ベイスン錠・ベイスンOD錠(ボグリボース)の効果と副作用

ベイスン(一般名:ボグリボース)は1994年から発売されているお薬で、糖尿病の治療薬として用いられています。2004年にはOD錠(口腔内崩壊錠:唾液で溶けるタイプのお薬)も発売されました。

ベイスンは「αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)」という種類に属します。

αGIは、糖分が腸から吸収されるのを抑えるお薬であり、この作用から血糖の上昇を抑えて糖尿病を改善させるはたらきがあります。

糖尿病治療をしている患者さんは多いですが、糖尿病治療薬にはたくさんの種類があり、それぞれがどんなはたらきを持つお薬なのかは分かりにくいものです。

糖尿病治療薬の中でベイスンはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここでは、ベイスンの効能や特徴、副作用などを紹介していきます。

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1.ベイスン錠・OD錠の特徴

まずはベイスンの特徴を紹介します。

ベイスンは、食事に含まれる糖分が腸から体内に吸収される時に、吸収をゆっくりにすることで血糖を上げにくくします。

ベイスンをはじめとしたαグルコシダーゼ阻害薬は、この「腸管からの糖分の吸収をゆるやかにする」という作用機序を持ち、これにより血糖の上昇をゆるやかにして糖尿病を改善させます。

時々、ベイスンのようなお薬を「腸管から糖分を吸収させなくする」お薬だと勘違いしている人がおり、「これは痩せ薬になる!」とダイエット目的で処方を希望される人がいますが、あくまでも吸収を緩やかにするだけで時間をかけて結局はゆっくりと吸収されます。

体内に吸収される総カロリーを減らすわけではありませんので、当然痩せ薬にもなりません。くれぐれもダイエット目的で入手しようとしないようにお願いします。

その効きは穏やかであり、劇的な血糖改善作用はありませんが、安全性に優れるお薬です。

血糖を下げる糖尿病治療薬は、時に血糖を下げ過ぎてしまって「低血糖」にしてしまう危険があります。極度の低血糖になると意識を失ったり場合によっては命の危険もあります。しかしベイスンはそのような副作用を起こす心配はまずありません。そもそも糖分の吸収を穏やかにするという作用であり、血糖を下げる作用ではないためです。

αグルコシダーゼ阻害薬にも何種類かお薬があります。どれも大きな差はないのですが、強いて差を挙げると、

【ベイスン(ボグリボース)】
・保険上、唯一糖尿病の予防に投与できる
・もっとも穏やかに効き、副作用も少なめ
・ほとんど体内に吸収されないため妊婦に唯一使えるαGI

【グルコバイ(アカルボース)】
・αグルコシダーゼ以外にαアミラーゼも阻害するため作用も副作用も強め。
・他剤と比べて便秘が多い

【セイブル(ミグリトール)】
・体内に多少吸収されるため、肝機能障害・腎機能障害が他剤と比べてやや起きやすい
・他剤より即効性に優れ、食後すぐ(1時間)の血糖上昇を抑える作用に優れる
・効果はαGIの中でもっとも強いと言われる
・他αGIと比べて下痢が多い

といったことが挙げられます。

以上からベイスンの特徴として次のような点が挙げられます。

【ベイスン(ボグリボース)の特徴】

・腸管から糖分が吸収されるスピードをゆるやかにする
・糖尿病を改善する効果は弱めで、αGIの中でもおだやかな作用
・副作用が少なく、安全性が高い
・糖尿病の予防にも使える唯一のαGI
・体内にほとんど吸収されず、妊婦に使える唯一のαGI

2.ベイスン錠・OD錠はどんな疾患に用いるのか

ベイスンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。ベイスンの添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】
1.糖尿病の食後過血糖の改善
2.耐糖能異常における 2 型糖尿病の発症抑制(錠 0.2、OD 錠 0.2 のみ)

ベイスンは、腸管から糖分が吸収されるスピードをゆるやかにするお薬ですので、糖尿病の中でも特に食後の高血糖が強い患者さんに向いたお薬です。食後高血糖を改善させることにより糖尿病の改善も得られることが確認されています。

また糖尿病の方だけでなく、糖尿病になる前段階の耐糖能異常の方に対しても、糖尿病の発症を予防するために予防的に投与することもできます。

これはαGIの中でもベイスンのみが持っている適応であり、他のαGI(セイブル、グルコバイ)は「糖尿病」に対してしか使えず「糖尿病の予防」に使うことはできません。

【効果又は効能】には但し書きとして次のようにも書かれています。

(1.の適応に対して)
食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合、又は食事療法・運動療法に加えて経口血糖降下剤若しくはインスリン製剤を使用している患者で十分な効果が得られない場合に限る

(2.の適応に対して)
本剤の適用は、耐糖能異常と判断され、糖尿病発症抑制の基本である食事療法・運動療法を3〜6ヵ月間行っても改善されず、かつ高血圧症、脂質異常症
、肥満、2親等以内の糖尿病家族歴のいずれかを有する場合に限定すること。

これらの但し書きの大まかな意味としては、「いきなりお薬を始めるのではなく、まずは食事の改善、運動習慣の改善を行って、それでもダメならお薬を考えて下さい」という意味になります。

どんなお薬でもそうですが、いきなりお薬を考えるのではなく、まずは生活習慣の見直しから行うことを忘れてはいけません。

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3.ベイスン錠・OD錠にはどのような作用があるのか

ベイスンの主な作用について紹介します。

Ⅰ.食後高血糖改善作用

ベイスンは、主に糖尿病の治療薬として用いられています。糖尿病はその名の通り、血液中の血糖が高くなりすぎてしまう疾患です。

血糖が高くなり過ぎると何が問題なのでしょうか。

糖分は身体が活動するためのエネルギーとして大切な栄養素ですが、多すぎると身体に毒となります。

具体的には血管を痛めて、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めたり、腎臓や眼、神経といった身体の諸臓器を傷付けて腎不全や白内障、神経障害などを引き起こします。

高血糖が続くと全身の臓器の障害はゆるやかに進行していきます。最初は自覚症状もないため危機感を感じにくいのですが、数年~数十年かけてジワジワと身体を傷付けていきます。

困ったことにこの高血糖によって生じた臓器障害は、いくら血糖を改善させても元に戻らないものが多いのです。例えば糖尿病によって白内障になってしまったら、それを治すためには手術をするしかありません。腎障害が出現して透析になったら、その後はほぼ一生透析のお世話にならないといけません。

そうならないためには、血糖を正常値にとどめておく必要があるのです。ベイスンはそのために役立つお薬になります。

では、ベイスンはどのように糖尿病を改善させるのでしょうか。

その主な作用は小腸の粘膜上皮に存在する「αグルコシダーゼ」という酵素のはたらきをジャマする(ブロックする)ことです。

αグルコシダーゼには「スクラーゼ」「ラクターゼ」「マルターゼ」「イソマルターゼ」などいくつかの種類があり、これらは摂取した様々な糖分を分解するはたらきがあります。糖分は大きいままでは体内に吸収できないため、αグルコシダーゼが吸収できる大きさにまで分解してくれるのです。

ベイスンはαグルコシダーゼのうち、主にマルターゼ、スクラーゼのはたらきをブロックします(イソマルターゼのはたらきも若干ブロックすることが確認されていますが、その作用は非常に弱いため除外しました)。

ベイスンによってこれらの酵素のはたらきがブロックされてしまうと、糖分が吸収しやすいものまで分解されないため、吸収がゆっくりになるのです。

しかし全く吸収されなくなる、というわけではありません。ベイスンの薬効がなくなるにつれて、αグルコシダーゼのはたらきは再び活性化するため、糖分が吸収されるようになります。

ベイスンの半減期は約5.3時間ほどとなっており(半減期:血中濃度が半分に下がるまでにかかる時間で、作用時間を知る1つの目安になる値)、αGIの中では作用時間は長い方になりますが、しばらく経てば薬効が消失していくのは変わりません。

そのため、ベイスンはあくまでも糖分の吸収を「ゆるやかにする」お薬であって、糖分の吸収を「しなくなる」お薬ではありません。

しかしベイスンのはたらきで糖分が吸収されにくくなると、食後の血糖の上昇も緩やかになり、これは糖尿病の改善につながります。

Ⅱ.脂質改善作用

ベイスンは、糖代謝を改善することにより副次的にコレステロール値の改善も軽度得られることが確認されています。

あくまでも副次的な効果ですが、

・中性脂肪(TG)を下げる
・善玉(HDL)コレステロールを上げる

といった効果が報告されています。

4.ベイスン錠・OD錠の副作用

ベイスンにはどんな副作用があるのでしょうか。

基本的にベイスンをはじめとしたαグルコシダーゼ阻害薬は安全性が高く、重篤な副作用はほとんどありません。しかし副作用自体がないわけではありません。

ベイスンで生じる副作用は、ほとんどが胃腸系の副作用であり、

・鼓張(腹部膨満)
・下痢
・放屁

などが認められます。これはベイスンが腸管内に存在する糖分の分解酵素をブロックするため、未消化の糖分が腸内細菌によって分解・発酵される結果生じると考えられています。

また、特に他の糖尿病治療薬と併用することで

・低血糖

を起こすこともありますが、ベイスン単剤ではあまり起こしません。ベイスンで低血糖が生じたとしても自覚症状を認めない程度のものがほとんどで、重篤になることは稀です。

ベイスンは腸管内で作用し、ほとんど体内に吸収されないため、αGIの中でも安全性の高いお薬になります。そのため、ベイスンはαGIの中で唯一、妊婦さんに対しても使用することができます。

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5.ベイスン錠・OD錠の用法・用量と剤形

ベイスンは次の剤型が発売されています。

ベイスン錠(ボグリボース) 0.2mg
ベイスン錠(ボグリボース) 0.3mg

ベイスンOD錠(ボグリボース) 0.2mg
ベイスンOD錠(ボグリボース) 0.3mg

の計4剤型(錠剤2つ、OD錠2つ)が販売されています。

ちなみにOD錠というのは「口腔内崩壊錠」のことで、唾液に反応して溶けるタイプのお薬のことです。錠剤と違って水なしでも飲めるため、外出先で服薬することが多い方や、粒を飲み込む力が弱くなっている高齢者などに向いている錠形になります。

ベイスンの使い方は、

【1.糖尿病の食後過血糖の改善】
通常成人には1回0.2mg を 1 日3回毎食直前に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら1回量を0.3mgまで増量することができる。

【2.耐糖能異常における 2 型糖尿病の発症抑制】
通常、成人には1回0.2mgを1日3回毎食直前に経口投与する。

と書かれてます。

ベイスンの使い方の注意として、食事に含まれる糖分の吸収を抑えるお薬ですから、食前に服薬しないといけません。多くのお薬は食後に服薬するため、ここは間違えないように気を付けてください。

ただし、万が一食べる前に服薬を忘れてしまった場合は、食後すぐであればある程度の効果が得られると考えられています。食事中や食後に服薬することで害があるわけではありませんので、食後すぐに飲み忘れに気付いた場合は、急いで服薬した方が良いでしょう。

6.ベイスンが向いている人は?

ベイスンはどのような時に検討されるお薬なのでしょうか。

ベイスンをはじめとしたαGIは糖尿病に対する効果の強さは弱いものの、安全性に優れるお薬です。また血糖を下げるというよりは、食後の血糖の上昇をゆるやかにするお薬ですので、糖尿病の中でも特に「食後高血糖」を指摘されている患者さんにも向いているでしょう。

αGIの中でも、体内へほとんど吸収されず穏やかに効くベイスンは、安全性を重視する方にお勧めしやすいお薬になります。αGIの中で唯一、妊婦への投与もできる(慎重投与ではありますが)ため、妊婦の方がどうしてもαGIが必要な状態となればベイスンが選択されます。

またαGIの中で唯一、「糖尿病の予防」に適応があるため、糖尿病にはなっていないけども耐糖能異常を指摘されている方が、糖尿病の発症予防のために用いることもできます。

αGIは効果が弱いからといって必ずにも「軽症」に用いるわけではありません。αGIの機序である「食後の血糖上昇をゆるやかにする」といった作用に沿って、主に食後の高血糖が目立つ糖尿病患者さんに使うと良いお薬です。

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