アローゼンで腹痛や下痢が生じる理由とその対処法

アローゼン顆粒(一般名:センナ・センナ実)は、1967年から発売されている下剤です。

とても古いお薬ですが、しっかりとした排便作用が得られるため、現在でも便秘症の方に広く用いられています。

アローゼンは「大腸刺激性下剤」と呼ばれ、お薬の力で強制的に腸を動かすような効き方をするお薬になります。お薬が適度に腸管を動かしてくれれば適切に排便が促されるのですが、効きすぎてしまうと腸管の動きが活性化しすぎてしまい、下痢になったり腹痛が生じたりする事もあります。

このような機序から、アローゼンは適切な量で用いる事が重要なお薬になります。便秘の時はつらいため「早く便を出してスッキリしたい」と思いますが、だからといって一気にたくさんの量を服用してしまうと、下痢や腹痛で苦しむ事になってしまいます。

ここでは、アローゼンの服用によって下痢や腹痛といった副作用を生じさせないための工夫と、これらの症状が生じてしまった時の対処法について考えていきましょう。

 

1.アローゼンの作用機序

アローゼンは下剤の1つで、便を出しやすくするはたらきがあります。

便秘症の方を中心に臨床で患者さんの役に立っているお薬ですが、副作用として、

  • 下痢
  • 腹痛

といった消化器症状が生じる事があります。

なぜこのような症状が生じてしまうのでしょうか。その理由を知るため、まずはアローゼンがどのように便秘を改善させているのかを見ていきましょう。

アローゼン(一般名:センナ・センナ実)は、「センナ」と「センナ実(センナジツ)」という生薬が含まれており、このセンナとセンナ実が便秘を改善させる作用を持ちます。

ちなみにセンナはセンナという生薬の葉でセンナ実はセンナの実になります。どちらも下剤としての効果がありますが、センナの葉(センナ)の方が大腸刺激作用は強く、センナの実(センナジツ)はマイルドに便秘を改善させるはたらきがあります。

アローゼンを服用すると、その成分は口から食堂、胃腸と通って大腸にまで到達し、そこで大腸の腸内細菌によって分解され、「レインアンスロン」という物質が生成されます。

レインアンスロンは大腸の上皮細胞を刺激する事で、大腸の動き(蠕動運動)を亢進させる作用を持ちます。

レインアンスロンによって大腸が活発に動くようになると、便がスムーズに大腸から肛門へ輸送されるため、便が排出されやすくなるというわけです。

更にアローゼンにはセンナ以外にも

  • レイン
  • アロエエモジン
  • センノシドC

といった成分も含まれており、これらの成分にも瀉下作用(便を出す作用)を持ちます。

 

2.アローゼンで下痢・腹痛が生じる機序

アローゼンを服用すると腸管の動きが高まり、便が排出されやすくなります。

しかし一方で、

  • 下痢
  • 腹痛

といった副作用が生じる事もあります。この副作用はどうして生じてしまうのでしょうか。

アローゼンで下痢や腹痛が生じる理由は、アローゼンの作用機序から理解する事が出来ます。前項でお話したようにアローゼンは大腸を刺激する事で、強制的に大腸を動かすお薬です。

必ずしも大腸の動きを正常化するというわけではなく、人工的な作用によって無理矢理大腸を動かしているという効き方をします。

このような作用機序ですから、お薬の量が多ければ多いほど、大腸は強く刺激されます。

大腸の動きが低下している方の大腸が適度に刺激されれば、大腸の動きは正常レベルになり正常な排便が得られるようになるでしょう。しかし大腸が過度に刺激されてしまうと、大腸の動きは活性化しすぎてしまいます。

大腸の動きが正常を超えて高まってしまうと、「栄養を消化して体内に吸収する」という腸管の本来の役割を果たせなくなります。すると栄養は未消化のまま腸管を通り抜けてしまい、その結果として未消化便になります。また腸管は水分も吸収しにくくなるため、水様便・下痢となります。

大腸が過剰に動いてしまうと、それによって腹痛が生じる事もあります。

これがアローゼンで下痢や腹痛の副作用が生じる機序です。要するに、アローゼンが効きすぎてしまい、大腸が過度に動いてしまう事で下痢・腹痛が生じているのです。

 

3.アローゼンで下痢・腹痛が生じた際の対処法

アローゼンで下痢や腹痛が生じてしまったらどのように対処すればいいのでしょうか。

下痢や腹痛が生じるのはアローゼンが効きすぎてしまっている事が原因です。そのためアローゼンの量を自分にとっての適正量に調整してあげる事が有効な対処法になります。

アローゼンの使い方は、

通常成人1回0.5~1.0gを1日1~2回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

となっており、通常1日量は0.5g~2.0gになっています。

臨床的には、まずは1日1回0.5g服用から始める事が多く、多くても1日1回1g服用からです。それ以上の量を使うのは初期量でしばらく様子をみて効果が不十分であった場合になります。

下痢や腹痛が出てしまった場合、アローゼンが効きすぎて大腸が動きすぎてしまっているわけですので、基本的には服用量を減らす必要があります。

1日1.0gを服用して下痢・腹痛が生じてしまったのであれば、1日0.5gに減量してみましょう。1日0.5gの服用で下痢・腹痛が生じてしまったのであれば、1日0.25gに減量しても良いでしょう。

時に「1日1回1.0gの服用だと下痢・腹痛になってしまうけど、1日1回0.5gの服用に減らすと今度は便秘になってしまう」と調整が難しいようなケースもあります。

このような場合は1日量1.0gの服用タイミングを変えてみたり、1日2回(1回0.5g)に分けて服用したりするとうまく行く場合があります。

ただしアローゼンの効果は個人差はありますが、服用後8~12時間後に得られる事が報告されています。これを念頭において、夜中の熟眠中などに排便が生じないように服用のタイミングは工夫する必要があります。

 

4.お薬以外の便秘の改善法

便秘がひどい場合、下剤を服用するのは有効な方法の1つです。

しかし便秘をお薬だけで解決しようとするのはあまり良い方法とは言えません。本来、便というのは自然と出るものです。下剤の中には耐性があるものもありますので、漫然と下剤に頼り続けていると、いずれよりひどい便秘に悩む事にもなってしまいます。

下剤を服用するよりも大切なのは、まず日常の生活習慣や食事の工夫で改善をはかることです。

では排便を促すような生活習慣にはどのようなものがあるのでしょうか。

最後に便秘を改善するために有効な生活習慣の工夫を紹介します。

 

Ⅰ.規則正しい生活を

基本的な事ですが、胃腸を正常に動かすためには規則正しい生活が必須です。

胃腸というのは、自分たちで意識的に動かせる臓器ではありません。では胃腸はどのように動かされているのかというと、「自律神経」という神経が状況に応じて適切に胃腸の動きをコントロールしてくれているのです。

自律神経には交感神経と副交感神経があります。

交感神経は興奮の神経で日中に仕事をしている時など、集中力が必要な時に活性化します。副交感神経はリラックスの神経で、ゆっくりしているような時に活性化します。

そして胃腸は交感神経が活性化している時は動きが抑えられ、副交感神経が活性化している時に活発に動きます。

規則正しい生活を送っていると、交感神経と副交感神経のバランスが保たれるため、規則正しく排便が行われるようになります。

しかし生活が不規則だとこのバランスが乱れます。イライラしがちであったり、夜更かし・睡眠不足が多いと交感神経が活性化する比率が高くなるため、胃腸の動きは低下し、便秘傾向となります。

便秘で悩んでいる方は、

  • 睡眠をしっかりとる
  • 心身をリラックスする時間を必ず毎日取り入れる

など、副交感神経が正常に活性化するような生活習慣を意識するようにしましょう。

 

Ⅱ.適度な運動を

ウォーキングやジョギングなど、適度な運動は腸管を動かすために有効です。身体を動かすと胃腸も動きます。反対に身体を動かさないと胃腸の動きも低下します。

例えば病気で入院して1日中寝たきりになると、必ずといっていいほど皆さん便秘になります。身体を全く動かさなくなった結果、胃腸も動かなくなってしまったからです。

便秘で悩んでいる方は、適度な運動をしているかも見直してみましょう。運動不足なのであればそれも便秘の一因かもしれません。

  • 毎日職場まで歩いてみる
  • 車を使わずなるべく徒歩や自転車で買い物に行く

など、ちょっとした工夫で構いません。日常に適度な運動を取り入れるようにしてみて下さい。

 

Ⅲ.食物繊維

野菜や果物に含まれている食物繊維は、便秘の改善にとても有効です。便秘の方の食生活を聞くと野菜の摂取量が少ない方が非常に多く見受けられます。

このような場合は野菜をしっかりと取れば、便秘の改善が得られるでしょう。

野菜や果物に含まれる食物繊維は主に「セルロース」が主成分となっています。このセルロースは、腸管内で水分を含んで膨張する性質があります。

セルロースが水分を含んで膨張すると、腸管を刺激して腸管の動きを活発にしてくれます。また膨張したセルロースが便も取り込むため、固い便が柔らかくなるという作用もあります。

食物繊維は成人であれば1日20gの摂取が推奨されています。しかし1日20gの食物繊維を取るには野菜を300~400g摂取する必要があり、これはなかなか大変です。

食事だけではどうしても食物繊維を十分に取れないという方は、食物繊維を配合したサプリメントや健康食品を利用するのも方法の1つです。

ただし市販のサプリメント・健康食品は、「便秘に有効な食物繊維を配合!」と謳っているのに食物繊維の含有量が極めて低いものも多くあります。

食物繊維をしっかりと補うのであれば、最低でも1回で3g程度の食物繊維を摂取できるものにしましょう。含有量が1g以下のサプリメントでは、1回服用しただけではあまり効果は得られません。

食物繊維を高用量摂取できるサプリメントには次のようなものがあります。

 

食事前に食べる野菜ゼリー「ベジファス」

ベジファスは1包で食物繊維を5g摂取できます。ゼリー状ですので食べやすく、食事前に手軽に食べる事が出来ます。

 

イージーファイバー

イージーファイバーは1パックで食物繊維を4.2g摂取できます。粉末状ですのでお茶やコーヒーなどに溶かす事ができ、日常の中で無理なく摂取できるのが利点です。

 

Ⅳ.乳酸菌

乳酸菌は細菌の一種で、私たちの腸内にも存在している常在菌であり、いわゆる「善玉菌」として知られています。

乳酸菌は糖分を酪酸と酢酸に分解するはたらきがあります。これらの酸を作る事で腸内のpHを適正に保ち、また酢酸の殺菌作用によって有害菌の発育を抑えてくれます。

腸内細菌のバランスが乱れて便秘になっている場合は、乳酸菌を摂取する事で腸内環境を改善させる事で便秘の改善も得られます。

食品で乳酸菌を多く含むものには、ヨーグルトやチーズなどがあります。

また病院で処方してもらえるお薬の中にも、乳酸菌を含んでいるものはいくつかあります(商品名:ビオフェルミン、ミヤBM、ビオスリーなど)。主治医と相談し、必要に応じて処方してもらっても良いでしょう。

乳酸菌は「オリゴ糖」を栄養として増殖していきますので、併せてオリゴ糖を摂取するのも有効です。オリゴ糖が十分に腸内に届けば、それだけ乳酸菌が増殖しやすくなるためです。

乳酸菌を含むサプリメントを利用する場合は、次のようなものがお勧めです。

 

新ビオフェルミンS

ビオフェルミンは代表的な乳酸菌製剤で、長い実績があり安心して使えるのが利点です。

・コンク・ビフィズス菌
・コンク・フェーカリス菌
・コンク・アシドフィルス菌

という3つの乳酸菌を含み、これらが腸内環境を整えてくれます。

 

4種類の生菌で腸内バランスを整える医薬品【ファスコン整腸錠プラス】


「ファスコン整腸剤プラス」は京都薬品より発売されている乳酸菌錠剤です。

・フェリカス菌
・ラクトミン
・ビフィズス菌
・納豆菌

の4種の生菌に加え、消化酵素である「ビオヂアスターゼ」も含まれています。

「フェリカス菌」「ラクトミン」「ビフィズス菌」は乳酸菌になります。また納豆菌は有害菌(病原性大腸菌など)の増殖を抑える作用があります。

 

Ⅴ.水分

水分は便を柔らかくし、排便させやすくする作用があります。

便がコロコロに硬い場合は、水分量が足りなくて便秘になっている可能性があります。毎日の水分摂取量が足りているかどうかを見直してみましょう。

個人差もありますが、1日に必要な水分の量はおおよ1.5Lほどと言われています。

ただし心臓の持病がある方などは摂取できる水分量の制限がある事がありますので、主治医と相談の上で水分摂取量は決めてください。

 

Ⅵ.ストレスをためない

実はストレスでも便秘になるという事をご存知でしょうか。

先ほども説明したように腸管というのは、自律神経(交感神経と副交感神経)によって動かされています。

ストレスなどによって自律神経のバランスが崩れた状態を「自律神経失調症」と呼びますが、自律神経が失調状態になれば、腸管の動きも不安定になります。

すると便秘や下痢が生じやすくなります。

ストレスが原因で便秘になっている方はなるべくストレスを溜め込まないような生活を意識する事が大切です。

仕事などでどうしてもストレスが溜まってしまうという方は、仕事後や休日にしっかりとストレス発散の時間を持つようにしましょう。