トクレススパンスールカプセルの効果と副作用

トクレススパンスールカプセル(一般名:ペントキシベリンクエン酸塩)は1967年から発売されているお薬です。いわゆる「咳止め」で、専門的には「鎮咳薬(ちんがいやく)」と呼ばれます。

咳という症状は多くの疾患で認められる症状ですので、咳止めはよく処方されるお薬になります。トクレスは咳止めの中ではメジャーなお薬ではありませんが、現在でも広く処方されている咳止めの1つになります。

トクレスはどのような効果・特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。

今日はトクレスの効能・特徴や副作用などを紹介させて頂きます。

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1.トクレスの特徴

まずはトクレスの特徴をざっくりと紹介します。

トクレスは、咳を抑える作用を持つお薬になります。また気管支を広げる作用や痛みを抑える作用なども持っています。

咳止め(鎮咳薬)は大きく分けると、「麻薬性」と「非麻薬性」があります。両者の違いをかんたんに言うと、

  • 麻薬性は、効果はしっかりしているけども耐性や依存性があり、便秘などの副作用も起こりやすい
  • 非麻薬性は、効果は麻薬性には劣るが耐性や依存性はなく、副作用も少ない

と言えます。

そのうちトクレスは非麻薬性に属し、安全性の高い咳止めになります。しかし麻薬性である「コデイン」の1.5倍の鎮咳作用があるという試験結果が出ており、効果は十分に期待できます。

ちなみに耐性というのは、お薬を連用していると身体がお薬に慣れてしまって徐々に効きが悪くなってくる事です。また依存性というのは、そのお薬に依存してしまう事でお薬を止められなくなってしまう事を言います。

またトクレスは単に咳を抑えるだけではなく、

  • 抗コリン作用
  • 局所麻酔作用

を有しており、これが他の鎮咳薬との違いになります。

抗コリン作用というのはアセチルコリンという物質のはたらきをブロックする作用で、抗コリン作用が発揮されると気管支は拡張します。

トクレスの抗コリン作用によって気管支が拡張すると呼吸がしやすくなったり、痰を出しやすくなる作用が期待できます。

一方で抗コリン作用は口渇、便秘、尿閉などいった症状も起こすため、トクレスは他の鎮咳薬と比べてこのような副作用が生じやすいというデメリットがあります。また緑内障など抗コリン作用が生じると症状が悪化するような疾患を持っている方はトクレスは使用することが出来ないというデメリットもあります。

またトクレスは歯医者さんで抜歯の時に使うような局所麻酔薬のような局所麻酔作用があります。これにより患部の痛みの緩和作用が期待できます。

以上からトクレスの特徴として次のような点が挙げられます。

【トクレスの特徴】

・咳を抑える作用がある
・気管支を広げる作用がある
・局所麻酔作用がある
・非麻薬性であり、耐性や依存性もない
・副作用は少ないが、抗コリン作用のため緑内障には使えない

2.トクレス錠はどんな疾患に用いるのか

トクレス錠はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

下記疾患に伴う咳嗽

感冒、喘息性気管支炎、気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺結核、上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)

難しい病名がたくさん並んでいますが、要するに「咳を生じる疾患」に対しての咳止めとして使える、という認識で良いと思います。

臨床でよく用いられるのが、風邪(感冒)や気管支炎、肺炎などに伴う咳ですね。また気管支を広げる作用を持つトクレスは喘息にも向いているお薬になります。

効果としては、

  • トクレスの有効率は90.7%
  • 比較で用いたプラセボ(何の成分も入っていない偽薬)は有効率5.2%

と報告されています。

ちなみに咳が出たら全てトクレスを飲まないといけないというわけではありません。基本的に咳というのは「痰を除去する」「ばい菌を体外に追い出す」ために必要な生理反応であり、止めない方がいいものなのです。

風邪や肺炎で気管に菌やウイルスがいるのに、お薬で咳を止めてしまったら、菌やウイルスが体外に排出されず、病気の治りも悪くなってしまいます。

咳を止める必要があるのは、

  • 咳があまりにひどくて、かえって気管を傷付けてしまっている場合
  • 咳があまりにひどくて、夜眠れない場合

など、咳によって菌やウイルス・過剰な痰を排出するというメリットよりも、咳のデメリットが上回っている場合に限ります。

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3.トクレスにはどのような作用があるのか

咳止め(鎮咳薬)に分類されてるトクレスですが、どのような機序で咳を抑えるのでしょうか。

トクレスには次のような作用があると考えられています。

Ⅰ.咳中枢を抑制する

私たちが咳をするのは、脳の「延髄」と呼ばれる部位にある咳中枢が深く関わっています。

本来、咳というのは気管に入ってきた異物を排出するという生体の防御システムです。

咽頭や気管に異物が入りこむと、その信号は咳中枢に送られます。信号がある閾値以上に達すると、咳中枢は「咳をして異物を排出する必要がある」と判断し、呼吸筋や横隔膜などに信号を送り、「咳」をするように指示するのです。

私たちの身体はこのような咳中枢のはたらきによって、異物を排出することが出来るのです。

トクレスは、延髄の咳中枢に選択的に作用することによって「咳をしなさい」という信号を生じにくくさせ、咳反射を起こしにくくさせます。これによって咳が発生しにくくなるのです。

Ⅱ.気管支を広げる

トクレスは抗コリン作用を持ち、これは気管支を広げて息苦しさを改善させたり、痰を出しやすくさせる効果が期待できます。

抗コリン作用というのは、アセチルコリンという物質のはたらきをブロックする作用です。アセチルコリンは副交感神経というリラックス状態の時に活性化する神経から出る物質です。

抗コリン作用は、口渇(口の渇き)、便秘、尿閉など困った作用となる事もありますが、反対に下痢を抑えたり、頻尿を抑えたりという作用にもなるため、しばしば治療薬として用いられます。

抗コリン作用が発揮されると気管支は拡張します。そのため抗コリン薬はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や喘息の治療薬としても用いられています。

トクレスの抗コリン作用によって気管支が拡張すると呼吸がしやすくなったり、痰を出しやすくなる作用が期待できます。

一方で他の鎮咳薬と比べて口渇、便秘、尿閉などいった副作用が生じやすいというデメリットがあります。また緑内障など抗コリン作用が生じると症状が悪化するような疾患を持っている方はトクレスは使用することが出来ません。

Ⅲ.局所麻酔作用

トクレスには局所麻酔作用があります。

みなさんは抜歯の時や皮膚の縫合の時に局所麻酔をした事があるでしょうか?

トクレスはこのような局所麻酔薬と似たような作用があるため、痛みを抑える作用が期待できます。

風邪をひくと喉が痛くなったりすることがありますが、トクレスはこのような痛み症状の緩和が期待できるお薬になります。

4.トクレスの副作用

トクレスにはどんな副作用があるのでしょうか。

トクレスは非麻薬性の鎮咳薬に属するため、その副作用は少なく安全性に優れています。トクレスの副作用発生率は約3.3%と報告されており、副作用が少ないお薬だと言えます。

生じえる副作用としては、

  • 食欲不振
  • 便秘
  • 発疹
  • 口渇
  • 尿量減少

などの報告があります。これらの多くはトクレスの持つ「抗コリン作用」が原因になります。

ちなみに麻薬性の鎮咳薬などでは、

・耐性
・依存性

などの副作用が生じますが、トクレスにおいてはこれらの副作用は認めません。

またトクレスは「緑内障」の方は使用してはいけません。その理由はトクレスには抗コリン作用があるからです。抗コリン作用は眼圧を上げる作用ともなるため、眼圧が上がりやすい緑内障の方が使うと眼圧が更に上がってしまい危険です。

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5.トクレスの用法・用量と剤形

トクレスは

トクレススパンスールカプセル 30mg

の1剤型のみが発売されています。

非常に長い名前で分かりにくいのですが、「トクレス」というのがお薬の名前で、「スパンスール」というのは徐放製剤(ゆっくり長く効くタイプの製剤)を意味しています。

つまりトクレススパンスールカプセルは、「ゆっくり長く効果が持続するトクレスカプセル」という事なのです。

トクレスの使い方は、

通常成人には1日2~4カプセルを2~3回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

と書かれています。

服薬回数は1日2~3回となっています。徐放製剤ですが1日1回の服薬ではなく、実際はそこまで効果の持続力が高いという印象はありません。発売された1960年代の頃の他の咳止めよりは効果が長かったのかもしれませんね。現代の一般的なお薬と比べると服薬回数はあまり変わりません。

飲み方は2~3回ですが、具体的な回数はご自身の症状をみて主治医と相談して決めましょう。

例えば1日を通してしっかりと咳を抑えたいのであれば1日3回に分けた服用回数が良いでしょう。

しかし特定の時間だけの咳を抑えたいのであれば、主治医と相談の上で1日1回投与とすることもあります。「夜寝る時だけ咳を抑えたい」という事であれば1日1回就寝前投与としても良いわけです。

6.トクレス錠が向いている人は?

以上から考えて、トクレス錠が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

トクレス錠の特徴をおさらいすると、

・咳を抑える作用がある
・気管支を広げる作用がある
・局所麻酔作用がある
・非麻薬性であり、耐性や依存性もない
・副作用は少ないが、抗コリン作用のため緑内障には使えない

などがありました。

咳を抑える作用は強力というほどではありませんが、ある程度の力は有します。麻薬性の鎮咳薬である「コデイン」の1.5倍の鎮咳作用があるという結果が出ており、臨床的にも十分頼れるお薬です。また非麻薬性であり、重篤な副作用は少ない事が利点です。

また他の咳止めと比べて、

  • 気管支を広げる作用(抗コリン作用)
  • 局所麻酔作用

があるというのも利点です。

デメリットとしては、「抗コリン作用」があります。これによって

  • 口渇(口の渇き)、便秘、尿閉(尿が出にくくなる)などが生じることがある
  • 緑内障の方は使えない

というリスクがあります。

ここから、

  • 軽度~中等度の咳症状を認める場合
  • 気管支を広げてあげた方が良い場合(痰が多かったり喘息があったりなど)
  • 痛みを抑えてあげた方が良い場合

に向いているお薬だと言えるでしょう。

一方で抗コリン作用が困る方には向かないお薬です。また緑内障の方は使ってはいけません。

ちなみに鎮咳薬を使う時は、まずはトクレスなどの非麻薬性の鎮咳薬から開始し、それでも咳が抑えられない時は麻薬性鎮咳薬などのより強力な鎮咳薬を試すのが一般的です。

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