アンフラベート(一般名:ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)は、1993年から発売されている「アンテベート」というステロイド外用剤のジェネリック医薬品になります。
「アンフラベート軟膏」「アンフラベートクリーム」「アンフラベートローション」の3つの剤型があります。
ステロイド外用剤とは、皮膚に塗るタイプのステロイド剤の事であり、主に皮膚の炎症を抑えるために用いられます。塗り薬は、炎症を抑えたい部位にのみ作用させることができ、飲み薬のように全身に作用するわけではないため安全性に優れます。
塗り薬にはたくさんの種類があるため、それぞれがどのような特徴を持つのかは分かりにくいものです。
アンフラベートはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここではアンフラベートの効能や強さ・特徴などについてみていきましょう。
1.アンフラベートの特徴
まずはアンフラベートの全体的な特徴を紹介します。
アンフラベートは皮膚に塗る外用ステロイド薬であり、強力に皮膚の炎症を抑えてくれます。
ステロイド外用剤のでも強い部類に属し、強力な作用が期待できる一方で副作用にも注意しながら使っていく必要があります。
ステロイド外用剤(の主なはたらきとしては次の3つが挙げられます。
- 免疫反応を抑える
- 炎症反応を抑える
- 皮膚細胞の増殖を抑える
ステロイドは免疫反応(身体がばい菌などの異物と闘う反応)を抑える事で、塗った部位の炎症反応を抑える作用があります。これにより湿疹や皮膚炎を改善させたり、アレルギー症状を和らげたりします。
また皮膚細胞の増殖を抑えるはたらきがあり、これによって皮膚を薄くする作用も期待できます。
外用ステロイド剤は強さによって5段階に分かれています。
【分類】 | 【強さ】 | 【商品名】 |
Ⅰ群 | 最も強力(Strongest) | デルモベート、ジフラールなど |
Ⅱ群 | 非常に強力(Very Strong) | アンテベート、ネリゾナ、マイザーなど |
Ⅲ群 | 強力(Strong) | ボアラ、リンデロンV、リドメックスなど |
Ⅳ群 | 中等度(Medium) | アルメタ、ロコイド、キンダベートなど |
Ⅴ群 | 弱い(Weak) | コートリル、プレドニンなど |
この中でアンフラベートは「Ⅱ群(非常に強力)」に属します(アンテベートのジェネリック医薬品ですのでアンテベートと同じ強さです)。
ステロイドはしっかりとした抗炎症作用(炎症を抑える作用)が得られる一方で、長期使用による副作用の問題などもあるため、皮膚症状に応じて適切に使い分ける事が大切です。
強いステロイドは強力な抗炎症作用がありますが、一方で副作用も生じやすいというリスクもあります。反対に弱いステロイドは抗炎症作用は穏やかですが、副作用も生じにくいのがメリットです。
アンフラベートはステロイド外用剤の中でも強さが高い部類に入るため、しっかりとした効果が期待できる一方で、使い方には注意をしなくてはいけません。
全てのステロイドに言えることですが、ステロイドは漫然と長期間使用していると皮膚の細胞増殖を抑制しすぎて皮膚を過度に薄くしてしまったり、皮膚の免疫力を低下させてばい菌が感染しやすくなってしまう事があります。
強い作用を持つアンフラベートではこのような副作用が生じないように特に注意が必要です。必要な期間のみ使用し、漫然と塗り続けないようにしましょう。
またアンフラベートはジェネリック医薬品であるため、先発品のアンテベートよりも安い薬価で処方してもらえるというメリットもあります。
以上からアンフラベートの特徴として次のような事が挙げられます。
【アンフラベートの特徴】
・Ⅱ群(非常に強力)に属する外用ステロイド剤である
・炎症を抑える作用、免疫反応を抑える作用、皮膚細胞の増殖を抑える作用がある
・ステロイドの中でもしっかりした効果がある
・足の裏、背中など皮膚が厚い部位でも効果を得やすい
・ステロイドであるため、長期使用による副作用に注意
・ジェネリック医薬品であり、薬価が安い
2.アンフラベートはどのような疾患に用いるのか
アンフラベートはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。
【効能又は効果】
湿疹・皮膚炎群(手湿疹、進行性指掌角皮症、脂漏性皮膚炎を含む)、乾癬、虫さされ、薬疹・中毒疹、痒疹群(ストロフルス、じん麻疹様苔癬、結節性痒疹を含む)、紅皮症、紅斑症(多形滲出性紅斑、ダリエ遠心性環状紅斑)、ジベル薔薇色粃糠疹、掌蹠膿疱症、扁平紅色苔癬、慢性円板状エリテマトーデス、肉芽腫症(サルコイドーシス、環状肉芽腫)、特発性色素性紫斑(マヨッキー紫斑、シャンバーク病)、円形脱毛症、肥厚性瘢痕・ケロイド、悪性リンパ腫(菌状息肉症を含む)、アミロイド苔癬、水疱症(天疱瘡群、ジューリング疱疹状皮膚炎・水疱性類天疱瘡)
難しい専門用語がたくさん並んでおり、これを見ただけではどのような皮膚疾患に使えばいいのかイメージしずらいですね。
先ほども説明したように、
- 皮膚の免疫反応を抑える
- 皮膚の炎症反応を抑える
- 皮膚細胞の増殖を抑える
のがステロイド外用剤になりますので、このような状態の時にアンフラベートは幅広く効果が期待できます。
進行性指掌角皮症とはいわゆる「手荒れ」の事で、水仕事などで手を酷使する事により手の皮膚が傷つき、炎症を起こしてしまう状態です。
脂漏性皮膚炎とは、皮膚の脂や皮膚を好む真菌(マラセチア)の影響によって、毛穴が詰まってしまい炎症が生じる疾患です。
扁平紅色苔癬はかゆみを伴うたくさんの丘疹(小さな発疹)が融合し、盛り上がってうろこ状になる皮膚疾患です。
これらの疾患はアンフラベートの炎症を抑えるはたらきが効果を発揮します。
ストロフルスはアレルギー反応の1つで、主に虫に刺された後に生じる皮膚の腫れです。じんま疹もアレルギーの一種です。
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは免疫(ばい菌と闘う力)が何らかの原因によって暴走してしまい、自分自身を攻撃してしまうようになる疾患です。掌蹠膿疱症では、免疫の異常によって手足に膿胞(膿が溜まった皮疹)が出来てしまいます。
サルコイドーシスも自己免疫疾患であり、全身の臓器に肉芽種や血管炎が生じてしまう疾患です。天疱瘡や類天疱瘡も自己免疫疾患であり、皮膚表面に水疱が出来てしまう疾患です。
アレルギー疾患や自己免疫疾患は、免疫が過剰にはたらいてしまっている結果生じているため、アンフラベートの免疫力を低下させる作用が効果を発揮します。
乾癬(かんせん)とは皮膚の一部の細胞増殖が亢進していしまい、赤く盛り上がってしまう状態です。
乾癬にはアンフラベートの皮膚細胞増殖を抑制するはたらきが効果を発揮します。
注意点としてステロイドは免疫(身体が異物と闘う力)を抑制するため、ばい菌の感染に弱くなってしまいます。そのため、細菌やウイルスが皮膚に感染しているようなケースでは、そこにステロイドを塗る事は推奨されていません。
アンフラベートはジェネリック医薬品であるため有効性の詳しい調査は行われていません。しかし先発品のアンテベートの有効率は、
- 湿疹・皮膚炎群への有効率は軟膏で91.9%、クリームで88.7%
- 乾癬への有効率は軟膏で86.8%、クリームで81.3%
- 虫さされへの有効率は軟膏で96.4%、クリームで100%
- 薬疹・中毒疹への有効率は軟膏で96.8%、クリームで100%
- 痒疹群への有効率は軟膏で93.5%、クリームで83.9%
- 紅皮症への有効率は軟膏で93.3%、クリームで81.3%
- 紅斑症への有効率は軟膏で100%、クリームで95.5%
- ジベル薔薇色粃糠疹への有効率は軟膏で100%、クリームで92.0%
- 掌蹠膿疱症への有効率は軟膏で74.2%、クリームで69.0%
- 扁平紅色苔癬への有効率は軟膏で93.8%、クリームで92.3%
- 慢性円板状エリテマトーデスへの有効率は軟膏で85.7%、クリームで71.4%
- 肉芽腫症への有効率は軟膏で78.6%、クリームで72.7%
- 特発性色素性紫斑への有効率は軟膏で88.5%、クリームで90.9%
- 円形脱毛症への有効率は軟膏で44.4%、クリームで44.8%
- 肥厚性瘢痕・ケロイドへの有効率は軟膏で35.7%、クリームで64.3%
- 悪性リンパ腫への有効率は軟膏で60.0%、クリームで70.6%
- アミロイド苔癬への有効率は軟膏で85.7%、クリームで78.9%
- 水疱症への有効率は軟膏で86.4%、クリームで100%
と報告されており、アンフラベートも同程度だと思われます。