アドソルビン原末(天然ケイ酸アルミニウム)の効果と副作用【止瀉剤】

アドソルビン原末(一般名:天然ケイ酸アルミニウム)は1984年から発売されている止瀉剤になります。止瀉剤とはいわゆる「下痢止め」のお薬のことです。

止瀉剤の中でアドソルビン原末は独特の作用を持ちます。強さも穏やかで、副作用も比較的少ないお薬です。そのため小児の下痢を抑えるために使われることもあります。

アドソルビン原末はどんな特徴のあるお薬で、どんな患者さんに向いているのでしょうか。

アドソルビン原末の効果や特徴についてみていきましょう。

 

1.アドソルビン原末の特徴

まずはアドソルビン原末の特徴について、かんたんに紹介します。

アドソルビン原末(一般名:天然ケイ酸アルミニウム)は下痢止めになり、主に軟便や水様便などの便の方に用いるお薬になります。

アドソルビン原末の主成分であるケイ酸アルミニウムは「吸着剤」としての作用を持っており、腸管にて水分や有害物質を吸着することで下痢を改善させてくれます。また腸管内で粘液状になるため、腸管粘膜を保護するはたらきもあります。

強い下痢止め薬は、腸管の動きを止めすぎてしまうなどの副作用で困ることがありますが、アドソルビンは腸管の動きを抑えるわけではなく、あくまでも吸着剤であるため、重篤な副作用が少ないのが利点です。

アドソルビンの下痢を抑える力は穏やかですが、その分重篤な副作用も少なく安全性に優れるお薬です。

デメリットとしては、アドソルビンの主成分であるアルミニウムは体内に蓄積するとアルミニウム脳症やアルミニウム骨症を起こしてしまうことがあります。アルミニウムは高濃度だと細胞に対して毒性があるため、脳細胞にダメージを与えてしまったり骨を軟化させたりしてしまう事があるのです。

アルミニウムは腎臓から排出されますので、腎機能が正常な人はアドソルビンでアルミニウム脳症・骨症になることはまずありません。しかし腎機能の悪い透析中の方はアドソルビンを使うのは危険で、禁忌になっています。

ちなみに下痢というものは、基本的には止めない方が良いものです。そのため下痢止めもなるべくなら使わない方が良いものです。

なせならば下痢が生じている時の多くは、必要があって下痢になっているからです。

例えば腸管に細菌が感染してしまって下痢が生じている「感染性腸炎」の場合、身体は細菌を早く体外に流し出したいために腸管の動きを活性化させ、その結果下痢になってしまっていることがあります。

この時にアドソルビンなどで腸管の水分を少なくして細菌を排出させにくくしてしまうと、下痢自体は確かに一時的に治まるでしょうが、細菌は腸内でどんどん増殖してしまうのでしょう。

そのため、下痢をお薬で抑える時には「その下痢は本当にお薬で止めても大丈夫なのか」という事を慎重に判断しないといけず、下痢が生じたら安易に使っていいものではありません。

ここからアドソルビン原末の特徴として次のようなことが挙げられます。

【アドソルビン原末(天然ケイ酸アルミニウム)の特徴】

・腸管の水分・有害物質を吸着することで下痢を改善する
・腸管粘膜を保護することはたらきがある
・作用は穏やかだが、安全性も高い
・下痢止めは極力使うべきではないため、適応は慎重に

 

2.アドソルビン原末はどんな疾患に用いるのか

アドソルビン原末はどのような疾患に用いられるのでしょうか。アドソルビン原末の添付文書を見ると、次のように記載されています。

【効能又は効果】
下痢症

アドソルビン原末は下痢止めになりますので、主な適応は下痢症になります。

ただし注意点としては、感染を伴う下痢症への使用は推奨されていません。

細菌やウイルスが腸に感染している場合、私たちの身体は腸を活発に動かすことで菌やウイルスを体外に排泄しようとします。

その時、アドソルビン原末などの下痢止めで腸管内の水分を吸着してしまうと、菌やウイルスが増殖しやすい環境になってしまい、感染がかえって長引いてしまう可能性が高くなるためです。

 

3.アドソルビン原末にはどのような作用があるのか

アドソルビン原末はどのような作用機序で下痢を抑えているのでしょうか。

アドソルビン原末が下痢に対してどのような作用を持っているのかを紹介します。

 

Ⅰ.腸管の水分を吸着する

アドソルビンの主成分であるケイ酸アルミニウムは、「酸性白土」とも呼ばれています。白土とは、いわゆる「粘土」の一種です。

酸性白土は脱色性・吸着性に優れることから、医療分野以外でも用いられているそうです。例えば石油の精製に用いられたり、脱色剤・乾燥剤としても用いられています。

この吸着性を医療に応用したのがアドソルビンです。医療領域においてアドソルビンは、腸管内で水分を吸着して下痢を改善させるはたらきがあるのです。

 

Ⅱ.腸管の有害物質を吸着する

アドソルビンは優れた吸着性を持っており、これは水分の吸着だけに限りません。細菌が分泌する毒素などを有害物質を吸着することで、腸管を清浄してくれる作用も期待できます。

 

Ⅲ.腸管粘膜を保護する

アドソルビンは、腸管内でゲル状となります。ゲル状の物質で腸管粘膜を覆ってくれるため、腸管粘膜を保護されます。

 

4.アドソルビン原末の副作用

アドソルビン原末は腸管内の水分や有害物質を吸着することで下痢症を改善させます。

アドソルビン原末の詳しい副作用発生率の調査は行われていないため、正確な副作用発症頻度は不明ですが、印象としては副作用の発生率は多くはありません。

頻度の多い副作用としては、

  • 腹部膨満
  • 嘔吐
  • 便秘

などといった、腸管の動きを抑えすぎることによる副作用です。これらの副作用は多くの場合でアドソルビン原末の量を適切に調整すれば改善します。

アドソルビンはそもそもが粘土であり粘着性の物質であるため、大量服用をすると口蓋や咽頭部に張り付いてしまい嘔吐運動が生じやすいと報告されていますので服薬の際は注意が必要です。

注意点として、アドソルビンは吸着剤であるため、腸管内の有害物質だけでなく必要な栄養素も吸着してしまう可能性があります。そのため必要な時のみの服用に留め、漫然と長期間投与すべきではありません。報告はありませんが、長期間投与すれば栄養状態に影響を与える可能性もあります。

アドソルビンの重篤な副作用として、透析を受けている患者さんでは、

  • アルミニウム脳症
  • アルミニウム骨症

などが生じる可能性があります。

アドソルビンにはアルミニウムが含まれており、これは腸管から0.5~2%ほど体内に吸収されます。腎機能が正常な方であれば吸収されたアルミニウムは適宜排出されるため問題ありませんが、腎臓が悪い透析患者さんでは、アルミニウムが体内に蓄積してしまうことがあります(アルミニウムの大部分は腎臓を経て尿から排泄されます)。

そのため透析患者さんにはアドソルビンは禁忌(絶対に使用してはいけない)となっています。

また、アドソルビンは感染が疑われるような下痢(感染性胃腸炎など)には原則として用いてはいけません。感染性腸炎にアドソルビンを用いて腸管内の水分を減らしてしまうと、腸管内で悪さをしている病原菌(細菌・ウイルスなど)が増殖しやすくなり、またいつまでも腸管から排出されなくなってしまうからです。

現状では感染がある場合でも、アドソルビンを使うメリットの方が高いと判断されれば慎重に用いられることもありますが、少なくとも安易に用いていいものではないのです。

また腸閉塞(イレウス:腸管が全く動かなくなっている状態)にもアドソルビンは使ってはいけません。

 

5.アドソルビンの用法・用量と剤形

アドソルビンは、

アドソルビン原末(天然ケイ酸アルミニウム) 500g

の1剤形のみがあります。

とは言っても、500gの瓶をそのまま処方される事は少なく、薬局で1gなどに分けて袋に入れてくれます。

アドソルビンの使い方は、

通常、成人1日3~10gを3~4回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する

と書かれています。

服用時間の規定はありませんが、アドソルビンが吸着剤であることを考えると食間(食事と食事の間)がベストでしょう。

食前あるいは食後に投与すると、食事で摂取した栄養素をアドソルビンが吸着してしまう可能性があります。

 

6.アドソルビン原末が向いている人は?

以上から考えて、アドソルビン原末が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

アドソルビン原末の特徴をおさらいすると、

【アドソルビン原末(天然ケイ酸アルミニウム)の特徴】

・腸管の水分・有害物質を吸着することで下痢を改善する
・腸管粘膜を保護することはたらきがある
・作用は穏やかだが、安全性も高い
・下痢止めは極力使うべきではないため、適応は慎重に

というものでした。

アドソルビン原末は止瀉剤(下痢止め)に分類されてはいますが、その作用は「吸着」です。下痢の時に余分な水分や毒素を吸着してくれるのはありがたいのですが、同時に身体にとって必要な栄養素も吸着してしまう可能性があります。

そのためアドソルビンの服用は必要な時に限るべきで、漫然と飲むことは推奨されません。

下痢は基本的にはお薬で無理矢理抑えない方が良いものです。特に腸管の感染症によって下痢となっている時は、下痢は止めてはいけません。

下痢がひどくて、その下痢を止めるメリットが止めないメリットよりも大きい場合にのみ、服薬するようにしましょう。

例えば、このまま下痢が続けば脱水になってしまいそう、電解質のバランスが崩れてしまいそう、という時には検討しても良いでしょう。

安易に使ってしまうと、腸管の感染であった場合に病原菌の感染を長引かせてしまったり、必要な栄養素が吸着されてしまい栄養状態が不良になる可能性もあります。

適応を主治医に慎重に見極めてもらい、必要な時にのみ使用するようにしましょう。