ピレチアの効果と副作用

ピレチア(一般名:プロメタジン塩酸塩)は1955年から発売されているお薬です。

ピレチアは、主にアレルギーを抑える作用とパーキンソン症状を抑える作用、制吐作用(吐き気を抑える作用)の3つの作用を持つお薬になります。複数の作用を持つため幅広く使えますが、一方で古いお薬であり副作用も多いため注意が必要です。

ピレチアはヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状を抑えるため「抗ヒスタミン薬」と呼ばれることもあります。またアセチルコリンのはたらきをブロックする事でパーキンソン症状を抑えるため「抗コリン薬」と呼ばれる事もあります。

ピレチアはどのような特徴のあるお薬で、どんな作用を持っているお薬なのでしょうか。

ピレチアの効果や特徴・副作用についてみていきましょう。

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1.ピレチアの特徴

まずはピレチアの全体的な特徴についてみてみましょう。

ピレチアはヒスタミンのはたらきをブロックすることでアレルギー症状を抑えます。またアセチルコリンをブロックする作用もあり、これによりパーキンソン症状を改善させるはたらきもあります。更に吐き気やめまいを抑える作用もあります。

鎮静させる力が強く、精神科領域で良く用いられます。

古いお薬で副作用が多いため、現在では最初から用いる事はあまりありません。

ヒスタミンはアレルギーを誘発する原因となる物質(ケミカルメディエーター)です。そのため、このヒスタミンのはたらきをブロックできればアレルギー症状を改善させることができます。それを狙っているのがピレチアをはじめとした「抗ヒスタミン薬」になります。

抗ヒスタミン薬には古い第1世代抗ヒスタミン薬と、比較的新しい第2世代抗ヒスタミン薬があります。第1世代は効果は良いのですが眠気などの副作用が多く、第2世代は効果もしっかりしていて眠気などの副作用も少なくなっています。

この違いは第1世代は脂溶性(脂に溶ける性質)が高いため脳に移行しやすく、第2世代は脂溶性が低いため脳に移行しにくいためだと考えられています。また第2世代の方がヒスタミンにのみ集中的に作用するため、余計な部位への作用が少なく、これも副作用を低下させる理由となっています。

そのため、現在では副作用が少ない第2世代から使用するのが一般的です。

ピレチアはというと第1世代の抗ヒスタミン薬になります。今となっては古い抗アレルギー薬になるため、現在では最初から用いることはあまり推奨されていません。

またアセチルコリンはドーパミンと拮抗する物質です。アセチルコリンを減らすと相対的にドーパミンのはたらきが強まり、反対にドーパミンを減らすと相対的にアセチルコリンのはたらきが強まります。

ピレチアはアセチルコリンのはたらきをブロックする作用があり、これにより相対的にドーパミンのはたらきを強める作用があります。

パーキンソン病やパーキンソン症候群(パーキンソニズム)は、脳のドーパミンが減少する事で生じます。ピレチアのようなアセチルコリンのはたらきをブロックするお薬は、相対的にドーパミンの作用を強めるため、このような病態に効果があります。

また詳しい機序は不明ですが、ピレチアには吐き気やめまいを抑える作用もあります。

その他のピレチアの特徴としては鎮静力が強い点が挙げられます。これは眠気やだるさの副作用として問題になる事もありますが、逆に不眠や興奮の方には良い作用になる事もあります。

副作用としては眠気に注意が必要です。またアセチルコリンのはたらきをブロックする事で生じる「抗コリン症状」にも気を付けないといけません。代表的な抗コリン症状としては、口渇(口の渇き)、便秘、尿閉(尿が出にくくなる)などがあります。

以上から、ピレチアの特徴として次のようなことが挙げられます。

【ピレチアの特徴】

・花粉症や蕁麻疹などのアレルギー症状を抑える
・パーキンソン症状を改善させる
・吐き気やめまいを抑える
・鎮静力が強く、眠気やだるさがおきやすい
・古い第1世代抗ヒスタミン薬であり、副作用が多め
・眠気、抗コリン症状に注意

2.ピレチアはどのような疾患に用いるのか

ピレチアはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

1.振戦麻痺、パーキンソニスム
2.麻酔前投薬、人工(薬物)冬眠
3.感冒等上気道炎に伴うくしゃみ・鼻汁・咳嗽
4.アレルギー性鼻炎、枯草熱、血管運動性浮腫
5.皮膚疾患に伴うそう痒(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、薬疹、中毒疹)、蕁麻疹
6.動揺病

難しい病名がたくさん書かれていますが、基本的にはピレチアの持つ

  • 抗ヒスタミン作用(アレルギー症状を抑える)
  • 抗コリン作用(パーキンソン症状を改善)
  • 制吐作用、抗めまい作用

のいずれかの作用を期待した投与です。

1.は抗コリン作用を期待した投与になります。アセチルコリンのはたらきをブロックすると相対的にドーパミンの量が増えるため、パーキンソン症状の改善が得られます。

パーキンソン病やパーキンソン症候群(パーキンソニズム)は中脳のドーパミンの減少が原因であるため、抗コリン薬が効くのです。

3.4.5.は抗ヒスタミン作用を期待した投与です。

アレルギーを誘発する物質(ケミカルメディエーター)の1つであるヒスタミンのはたらきをブロックする事で、アレルギー症状の改善が得られます。

アレルギーで生じる疾患として代表的なものには、アレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症など)やじんましんなどがあります。ちなみに「枯草熱」という病名はあまり聞きなれないものですが、これは花粉症のことです。

また感冒(いわゆる風邪)に伴って生じる鼻水も、抗アレルギー薬によって多少の改善が得られます。

2.はピレチアの持つ鎮静力を利用した投与です。ピレチアは抗ヒスタミン作用などにより、眠気を生じることがあります。眠気は副作用として困る事もありますが、逆手に取れば患者さんを眠らせてあげたいときに使えます。

しかし現在は麻酔前投薬としてピレチアを使う事はほとんどありません。

6.はピレチアの吐き気・めまいを抑える作用を期待した投与です。動揺病というのはいわゆる「乗り物酔い」の事です。ピレチアは制吐作用・抗めまい作用があるため、乗り物酔いに対しても投与する事ができます。

ピレチアの有効性については、

  • パーキンソニズムへの有効率は41.7%
  • 感冒に伴う鼻汁への有効率は73.4%
  • アレルギー性鼻炎への有効率は79.5%
  • 枯草熱への有効率は92.2%
  • 皮膚疾患に伴うそう痒への有効率は80.0%
  • 蕁麻疹への有効率は92.0%

という結果が出ています。

臨床的な印象としてもピレチアの効果はしっかりとしています。しかし第1世代であるピレチアは眠気などの副作用も多く、現在では最初から積極的に使われる位置づけのお薬ではありません。

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3.ピレチアにはどのような作用があるのか

ピレチアはどのような作用機序によってアレルギーを抑えたり、パーキンソン症状を改善させたり、吐き気を抑えてくれるのでしょうか。

ピレチアの作用について詳しく紹介させて頂きます。

Ⅰ.抗ヒスタミン作用

ピレチアは抗ヒスタミン薬でもあり、作用の1つに「抗ヒスタミン作用」があります。これはヒスタミンという物質のはたらきをブロックするという作用です。

アレルギー症状を引き起こす物質の1つに「ヒスタミン」があります。

アレルゲン(アレルギーを起こすような物質)に暴露されると、アレルギー反応性細胞(肥満細胞など)からアレルギー誘発物質(ヒスタミンなど)が分泌されます。これが受容体に結合することで様々なアレルギー症状が発症します。

ちなみに肥満細胞からはヒスタミン以外にもアレルギー誘発物質が分泌されますが、これらはまとめてケミカルメディエータ―と呼ばれています。ヒスタミンは主要なケミカルメディエーターの1つなのです。

ピレチアは、ヒスタミンが結合するヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状の出現を抑える作用があります。

これらの作用によりアレルギー症状を和らげてくれるのです。

Ⅱ.抗パーキンソン作用

ピレチアはパーキンソン症状の改善にも効果があります。

これはピレチアがアセチルコリンをブロックするはたらき(抗コリン作用)を有しているからです。

パーキンソン病やパーキンソン症候群(パーキンソニズム)では、何らかの原因によって中脳の黒質ー線条体という部位のドーパミンが減少する事で生じます。

ドーパミンが減少する事で、手が震えたり、身体を動かしにくくなったり、筋肉が固まったりといった症状が出てしまいます。

黒質ー線条体では、ドーパミンとアセチルコリンが綱引きのように拮抗し合っていることが分かっています。ドーパミンが少なくなるとアセチルコリンが相対的に優位になり、これがパーキンソン症状が出てしまう一因になります。

ピレチアは、アセチルコリンのはたらきをブロックするため、相対的にドーパミンを優位にさせてアセチルコリンとドーパミンのバランスを適正に戻すはたらきがあります。

これによりパーキンソン症状を改善させてくれるのです。

Ⅲ.制吐作用

ピレチアには制吐作用(吐き気を抑える)、抗めまい作用(めまいを抑える)があります。

この作用がどのような機序によって生じているのかは分かっていませんが、おそらく抗コリン作用が一因となっているのではないかと考えられています。

4.ピレチアの副作用

ピレチアにはどんな副作用があるのでしょうか。

ピレチアの副作用は12.09%前後と報告されています。古いお薬であり第1世代抗ヒスタミン薬であるピレチアは副作用が多めのお薬となります。

副作用として多いのは、

  • 眠気

です。抗ヒスタミン薬はどれも眠気の副作用が生じるリスクがあります。特にピレチアは第一世代の抗ヒスタミン薬であり、脳へ移行しやすいため眠気を起こしやすいお薬になっています。

またそれ以外にも

  • 口渇(口の渇き)
  • 頭痛

などが報告されています。

頻度は稀ですが、重大な副作用として、

  • 悪性症候群
  • 乳児突然死症候群
  • 乳児睡眠時無呼吸発作

が報告されています。このような理由からピレチアは2歳未満の乳幼児には使用する事ができません。

またピレチアは次のような方は使用することが出来ません。

  • 昏睡状態の方(昏睡状態を悪化させるおそれがあるため)
  • バルビツール酸誘導体・麻酔剤等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者(更に中枢神経を抑制してしまうおそれがあるため)
  • 緑内障の患者(抗コリン作用により眼圧を上げてしまうおそれがあるため)
  • 前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者(抗コリン作用により排尿困難を悪化させるおそれがあるため)
  • 2歳未満の乳幼児

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5.ピレチアの用法・用量と剤形

ピレチアは、

ピレチア錠 5mg
ピレチア錠 25mg
ピレチア細粒 10%

の3剤形があります。

ピレチアの使い方としては、

通常、成人には1回5~25mgを1日1~3回経口投与する。振戦麻痺、パーキンソニズムには、1日25~200mgを適宜分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

となっています。

6.ピレチアが向いている人は?

以上から考えて、ピレチアが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ピレチアの特徴をおさらいすると、

・花粉症や蕁麻疹などのアレルギー症状を抑える
・パーキンソン症状を改善させる
・吐き気やめまいを抑える
・鎮静力が強く、眠気やだるさがおきやすい
・古い第1世代抗ヒスタミン薬であり、副作用が多め
・眠気、抗コリン症状に注意

といったものがありました。

ピレチアは、第1世代抗ヒスタミン薬になり、アレルギー性鼻炎やじんましんなどに対して用いられるお薬になります。また抗パーキンソン薬でもあり、パーキンソン症状の改善に用いられるお薬でもあります。

しかし古いお薬で副作用も多いため、現在では最初から用いられる事はほとんどありません。

アレルギー疾患の場合、副作用の少ない第2世代抗ヒスタミン薬を使っても十分な効果が得られない場合は、何らかの理由で第2世代抗ヒスタミン薬が使用できない場合にやむを得ず検討されるお薬になります。

またパーキンソン病の場合でも、他の抗パーキンソン薬をまず使う事が優先されます。

臨床でピレチアを使う機会があるのは、精神科領域が挙げられます。精神科のお薬はドーパミンをブロックする作用を持つものも多く、副作用でパーキンソニズムが出てしまう事があります。

そのような時、パーキンソニズムを改善させつつ、興奮や不穏を抑える鎮静力もあるピレチアは使い勝手の良いお薬になるからです。

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