アルメタ軟膏の強さと上手な使い方

アルメタ軟膏(一般名:アルクロメタゾンプロピオン酸エステル)は、1988年から発売されているステロイド外用剤になります。

外用剤というのはいわゆる「塗り薬」のことです。塗り薬は効かせたい部位にのみしっかりと効かせることができ、飲み薬のように全身に作用しにくいため副作用も少ないというメリットがあります。

アルメタは外用剤の中でもステロイドを配合した外用剤になりますが、「ステロイド」がどのような作用を持つお薬なのか皆さん正しく理解しているでしょうか。「何となく怖いし使わない方がいいもの」と誤った偏見を持っていませんか。

もちろん安易に、漫然と使うことはよくありませんが、ステロイドは正しく使えば私たちにとってとても役立つお薬です。

ステロイドにもたくさんの種類があります。その中でアルメタはどのくらいの強さでどのような位置づけのお薬なのでしょうか。皮膚の薄い部位や小児・赤ちゃんなどにも塗れるのでしょうか。

ここではアルメタ軟膏の強さやその効能、副作用などについて紹介していきます。

 

1.アルメタ軟膏の特徴と強さ

まずはアルメタ軟膏の特徴と、ステロイド外用剤の中での強さを紹介します。

アルメタは皮膚に塗るステロイド外用剤であり、主に皮膚の炎症を抑える作用を持ちます。ステロイド外用剤の中での強さは「中等度」となり、穏やかな強さのお薬になります。

ステロイド外用剤には、主に次の3つの作用があります。

  • 免疫反応を抑える
  • 炎症を抑える
  • 皮膚細胞の増殖を抑える

ステロイドには免疫反応(身体に侵入してきたばい菌などの異物をやっつけようとする反応)を抑えるはたらきがあります。免疫が異物を攻撃しなくなれば異物と免疫が闘わなくなるため炎症反応も生じにくくなります。これにより皮膚の炎症(皮膚炎)を改善させるはたらきがあります。

また皮膚細胞の増殖を抑えるはたらきがあり、これによって皮膚を薄くする作用も期待できます。

ステロイド外用剤は強さによって5段階に分かれています。

【分類】 【強さ】 【商品名】
Ⅰ群 最も強力(Strongest) デルモベート、ジフラールなど
Ⅱ群 非常に強力(Very Strong) アンテベート、ネリゾナ、マイザーなど
Ⅲ群 強力(Strong) ボアラ、リンデロンV、リドメックスなど
Ⅳ群 中等度(Medium) アルメタ、ロコイド、キンダベートなど
Ⅴ群 弱い(Weak) コートリル、プレドニンなど

この中でアルメタは「Ⅳ群(中等度)」に属します。

ただしアルメタはⅣ群の中では強い部類に入り、同ランクの「ロコイド」と比較しても作用が強力であったという報告もあります。

ステロイドはしっかりと炎症を抑えてくれる頼れるお薬ですが、一方で長期使用による副作用の問題もあるため、皮膚の状態に応じて適切な強さのお薬を正しく使い分ける事が大切です。

強いステロイドは強力に炎症を抑えてくれますが、一方で免疫を抑制しすぎたり皮膚を薄くしすぎたりといった副作用のリスクも高くなります。反対に弱いステロイドは抗炎症作用は穏やかですが、副作用も生じにくいのがメリットです。

アルメタは外用ステロイド剤の中では効きは穏やかであるため、顔や陰部など皮膚が薄い部位にも使いやすいステロイドになります。

しかしステロイドはどれも長期使用すると、皮膚の細胞増殖を抑制したり、免疫力を低下させたりしてしまいます。これによって皮膚が薄くなってしまったり感染しやすくなってしまったりといった副作用が生じる可能性があります。

アルメタもそういった副作用が生じる可能性はあるため、必要な期間のみ使用し、漫然と塗り続けないことが大切です。

以上からアルメタの特徴として次のような事が挙げられます。

【アルメタの特徴】

・Ⅳ群(中等度の強さ)に属する外用ステロイド剤である
・炎症を抑える作用、免疫反応を抑える作用、皮膚細胞の増殖を抑える作用がある
・ステロイドの中で効果は穏やか
・顔や陰部などの皮膚が薄い部位にも使いやすい
・ステロイドであるため、長期使用による副作用に注意

 

2.アルメタはどんな疾患に用いるのか

アルメタはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

湿疹・皮膚炎群(進行性指掌角皮症を含む)、乾癬、痒疹群(ストロフルス、蕁麻疹様苔癬、固定蕁麻疹を含む)、虫さされ、掌蹠膿疱症、扁平苔癬、ジベル薔薇色粃糠疹、紅斑症(多形滲出性紅斑、ダリエ遠心性環状紅斑)、薬疹・中毒疹、紅皮症、特発性色素性紫斑(シャンバーグ病、マヨッキー紫斑、紫斑性色素性苔癬様皮膚炎)、慢性円板状エリテマトーデス

難しい専門用語が並んでいますが、皮膚の炎症を抑えてくれるのが外用ステロイド剤になります。そのため皮膚の炎症が生じている疾患に幅広く効果が期待できます。

進行性指掌角皮症とはいわゆる「手荒れ」の事で、水仕事などで手を酷使する事により手の皮膚が傷つきやすく、炎症を起こしてしまいます。

扁平苔癬はかゆみを伴うたくさんの丘疹(小さな発疹)が融合し、盛り上がってうろこ状になる皮膚疾患です。

これらの疾患はアルメタの炎症を抑えるはたらきが効果を発揮します。

ストロフルスはアレルギー反応の1つで、主に虫に刺された後に生じる皮膚の腫れです。じんま疹もアレルギーの一種です。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは、自己免疫疾患になります。自己免疫疾患は免疫(ばい菌と闘う力)が何らかの原因によって暴走してしまい、自分自身を攻撃してしまう病気です。掌蹠膿疱症では、免疫の異常によって手足に膿胞(膿が溜まった皮疹)が出来てしまいます。

アレルギー疾患や掌蹠膿疱症のような自己免疫疾患は、免疫が過剰にはたらいてしまっている結果生じているため、アルメタの免疫力を低下させる作用が効果を発揮します。

乾癬(かんせん)とは皮膚の一部の細胞増殖が亢進していしまい、赤く盛り上がってしまう状態です。

乾癬にはアルメタの皮膚細胞増殖を抑制するはたらきが効果を発揮します。

注意点としてステロイドは免疫(身体が異物と闘う力)を抑制するため、ばい菌の感染に弱くなってしまいます。そのため、細菌やウイルスが皮膚に感染しているようなケースでは、そこにステロイドを塗る事は推奨されていません。

アルメタの有効率は

  • 湿疹・皮膚炎群への有効率は83.9%
  • 乾癬への有効率は63.0%
  • 痒疹群への有効率は74.1%
  • 虫刺されへの有効率は85.7%
  • 掌蹠膿疱症への有効率は61.4%
  • 扁平苔癬への有効率は71.4%
  • ジベル薔薇色粃糠疹への有効率は92.2%
  • 紅斑症への有効率は85.1%
  • 薬疹・中毒疹への有効率は90.6%
  • 紅皮症への有効率は85.1%
  • 特発性色素性紫斑への有効率は56.9%
  • 慢性円板状エリテマトーデスへの有効率は63.9%

と報告されています。

 

3.アルメタ軟膏にはどのような作用があるのか

皮膚の炎症を抑えてくれるアルメタですが、具体的にはどのような作用があるのでしょうか。

アルメタの作用について詳しく紹介します。

 

Ⅰ.抗炎症作用

アルメタは、ステロイド剤です。

ステロイドには様々な作用がありますが、その1つに免疫を抑制する作用があります。

免疫というのは異物が侵入してきた時に、それを攻撃する生体システムの事です。皮膚からばい菌が侵入してきた時には、ばい菌をやっつける細胞を向かわせることでばい菌の侵入を阻止します。

免疫は身体にとって非常に重要なシステムですが、時にこの免疫反応が過剰となってしまい身体を傷付けることがあります。

代表的なものがアレルギー反応です。アレルギー反応というのは、本来であれば無害の物質を免疫が「敵だ!」と誤認識してしまい、攻撃してしまう事です。

代表的なアレルギー反応として花粉症(アレルギー性鼻炎)がありますが、これは「花粉」という身体にとって無害な物質を免疫が「敵だ!」と認識して攻撃を開始してしまう疾患です。その結果、鼻水・鼻づまり・発熱・くしゃみなどの不快な症状が生じてしまいます。

同じく皮膚にアレルギー反応が生じる疾患にアトピー性皮膚炎がありますが、これも皮膚の免疫が誤作動してしまい、本来であれば攻撃する必要のない物質を攻撃してしまい、その結果皮膚が焼け野原のように荒れてしまうのです。

このような状態では、過剰な免疫を抑えてあげると良いことが分かります。

ステロイドは免疫を抑えるはたらきがあります。これによって炎症が抑えられます。

炎症とは、

  • 発赤 (赤くなる)
  • 熱感 (熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛みを感じる)

の4つの徴候を生じる状態のことです。今説明したように感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。

みなさんも身体をぶつけたり、ばい菌に感染したりして、身体がこのような状態になったことがあると思います。これが炎症です。皮膚に炎症が起こることを皮膚炎と呼びます。皮膚炎も外傷でも生じるし、ばい菌に感染することでも生じるし、アレルギーでも生じます。

ステロイドは免疫を抑制することで、炎症反応を生じにくくさせてくれるのです。

 

Ⅱ.免疫抑制作用

上記のようにアルメタをはじめとしたステロイドは免疫力を低下させる作用があります。

アルメタは塗り薬であるため、塗った部位の皮膚の免疫力が低下します。通常はこれはステロイドの副作用となります。

強いステロイドを長期間塗り続けていると免疫力が低下するため、ばい菌(細菌やウイルス、真菌など)に感染しやすくなってしまいます。

しかし反対に免疫が暴走してしまって自分を攻撃してしまうようなアレルギー疾患や自己免疫性疾患に対してはステロイドの免疫力低下作用が利点になる事もあります。

 

Ⅲ.皮膚細胞の増殖抑制作用

アルメタをはじめとしたステロイド外用剤は、塗った部位の皮膚細胞の増殖を抑えるはたらきがあります。

これも主に副作用となる事が多く、強いステロイドを長期間塗り続けていると皮膚が薄くなっていき毛細血管が目立って赤みのある皮膚になってしまう事があります。

しかし反対に皮膚が肥厚してしまうような疾患(乾癬や角化症など)においては、ステロイドを使う事で皮膚細胞の増殖を抑え、皮膚の肥厚を改善させることも出来ます。

 

4.アルメタ軟膏の副作用

アルメタ軟膏の副作用発生率は0.56~2.86%と報告されており、その頻度は多くはありません。塗り薬で全身に投与するものではないため、副作用は少なくなっています。

しかしステロイド剤ですので、漫然と塗り続けないように注意は必要です。

生じる副作用もほとんどが局所の皮膚症状で、

  • 毛嚢炎(毛穴の奥にある毛包の炎症)
  • せつ(おでき)
  • ステロイドざ瘡(ステロイドの副作用で生じるにきび)
  • 皮膚刺激感

などになります。

いずれも重篤となることは少なく、多くはアルメタの使用を中止すれば自然と改善していきます。長期間使えば使うほど発生する可能性が高くなるため、ステロイドは漫然と使用する事は避け、必要な期間のみしっかりと使う事が大切です。

また滅多にありませんが、ステロイド外用薬を長期・大量に塗り続けていると全身に作用してしまい、

  • 緑内障(眼圧亢進)
  • 白内障

などが生じる可能性があると言われています。

ステロイド外用剤の注意点としては、ステロイドは免疫力を低下させるため免疫力が活性化していないとまずい状態での塗布はしてはいけません。具体的にはばい菌感染が生じていて、免疫がばい菌と闘わなくてはいけないときなどが該当します。

このような状態の皮膚にアルメタを塗る事は禁忌(絶対にダメ)となっています。

ちなみに添付文書には次のように記載されています。

【禁忌】

(1)細菌・真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症、及び動物性皮膚疾患(疥癬、けじらみ等)
(2)本剤に対して過敏症の既往歴のある患者
(3)鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎
(4)潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷

これらの状態でアルメタが禁忌となっているのは、皮膚の再生を遅らせたり、感染しやすい状態を作る事によって重篤な状態になってしまう恐れがあるためです。

 

5.アルメタの用法・用量と剤形

アルメタには、

アルメタ軟膏 0.1% 5g (チューブ)
アルメタ軟膏 0.1% 10g (チューブ)
アルメタ軟膏 0.1% 200g (瓶)

といった剤型があります。

ちなみに塗り薬には「軟膏」「クリーム」「ローション(外用液)」などいくつかの種類がありますが、これらはどのように違うのでしょうか。

軟膏は、ワセリンなどの油が基材となっています。長時間の保湿性に優れ、刺激性が少ないことが特徴ですが、べたつきは強く、これが気になる方もいらっしゃいます。また皮膚への浸透力も強くはありません。

クリームは、水と油を界面活性剤で混ぜたものです。軟膏よりも水分が入っている分だけ伸びがよく、べたつきも少なくなっていますが、その分刺激性はやや強くなっています。

ローションは水を中心にアルコールなどを入れることもある剤型です。べたつきはほとんどなく、遣い心地は良いのですが、保湿効果は長続きしません。しかし皮膚への浸透力は強く、皮膚が厚い部位などに使われます。

アルメタの使い方は、

通常、1日1~数回、適量を患部に塗布する。なお、症状により適宜増減する。

と書かれています。実際は皮膚の状態や場所によって回数や量は異なるため、主治医の指示に従いましょう。

 

6.アルメタの使用期限はどれくらい?

アルメタの使用期限って、どのくらいの長さなのでしょうか。

「家に数年前に処方してもらった塗り薬があるんだけど、これってまだ使えますか?」

このような質問は患者さんから時々頂きます。

これは保存状態によっても異なってきますので、一概に答えることはできませんが、適正な条件で保存されていたという前提(気密容器・室温保存)だと、「3年」が使用期限となります。

 

7.アルメタ軟膏が向いている人は?

以上から考えて、アルメタ軟膏が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

アルメタ軟膏の特徴をおさらいすると、

・Ⅳ群(中等度の強さ)に属する外用ステロイド剤である
・炎症を抑える作用、免疫反応を抑える作用、皮膚細胞の増殖を抑える作用がある
・ステロイドの中で効果は穏やか
・顔や陰部などの皮膚が薄い部位にも使いやすい
・ステロイドであるため、長期使用による副作用に注意

というものでした。

ここから、皮膚の免疫反応が過剰となり、炎症が生じている際に使用する塗り薬だと考えられます。

ステロイドの中では効果は穏やかであるため、比較的軽症の皮膚状態や皮膚が過敏な部位(皮膚が薄い顔や陰部)に向いているお薬でしょう。

しかし、これはステロイド全てに言えることですが、漫然と使い続けることは良くありません。ステロイドは必要な時期のみしっかりと使い、必要がなくなったら使うのを止めるという、メリハリを持った使い方が非常に大切です。