アラセプリルは1988年に発売された「セタプリル」という降圧剤(血圧を下げるお薬)のジェネリック医薬品になります。降圧剤の中でもACE阻害薬という種類に属します。
ACE阻害薬は、単に血圧を下げるだけでのお薬ではありません。心臓や腎臓を保護したり、糖尿病を改善させたりといった付加的な作用があります。
上手に使えば1剤で複数の効果が期待できます。お薬の作用をしっかりと熟知すれば非常に頼もしいお薬だと言えるでしょう。
血圧を下げる降圧剤にも多くの種類があります。その中でアラセプリルはどんな特徴のある降圧剤で、どんな患者さんに向いているお薬なのでしょうか。
アラセプリル錠の効果や特徴についてみていきましょう。
目次
1.アラセプリルの特徴
まずはアラセプリルというお薬の特徴について説明します。
アラセプリルは「ACE阻害薬」という種類の降圧剤になります。ACE阻害薬はその名の通り、ACE(アンジオテンシン変換酵素)という酵素のはたらきをブロックすることで血圧を下げるお薬になります。
ACEはアンジオテンシンⅠという物質をアンジオテンシンⅡという物質に変えるはたらきがあります。アンジオテンシンⅡは血圧を上げる作用があるため、ACEがブロックされるとアンジオテンシンⅡが少なくなり、血圧が下がるのです。
ACE阻害薬はアラセプリル以外にもいくつかありますが、まずは降圧剤の中でのACE阻害薬の特徴について紹介します。
【ACE阻害薬の特徴】
・血圧を下げる力(降圧力)は中程度
・臓器保護作用があり心不全・腎不全にも用いられる
・糖尿病を改善させる作用がある
・空咳が生じる事があるが、逆手にとって誤嚥予防に用いられることも
ACE阻害薬は降圧剤に属し、血圧を下げるはたらきを狙って投与されます。しかしそれ以外にも付加的な効果があるのが特徴です。
単純に「血圧を下げる力」だけを見れば、カルシウム拮抗薬などより効果が強い降圧剤もあります。しかしACE阻害薬は血圧を下げる作用以外にもいくつかの作用があるのです。
その1つが「臓器保護作用」です。ACE阻害薬は心臓や腎臓を保護してくれる作用が確認されています。
血圧が高いと心臓や腎臓にもダメージを与えます。血液は心臓から血管を通って全身の臓器に送られるわけですから、血管が硬くなって血圧が上がれば心臓の負荷が上がり、心臓も痛みやすくなります。
また腎臓は血液から老廃物を取り出し尿を作るはたらきがあります。血管が硬くなっている高血圧の方では、尿を作るのも負荷がかかるようになり腎臓も痛みやすくなります。
このように血圧が高い方というのは、心臓や腎臓といった臓器にもリスクが生じるため、臓器保護作用を持つACE阻害薬は高血圧による全身へのダメージをより広く守ってくれるお薬だと言えます。
更にACE阻害薬は、インスリンの効きを増強させるはたらきがある事が報告されています。インスリンは血糖値を下げるホルモンですので、インスリンが増強されれば糖尿病の改善も期待できます。
ACE阻害薬に特徴的な副作用としては、「空咳」があります。これはACEをブロックするとサブスタンスPという物質が増えるためだと考えられています。人によっては困る副作用でありますが、この副作用を逆手に取って「誤嚥の予防」に用いることもあります。
高齢者では食べ物を飲み込む力(嚥下能)が低下してしまい、食べたものが食道ではなく気管にあやまって入ってしまうという事が起こり得ます。これを「誤嚥」と言い、誤嚥を起こすと肺に異物が入るため誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)を引き起こしてしまいます。
誤嚥はサブスタンスPが減ることで咳反射が生じにくくなると起こりやすくなります。サブスタンスPが増えると咳は生じやすくなりますが、誤嚥は起こしにくくなるのです。
元々、咳というのは気管に入った異物を追い出す行為である事を考えれば、これは当然と言えるでしょう。
この作用を利用してACE阻害薬は誤嚥予防に用いられる事もあるのです。
では次にACE阻害薬の中でのアラセプリルの特徴を紹介します。
・作用時間は中等度で1日2回の服用が必要である
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い
ACE阻害薬の中でのアラセプリルの最大の特徴はというと、実はこれといった特徴はあまりありません。
作用時間は中等度で、1日2回の服用が必要です。一番最初に発売されたACE阻害薬であるカプトリルは1日3回の服用でしたのでそれと比べると楽ですが、今は1日1回で効果が持続するACE阻害薬も多いため、これは大きなメリットにはなりません。
その他の特徴は一般的なACE阻害薬の持つ特徴と同じで、悪いお薬ではないのですがこれといった特徴に欠けるため、知名度はあまり高くないACE阻害薬となります。
アラセプリルはジェネリック医薬品ですので先発品よりも薬価は安くなっており、ここはメリットになります。
以上からアラセプリルの特徴を挙げると次のようになります。
【アラセプリルの特徴】
・中等度の血圧を下げる作用がある
・心臓・腎臓などの臓器保護作用がある
・糖尿病を改善させる作用がある
・空咳が起こり得るが、これが誤嚥の予防になる事もある
・1日2回の服用が必要
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い
2.アラセプリルはどんな疾患に用いるのか
アラセプリルはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
本態性高血圧症、腎性高血圧症
本態性高血圧というのは原因が特定されていない高血圧の事で、一般的に言われる高血圧の事です。本態性でない高血圧は「二次性高血圧」と呼ばれ、これは何らかの原因があって二次的に血圧が上がっているような状態を指します。これにはお薬の副作用による血圧上昇、ホルモン値の異常による高血圧(原発性アルドステロン症など)があります。
本態性高血圧のほとんどは単一の原因ではなく、喫煙や食生活の乱れ、運動習慣の低下などが続く事による全身の血管の動脈硬化によって生じます。
腎性高血圧症というのは、腎臓に向かう血管である腎動脈が狭窄する事によって生じる高血圧です。腎動脈が狭窄して腎臓の血流が少なくなると、腎臓は「血液が少ない。血圧を上げて血流を増やさなければ!」と考えて血圧を上げるホルモン(レニン)を分泌します。これにより血圧が上がってしまうのが腎性高血圧です。
アラセプリルはジェネリック医薬品であるため有効率の詳しい調査は行われていませんが、先発品のセタプリルにおいては、
- 本態性高血圧症に対する有効率は71.0%
- 腎性高血圧症に対する有効率は60.0%
と報告されており、アラセプリルも同程度の有効率だと考えられます。
アラセプリルをはじめとしたACE阻害薬は単なる高血圧に使うのではなく、
- 心肥大を合併した高血圧症
- 腎機能障害を合併した高血圧症
- 糖尿病を合併した高血圧症
- 誤嚥しやすい方に合併した高血圧症
に用いることによって、1剤で複数の効果を得る事が出来ます。
3.アラセプリルにはどのような作用があるのか
アラセプリルは具体的にどのような作用を有しているのでしょうか。
アラセプリルの作用機序について紹介します。
Ⅰ.降圧作用
アラセプリルは降圧剤であり、主となる作用は血圧を下げる作用になります。
ではアラセプリルはどのように血圧を下げてくれるのでしょうか。
私たちの身体の中には、血圧を上げる仕組みがいくつかあります。その1つに「RAA系」と呼ばれる体内システムがあります(RAA系とは「レニン-アンジオテンシン-アルドステロン」の略です)。
RAA系は本来、血圧が低くなりすぎてしまった時に血圧を上げるシステムです。RAA系は「腎臓に流れてくる血流量」を元に全身の血圧を推測し、血圧をコントロールするシステムになります。
腎臓は血液から老廃物を取り出して尿を作る臓器ですが、ここに「傍糸球体装置」というものがあります。傍糸球体装置は腎臓に流れてくる血液が少なくなると「血圧が低くなっている!」と判断して「レニン」という物質を放出します。
レニンはアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠという物質に変えるはたらきがあります。
更にアンジオテンシンⅠはACEという酵素によってアンジオテンシンⅡになります。
アンジオテンシンⅡは、血管を収縮させて血圧を上げるはたらきがあります。また副腎という臓器に作用して、アルドステロンというホルモンを分泌させます。
アルドステロンは血液中にナトリウムを増やします(詳しく言うと、尿として捨てる予定だったナトリウムを体内に再吸収します)。血液中のナトリウムが増えると血液の浸透圧が上がるため、ナトリウムにつられて水分も血液中に引き込まれていきます。これにより血液量が増えて血圧も上がるという仕組みです。
通常であればこのRAA系は、血圧が低くなった時だけ作動します。しかし血圧が高い状態が持続している方は、このRAA系のスイッチが不良になってしまい、普段からRAA系システムが作動してしまっていることがあります。
アラセプリルは体内でデアセチルアラセプリルとカプトプリルにという物質になり、これがACEのはたらきをブロックし、アンジオテンシンⅡが作られないようにします。血圧を上げる物質であるアンジオテンシンⅡが少なくなるため、血圧が下がるというわけです。
ちなみにカプトプリルは世界初のACE阻害薬である「カプトリル」に含まれる成分と同じです。
また、ACEをブロックするとキニナーゼⅡという物質の産生も抑える事が分かっています。キニナーゼⅡはブラジキニンという物質の分解を抑えるため、キニナーゼⅡが減ると、ブラジキニンも減ります。
ブラジキニンも血圧を上げる作用があるため、この作用も降圧作用に貢献していると考えられています。
Ⅱ.臓器保護作用
アラセプリルには臓器保護作用があります。
具体的には心臓・腎臓や脳に対して、これらの臓器が傷付くのを防いでくれるのです。
心臓が傷んでしまい、十分に機能できなくなる状態を「心不全」と呼びます。高血圧は心不全のリスクになるため、アラセプリルの降圧作用はそれ自体が心保護作用になります。
またそれ以外にも先ほど説明したRAA系の「アンジオテンシンⅡ」は心筋の線維化(リモデリング)を促進し、これも心臓の力を弱める原因となります。
アラセプリルはアンジオテンシンⅡの産生量を少なくしてくれるため、これも心保護作用になります。またアンジオテンシンⅡが減る事によりアルドステロンも減るため、これにより体内の余分な水分が減り、心臓への負担も軽減します。
実際、アラセプリルは心肥大の患者さんの心肥大の抑制を認め、心筋リモデリング(心筋の線維化)を抑制する事が報告されています。
また腎臓に対しても同様です。腎臓が傷んでしまい、十分に機能できなくなる状態は「腎不全」と呼ばれ、これも高血圧が発症リスクになるため、アラセプリルの降圧作用はそれ自体が腎保護作用になります。
アンジオテンシンは腎臓の線維化も促進し、これも腎不全の原因になるのですが、アラセプリルは同様の機序で腎臓の線維化を抑え、腎保護作用を発揮します。
Ⅲ.血糖改善作用
アラセプリルには血糖値を改善させる作用があります。
その作用は強くはないため単独で糖尿病の治療に用いられる事はありませんが、高血圧に糖尿病を合併しているような場合では1剤で複数の作用を期待できます。
血糖を改善させる作用はアラセプリルがアンジオテンシンⅡの産生を抑制するためだと考えられています。アンジオテンシンⅡはインスリンのはたらきを弱める事で、血液中の血糖が筋肉などの組織に取り込まれにくくします。
ACE阻害薬はACEをブロックすることでアンジオテンシンⅡを減らすため、インスリンの作用が減弱されにくくなり、これが血糖改善になるのです。
またACE阻害薬はブラジキニンという物質を増やす作用があります。ブラジキニンは血液中の血糖を筋肉などの組織に取り込むはたらきがあるため、これも血糖改善作用に貢献しています。
Ⅳ.咳反射の亢進
アラセプリルはACEをブロックする事でサブスタンスPという物質を増やします。
サブスタンスPは咳反射を亢進させる物質です。そのためACE阻害薬は咳が出やすくなるという副作用が生じることがあります。
一方で咳というのは気管に異物が入らないように気管や肺を守るはたらきがあります。特に高齢者では食物を飲み込む力(嚥下能)が弱ってしまい、食道ではなく気管に食べ物が入ってしまうことがあります(これを誤嚥と呼びます)。
アラセプリルはACEを阻害して咳反射を亢進させることにより、この誤嚥を起こす頻度を減らす効果があるのではと考えられており、しばしば誤嚥リスクの高い方に投与されます。
アラセプリルをはじめとしたACE阻害薬の誤嚥予防効果は強いものではありませんが、誤嚥は誤嚥性肺炎を引き起こし命に関わる事もあるため、その頻度を少しでも減らせることは意味のある事です。
4.アラセプリルの副作用
アラセプリルの副作用はどのようなものがあるのでしょうか。またアラセプリルは安全はお薬なのでしょうか、それとも副作用が多いお薬なのでしょうか。
全体的な印象としてアラセプリルをはじめとしたACE阻害薬は安全性が高いお薬です。適正に使用していれば重篤な副作用に出会うことはほとんどありません。
アラセプリルはジェネリック医薬品であるため副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし先発品のセタプリルにおいては副作用発生率は約4.65%と報告されており、アラセプリルも同程度だと考えられます。
生じうる副作用としては、
- 咳嗽(咳)
- 発疹
- めまい
- 吐き気
- ふらつき感
- 全身倦怠感
- 味覚異常
などが報告されています。
味覚異常は「カプトプリル」を含むACE阻害薬でしばしば出現する副作用です。カプトプリルは構造上SH基(チオール基)を持ち、これが味覚異常(味覚がおかしくなる)を生じると考えられています。
ちなみにその後味覚異常の生じないACE阻害薬が探され、カプトプリル以外のACE阻害薬では味覚異常が生じなくなっています。アラセプリルは体内でカプトプリルの主成分であるカプトリルに代謝されるため、味覚異常が生じる可能性があります。
咳嗽はACE阻害薬がサブスタンスPを増やす事によって生じる副作用で、ACE阻害薬に共通する副作用になります。
ふらつき、倦怠感はアラセプリルは血圧を下げてしまうことによって生じる症状です。
また血液検査値の異常の報告もあり、
- カリウム上昇
- AST、ALT上昇
- BUN、クレアチニン上昇
などが挙げられます。
アラセプリルは「アルドステロン」というホルモンのはたらきを弱めますが、アルドステロンは本来、体内のナトリウムを増やし、その代り体内のカリウムを減らすはたらきがあります(ナトリウムを尿から再吸収し、カリウムを尿に排泄します)。
アラセプリルはこの作用を止めてしまうため、体内のカリウムが増えすぎてしまうことがあるのです。
そのためACE阻害薬を長期間副作用されている方は定期的に血液検査などで肝機能、腎機能、電解質(カリウムなど)をチェックしておくことが望ましいでしょう。
稀ですが重篤な副作用として
- 血管浮腫
- 無顆粒球症
- 天疱瘡様症状
- 高カリウム血症
- 汎血球減少
- 腎不全
- 膵炎
などが報告されています。
また、アラセプリルは次の状態の方には禁忌(使用してはダメ)となっています。
- アラセプリルの成分に対し過敏症の既往歴のある方
- 血管浮腫の既往歴のある方(血管浮腫による呼吸困難が出現する可能性がある)
- デキストラン硫酸固定化セルロース、トリプトファン固定化ポリビニルアルコール又はポリエチレンテレフタレートを用いた吸着器によるアフェレーシスを施行中の方(ブラジキニンの蓄積によりアフナフィラキシーが生じる可能性がある)
- アクリロニトリルメタリルスルホン酸ナトリウム膜(AN69®)を用いた血液透析施行中の方(透析中にアナフィラキシーを起こす可能性がある)
- 妊婦又は妊娠している可能性のある方
- ラジレスを投与中の糖尿病の方(非致死性脳卒中、腎機 能障害、高カリウム血症及び低血圧のリスクが高まる可能性がある)
妊婦さんに投与できないのは、妊娠中期及び末期にACE阻害薬を投与された際に、羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全及び羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、頭蓋顔面の変形などが現れたとの報告があるためです。
難しい用語を並べましたが、要するにACE阻害薬を妊娠中に服用すると赤ちゃんに奇形が生じる確率が上がってしまうため、使用する事が出来ないという事です。
また糖尿病患者さんがラジレスとACE阻害薬は併用すると非致死性脳卒中、腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧のリスク増加が報告されています。
ただしラジレスとの併用に関しては、どうしても他の降圧剤で治療できない高血圧症の方に限り、慎重に用いることは認められています。
5.アラセプリルの用法・用量と剤形
アラセプリルは、
アラセプリル錠 12.5mg
アラセプリル錠 25mg
アラセプリル錠 50mg
の3剤形があります。
アラセプリルの使い方は、
通常、成人に1日25~75mgを1~2回に分割経口投与する。年齢、症状により適宜増減する。なお、重症例においても1日最大投与量は100mgまでとする。
と書かれています。
ただし血清クレアチニン値が3を超えるような腎障害のある方は、減量するか投与間隔を伸ばすことが推奨されています。
アラセプリルは作用の持続時間は中等度で、1日1回だと効果はやや不安定になる可能性があります。基本的には1日2回の投与が必要になります。
ちなみにアラセプリルを服薬してからどれくらいで効果を判定すれば良いのでしょうか。これは明確に決まっているわけではありませんが、通常2週間程度で効果は現れはじめます。しっかりとした効果を判定するには「約1カ月」程度を考えます。
6.アラセプリルが向いている人は
以上から考えて、アラセプリルが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
アラセプリルの特徴をおさらいすると、
・中等度の血圧を下げる作用がある
・心臓・腎臓などの臓器保護作用がある
・糖尿病を改善させる作用がある
・空咳が起こり得るが、これが誤嚥の予防になる事もある
・1日2回の服用が必要
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い
というものでした。
アラセプリルは特に大きな特徴は少なく、一般的なACE阻害薬になります。服用回数は1日2回でやや手間となります。もちろん悪いお薬では全くないのですが、このような特徴の乏しさから知名度は高くなく、あまり処方されることのないお薬です。
最近ではARBなどのより新しい降圧剤によって、アラセプリルのようなACE阻害薬が処方されることが少なくなりましたが、どんな場合もARBの方が優れているという事はありません。
ARBはACE阻害薬と比べて空咳が生じにくいなどのメリットもありますが、一方で薬価が高いというデメリットもあります。また心筋リモデリングの抑制効果はARBよりもACE阻害薬の方が優れているという報告もあります。
古いお薬ではありますが、正しく使えば現在でも十分な効果を期待できるお薬なのです。
7.先発品と後発品は本当に効果は同じなのか?
アラセプリルは「セタプリル」というお薬のジェネリック医薬品になります。
ジェネリックは薬価も安く、患者さんにとってメリットが多いように見えます。
しかし「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」とジェネリックへの切り替えを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。
ジェネリックは、先発品と比べて本当に遜色はないのでしょうか。
結論から言ってしまうと、先発品とジェネリックはほぼ同じ効果・効能だと考えて問題ありません。
ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。
発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、
ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。
しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば使い心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。
これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。この多少の違いが人によっては大きく感じられることもあるため、ジェネリックに変えてから調子が悪いという方は先発品に戻すのも1つの方法になります。
では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。
先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから実は発売までに莫大な費用が掛かっています。有効成分を探す開発費用、そしてそこから動物実験やヒトにおける臨床試験などで効果を確認するための研究費用など、お薬を1つ作るのには実は莫大な費用がかかるのです(製薬会社さんに聞いたところ、数百億という規模のお金がかかるそうです)。
しかしジェネリックは、発売に当たって先ほども説明した「生物学的同等性試験」はしますが、有効成分を改めて探す必要もありませんし、先発品がすでにしている研究においては重複して何度も同じ試験をやる必要はありません。
先発品と後発品は研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてそれが薬価の差になっているのです。
つまりジェネリック医薬品の薬価は莫大な研究開発費がかかっていない分が差し引かれており先発品よりも安くなっているということで、決して品質の差が薬価の差になっているわけではありません。