バイナス錠の効果と副作用

バイナス(一般名:ラマトロバン)は2000年から発売されている抗アレルギー薬です。

アレルギーによって生じる諸症状を抑え、主にアレルギー性鼻炎(花粉症)の治療薬として用いられています。

バイナスは主にトロンボキサン受容体をブロックすることでアレルギー症状を抑えるため、「トロンボキサン受容体拮抗薬」と呼ばれることもあります。

抗アレルギー薬の中でバイナスはどのような特徴のあるお薬で、どんな作用を持っているお薬なのでしょうか。

バイナスの効果や特徴・副作用についてみていきましょう。

 

1.バイナスの特徴

まずはバイナスの全体的な特徴についてみてみましょう。

バイナスはトロンボキサンA2・プロスタグランジンD2のはたらきをブロックすることでアレルギー症状を抑えます。アレルギー性鼻炎の症状の中でも特に鼻閉症状(鼻づまり)の改善に有効です。

トロンボキサンA2は血管の透過性を亢進させることで、血管の中にある物質を血管外に移動させやすくさせます。これにより局所の炎症反応を誘発してアレルギー症状を引き起こします。

アレルギー疾患では、このようにトロンボキサンのはたらきが過剰になっていることが一因になります。

またプロスタグランジンD2はアレルギーを誘発する原因となる物質(ケミカルメディエーター)の1つです。

このトロンボキサンとプロスタグランジンのはたらきをブロックできればアレルギー症状を改善させることができます。この2つのはたらきをブロックする作用を持つのがバイナスになります。

バイナスはアレルギー疾患の中でも「アレルギー性鼻炎(花粉症)」にのみ適応があるお薬になります。そしてアレルギー性鼻炎の中でも鼻閉タイプ(鼻づまりタイプ)に良く効きます。

これはトロンボキサンは主に鼻閉症状に関与しているからです。トロンボキサンによって鼻粘膜の血管の透過性が亢進すると、様々な物質が血管外に漏れ出てくるため鼻づまりが起こります。

そのためトロンボキサンのはたらきをブロックするバイナスは鼻閉に良く効くのです。反対に鼻汁タイプ(鼻水タイプ)は抗ヒスタミン薬の方が良く効き、バイナスはそこまでは効きません。

またバイナスは抗アレルギー薬で生じやすい副作用である眠気がほとんど生じません。そのため、眠気が出ると困るという方にも良いお薬となります。

以上から、バイナスの特徴として次のようなことが挙げられます。

【バイナスの特徴】

・アレルギー性鼻炎(花粉症)のアレルギー症状を抑える
・抗トロンボキサン作用、抗プロスタグランジン作用がある
・花粉症の中でも鼻閉タイプ(鼻づまりタイプ)に良く効く
・眠気の副作用はほとんど生じない

 

2.バイナスはどのような疾患に用いるのか

バイナスはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

アレルギー性鼻炎

バイナスはアレルギー性鼻炎にのみ適応を持っています。アレルギー性鼻炎というと難しく聞こえますが、一般的に「花粉症」と呼ばれている疾患がこれに含まれます。

バイナスの有効性については、

  •  アレルギー性鼻炎で中等度以上に改善した率は66.7%

という結果が出ています。

アレルギー性鼻炎のタイプは大きく分けると

  • 鼻汁タイプ(鼻水タイプ)
  • 鼻閉タイプ(鼻づまりタイプ)

に分けられます。

代表的な抗アレルギー薬である抗ヒスタミン薬は、主に鼻汁タイプのアレルギー性鼻炎に良く効きますが、鼻閉タイプにはあまり効きません。

一方でバイナスは鼻閉タイプに良く効く抗アレルギー薬となります。

 

3.バイナスにはどのような作用があるのか

バイナスはどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えてくれるのでしょうか。

バイナスの作用について詳しく紹介させて頂きます。

 

Ⅰ.抗トロンボキサン作用

バイナスはトロンボキサンA2(TXA2)という物質のはたらきをブロックする作用があります。

トロンボキサンは血管の透過性を亢進させ、血管の中にある物質を血管外に移動させやすくすることで、局所の炎症反応を誘発します。

アレルギー性鼻炎(花粉症)においては、鼻粘膜にトロンボキサンが作用することで、鼻粘膜血管の透過性が亢進し、鼻粘膜に様々な物質が漏れだしてきます。これによって鼻閉(鼻づまり)が引き起こされます。

バイナスは、トロンボキサンA2のはたらきをブロックすることで鼻粘膜の血管透過性を正常に戻し、鼻閉症状を改善してくれるのです。

 

Ⅱ.抗プロスタグランジン作用

アレルギー疾患は、アレルギー反応性細胞(好酸球、肥満細胞など)の過剰なはたらきによってアレルギー誘発物質(ケミカルメディエーター)がたくさん放出されることで発症します。

ケミカルメディエーターの1つにプロスタグランジンD2(PGD2)があります。

バイナスはプロスタグランジンD2のはたらきをブロックする作用もあり、これもアレルギー反応を和らげるはたらきがあります。

 

Ⅲ.抗好酸球作用

アレルギー反応の1つに、アレルゲン(アレルギーの原因になる物質)によって好酸球の脱顆粒(好酸球が顆粒を分泌する)が生じるという現象があります。

好酸球から分泌される顆粒には様々な成分が含まれており、アレルギー症状を引き起こしてしまう物質も多く含まれています。

アレルギーのある方は、アレルゲン(アレルギーを引き起こす原因となる物質)の刺激によって好酸球がその部位に浸潤し、脱顆粒することでアレルギー反応を引き起こしてしまうことがあります。

バイナスはアレルゲンの刺激によって好酸球が浸潤してくるのを防ぐはたらきがあります。

 

4.バイナスの副作用

バイナスにはどのような副作用があるのでしょうか。

バイナスの副作用は6.94%前後と報告されており、その副作用は多くはありません。

具体的な内容としては、

  • 頭痛、頭重
  • 腹痛

などが報告されています。

また、

  • 肝機能障害(AST、ALT、ɤGTP、LDH上昇)

といった検査の異常が生じることがあります。バイナスを長期服薬・高用量服薬している場合などでは定期的に血液検査を行うことが望ましいでしょう。

頻度は稀ですが、重大な副作用として、

  • 肝炎
  • 肝機能障害
  • 黄疸

が報告されています。

なお代表的な抗アレルギー薬である抗ヒスタミン薬は眠気がよく生じますが、バイナスには抗ヒスタミン作用はないため、眠気はほとんど生じません。

 

5.バイナスの用法・用量と剤形

バイナスは、

バイナス錠 50mg
バイナス錠 75mg

の2剤形があります。

バイナスの使い方としては、

通常、成人には1回75mgを1日2回、朝食後及び夕食後(又は就寝前)に経口投与する。

となっています。

 

6.バイナスが向いている人は?

以上から考えて、バイナスが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

バイナスの特徴をおさらいすると、

・アレルギー性鼻炎(花粉症)のアレルギー症状を抑える
・抗トロンボキサン作用、抗プロスタグランジン作用がある
・花粉症の中でも鼻閉タイプ(鼻づまりタイプ)に良く効く
・眠気の副作用はほとんど生じない

といったものがありました。

バイナスは、アレルギー性鼻炎の中でも特に鼻閉タイプ(鼻づまりタイプ)に良く効くお薬です。また抗ヒスタミン薬と異なり、眠気の副作用がほとんど生じない点もメリットになります。