アンブロキソール錠の効果・効能と副作用

アンブロキソール錠は1992年から発売されているお薬で、ジェネリック医薬品(後発品)になります。1984年から発売されている「ムコソルバン」というお薬のジェネリックで、ムコソルバンより薬価が安いという利点があります。

アンブロキソールは「去痰剤」であり、主に風邪や気管支炎などで痰が多くなった時に、痰を出しやすくするお薬として処方されます。副作用が少なく、また剤型も様々なものがあって使い勝手が良いため、現在でも広く用いられています。

アンブロキソールはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに使うお薬なのでしょうか。今回はアンブロキソールの効能や特徴について紹介します。

 

1.アンブロキソールの特徴

まずはアンブロキソールの特徴をざっくりと紹介します。

アンブロキソールは、痰を出しやすくする痰切りのお薬で、副作用の少なさと剤型の多さが特徴です。

そのため、風邪や気管支炎・肺炎などを中心に現在でも広く処方されています。

痰切りのお薬にもいくつかの種類があります。その作用を大きく分けると、

・痰を出しやすくするお薬
・痰を溶かすお薬

があります。アンブロキソールは前者になり気道の粘液を増やしたり、気道の線毛運動を亢進させる事で痰を体外に排出しやすくします。この系統のお薬には他にもムコダイン(一般名カルボシステイン)などがあります。

もう1つが痰を溶かすお薬で、こちらにはビソルボン(一般名ブロムヘキシン)などがあります。

アンブロキソールは基本的には気道の痰を排出するのに使われますが、それ以外にも副鼻腔炎などにおける副鼻腔の排膿効果も認められており、副鼻腔疾患に使えるのも利点です。

アンブロキソールは副作用が少なく、臨床で処方している感覚としては「副作用がほぼない」と言っても良いようなお薬です。たまに胃不快感などの胃腸系の症状が出ますが、出たとしても軽度であり、安全性はとても高いお薬になります。

多くの剤型が揃っているのもアンブロキソールのメリットです。

錠剤の他に液剤があります。また小児用にはなりますがシロップもあり、小さい子でも飲みやすくなっています。

L製剤(徐放製剤)と呼ばれるものもあります。アンブロキソールは1日3回飲まないといけないのですが、L製剤はゆっくり長く効くように改良されたお薬なので、1日1回の服用で済みます。何回も服用するのが面倒という方にもおすすめです。L製剤にはOD錠(口腔内崩壊錠)とカプセル剤があります。

口腔内崩壊錠とは唾液で溶けるお薬のことで、水がなくても服薬できる剤型です。外出先でも服薬できる他、飲み込む力が弱くなっている高齢者の方などにも向いています。

このように豊富な剤型が揃っているのです。

以上からアンブロキソールの特徴として次のような点が挙げられます。

【アンブロキソールの特徴】

・痰を排出しやすくするはたらきを持つ
・副鼻腔炎の排膿にも効果がある
・副作用が少なく安全性が高い
・剤型が豊富で使い勝手が良い
・ジェネリック医薬品なので薬価が安い

 

2.アンブロキソールはどんな疾患に用いるのか

アンブロキソールはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

《錠・内用液》
1. 下記疾患の去痰 急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、手術後の喀痰喀出困難
2. 慢性副鼻腔炎の排膿

《小児用シロップ》
下記疾患の去痰 急性気管支炎、気管支喘息

《Lカプセル・徐放OD錠》
下記疾患の去痰 急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、手術後の喀痰喀出困難

難しい病名がたくさん並んでいますが、要するに「痰が出るような呼吸器疾患」に対して痰切りとして使える、という認識で良いと思います。

臨床でよく用いられるのが、風邪(急性上気道炎)や気管支炎、喘息などですね。

 

3.アンブロキソール錠にはどのような作用があるのか

痰切り(去痰剤)として用いられるアンブロキソールですが、どのような機序で痰を出しやすくしているのでしょうか。

アンブロキソールの作用には、主に3つのものが挙げられます。

 

Ⅰ.痰を柔らかくし、出しやすくする

痰は固くなると、気管の壁にこびりついてしまい、出にくくなってしまいます。

そのため、アンブロキソールは痰を柔らかくする事で、痰が体外に排出されやすいようにします。

具体的には、肺サーファクタント(界面活性剤のようなもの)や気道液と呼ばれるものを気管内・肺胞内に分泌します。これにより気管壁が潤滑になり、また痰も水気を含んで柔らかくなるため、体外に排出されやすくなるのです。

 

Ⅱ.気管支の線毛の動きを良くする

気管支の壁には線毛(繊毛)と呼ばれる毛のようなものが付いています。

この毛は異物が気管に入ると動きが活性化し、体外に異物を運ぶはたらきがあります。

アンブロキソールは、気管壁に存在する線毛の動きを活性化するはたらきがあります。これにより余計な痰も体外に運ばれ、排出されやすくなるのです。

 

Ⅲ.副鼻腔をきれいにする

アンブロキソールは気管だけではなく、副鼻腔に作用することが分かっています。

元々副鼻腔と気管は、分泌液や線毛運動など構造的に似ている部分が多く、そのためアンブロキソールは気管だけではなく副鼻腔でも同じように余計な物質を排出してくれる作用が期待できるのです。

副鼻腔に膿がたまると副鼻腔炎を発症しますが、アンブロキソールは副鼻腔炎などで過剰になった分泌液を正常化したり、副鼻腔の繊毛運動を活性化する事で排膿を促す効果があることが確認されています。

 

4.アンブロキソール錠の副作用

アンブロキソールにはどんな副作用があるのでしょうか。

アンブロキソールはジェネリックであるため、副作用発生率の明確な調査は行われていません。先発品のムコソルバンにおいては副作用の発生率は、0.7~1%台程度と報告されており、アンブロキソールもこれと同じ程度だと考えてよいでしょう。

この副作用発生率は非常に少ないと言って良く、アンブロキソールは安全性に非常に優れるお薬です。また、生じる副作用の程度も軽いものがほとんどで重篤な副作用はほぼ起こらないといってもよいお薬です。

頻度は少ないものの、生じうる副作用としては消化器系のものが多く、

・胃不快感
・吐き気
・胃痛・腹痛

などが報告されています。これはアンブロキソールが消化器系の運動を一過性に高めるためであると考えられています。しかしほとんどが軽度の症状に留まります。また、

・浮腫
・発疹

なども報告はあります。こちらも頻度は少なく、また重症化することはほとんどありません。

 

5.アンブロキソール錠の用法・用量と剤形

アンブロキソールは多くの剤型が発売されています。

アンブロキソール錠 15mg
アンブロキソール内用液 0.75%

小児用アンブロキソールシロップ(アンブロキソール) 0.3%

アンブロキソールLカプセル 45mg
アンブロキソール徐放OD錠 45mg

と、多くの剤型が発売されています。

風邪や気管支炎・肺炎などは子どもからお年寄りまで幅広い年代の方がかかる疾患ですので、アンブロキソールもそれに合わせて錠剤だけではなく、小児やお年寄りでも飲みやすい液剤や、シロップとたくさんの剤型が用意されています。

(先発品のムコソルバンには「DS(ドライシロップ)」もあります)

L剤というのは「徐放製剤」の事です。アンブロキソールは効果を一定させるためには、1日3回服用することが指示されていますが、徐放製剤は「ゆっくり長く効く製剤」であり、1日1回服用するだけで効果が1日持続します。1日3回も服用できないという方にとっては役立つお薬になります。

アンブロキソールの使い方は、

【錠剤】
通常、成人には1回1錠(アンブロキソール塩酸塩として15.0mg)を1日3回経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。

【内用液】
通常、成人には1回2mL(アンブロキソール塩酸塩として15.0mg)を1日3回経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。

【小児用シロップ】
通常、幼・小児に1日0.3mL/kg(アンブロキソール塩酸塩として0.9mg/kg)を3回に分けて経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。

【L製剤】
通常、成人には1回1錠・カプセル(アンブロキソール塩酸塩として45mg)を1日1回経口投与する。

と書かれています。

アンブロキソールはだいたい、服用してから1~4時間で血中濃度は最大になり、半減期は5~9時間ほどと報告されています。半減期とは、お薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、そのお薬の作用時間の一つの目安になる数値です。アンブロキソールはその半減期から1日1回の服薬では1日を通して効果は持続しないと考えられており、1日3回の服用が指示されています。

1回の服用で1日を通して痰を抑えたいのであれば、L製剤(徐放製剤)があります。

L製剤は半減期が10~13時間ほどと長くなっているため、1日1回の服用で良いことになっています。L製剤は、夕食後に服用すると、夜間から早朝にかけてもっとも良い効果が得られるため、夕食後の服用が勧められています。これは特に慢性呼吸器疾患における痰は、夜間・早朝に一番悪化しやすいことが多いためです。

 

6.アンブロキソールが向いている人は?

以上から考えて、アンブロキソールが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

アンブロキソールの特徴をおさらいすると、

・痰を排出しやすくするはたらきを持つ
・副鼻腔炎の排膿にも効果がある
・副作用が少なく安全性が高い
・剤型が豊富で使い勝手が良い
・ジェネリック医薬品なので薬価が安い

などがありました。

アンブロキソールは効果もしっかりとあり、安全性も高いお薬です。また剤型がたくさんあり、使い勝手も良いという点も挙げられます。

ここから、呼吸器疾患に伴う痰が生じた時に、まず最初に用いるお薬として適していると言えます。また、副鼻腔炎の排膿にも使いやすいお薬でしょう。

 

7.先発品と後発品は本当に効果は同じなのか?

アンブロキソールは「ムコソルバン」という去痰剤のジェネリック医薬品になります。

ジェネリックは薬価も安く、剤型も工夫されているものが多く患者さんにとってメリットが多いように見えます。

しかし「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」とジェネリックへの切り替えを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。

アンブロキソールというジェネリックは、ムコソルバンと比べて本当に遜色はないのでしょうか。

結論から言ってしまうと、先発品(ムコソルバン)とジェネリック(アンブロキソール)は同じ効果・効能だと考えて問題ありません。

ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。

発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、

ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。

しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば飲み心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。

これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。

では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。

先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから、実は発売までに莫大な費用が掛かっています。有効成分を探す開発費用、そしてそこから動物実験やヒトにおける臨床試験などで効果を確認するための研究費用など、お薬を1つ作るのには実は莫大な費用がかかるのです(製薬会社さんに聞いたところ、数百億という規模のお金がかかるそうです)。

しかしジェネリックは、発売に当たって先ほども説明した「生物学的同等性試験」はしますが、有効成分を改めて探す必要もありませんし、先発品がすでにしている研究においては重複して何度も同じ試験をやる必要はありません。

先発品と後発品は研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてその薬価の差なのです。決して品質の差が薬価の差になっているわけではありません。