんにも向いているでしょう。

αGIの中では、下痢の頻度が比較的多いため、元々お腹がゆるくなりやすい方は、別のαグルコシダーゼ阻害薬(商品名:グルコバイ、ベイスンなど)を試してみてもいいかもしれません。

またαGIの中では即効性があるため、食後すぐに血糖が上昇する傾向のある方にも良いでしょう。これは経口ブドウ糖負荷試験といった検査を行い、食後の血糖の推移を見ることで分かります。

αGIは効果が弱いからといって必ずにも「軽症」に用いるわけではありません。αGIの機序である「食後の血糖上昇をゆるやかにする」といった作用に沿って、主に食後の高血糖が目立つ糖尿病患者さんに使うと良いお薬です。

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