白色ワセリンの効果と副作用【軟膏】

白色ワセリンは1950年から発売されている軟膏です。

単体で乾燥した皮膚の保湿や傷の保護に使われる他、化学的にも安定した物質であるため他の軟膏製剤と混ぜて使われる事も多いお薬になります。

白色ワセリンは安全性に非常に優れ、また多くの皮膚トラブルに使える軟膏製剤であるため、現在でも非常に多く用いられています。

軟膏はたくさんの種類があるため、それぞれがどのような特徴を持つのかは分かりにくいものです。

白色ワセリンがどんな特徴のあるお薬で、どんな患者さんに向いているお薬なのか、白色ワセリンの効果や副作用についてみていきましょう。

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1.白色ワセリンの特徴

まずは白色ワセリンの特徴をざっくりと紹介します。

白色ワセリンは油脂性の製剤で、水分を通しにくい性質があります。そのため皮膚の保湿や湿潤・保護に役立ちます。刺激性も極めて低いため副作用もほとんどありません。

ワセリンは石油から精製させる油脂性の物質です。「水と油は相いれない」という事はよく知られていますが、この事から分かるように油脂性のワセリンは水を通しません。そして白色ワセリンはこれを上手く利用する事で皮膚に様々な効果をもたらしてくれます。

皮膚に白色ワセリンを塗ると、体表に分泌された水分は白色ワセリンでフタをされている状態になるため、蒸発できません。すると皮膚表面に水分が潤う事となり、これは保湿作用となります。

また近年では皮膚に出来た傷は潤わせることで治すという「湿潤療法(Moist Wound Healing)」が主流となっていますが、傷口に白色ワセリンを塗ると、傷口が保湿されるため湿潤環境になります。これにより傷の治りが早まるという効果も期待できます。

更に白色ワセリンは皮膚の上にバリアをを守るという働きも期待できます。例えばお尻に出来てしまった床ずれ(褥瘡)は、便が傷口に入ってしまって傷口を刺激するため、なかなか治りません。この時、お尻の褥瘡部に白色ワセリンを塗れば白色ワセリンがバリアとなり、便による褥瘡部の汚染の程度を軽減させることができます。

ワセリンの「水を通さない」というはたらきを利用すると、このように様々な皮膚トラブルに対して効果が期待できるのです。

また白色ワセリンは刺激性がほとんどない点もメリットです。塗る事で皮膚に副作用が生じる事はほとんどありません。化学的にも安定した物質であるため、他の化合物と反応してしまう事も少なく、しばしば他の軟膏製剤と混ぜて使われます。

例えばステロイド軟膏を使って皮膚の炎症反応を抑えてあげたいという時、ステロイド単体で使うのも手ですが、ステロイドに白色ワセリンを混合すればステロイドを薄めて副作用を軽減させつつ、保湿効果やバリア効果も期待する事ができます。

白色ワセリンは「軟膏」という種類の製剤になります。外用剤(塗り薬)には軟膏の他、クリームやローションなどもあり、それぞれメリットとデメリットがあります。

軟膏は保湿力が高く刺激性が低いのがメリットです。反面、伸びが悪くべたつきやすいというデメリットがあります。また皮膚へ浸透する力もあまり強くありません。

反対にローションは伸びが良くてべたつきも少なく、皮膚への浸透力も強いのですが、保湿力が低く、刺激性も高めという特徴があります。

クリームはちょうど軟膏とローションの中間くらいの性質を持ちます。

どの製剤が良い悪いという事ではなく、それぞれ特徴が異なりますので皮膚の状態に応じて適切に使い分ける事が大切です。

以上から白色ワセリンの特徴としては次のような事が挙げられます。

【白色ワセリンの特徴】
・水を通さない性質を持った軟膏
・皮膚を保湿・湿潤させたり、保護する作用がある
・刺激性は低く保湿力は高いが、べたつきやすく伸びが悪い
・副作用はほとんどない
・安定した物質であるため、他の軟膏と混ぜて使われる事も多い

2.白色ワセリンはどのような疾患に用いるのか

白色ワセリンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

眼科用軟膏基剤、一般軟膏基剤として調剤に用いる。
また、皮膚保護剤として用いる。

ちょっとイメージが沸きにくい書き方になっていますが、「皮膚保護」をより具体的に書くと、

  • 保湿をしたい時
  • 傷を潤わせて治したい時
  • 傷に異物が入って欲しくない時

に用いられます。

刺激性の低い白色ワセリンは顔や唇、陰部や肛門周囲などデリケートな部分にも使えるため、白色ワセリンは軽症の皮膚トラブルにはとても重宝します。また精度の高い白色ワセリンは眼軟膏として目に使う事も可能です。

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3.白色ワセリンにはどのような作用があるのか

白色ワセリンの作用について詳しく見ていきましょう。

白色ワセリンの作用は、「水分を通さない」という性質によるものです。これによって次のような作用が期待できます。

Ⅰ.保湿作用

白色ワセリンは油脂性のワセリンを主成分とします。

油脂性のものですから、水をはじく性質を持っています。という事は水の上に白色ワセリンを塗った場合、水を閉じ込めておくことが出来るという事です。

これを利用したのが、白色ワセリンの保湿作用です。

私たちの身体の皮膚からは汗が分泌されています。しかし通常であれば汗はすぐに蒸発してしまいます。

そこにプロぺトを塗っておくと、体表に分泌された汗が分泌されず皮膚にとどまるため、皮膚表面の水分が多くなり潤います。

皮膚の乾燥が問題となっているようなケースでは白色ワセリンを塗る事によって保湿作用が得られるのです。

Ⅱ.創傷保護作用

白色ワセリンは皮膚に出来た傷口に塗る事で、傷の治りを早める作用が期待できます。

といっても白色ワセリン自体に傷を治す成分が入っているわけではありません。

白色ワセリンは水を通さない性質があるため、傷口に白色ワセリンを塗ると、傷口に分泌された浸出液がその部位にとどまりやすくなります。

傷口を早く・綺麗に治すためには乾燥させてはいけず、潤わせた状況におく事が重要です。これを湿潤療法(Moist Wound Healing)と呼びます。

白色ワセリンは傷口に浸出液を閉じ込めることで創部を湿潤環境に保ちやすくしてくれるのです。

これによって傷口の治りを早める事が出来ます。

Ⅲ.バリア作用

白色ワセリンは、水を通さない性質があるため、皮膚の外からやってきた異物を皮膚に接触させないように守るバリアとしてのはたらきも期待できます。

白色ワセリンを皮膚に塗れば、何らかの液体が皮膚についてもその液体が皮膚表面に直接接触しにくくなります。

これが特に役立つのは、高齢者の陰部や肛門周りの傷です。

陰部や肛門周りの傷はなかなか治りにくいのですが、これは尿や便が傷口に入ってしまうためです。特に寝たきりでおむつとなっている高齢者の方では、このような汚染が生じる可能性が高く、傷がいつまで経っても治らない事もあります。

このような状況で白色ワセリンを傷口に塗ると、尿や便といった異物が傷口に侵入しにくくなります。すると傷が治りやすくなります。

白色ワセリンが皮膚を尿や便から守ってくれるという事です。

白色ワセリンにはこのようなバリア機能も期待できます。

4.白色ワセリンの副作用

白色ワセリンは安全性が高いとお話ししましたが、副作用はあるのでしょうか。

臨床で使っている印象としては、白色ワセリンで副作用が生じるという事は「まずない」と考えてよいレベルです。

身体に塗るものである以上、絶対に何も起きないと言い切る事は出来ませんが、少なくとも白色ワセリンを塗ったことで大きな副作用が生じてしまったという例はほとんどありません。

白色ワセリンは副作用発生率を詳しくは調査されていません。しかし臨床上の印象としては、1%以下の極めて低い副作用であり、かつ重篤な副作用はまず生じないと考えてよいでしょう。

生じうる副作用としては、

  • 接触皮膚炎様症状(かぶれ)

が報告されています。これらも重篤な状態になる事はまずなく、様子を見れる程度か白色ワセリンの塗布を中止すれば自然と改善していく程度です。

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5.白色ワセリンの用法・用量と剤形

白色ワセリンには、

白色ワセリン 100g
白色ワセリン 500g
白色ワセリン 15kg

の3つがあります。

ただし、この量でしか処方してもらえないという事はなく、小分けにしてほしい場合はプラスチックの容器に入れて必要な量を処方してもらう事も出来ます。

白色ワセリンの使い方は、

適量を皮膚に軽く塗布する

となっており、明確な使い方は記載がありません。

実際は創部の状態や場所によって回数や量は異なるため、主治医の指示に従いましょう。

白色ワセリンの「水を通さない」という作用は薬が皮膚についている限り続くものではありますが、部位的にすぐに軟膏が落ちてしまう部位であれば、1日に何度も塗らないといけないでしょうし、そうでなければ1日1回の塗布で充分なこともあります。

6.白色ワセリンの使用期限はどれくらい?

白色ワセリンの使用期限って、どのくらいの長さなのでしょうか。

「家に数年前に処方してもらった白色ワセリンがあるんだけど、これってまだ使えますか?」

このような質問は患者さんから時々頂きます。

これは保存状態によっても異なってきますので一概に答えることはできませんが、製薬会社による記載では適正に保存されていれば(遮光・室温)、「5年」が使用期限となっています。

7.白色ワセリンが向いている人は?

以上から考えて、白色ワセリンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

白色ワセリンの特徴をおさらいすると、

・水を通さない性質を持った軟膏
・皮膚を保湿・湿潤させたり、保護する作用がある
・刺激性は低く保湿力は高いが、べたつきやすく伸びが悪い
・副作用はほとんどない
・安定した物質であるため、他の軟膏と混ぜて使われる事も多い

というものでした。

白色ワセリンは劇的な作用を持つお薬ではありませんが、

  • 水を通さない性質
  • 刺激性がなく安全性が高い

という特徴があるため、軽症例の皮膚トラブルに広く用いられています。

副作用はまず生じないと考えて良いレベルであるため安全に治していきたい方にはお勧めできる軟膏です。

  • 皮膚の乾燥を改善させたい方
  • 皮膚の傷を湿潤環境にして早く・綺麗に治したい方
  • 汚染されやすい部位(陰部・肛門周囲)の傷を治したい方

などに向いているお薬になるでしょう。

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