ノルバスク(一般名:アムロジピン塩酸塩)は、1993年にファイザー株式会社から発売された降圧剤です。
降圧剤は「血圧を下げるお薬」の事で主に高血圧症に用いられています。降圧剤にもいくつかの種類がありますが、その中でノルバスクは「カルシウム拮抗薬」という種類に属します。
ノルバスクは効果も強く・作用時間も長いため評価が高く、カルシウム拮抗薬の代表選手として多くの患者さんに処方されています。
人気のあるお薬でありジェネリック医薬品(後発品)も多くの製薬会社から発売されています。ジェネリック医薬品は薬価が安く、また剤型も各社工夫をほどこしているため、患者さんにとって有益な選択肢の1つになります。
しかし「薬価が安いという事は品質が悪いのではないだろうか」「正規品ではないジェネリックに変えて、本当に大丈夫なのだろうか」とジェネリック医薬品に対する不安から、先発品からジェネリックへの変更に二の足を踏んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
果たしてノルバスクをジェネリック医薬品に変更する事は、問題はない事なのでしょうか。
ここではノルバスクのジェネリック医薬品である「アムロジピン塩酸塩」の特徴と、ジェネリック医薬品は先発品と比べて効果・効能に遜色はないのかという点についてお話させていただきます。
1.ノルバスクのジェネリック医薬品
ノルバスク(一般名:アムロジピン塩酸塩)は、1993年に発売された降圧剤です。
発売以降、多くの患者さんに使われてきた人気のある降圧剤ですので、現在では多くの製薬会社からジェネリック医薬品が発売されています。
ジェネリック医薬品(後発品)というのは、先発品(ノルバスク)と同じ主成分を使って他の製薬会社が作ったお薬の事です。
ノルバスクの中に含まれる血圧を下げる成分(主成分)は「アムロジピン塩酸塩」という物質です。ノルバスクのジェネリック医薬品はすべて、ノルバスクと同じく「アムロジピン塩酸塩」を含んでいます。
ノルバスクと同じ降圧成分が含まれていますので、ノルバスクとほぼ同等の降圧作用が期待できます。
数多くの製薬会社からノルバスクのジェネリック医薬品は発売されており、その商品名を挙げると、
- アムロジピン錠「EMEC」
- アムロジピン錠「KN」
- アムロジピン錠「NP」
- アムロジピン錠「アメル」
- アムロジピン錠「あすか」
- アムロジピン錠「サワイ」
などがあります。
このように、ノルバスクのジェネリック医薬品の商品名はすべて、
アムロジピン「〇〇」
という名称になっています。
これはたくさんあるジェネリック医薬品に対して、それぞれの製薬会社が好き勝手に名前を付けてしまうと医療現場や患者さんが混乱してしまうためになされている対策です。処方ミス・服用ミスが生じないよう、「ジェネリック医薬品は『一般名+会社名』という商品名に統一しよう」と決められているのです。
一般名の後ろについているのはジェネリック医薬品を発売している製薬会社の略称であり、先ほどの例で見ると、
- EMEC= エルメッドエーザイ(エーザイ株式会社の子会社)
- KN=小林化工
- NP=ニプロ株式会社
- アメル=共和薬品工業
- あすか=あすか製薬
- サワイ=沢井製薬
という意味になります。
例えば、「アムロジピン錠「サワイ」」は、沢井製薬が発売しているノルバスクのジェネリック医薬品だという事です。
ここに挙げたのはほんの一例で、非常に多くの製薬会社がノルバスクのジェネリック医薬品を発売しています。
2.ジェネリック医薬品とは何か
アムロジピンは、ノルバスクのジェネリック医薬品になります。
ではこのジェネリック医薬品とはどのようなお薬の事なのでしょうか。
ジェネリック医薬品というと「値段は安いけど、品質が心配」というイメージを持っている患者さんが多いように見受けられます。しかしそれは本当なのでしょうか。
その真偽を知るために、まずはジェネリック医薬品とはどのようなもので、なぜ薬価が安くなっているのかを見ていきましょう。
ジェネリック医薬品というのは、先発品(ここでいう「ノルバスク」)の特許が切れた後に、他の製薬会社から発売された、先発品と同じ主成分からなるお薬の事です。
実は新しいお薬(先発品)というのは、発売するに当たって莫大な費用がかかっています。
まず、無数の物質の中から有効成分を見つけ出すのに費用がかかります。そして「この成分は疾患の治療に使えそうだ」と有効成分に目星がついたら、今度はそれを入念に調査・研究して、どのくらいの効果があるのか、人体への安全性に問題はないのかなども厳しく調べないといけません。これにも多額な費用がかかります。
動物実験から始まり、人を対象とした臨床試験を何段階も行う事で有効性や安全性を実証し、それでやっと発売が許可されるのです。
先発品を1剤発売するのには、実はこのような莫大な手間と費用がかかっているのです。
このように莫大な費用をかけて、やっと新しいお薬を発売したのに、発売した途端に他の製薬会社がそのお薬の成分を分析して、同じ有効成分からなるお薬をすぐにマネして発売してしまったら、開発した会社はたまったものではありません。
このような事がまかり通ってしまえば、「どこかが新しいお薬を開発するのを待って、すぐにそれをマネした方が儲かる」わけですから、どの製薬会社も新薬を開発しなくなってしまうでしょう。
これでは困るため、国は新薬(先発品)に関してはおおむね10年程度、特許の期間を与え、その期間は新薬を開発した製薬会社以外はその有効成分からなるお薬を製造・販売してはいけないという事を定めています。
これによって新薬を開発した製薬会社は、新薬の研究・開発費を回収する事ができるのです。
しかし、これは逆に言えば特許の期間が切れれば、他の製薬会社もその有効成分から成るお薬を発売してもいいという事です。
そしてこのように他社が発見した有効成分から成るお薬をマネして発売すれば、お薬の有効成分を見つけるための費用や、有効性・安全性を調べる研究費用があまりかかりません。先発品の製薬会社がすでに莫大な費用をかけてその研究・調査を行ってくれているわけですから、同じことをする必要がないのです。そのため、その分お薬を安く発売する事が出来ます。
これがジェネリック医薬品です。
ジェネリック医薬品が発売される事は、先発品を発売している会社にとっては先発品の売り上げが落ちるため、嬉しい事ではありません。しかし特許期間に利益が得られるよう国が最低限は守ってくれたため、ある程度は「仕方ない」と考える事が出来ます。
一方でジェネリック医薬品は、研究・開発費が少なくお薬を作る事が出来るため、その分薬価を安く設定する事が出来ます。
日本の医療費は年々上昇を続け、その金額は看過できないものとなっており、国も医療費を削減しないといけないと必死になっています。しかし必要な治療費用を削ってしまっては意味がありません。そこで目を付けられているのがこのジェネリック医薬品なのです。
ジェネリック医薬品は、先発品とほぼ同等の効果が期待でき、かつ研究・開発費が少ないため、薬価を大きく下げる事が可能です。そしてこれは医療費削減に大きく貢献します。
そのため、新薬を作った製薬会社を最低限守りつつ、ジェネリック医薬品も積極的に勧めているのが現在の国のスタンスです。
3.先発品とジェネリックの効果は本当に同じなのか?
ジェネリックは薬価も安く、剤型も工夫されているものが多く患者さんにとってメリットが多いように見えます。
しかし多くの患者さんが、「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」といった心配を感じていらっしゃるようです。
そのため国がジェネリック医薬品を積極的に推奨しているにも関わらず、まだまだジェネリック医薬品の普及は予定よりも低いものとなっています。
同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。
ではジェネリックは、先発品と比べて本当に遜色はないのでしょうか。
結論から言ってしまうと、先発品とジェネリックはほぼ同じ効果・効能だと考えて問題ありません。
ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。
発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、
ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。
しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば飲み心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。
これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。この多少の違いが人によっては大きく感じられることもあるため、ジェネリックに変えてから調子が悪いという方は先発品に戻すのも1つの方法になります。
では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。
前項でも説明した通り先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから実は発売までに莫大な費用が掛かっています。
しかしジェネリック医薬品は、発売に当たって「生物学的同等性試験」は行いますが、先発品がすでに行った研究・調査においては重複して何度も同じものをやる必要はありません。
このように先発品とジェネリック医薬品では研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてそれが薬価の差になっているのです。
つまりジェネリック医薬品の薬価は莫大な研究・開発費がかかっていない分が差し引かれて、その分が先発品よりも安くなっているということで、決して品質の差が薬価の差になっているわけではないのです。
4.アムロジピンはどのようなお薬なのか
最後のノルバスクのジェネリック医薬品である「アムロジピン塩酸塩」の特徴について簡単に紹介します。
アムロジピン塩酸塩は、「カルシウム拮抗薬」という種類の降圧剤になります。そのため、まずはカルシウム拮抗薬の特徴について見てみましょう。
【カルシウム拮抗薬の特徴】
・ダイレクトに血管に作用するため、血圧を下げる力(降圧力)が確実 |
カルシウム拮抗薬の最大の特徴は、血圧を下げる力(降圧力)がしっかりしている点です。
降圧剤(血圧を下げるお薬)にはカルシウム拮抗薬の他にもいくつかあります。
代表的なものを上げると、
- ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
- ACE阻害剤(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
- 利尿剤
- α遮断薬
- β遮断薬
などがありますが、単純に血圧を下げる力だけをみればカルシウム拮抗薬にかなうお薬はありません。
カルシウム拮抗薬は血管を拡張させる事で血圧を下げます。このように血管にダイレクトに作用するため確実に血圧を下げてくれるのです。また血管にダイレクトに作用するという事は、その他の余計な部位に作用しないという事でもあるため、余計な作用(副作用)が少ないとも言えます。
カルシウム拮抗薬は、価格が安いのも利点の1つです。血圧を下げるコストパフォーマンスという見方をすれば、かなり優れたお薬と言えるでしょう。
では次に、カルシウム拮抗薬の中でのアムロジピン塩酸塩の特徴を紹介します。
【カルシウム拮抗薬の中でのアムロジピン塩酸塩の特徴】
・カルシウム拮抗薬の中でも副作用が少ない |
アムロジピン塩酸塩はカルシウム拮抗薬の中でも「第3世代」と呼ばれ、一番新しい世代に属します。
カルシウム拮抗薬は元々副作用は少なめのお薬なのですが、第1世代・第2世代から更に改良が重ねられた第3世代のカルシウム拮抗薬であるアムロジピン塩酸塩は、中でも特に安全性の高いお薬になります。
またアムロジピン塩酸塩は作用時間が非常に長いお薬です。半減期(お薬の血中濃度が半分に下がるまでにかかる時間)は30時間以上であり、1日1回の服用で1日を通してしっかりと効果は持続します。
血圧はある時間のみ下げればいいというものではありません。1日を通してしっかりと下げる事が重要ですので、24時間しっかりと効き続けるアムロジピン塩酸塩は非常に優れた降圧剤だという事が出来ます。
アムロジピン塩酸塩が現在でも広く処方されているのは、このような医師に高く評価されているからでしょう。
以上からアムロジピン塩酸塩の特徴として次のような点が挙げられます。
【アムロジピン塩酸塩の特徴】
・降圧作用が強力である |
なおノルバスクの効果・副作用について詳しくは、下記の記事をご覧下さい。
