ビラノア錠の効果と副作用【抗アレルギー薬・花粉症治療薬】

ビラノア錠(一般名:ビラスチン)は2016年から発売されているお薬です。抗アレルギー薬と呼ばれ、アレルギーによって生じる諸症状を抑え、主に花粉症(アレルギー性鼻炎)やじんま疹、皮膚のかゆみなどに用いられます。

ビラノアは主にヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状を抑えるため、「抗ヒスタミン薬」と呼ばれることもあります。

抗アレルギー薬の中でビラノアはどのような特徴のあるお薬で、どんな作用を持っているお薬なのでしょうか。

ビラノアの特徴や効果・副作用についてみていきましょう。

 

1.ビラノアの特徴

まずはビラノアの全体的な特徴についてみてみましょう。

ビラノアはヒスタミンのはたらきをブロックすることでアレルギー症状を抑えます。

アレルギーを抑える力も強く、かつ抗ヒスタミン薬で生じやすい「眠気」の副作用をほとんど起こしません。ただし食後ではなく空腹時に服用する必要があります。

ヒスタミンはアレルギー症状を誘発する物質(ケミカルメディエーター)の1つです。そのため、ヒスタミンのはたらきを抑える事ができればアレルギー症状を改善させることができます。この作用を狙っているのがビラノアをはじめとした「抗ヒスタミン薬」になります。

抗ヒスタミン薬には古い第1世代抗ヒスタミン薬と、比較的新しい第2世代抗ヒスタミン薬があります。第1世代は効果は良いのですが眠気などの副作用が多く、第2世代は効果もしっかりしていて眠気などの副作用も少なくなっています。

この違いは第1世代は脂溶性(脂に溶ける性質)が高いため脳に移行しやすく、第2世代は脂溶性が低いため脳に移行しにくいためだと考えられています。また第2世代の方がヒスタミンにのみ集中的に作用するため、余計な部位への作用が少なく、これも副作用を軽減させています。

このような特徴から、アレルギー治療を行う場合は、まず副作用が少ない第2世代から開始するのが一般的です。

ビラノアは第2世代の抗ヒスタミン薬に属します。第2世代の中でも脳に移行しにくく、眠気の副作用が極めて少ない点が特徴です。

眠気はほとんど生じないとも報告されており、ビラノアを服用させてから自動車の運転を行わせて運転能力が下がるかどうかをみた試験では、プラセボ(何の成分も入っていない偽薬)服用時と変わらないという結果が出ており、ここからも眠気が少ない事が分かります。

ほとんどの抗ヒスタミン薬は、眠気の副作用から「運転などの危険を伴う機械の操作には従事させない事」と書かれていますが、ビラノアにはこの記載はなく、一定の注意は必要であるものの服用しながらの運転も許可されています。

また効果としては、ビラノア20mg1日1回の服用は、アレグラ(フェキソフェナジン)60mg1日2回の服用と比べて、より強くアレルギー症状を抑えたという報告があり、ここからビラノアは効果も強い事が分かります。

以上から、ビラノアの特徴として次のようなことが挙げられます。

【ビラノアの特徴】

・花粉症や蕁麻疹などのアレルギー症状を抑える
・ヒスタミンのはたらきを抑える作用がある
・効果も強く、しっかりしている
・第2世代抗ヒスタミン薬であり、副作用が少ない
・眠気がほとんど生じない(一定の注意は必要)

 

2.ビラノアはどのような疾患に用いるのか

ビラノアはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

アレルギー性鼻炎、蕁麻疹(じんましん)、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒

ビラノアが用いられるのは、アレルギー疾患になります。

代表的なアレルギー疾患としては、アレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症など)やじんましんなどがあります。

ビラノアは、

  • アレルギー性鼻炎(花粉症)
  • じんましん
  • 皮膚疾患の伴うかゆみ

のいずれにおいてもプラセボ(何の成分も入っていない偽薬)と比較して、有意なアレルギー抑制効果が確認されています。

またアレルギー性鼻炎においては、同じく第2世代抗ヒスタミン薬である「アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)」と比べて、より強力に鼻症状(くしゃみ、鼻水)を改善させた事が確認されています。

 

3.ビラノアにはどのような作用があるのか

ビラノアはどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えてくれるのでしょうか。

ビラノアの作用について詳しく紹介させて頂きます。

 

Ⅰ.抗ヒスタミン作用

ビラノアは抗ヒスタミン薬というお薬に属し、その主な作用は「抗ヒスタミン作用」になります。これはヒスタミンのはたらきをブロックする作用になります。

アレルギー症状を引き起こす物質の1つに「ヒスタミン」があります。

花粉などのアレルゲン(アレルギーを起こすような物質)が身体に入ってくると、アレルギー反応性細胞(肥満細胞など)からアレルギー誘発物質(ヒスタミンなど)が分泌されます。これが受容体に結合すると様々なアレルギー症状が発症します。

ちなみに肥満細胞からはヒスタミン以外にもアレルギー誘発物質が分泌されますが、これらはまとめてケミカルメディエータ―と呼ばれています。

ビラノアのような抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応性細胞からヒスタミンが分泌されるのを抑える作用があります。またヒスタミンが結合するヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状の出現を抑える作用もあります。

これらの作用によりアレルギー反応が生じにくくなり、アレルギー症状を和らげてくれるのです。

 

4.ビラノアの副作用

ビラノアにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。

ビラノアの副作用発生率は2.4%と報告されており、副作用の少ない抗ヒスタミン薬になります。

副作用として多いのは、

  • 眠気

ですが発生頻度は0.6%と報告されており、極めて少ない数となっています。

その他の副作用としては、

  • 口渇(口の渇き)
  • 頭痛

などが報告されています。

これらの副作用はビラノアがわずかに持つ抗コリン作用が関係しています。抗コリン作用というのは、アセチルコリンという物質のはたらきを抑えてしまう作用の事です。ヒスタミンの受容体とアセチルコリンの受容体は構造が類似しているため、抗ヒスタミン薬は時にアセチルコリン受容体にも作用してしまうのです。

抗コリン作用は唾液の分泌を減少させて口喝を生じさせたリ、胃腸の動きを低下させて便秘を生じさせたリしてしまいます。ビラノアのような第2世代は第1世代と比べると抗コリン作用は少なくなってはいるのですが、時にこのような副作用を生じさせてしまうことがあります。

また、

  • 肝機能障害(AST、ALT、ɤGTP、ビリルビン上昇)

といった検査の異常が生じることもあります。

ビラノアを長期間服薬している場合などでは定期的に血液検査を行うようにしましょう。

 

5.ビラノアの用法・用量と剤形

ビラノアには、

ビラノア錠 20mg

の1剤型のみがあります。

ビラノアの使い方は、

通常、成人には1回20mgを1日1回空腹時に経口投与する。

となっています。

多くのお薬は「食後」に服用しますが、ビラノアは「空腹時」に服用する点に注意しましょう。具体的には起床時や就寝前に服用すると良いでしょう。

食後(特に900kcal以上の高カロリー食を食べた後)では、ビラノアの体内への吸収が最大で40%ほど低下してしまうという報告があり、食後の服用では十分な効果が得られない可能性があります。

 

6.ビラノアが向いている人は?

ビラノアが向いている人はどのような人なのでしょうか。

ビラノアの特徴をおさらいすると、

・花粉症や蕁麻疹などのアレルギー症状を抑える
・ヒスタミンのはたらきを抑える作用がある
・効果も強く、しっかりしている
・第2世代抗ヒスタミン薬であり、副作用が少ない
・眠気がほとんど生じない(一定の注意は必要)

といったものがありました。

ビラノアは、第2世代抗ヒスタミン薬になり、アレルギー性鼻炎やじんましんなどに対してまず検討させるお薬になります。

第2世代の中でも効果がしっかりとしており、かつ副作用の眠気もほとんど起こさないため、理想的なバランスを持つお薬です。

お薬の効きは個人差があるため、誰にとっても理想的な効能が得られるわけではありませんが、このような特徴から処方される頻度も多くなってくる事が期待される抗ヒスタミン薬になります。

また1日1回の服用で1日を通して効果が持続する点も大きなメリットでしょう。