アフタッチ口腔用貼付剤の効果と副作用【口内炎治療薬】

アフタッチ口腔用貼付剤(一般名:トリアムシノロンアセトニド)は1982年から発売されている口内炎治療薬になります。

アフタッチは丸いシールのような剤型で、口の中に貼るタイプのお薬になります。

主成分はステロイドであり、口腔内に貼る事でステロイドが徐々に創部に浸透していき炎症を抑えてくれます。飲み薬のように全身に作用するわけではなく病変がある部位にのみ効くため、余計な部位に作用しないというメリットがあります。

アフタッチ口腔用貼付剤はどんな特徴のあるお薬で、どんな患者さんに向いているお薬なのでしょうか。アフタッチの効能や特徴・副作用についてみてみましょう。

 

1.アフタッチ口腔用貼付剤の特徴

まずはアフタッチの特徴をざっくりと紹介します。

アフタッチ口腔用貼付剤は口の中に貼るタイプのお薬であり、主成分はステロイドになります。ステロイドの中での強さは「中等度」になり、穏やかに炎症を抑えてくれます。

ステロイドの主なはたらきとしては次の3つが挙げられます。

  • 炎症反応を抑える
  • 免疫反応を抑える
  • 皮膚細胞の増殖を抑える

このうちアフタッチは「炎症反応を抑える」という効果を期待して貼付されます。

ステロイドは免疫反応(身体がばい菌などの異物と闘う反応)を抑える事で、塗った部位の炎症反応を抑える作用があります。これにより湿疹や皮膚炎を改善させたり、アレルギー症状を和らげたりします。

また塗った部位の皮膚細胞の増殖を抑えるはたらきがありますが、これは主に副作用となります。

外用ステロイド剤(塗る用途のステロイド剤)は強さによって5段階に分かれています。

Ⅰ群(最も強力:Strongest):デルモベート、ダイアコートなど
Ⅱ群(非常に強力:Very Strong):マイザー、ネリゾナ、アンテベートなど
Ⅲ群(強力:Strong):ボアラ、リドメックスなど
Ⅳ群(中等度:Medium):アルメタ、ロコイド、キンダベートなど
Ⅴ群(弱い:Weak):コートリル、プレドニンなど

アフタッチは正確には塗り薬ではないのですが、この中でアフタッチの強さを当てはめると「Ⅳ群(中等度)」に属します。ステロイドの中では効果は穏やかな部類になります。

ステロイドはしっかりとした抗炎症作用(炎症を抑える作用)が得られる一方で、長期使用による副作用の問題などもあるため、皮膚症状に応じて適切に使い分ける事が大切です。

強いステロイドは強力な抗炎症作用がありますが、一方で副作用も生じやすいというリスクもあります。反対に弱いステロイドは抗炎症作用は穏やかですが、副作用も生じにくいのがメリットです。

ステロイドはどれも長期使用すると、皮膚の細胞増殖を抑制したり、免疫力を低下させたりしてしまいます。これによって皮膚が薄くなってしまったり感染しやすくなってしまったりといった副作用が生じる可能性があります。

アフタッチもそういった副作用が生じる可能性はあるため、必要な期間のみ使用し、漫然と塗り続けないことが大切です。

アフタッチ口腔用貼付剤は、口の中という湿潤環境(水分が多い部位)に貼るため、皮膚に貼る湿布などと比べると「はがれてしまいやすい」という問題があります。

そのためアフタッチは湿潤環境でも創部にとどまりやすいような工夫されています。具体的には基材に粘着性の高い物質を使用したり、薬が徐々に溶けだすような仕組みにすることにより創部にしっかりとくっつき長く効くようになっています。

このような理由からアフタッチ口腔用貼付剤は、口腔内に特化した貼り薬になっています。

以上からアフタッチ口腔用貼付剤の特徴として次のような事が挙げられます。

【アフタッチ口腔用貼付剤の特徴】

・口内炎に対して「貼る」タイプのお薬である
・Ⅳ群(中等度の強さ)に属するステロイドを含むである
・炎症を抑える作用がある
・ステロイドの中で効果は穏やか
・ステロイドであるため、長期使用による副作用に注意
・口の中に貼ってもはがれにくいような工夫がされている

 

2.アフタッチ口腔用貼付剤はどんな疾患に用いるのか

アフタッチ口腔用貼付剤はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

アフタ性口内炎

アフタッチは口内炎に用いられるお薬になります。

アフタッチはステロイドを含み、創部の炎症を抑えてくれますので、口内炎が出来てしまった部位に貼れば、炎症を抑えてくれます。

炎症が治まれば腫れや痛みが引くため、苦痛が和らぎます。

アフタッチ口腔用貼付剤の貼付して中等度以上に改善が認められた有効率は、アフタ性口内炎で87.0%と報告されています。

注意点としてステロイドは免疫(身体が異物と闘う力)を抑制するため、ばい菌の感染に弱くなってしまいます。そのため、細菌やウイルスが皮膚に感染しているようなケースでは、そこにステロイドを使う事は推奨されていません。

 

3.アフタッチ口腔用貼付剤にはどのような作用があるのか

皮膚の炎症を抑えてくれるアフタッチ口腔用貼付剤ですが、具体的にはどのような作用があるのでしょうか。

アフタッチ口腔用貼付剤の作用について詳しく紹介します。

 

Ⅰ.抗炎症作用

アフタッチ口腔用貼付剤は、ステロイド剤です。

ステロイドには様々な作用がありますが、その1つに免疫を抑制する作用があります。

免疫というのは異物が侵入してきた時に、それを攻撃する生体システムの事です。皮膚からばい菌が侵入してきた時には、ばい菌をやっつける細胞を向かわせることでばい菌の侵入を阻止します。

免疫は身体にとって非常に重要なシステムですが、時にこの免疫反応が過剰となってしまい身体を傷付けることがあります。

代表的なものがアレルギー反応です。アレルギー反応というのは、本来であれば無害の物質を免疫が「敵だ!」と誤認識してしまい、攻撃してしまう事です。

代表的なアレルギー反応として花粉症(アレルギー性鼻炎)がありますが、これは「花粉」という身体にとって無害な物質を免疫が「敵だ!」と認識して攻撃を開始してしまう疾患です。その結果、鼻水・鼻づまり・発熱・くしゃみなどの不快な症状が生じてしまいます。

同じく皮膚にアレルギー反応が生じる疾患にアトピー性皮膚炎がありますが、これも皮膚の免疫が誤作動してしまい、本来であれば攻撃する必要のない物質を攻撃してしまい、その結果皮膚が焼け野原のように荒れてしまうのです。

このような状態では、過剰な免疫を抑えてあげると良いことが分かります。

ステロイドは免疫を抑えるはたらきがあります。これによって炎症が抑えられます。

炎症とは、

  • 発赤 (赤くなる)
  • 熱感 (熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛みを感じる)

の4つの徴候を生じる状態のことです。今説明したように感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。

みなさんも身体をぶつけたり、ばい菌に感染したりして、身体がこのような状態になったことがあると思います。これが炎症です。皮膚に炎症が起こることを皮膚炎と呼びます。皮膚炎も外傷でも生じるし、ばい菌に感染することでも生じるし、アレルギーでも生じます。

ステロイドは免疫を抑制することで、炎症反応を生じにくくさせてくれるのです。

アフタッチは口腔内の炎症(口内炎)に貼る事によって炎症反応を生じにくくさせ、炎症反応による症状(発赤、熱感、腫脹、疼痛)を和らげます。

 

Ⅱ.免疫抑制作用

上記のようにアフタッチ口腔用貼付剤をはじめとしたステロイドは免疫力を低下させる作用があります。

アフタッチ口腔用貼付剤を漫然と長期間貼り続けると、その部位の免疫力が低下してばい菌(細菌やウイルス、真菌など)に感染しやすくなってしまいます。通常はこれはステロイドの副作用となります。

 

Ⅲ.皮膚細胞の増殖抑制作用

アフタッチ口腔用貼付剤をはじめとしたステロイドは、使用した部位の皮膚細胞の増殖を抑えるはたらきがあります。

これも主に副作用となる事が多く、アフタッチ口腔用貼付剤を漫然と貼り続けていると口の中の表皮が薄くなってしまう事が可能性があります。

アフタゾロンはステロイドの中では作用が穏やかな部類に入るため、このような副作用は頻度の多い事ではありませんが、一定の注意は必要です。

 

Ⅳ.湿潤環境でもはがれにくい工夫

アフタッチ口腔用貼付剤は、口の中に貼るステロイドです。口の中は唾液で湿潤環境(水分の多い環境)にあり、一般的な皮膚にシールを貼るのとは異なります。

皮膚に貼るのと比べると、口の中というのは水分の多い環境であるため、せっかく貼ってもはがれて流れてしまいやすいという問題があります。

この問題を改善するためアフタッチ口腔用貼付剤は、軟膏基材に粘着性の高い物質を使用するという工夫をしています。

具体的には、

・ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
・カルボキシビニルポリマー

という粘着性の強い物質を配合する事で、口の中という水分が多い環境でも創部にお薬がとどまりやすいように工夫がされているのです。

またこれらの基材は含有されているステロイドを少しずつ少しずつ放出するため、創部に長時間効き続けるというメリットもあります。

 

4.アフタッチ口腔用貼付剤の副作用

アフタッチ口腔用貼付剤の副作用はどのようなものがあるのでしょうか。

アフタッチは非常に安全性の高いお薬であり、副作用はほとんど生じません。アフタッチの副作用発生率は0.3%であったと報告されています。

しかしステロイド剤ですので、漫然と塗り続けないように注意は必要です。

生じうる副作用はいずれも頻度が稀なもので、

  • 発疹
  • 顔面の浮腫
  • 気管支喘息発作
  • カンジダ症

などになります。

これらの副作用が生じる可能性は低いのですが、長期間使えば使うほど発生する可能性が高くなるため、ステロイドは漫然と使用する事は避け、必要な期間のみしっかりと使う事が大切です。

ステロイド剤の注意点としては、ステロイドは免疫力を低下させるため免疫力が活性化していないとまずい状態での使用はしてはいけません。具体的にはばい菌感染が生じていて、免疫がばい菌と闘わなくてはいけないときなどが該当します。

このような状態の口腔内にアフタッチ口腔用貼付剤を塗る事は原則禁忌(基本的にはダメ)となっています。

ちなみに添付文書には次のように記載されています。

【原則禁忌】

口腔内に感染を伴う患者

→感染症の増悪を招くおそれがあるので、やむを得ず使用する必要のある場合には、あらかじめ適切な抗菌剤、抗真菌剤による治療を行うか、又はこれらとの併用を考慮すること。

これらの状態でアフタッチ口腔用貼付剤が原則禁忌となっているのは、ステロイドを使ってしまうとその部位の免疫力が低下するため、口腔内にばい菌の感染があった場合に感染を悪化させてしまうためです。

 

5.アフタッチ口腔用貼付剤の用法・用量と剤形

アフタッチ口腔用貼付剤には、

アフタッチ口腔用貼付剤 25μg

の1剤形のみがあります。

形としては丸いシールのようなものになります。直径は7mmほどであるため、これを超えるような大きな口内炎には向きません。

アフタッチは2層構造となっており、

  • 淡黄赤色の支持層
  • 白色の付着層

からなります。付着層が粘着性が高く、ステロイドが配合されている側になるため、付着層(白色)を口腔壁に付けるようにします。

アフタッチ口腔用貼付剤の使い方は、

通常、1患部に1回1錠ずつを1日1~2回、白色面を患部粘膜に付着させて用いる。なお、症状により適宜増量する。

と書かれています。実際は皮膚の状態や場所によって回数は異なるため、主治医の指示に従いましょう。

使用の際の注意点としては、創部が唾液で塗れているとはがれやすくなってしまうため、この場合はティッシュペーパーやガーゼなどで軽く拭きとってからアフタッチを貼るようにしてください。

アフタッチは徐々に溶けだし、約2時間ほどで全てが溶けます。付着層のみならず支持層も溶けてしまうため、アフタッチははがす必要がありません。

 

6.アフタッチ口腔用貼付剤の使用期限はどれくらい?

アフタッチ口腔用貼付剤の使用期限って、どのくらいの長さなのでしょうか。

「家に数年前に処方してもらったものが余っているんだけど、これってまだ使えますか?」

このような質問は患者さんから時々頂きます。

これは保存状態によっても異なってきますので、一概に答えることはできませんが、適正な条件で保存されていたという前提(室温、遮光、気密容器保存)だと、4年が使用期限となります。

 

7.アフタッチ口腔用貼付剤が向いている人は?

以上から考えて、アフタッチ口腔用貼付剤が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

アフタッチ口腔用貼付剤の特徴をおさらいすると、

・口内炎に対して「貼る」タイプのお薬である
・Ⅳ群(中等度の強さ)に属するステロイドを含むである
・炎症を抑える作用がある
・ステロイドの中で効果は穏やか
・ステロイドであるため、長期使用による副作用に注意
・口の中に貼ってもはがれにくいような工夫がされている

というものでした。

ここから、主に口の中に生じた、ばい菌が原因でない炎症に用いるのに向いています。

しかし、これはステロイド全てに言えることですが、漫然と使い続けることは良くありません。ステロイドは必要な時期のみしっかりと使い、必要がなくなったら使うのを止めるという、メリハリを持った使い方が非常に大切です。

アフタッチ口腔用貼付剤は貼るタイプのお薬であり、創部にお薬をとどめる作用に優れています。口内炎は軟膏剤もありますが、軟膏剤よりも粘着性は高いと考えてよいでしょう。

そのため、軟膏などではすぐにお薬がはがれてしまうという方には向いているお薬になります。

反対にアフタッチは直径が7mmしかありませんので、それ以上の大きさの口内炎にはあまり向いていません。創部の大きい口内炎に対しては軟膏剤の方が良いかもしれません。