ベリチーム配合顆粒は1967年から発売されている胃薬になります。胃薬の中でも「消化酵素」と呼ばれる食べ物などを消化する酵素を含んだお薬になります。
ベリチーム配合顆粒は非常に古いお薬ですが、安全性も高く現在でもしばしば用いられることがあります。副作用が少なく使いやすいというのが理由でしょう。
ベリチーム配合顆粒はどんな作用のあるお薬で、どんな患者さんに向いているのでしょうか。
ベリチーム配合顆粒の効果や特徴・副作用についてみていきましょう。
目次
1.ベリチーム配合顆粒の特徴
まずはベリチーム配合顆粒というお薬の全体的な特徴を紹介します。
ベリチーム配合顆粒は、食べ物の消化・吸収に必要な「消化酵素」を配合している胃薬です。
具体的には、
- 濃厚膵臓性消化酵素(パンクレアチン)
- アスペルギルス産生消化酵素(ビオヂアスターゼ)
- 細菌性脂肪分解酵素(リパーゼ)
- 繊維素分解酵素(セルラーゼ)
が含まれています。
それぞれ、炭水化物やたんぱく質、脂質、繊維質といった主要な栄養素を消化するはたらきを持った消化酵素であり、ベリチームは食べ物を消化する力が弱っている状態で効果が期待できるお薬になります。
具体的には胃酸の力が弱ってしまって消化能が落ちてしまっている慢性胃炎や、消化酵素を分泌する力が落ちてしまっている慢性膵炎などで用いられます。
ベリチームの面白いところは、胃内(酸性環境下)で効果を発揮する消化酵素と、腸内(アルカリ性環境下)で効果を発揮する消化酵素の両方を配合している事です。これにより消化管全体で作用する事が出来るお薬となっています。
消化酵素というのは、元々私たちの体内で作られているものです。そのため、体内の消化酵素が十分に作られている状態であれば、更にベリチームを飲んでもあまり意味はありません。あくまでも何らかの原因によって消化酵素の分泌が弱ってしまっている状態に対して有効なお薬になります。
また元々体内で作られている消化酵素を服用するわけですので、副作用はほとんどなく安全性の高いお薬となります。
以上からベリチーム配合顆粒の特徴として次のようなことが挙げられます。
【ベリチーム配合顆粒の特徴】
・炭水化物・たんぱく質・脂質などを消化する消化酵素を含む
・慢性胃炎・慢性膵炎などで用いられる事が多い
・副作用が少なく安全性が高い
2.ベリチーム配合顆粒はどんな疾患に用いるのか
ベリチーム配合顆粒はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
消化異常症状の改善
ベリチーム配合顆粒は複数の消化酵素を配合した胃薬ですので、その用途は消化が十分に行えない状態にある時になります。
具体的には、慢性胃炎で胃の消化能力が弱っている時や、慢性膵炎で消化酵素の分泌能が低下している時などに用いられます。
ベリチームの有効率は84.4%と報告されています。ベリチームの有効率の判断をどのように行ったかというと、身体の中で消化酵素がしっかりと使われたかで判定しています。ベリチームを服用し、その後糞便中に排泄されるベリチームがどのくらい少なくなったかで、「どれくらい体内で使われたか」を判断しています。
直接的な症状の改善を指標とはしていないため、報告されている有効率は実際の感覚とはやや異なります。実際に患者さんが効果を感じられたかでいうと、有効率はもう少し少ない印象があります。
3.ベリチーム配合顆粒にはどのような作用があるのか
ベリチーム配合顆粒は、どのような作用機序を持っているのでしょうか。
ベリチームに含まれる消化酵素は、「胃内で効果を発揮するもの」と「腸内で効果を発揮するもの」の2つに分かれます。
ベリチームに含まれる消化酵素を詳しく見ていきましょう。
Ⅰ.胃での食べ物の消化を促進
ベリチーム配合顆粒に含まれる、
- アスペルギルス産生消化酵素(ビオヂアスターゼ)
- 細菌性脂肪分解酵素(リパーゼ)
- 繊維素分解酵素(セルラーゼ)
は主に酸性環境下で効果を発揮します。つまり胃内において食べ物の消化を助けてくれます。
アスペルギルス産生消化酵素に含まれるビオヂアスターゼは、主に炭水化物やたんぱく質の消化を促進します。
細菌性脂肪分解酵素に含まれるリパーゼは、主に脂質の消化を促進します。
また繊維素分解酵素に含まれるセルラーゼは、主に繊維素の消化を促進します。
多くの栄養素に対する消化酵素をバランス良く配合することで、効率よく消化活動を助けてくれるのです。
Ⅱ.腸での食べ物の消化を促進
ベリチーム配合顆粒に含まれる、
- 濃厚膵臓性消化酵素(濃厚パンクレアチン)
は主にアルカリ性環境下で効果を発揮します。つまり腸内において食べ物の消化を助けてくれます。
濃厚膵臓性消化酵素に含まれる濃厚パンクレアチンは、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼという酵素活性を持っており、炭水化物、たんぱく質、脂質と3大栄養素すべての消化を促進するはたらきがあります。
4.ベリチーム配合顆粒の副作用
ベリチームで生じる副作用はどのくらいあるのでしょうか。またどのような副作用が生じうるのでしょうか。
ベリチーム配合顆粒の副作用を調査した報告によると、症例数は77例という少数の調査にはなりますが、「副作用の発生はなかった」と報告されています。実際の使用感としても副作用は極めて少ないお薬だと考えてよいでしょう。
ただし可能性のある副作用としては、
- 過敏症(くしゃみ、流涙、皮膚発赤など)
が挙げられています。これはパンクレアチンでしばしば認める副作用であるため、パンクレアチンを含むベリチームにも同様の副作用が出現する可能性があります。
またベリチームを使ってはいけない人(禁忌)として、
- ベリチームに対して過敏症の既往歴のある方
- ウシ又はブタ蛋白質に対し過敏症の既往歴のある方
があります。
ベリチームに過敏症がある方がベリチームを使えないのは当然ですね。またベリチームはブタの膵臓から精製した酵素であるパンクレアチンを使っています。酵素はたんぱく質からなるため、ブタの蛋白質にアレルギーがある方もベリチームは使えません。
実際はこれに該当する方というのは非常に少なく、ほとんどの方が使えるお薬になります。
5.ベリチームの用法・用量と剤形
ベリチームには、
ベリチーム配合顆粒
のみの剤形があります。
以前はカプセル剤も販売されていたのですが、現在では販売中止となっています。
ベリチーム配合顆粒1g中には、
【腸溶性部分】
濃厚膵臓性消化酵素 312.5mg【胃溶性部分】
アスペルギルス産生消化酵素 75mg
細菌性脂肪分解酵素 62.5mg
繊維素分解酵素 37.5mg
が配合されています。
ベリチーム配合顆粒の使い方は、
通常、成人1回0.4~1gを1日3回食後に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
と書かれています。
注意点として、ベリチームは胃と腸でそれぞれ効果を発揮させるため、腸陽性部分に関しては腸溶性被膜(腸に到達したときに溶けるように設計された膜)でおおわれています。これによって腸で初めて効果が発揮されるように工夫されているのです。
この腸溶性被膜をやぶってしまうと、腸での効果が得られなくなってしまいます。ベリチームを噛んだり口の中で溶かしたりしてしまうと腸溶性被膜が破れてしまうことがありますので、すぐに飲み込むようにしましょう。
6.ベリチーム配合顆粒が向いている人は?
以上から考えて、ベリチーム配合顆粒が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
ベリチーム配合顆粒の特徴をおさらいすると、
・炭水化物・たんぱく質・脂質などを消化する消化酵素を含む
・胃炎・膵炎などで用いられる事が多い
・副作用が少なく安全性が高い
というものでした。
ベリチーム配合顆粒は一般的な胃薬と異なり、「消化酵素」からなっています。
そのためどんな原因の胃腸症状に対しても効くというものではなく、消化酵素の低下によって生じている胃もたれや腹部不快感などの胃腸症状に効くお薬になります。
- 慢性胃炎で胃が十分な消化活動を行えなくなっている
- 慢性膵炎で体内の消化酵素の分泌量が減っている
といった状態に対して用いられます。
また保険適応的な使い方ではありませんが、飲み会や食事会が続き、胃もたれが出現している時にも、薬理的に考えれば効く可能性はあるでしょう。