ピコスルファートナトリウムの効果と副作用

ピコスルファートナトリウム液・ピコスルファートナトリウム錠は下剤になります。ピコスルファートナトリウムはジェネリック医薬品であり、1980年から発売されている「ラキソベロン」のジェネリックになります。

古いお薬ですが、ピコスルファートナトリウムは安全性が高い割にしっかりとした排便効果を得られる下剤であるため、現在でも広く用いられています。

しかし便秘にもいくつかのタイプがあり、それぞれに適した下剤は異なります。ピコスルファートナトリウムが向いている便秘もあれば、あまり向いていない便秘もあるのです。

ピコスルファートナトリウムはどんな特徴のある便秘薬で、どんな患者さんに向いているお薬なのでしょうか。

ピコスルファートナトリウム液・ピコスルファートナトリウム錠の効果や特徴についてみていきましょう。

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1.ピコスルファートナトリウムの特徴

まずはピコスルファートナトリウムというお薬の特徴についてみてみましょう。

ピコスルファートナトリウムは下剤ですが、その中でも「大腸刺激性下剤」という種類に属します。この種類の下剤は、文字通り主に大腸を刺激することで排便を促します。

お薬で便を出す方法としては、いくつかの方法があります。代表的な方法としては、

・便の水分を多くすることで便を柔らかくして出す
・大腸を動かすことで出す

の2つがあります。

ピコスルファートナトリウムはこの両方の作用を有することで排便を促す作用を持っています。主な作用としては大腸を刺激する事で大腸の動きを活性化させ、排便を促すという作用であり、そのためピコスルファートナトリウムは「大腸刺激性下剤」に属してはいますが、実はそれ以外にも腸管から体内に水分が吸収されるをのを防ぐ作用も持っています。

腸管から水分が体内に吸収されなければ、便に水分が多く含まれるため便が柔らかくなり、排便しやすくなるということです。

つまり、ピコスルファートナトリウムは大腸の動きが低下して便秘になっている方に向いている下剤ではありますが、便が硬くなっている方にもある程度の効果が期待できる下剤でもあり、様々なタイプの便秘症の方に幅広く使うことができる下剤になります。

また、ピコスルファートナトリウムは腸管から体内にほとんど吸収されないという特徴を持つため、妊婦さんや小児にも使うことができ、安全性も高いお薬です。同じ大腸刺激性下剤でもプルゼニド(センノシド)やアローゼン(センナ・センナ実)は妊婦さんには使えませんので、これらよりも安全性は高いといえるでしょう。

注意点としては、大腸を刺激して動かす事で排便を促すという大腸刺激性下剤は確実な排便を期待できる反面で、大腸が次第に刺激に慣れてきてしまうという問題があります。大腸への刺激を慢性的に続けていると、次第に大腸は刺激に反応しなくなり、必要なピコスルファートナトリウムの量がどんどんと増えてしまいます。これを「耐性が生じる」と言います。

ピコスルファートナトリウムは、大腸刺激だけでなく、腸管からの水分吸収作用も持つため、その分耐性形成は他の大腸刺激薬と比べると少ないのですが、耐性が生じる可能性はあるお薬です。

また、これは多くの下剤に当てはまることなのですが、ピコスルファートナトリウムは薬価がかなり安いのもメリットです。下剤は元々薬価が安いものが多いのですが、ジェネリック医薬品であるピコスルファートナトリウムは更に安価になっており、薬局で購入する下剤と比べると非常に安価になります。

ここからピコスルファートナトリウムの特徴として次のようなことが挙げられます。

【ピコスルファートナトリウムの特徴】

・主に大腸を刺激することで排便を促す
・腸管からの水分吸収を阻害することで排便を促す作用もある
・2つの作用を持つため、幅広いタイプの便秘症に効果がある
・安全性が高く、小児・妊婦にも使用できる
・慢性的に使うと耐性(慣れ)が生じて効きにくくなる(他の大腸刺激薬よりは軽度)
・薬価が非常に安い

2.ピコスルファートナトリウムはどんな疾患に用いるのか

ピコスルファートナトリウムはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

各種便秘症
術後排便補助
造影剤投与後排便促進

(以下は液剤のみ)
大腸検査前の腸内容物排除
術前の腸内容物排除

ピコスルファートナトリウムは下剤であり、使用する主な疾患はやはり「便秘症」になります。

ピコスルファートナトリウムは下剤の中でも大腸刺激性下剤に属します。大腸刺激性下剤は大腸を刺激することで大腸の動きを活性化させます。大腸が活発に動くようになれば、便は排出されやすくなりますから、便秘症に効果があるというわけです。そのため大腸刺激性下剤は、腸管の動きが悪くなっているタイプの便秘に良く効きます。

腸管の動きが悪いために生じる便秘を専門的には「弛緩性便秘」と呼びます。つまりピコスルファートナトリウムは便秘症の中でも、特に弛緩性便秘に効果的な下剤だと言えます。

腸管の動きが悪くなるというのは、具体的には

・高齢(加齢によって腸管の動きが悪くなる)
・運動不足・寝たきり
・お薬の副作用

などの原因があります。

また、ピコスルファートナトリウムは大腸刺激作用の他にも、腸管から身体に水分が吸収されるのを防ぐはたらきも有し、これによって便に含まれる水分が多くなり、便を柔らかくするという作用もあります。

これは食生活のかたよりや食物繊維不足・水分不足などで、便が硬くなって便秘になっている患者さんに効果があります。

このようにピコスルファートナトリウムは、主に弛緩性便秘に効果を発揮しますが、それ以外の便秘にも効果が期待できる下剤なのです。

ちなみに、便秘症以外の適応も色々書いていますが、これは医療行為の都合状、排便をさせたい時という事になります。例えば、手術時は腸管の中に何も入っていない方が安全ですので、なるべく腸管を空にさせる必要があります。大腸の内視鏡検査をする場合も、できるだけ腸内を空にしておかないと、カメラを入れても便で何も見えなくなってしまいます。

このような時にピコスルファートナトリウムは確実な排便効果が期待できるため、手術や処置施行前後に服用することがあるのです。

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3.ピコスルファートナトリウムの作用機序

便秘症に対して用いられるピコスルファートナトリウムですが、どのような機序で便秘を改善させているのでしょうか。

ピコスルファートナトリウムの特徴は、大腸に選択的に作用する点です。これは逆に言えば大腸以外の部位には作用しにくく、効かせたいところにだけピンポイントで効くのが特徴になります。口から飲み込まれたピコスルファートナトリウムは、食道、胃、十二指腸、小腸を経て大腸に到達しますが、大腸に到達するまでにほとんど作用しません。

大腸に到達するとピコスルファートナトリウムは下剤としての効果を発揮します。具体的には大腸に常在している腸内細菌が分泌しているアリルスルファターゼという酵素によってピコスルファートナトリウムは分解(加水分解)されます。これによりピコスルファートナトリウムは活性型ジフェノール体になります。

活性型ジフェノール体には、

・腸管の動きを促進する
・腸管から身体に水分が吸収されるのを阻害する

といったはたらきがあることが確認されており、これが下剤としての作用となると考えられています。

ここで注意しなくてはいけないのは、ピコスルファートナトリウムのはたらきは腸内細菌の力を借りているということです。実際、腸内細菌を駆除した無菌ラットにピコスルファートナトリウムを投与したところ、下剤としての作用が得られなかったという報告があります。

つまり抗生剤などを服薬している時は、腸内細菌が駆除されてしまい、ピコスルファートナトリウムの効果が得られなくなることがあるという事です。

抗生剤服薬をする場合、ピコスルファートナトリウムを使っている方はピコスルファートナトリウムの効きが悪くなり便秘が悪化する可能性がありますので、事前に主治医によく相談しておきましょう。

4.ピコスルファートナトリウムの副作用

ピコスルファートナトリウムにはどんな副作用があるのでしょうか。

基本的にピコスルファートナトリウムは安全性が高く、重篤な副作用はほとんどありません。しかし副作用自体がないわけではありません。

ピコスルファートナトリウムは腸管に作用して体内にはほとんど吸収されないため、生じる副作用もほとんどが胃腸系の副作用になります。

具体的には、

・腹痛
・下痢
・腹鳴
・悪心・嘔吐
・肛門痛

などが報告されています。いずれもピコスルファートナトリウムが腸管の動きを活性化した結果生じる副作用だと考えられます。

稀ですが、重篤な副作用としては、

・腸閉塞(詰まってしまったりして腸が動かなくなってしまう)
・腸管穿孔(腸に穴が開いてしまう)
・虚血性大腸炎

などがあります。これらの副作用はかなり稀であり、適正に使用している限り遭遇することは滅多にありません。

また急性腹症の方や腸管の閉塞の疑いがある方には基本的にはピコスルファートナトリウムを投与することは禁忌(絶対にダメ)になっています。

急性腹症は胃腸系に何らかの障害が生じて腹痛などを生じている状態であり、この時にピコスルファートナトリウムで腸管の動きを促進してしまうと症状を増悪させてしまう危険があります。

また腸閉塞は腸が詰まったりすることで動かなくなっている状態です。この状態でピコスルファートナトリウムで無理矢理腸管を動かしてしまうと、腸内圧が上がって最悪の場合は腸管が破裂してしまうこともあり、大変に危険です。

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5.ピコスルファートナトリウムの用法・用量と剤形

ピコスルファートナトリウムは、

ピコスルファートナトリウム内用液0.75% 10ml
ピコスルファートナトリウム内用液0.75% 100ml

ピコスルファートナトリウム錠 2.5mg

の3剤形(内用液2剤型、錠剤1剤形)があります。

液剤の方が処方される事が多く、これは内服量を細かく調整できるメリットのためだと思われます。

ピコスルファートナトリウムは各種便秘症に対しては、

成人であれば、1日1回10~15滴(ピコスルファートナトリウム錠なら2~3錠)を経口投与します。小児ではより少ない量で用いられます。

7か月以下 1日1回2滴
7~12か月 1日1回3滴
1~3歳   1日1回6滴
4~6歳   1日1回7滴
7~15歳  1日1回10滴(ピコスルファートナトリウム錠なら2錠)

ただし効き具合によって、主治医と相談の上、適宜増減することは可能です。

ピコスルファートナトリウム液は1滴の量が0.067ml程度だと言われています。押し出す力によって滴下される量は多少異なってくるため、これはあくまでも目安になりますが、15滴で約1mlですので、ピコスルファートナトリウム含有量としては約7.5mgになります。

だいたいの換算としては、ピコスルファートナトリウム液15滴がピコスルファートナトリウム錠3錠、つまりピコスルファートナトリウム液5滴とピコスルファートナトリウム錠1錠が同等くらい、と考えると良いと思います。

各種便秘症以外の用法(術前や大腸検査施行前など)については、担当医の指示通りに服薬していただくことになるため、ここでは割愛します。ピコスルファートナトリウムの添付文書に記載されていますので、そちらをご覧ください。添付文書はネット上で見ることが出来ます。

6.ピコスルファートナトリウムの作用時間

ピコスルファートナトリウムは、1回服薬すると7~12時間後に効果が出てくると考えられています。もちろん個人差はありますので、必ず7~12時間後に排便できるというわけではありませんが、最初はこの時間を目安にして投与時間を考えるとよいでしょう。

一般的には就寝前(寝る前)に服薬することが多く、これにより朝起床後に排便することを狙います。しかし絶対にこうしなくてはいけないというわけではありません。この用法で上手くいかない場合は、別の時間に服薬しても問題ありません。

例えば、効果が出るのが12時間後だということであれば、夕食後に服薬して、翌朝起床後に排便が出ることを狙ってもいいですし、効果が6時間後に出るという方であれば、朝食後に服薬して昼過ぎに排便が出ることを狙っても良いでしょう。

ただし昼や夕方に服薬してしまうと、夜中に便意を感じて睡眠が中断されてしまう可能性がありますので、注意しましょう。

7.ピコスルファートナトリウムが向いている人は?

以上から考えて、ピコスルファートナトリウムが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ピコスルファートナトリウムの特徴をおさらいすると、

・主に大腸を刺激することで排便を促す
・腸管からの水分吸収を阻害することで排便を促す作用もある
・2つの作用を持つため、幅広いタイプの便秘症に効果がある
・安全性が高く、小児・妊婦にも使用できる
・慢性的に使うと耐性(慣れ)が生じて効きにくくなる(他の大腸刺激薬よりは軽度)
・薬価が非常に安い

というものでした。

ピコスルファートナトリウムは、幅広いタイプの便秘に対して、しっかりとした効果が期待できます。また安全性も高いため、あらゆる便秘に対して、検討できる下剤だと言っても良いでしょう。

特に小児や妊婦の方にも使いやすい下剤ですので、小さい子供が便秘になってしまったり、妊婦さんが便秘になってしまった場合にはよく用いられます。

しかしピコスルファートナトリウムには弱いながらも耐性が生じる可能性があることも忘れてはいけません。つまり、慢性的に使いそうな方に対しては安易に投与し続けて良いものではないということです。ピコスルファートナトリウムを使用しながらも、排便に良いと思われる生活習慣の改善(運動、食生活の是正など)は並行して行っていきましょう。

7.先発品と後発品は本当に効果は同じなのか?

ピコスルファートナトリウムは「ラキソベロン」という下剤のジェネリック医薬品になります。

ジェネリックは薬価も安く、剤型も工夫されているものが多く患者さんにとってメリットが多いように見えます。

しかし「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」とジェネリックへの切り替えを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。

ピコスルファートナトリウムというジェネリックは、ラキソベロンと比べて本当に遜色はないのでしょうか。

結論から言ってしまうと、先発品(ラキソベロン)とジェネリック(ピコスルファートナトリウム)は同じ効果・効能だと考えて問題ありません。

ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。

発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、

ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。

しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば飲み心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。

これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。この多少の違いが人によっては大きく感じられることもあるため、ジェネリックに変えてから調子が悪いという方は先発品に戻すのも1つの方法になります。

では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。

先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから、実は発売までに莫大な費用が掛かっています。有効成分を探す開発費用、そしてそこから動物実験やヒトにおける臨床試験などで効果を確認するための研究費用など、お薬を1つ作るのには実は莫大な費用がかかるのです(製薬会社さんに聞いたところ、数百億という規模のお金がかかるそうです)。

しかしジェネリックは、発売に当たって先ほども説明した「生物学的同等性試験」はしますが、有効成分を改めて探す必要もありませんし、先発品がすでにしている研究においては重複して何度も同じ試験をやる必要はありません。

先発品と後発品は研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてそれが薬価の差になっているのです。

つまりジェネリック医薬品は莫大な研究開発費がかかっていないため、その分が差し引かれており、先発品よりも安くなっているということで、決して品質の差が薬価の差になっているわけではありません。

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