マイコスポールクリーム・外用液(ビホナゾール)の効果と副作用

マイコスポールクリーム・マイコスポール外用液(一般名:ビホナゾール)は病院で処方される塗り薬で、「イミダゾール系抗真菌薬」という種類のお薬になります。1986年から発売されています。

抗真菌薬とは要するに、真菌(カビ)をやっつけるお薬です。マイコスポールは塗り薬ですので、主に皮膚に感染した真菌(皮膚真菌症)に対して用いられます。

日常で感染する皮膚真菌症には、白癬(いわゆる水虫)やカンジダなどがあり、マイコスポールはこのような真菌をやっつけるために用いられます。

抗真菌薬にもいくつかの種類があります。どれも総合的な有効率に大きな差はないとも言われていますが、それぞれのお薬ならではの特徴もあります。

マイコスポールは抗真菌薬の中でどのような作用を持っていて、どのような効果が期待できるお薬なのでしょうか。

マイコスポールの効果・効能や特徴、副作用についてみてみましょう。

 

1.マイコスポールの特徴

まずはマイコスポールの特徴をざっくりと紹介します。

マイコスポールは、白癬・カンジダ・癜風など各種真菌に対して、幅広く効果を示します。またその効果も強く、殺真菌的に作用します。

マイコスポールはイミダゾール系という種類の抗真菌薬になります。

抗真菌薬には「真菌の増殖を抑えるもの(静真菌作用)」と「真菌を殺すもの(殺真菌作用)」がありますが、イミダゾール系は後者であり殺真菌的に作用します。

(正確にはCandida.albicansというカンジダの一種に対してのみ静真菌的に作用し、それ以外には殺真菌的に作用します)

そのため効果も強力であり確実な効果が期待できます。

塗り薬であるため、全身にお薬が回ることが少なく、大きな副作用がない点も良い特徴です。

またマイコスポールは皮膚浸潤性が良好であり、皮膚の角質層に長時間留まるため、1日1回の塗布で効果が持続することが確認されており、1日に何回も塗る必要はありません。

マイコスポールをはじめとした皮膚真菌症に対する塗り薬は効果に大きな差はないため、極論を言えばどれを用いても大きな間違いはありません。

その中でマイコスポールの特徴を強いて挙げると、次のようなことが挙げられます。

【マイコスポールクリーム・外用液の特徴】
・白癬・カンジダなどに対して殺真菌的に作用する
・1日1回塗るだけで効果が持続する
・塗り薬で全身に作用しないため、副作用も少ない

 

2.マイコスポールはどのような疾患に用いるのか

マイコスポールはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

下記の皮膚真菌症の治療

・白癬:足部白癬、体部白癬、股部白癬
・カンジダ症:指間びらん症、間擦疹、皮膚カンジダ症
・癜風

抗真菌薬であるマイコスポールは、皮膚に真菌(カビ)が感染してしまった時に用いられます。

日常において、皮膚に感染する可能性のある真菌というのはほとんどが白癬菌(皮膚糸状菌)になります。

白癬菌が足に感染すると「足(部)白癬」(いわゆる「水虫」)、
白癬菌が身体に感染すると「体部白癬」(いわゆる「たむし」)、
白癬菌が股(また)に感染すると「股部白癬」(いわゆる「いんきん」)と呼ばれます。

マイコスポールは白癬菌に対して殺真菌的に作用します。

また、カンジダ菌は健常人の腸内にも常在している「常在菌」ですが、これがしばしば悪さをしてしまう事があります。特にストレスや疲れなどで免疫力が低下している時に発症しやすくなります。

具体的には、水仕事をしている方などの指の間に生じやすい「カンジダ性指間びらん症」、陰部・股間・脇・乳房の下などの密閉された環境で生じやすい「カンジダ性間擦疹」などがあります。

また女性では膣内でカンジダが増殖してしまう事もあります。

マイコスポールは、カンジダ菌に対しても効果を示しますが、代表的なガンジダであるCandida.albicansに対しては静真菌的な作用に留まります。これは菌を殺すのではなく、増殖を抑える作用に留まるということです。

そのため、カンジダ症に対してマイコスポールを使用し、効果が不十分であった場合は別に抗真菌薬に変更した方が良い場合もあります。

癜風も真菌(カビ)であるマラセチアが原因となる皮膚真菌症ですが、自覚症状が乏しいため気付かれにくい傾向があります。皮脂の多いところに生じやすく、脂漏性湿疹の原因にもなります。

 

3.マイコスポールにはどのような作用があるのか

マイコスポールには、どのような作用があるのでしょうか。

マイコスポールの作用は真菌(白癬・カンジダなど)をやっつける事ですが、どのような機序で真菌をやっつけているのでしょうか。

マイコスポールは主に3つの作用から抗真菌作用(真菌をやっつける作用)を発揮します。

1つ目は、真菌細胞の細胞膜を変化させる作用です。マイコスポールは、真菌細胞の細胞膜に結合し、膜透過性に変化を与えます。簡単にいうと、真菌の細胞膜に「穴をあける」ようなイメージを持って頂いて良いかと思います。

真菌細胞の細胞膜に穴があくと、真菌細胞の細胞内にある成分が細胞外へ流出し、真菌細胞が壊れてしまうというわけです。

2つ目は、真菌細胞膜の重要な構成成分であるエルゴステロールの合成を阻害し、細胞膜を「もろく」する作用があります。

抗真菌薬は真菌細胞を殺すお薬ですが、同時に「人の細胞」も殺してしまう可能性があります。そのため真菌にだけ効いて、人の細胞には効かないような工夫が必要になります。

エルゴステロールは真菌細胞の細胞膜に存在する物質ですが、人の細胞には存在しません。そのためエルゴステロールを標的にすれば、真菌細胞のみ効率的にやっつけることができるのです。

3つ目は、真菌細胞が栄養を取り込むのをブロックする作用です。

マイコスポールは、真菌がアミノ酸や糖質などの栄養源を細胞内に取り込むのをブロックします。すると真菌細胞は栄養不足に陥り、死んでしまうのです。

この3つの作用から、マイコスポールは真菌をやっつける効果を発揮しています。

 

4.マイコスポールの副作用

マイコスポールの副作用は多くはありませんが、真菌を「殺す」お薬であるため、時にヒトの身体にも害を及ぼすことがあります。

マイコスポールは塗り薬であり、全身に投与するものではないのでその副作用も局所に留まる事がほとんどです。

そのため、全身性の重篤な副作用はほとんどありません。

報告されている副作用としては、

  • 接触性皮膚炎
  • 刺激感
  • 発赤・紅斑
  • かゆみ

などの局所の副作用です。

いずれもマイコスポールが皮膚を攻撃してしまうために生じます。重篤となることは少なく、多くはマイコスポールの使用を中止すれば自然と改善していきます。

 

5.マイコスポールの用量・用法と剤型

マイコスポールは、

マイコスポールクリーム1%(ビホナゾール) 10g
マイコスポール外用液1%(ビホナゾール) 10ml

と2つの剤型があります。

マイコスポールの使い方は、

1日1回患部に塗布する。

と書かれています。

マイコスポールは1回塗れば、長時間にわたって皮膚の角質層に留まるため、1日1回の塗布で十分効果が持続します。

ちなみに塗り薬には、「軟膏」「クリーム」「外用液」などがありますが、これらはどう違うのでしょうか。

軟膏は、ワセリンなどの油が基材となっています。保湿性に優れ、刺激性が少ないことが特徴ですが、べたつきは強く、これが気になる方もいらっしゃいます。

クリームは、水と油を界面活性剤で混ぜたものです。軟膏よりも水分が入っている分だけ伸びがよく、べたつきも少なくなっていますが、その分刺激性はやや強くなっています。

外用液は水を中心にアルコールなどを入れることもある剤型です。べたつきはほとんどなく、遣い心地は良いのですが、保湿効果は長続きしません。刺激性が強めというデメリットがある反面で、浸透力が高く、皮膚が厚い部位でも効果が期待できます。

それぞれ一長一短あるため、皮膚の状態に応じて主治医とよく相談し、使い分ける事が大切です。

マイコスポールには軟膏がありません。そのため、もし軟膏の方が適切な部位に生じた皮膚真菌症であれば、マイコスポール以外のお薬の方が良いこともあります。実際、マイコスポールクリーム・外用液適用上の注意として「著しいびらん面には使用しないこと」と記載されています。

軟膏のメリットは保湿性に優れ、刺激性が低いことですので、クリームや液剤を塗ると刺激感が強かったり痛かったりするような部位であれば、マイコスポール以外で軟膏剤がある抗真菌薬を選択した方が良いかもしれません。

 

6.マイコスポールが向いている人は?

以上から考えて、マイコスポールが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

マイコスポールの特徴をおさらいすると、

・白癬・カンジダなどに対して殺真菌的に作用する
・1日1回塗るだけで効果が持続する
・塗り薬で全身に作用しないため、副作用も少ない

というものでした。

強いての特徴を挙げましたが、これは他の抗真菌剤でも認められることの多い特徴です。皮膚真菌症に対する塗り薬はいくつかの種類がありますが、極論を言えばどれを使っても大きな違いはありません。

「この水虫は絶対にマイコスポールじゃないとダメだ!」というケースはほとんどなく、実際はどれを使っても改善が得られます。

そのため、自分の使いやすさや好みである程度選択しても構わないでしょう。

マイコスポールは刺激性の低い軟膏剤がないため、刺激感が強い部位への塗布はあまりお勧めできません。著しいびらん面や、敏感な部分(陰部など)に塗布する場合は、刺激感が気になるようであれば軟膏剤のある抗真菌薬の方が良いでしょう。