アスベリン錠・アスベリン散の効果・効能と副作用

アスベリン(一般名:チペピジンヒベンズ酸塩)は1959年から発売されているお薬です。アスベリン錠・アスベリン散・アスベリンシロップ・アスベリンドライシロップなどの剤型があります。

アスベリンはいわゆる「咳止め」で、専門的には「鎮咳薬(ちんがいやく)」と呼ばれます。

アスベリンは鎮咳薬の中でも非麻薬性鎮咳薬であり、耐性や依存性もなく副作用も少ない安全性の高い咳止めになります。

古いお薬ですが、咳は風邪や気管支炎などをはじめ多くの疾患で出る症状であるため、現在でも一般内科を中心に広く処方されているお薬です。

アスベリンはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんは使うお薬なのでしょうか。アスベリンの効能や特徴を紹介していきたいと思います。

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1.アスベリンの特徴

まずはアスベリンの特徴をざっくりと紹介します。

アスベリンは、咳を抑える作用・喀痰を排出しやすくする作用を持つ咳止めになります。効果もまずまずあり、副作用も少なく、安全性の高い咳止め薬になります。

咳止め(鎮咳薬)には大きく分けると、「麻薬性」と「非麻薬性」があります。両者の違いをかんたんに言うと、

  • 麻薬性は、効果はしっかりしているけども耐性や依存性があり、便秘などの副作用も起こりやすい
  • 非麻薬性は、効果は麻薬性には劣るが耐性や依存性はなく、副作用も少ない

と言えます。アスベリンは非麻薬性に属しますが、咳を抑える効果はまずまず強く、副作用も少ない安全性の高い咳止めになります。

ちなみに耐性というのは、お薬を連用していると身体がお薬に慣れてしまって徐々に効きが悪くなってくる事です。また依存性というのは、そのお薬に依存してしまう事でお薬を止められなくなってしまう事を言います。

その他の副作用も少なく、安全性に優れるお薬です。

以上からアスベリンの特徴として次のような点が挙げられます。

【アスベリンの特徴】

・咳を抑える作用、喀痰を排出しやすくする作用を持つ咳止め
・非麻薬性であり、耐性や依存性もない
・副作用は少なく安全性が高い

2.アスベリンはどんな疾患に用いるのか

アスベリンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難

感冒、上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺炎、肺結核、気管支拡張症

難しい病名がたくさん並んでいますが、要するに「咳を生じる呼吸器疾患」に対しての咳止めとして使える、という認識で良いと思います。

臨床でよく用いられるのが、風邪(感冒)や気管支炎、肺炎などに伴う咳ですね。

ただし咳が出たら全てアスベリンを飲まないといけないというわけではありません。基本的に咳というのは「痰を除去する」「ばい菌を体外に追い出す」ために必要な生理反応であり、止めない方がいいものなのです。

風邪や肺炎で気管に菌やウイルスがいるのに、お薬で咳を止めてしまったら、菌やウイルスが体外に排出されず、病気の治りも悪くなってしまいます。

咳を止める必要があるのは、

  • 咳があまりにひどくて、かえって気管を傷付けてしまっている場合
  • 咳があまりにひどくて、夜眠れない場合

など、咳によって菌やウイルス・過剰な痰を排出するというメリットよりも、咳のデメリットが上回っている場合に限ります。

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3.アスベリンにはどのような作用があるのか

咳止め(鎮咳薬)として用いられるアスベリンですが、どのような機序で咳を抑えるのでしょうか。

アスベリンには主に3つの作用があり、咳を抑えたり、痰を出しやすくする事が知られています。

Ⅰ.咳中枢を抑制する

私たちが咳をするのは、脳の「延髄」と呼ばれる部位にある咳中枢が深く関わっています。

咽頭や気管に異物が入りこむと、その信号は咳中枢に送られます。信号がある閾値以上に達すると、咳中枢は「咳をして異物を排出する必要がある」と判断し、呼吸筋や横隔膜などに信号を送り、「咳」をするように指示するのです。

私たちの身体はこのような咳中枢のはたらきによって、異物を排出することが出来るのです。

アスベリンは、延髄の咳中枢の感度を鈍くする(閾値を上げる)はたらきがあります。これにより、咳中枢は「咳をしなさい」という信号を送りにくくなり、咳が発生しにくくなります。

Ⅱ.気管支液を分泌する

アスベリンは、気管支にある気管支腺を刺激し、気管支腺から液が出るのを促進します。

これによって気管支に潤いが与えられ、喀痰を排出しやすくなるのです。

Ⅲ.気管支の線毛運動を促進させる

気管支粘膜の表面(上皮)には、線毛という毛のようなものがあります。これは気管支を保護したり、異物を体外に送り出すはたらきを持ちます。

アスベリンは気管支粘膜上皮にある線毛の運動を亢進させるはたらきがあります。

これによって痰が体外に運ばれ、痰を排出しやすくなるのです。

4.アスベリンの副作用

アスベリンにはどんな副作用があるのでしょうか。

アスベリンは非麻薬性の鎮咳薬に属するため、その副作用は少なく安全性に優れています。副作用発生率は4.3%ほどと報告されています。

生じえる副作用としては、

・食欲不振、胃部不快感
・便秘、下痢
・眠気、不眠
・口渇
・悪心

などがあります。いずれも重症となる事は稀で、程度は軽度である事がほとんどです。

稀ですが注意すべき副作用として、

・咳嗽・腹痛・嘔吐・発疹・呼吸困難等を伴うアナフィラキシー様症状

が挙げられています。

アナフィラキシー症状とは、即時型のアレルギー症状であり、血圧低下や意識障害などの重篤な症状が出る可能性もあるものです。

実際の臨床では経験することはまずありませんが、添付文書には一応記載がされている副作用になります。

またアスベリンは服用することにより、尿が赤色っぽくなることもあります。これはアスベリンの代謝物(アスベリンが分解されてできた物質)の影響によるものです。尿が急に赤くなるとびっくりしてしまいますが、何か問題がある副作用ではなく、単に代謝物の色であるというだけです。

ちなみに麻薬性の鎮咳薬などでは、

・耐性
・依存性

などの副作用が生じますが、アスベリンにおいてはこれらの副作用は認めません。

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5.アスベリンの用法・用量と剤形

アスベリンは次の剤型が発売されています。

アスベリン錠 10mg
アスベリン錠 20mg

アスベリン散 10%

アスベリンドライシロップ 2%

アスベリンシロップ 0.5%
アスベリンシロップ「調剤用」 2%

と、多くの剤型が発売されています。

風邪や気管支炎・肺炎などは子どもからお年寄りまで幅広い年代の方がかかる疾患ですので、アスベリンもそれに合わせて錠剤だけではなく、小児やお年寄りでも飲みやすい散剤、ドライシロップ、シロップも用意されています。

アスベリンの使い方は、

通常成人には、1日60mg~120mgを3回に分割経口投与する。

小児には、1日

・1歳未満 5~20mg
・1歳以上3歳未満 10~25mg
・3歳以上6歳未満 15~40mg

を3回に分割経口投与する。

なお、年齢、症状により適宜増減する。

と書かれています。

アスベリンは服薬してから30~60分後に効果が発現し始め、その薬効は5~6時間続くと考えられています。そのため、1日を通して咳を抑えたいのであれば、だいたい1日3回毎食後に服薬することが多いお薬です。

しかし特定の時間だけの咳を抑えたいのであれば、主治医と相談の上で、1日1回投与なども可能です。「夜寝る時だけ咳を抑えたい」という事であれば、主治医が許可してくれれば、1日1回就寝前投与でも問題はありません。

6.アスベリンが向いている人は?

以上から考えて、アスベリンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

アスベリンの特徴をおさらいすると、

・咳を抑える作用、喀痰を排出しやすくする作用を持つ咳止め
・非麻薬性であり、耐性や依存性もない
・副作用は少なく安全性が高い

などがありました。

鎮咳薬でありながら、咳を抑える作用に加え、喀痰を排出する作用に優れることから、

  • 咳のみならず、喀痰も認める方

に向いているお薬です。咳を抑える作用は強力というほどではありませんが、ある程度の力は有しますので、

  • 軽度~中等度の咳症状を認める方

にも向いており、副作用も少ないアスベリンは咳を抑えたい時にまず検討すべきお薬として適しています。

まずはアスベリンなどの非麻薬性の鎮咳薬から開始し、それでも咳が抑えられない時は麻薬性鎮咳薬などのより強力な鎮咳薬を試すのがよいでしょう。

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