ボンビバの効果と副作用【月1回服用の骨粗しょう症治療剤】

ボンビバ(一般名:イバンドロン酸ナトリウム水和物)は2013年から発売されている骨粗しょう症の治療薬で「ビスホスホネート系」という種類に属します。

骨粗しょう症とは、加齢などに伴い骨がもろくなってしまう疾患です。高齢化社会によって患者さんの数も増えており、現在日本には約1000万人以上の骨粗しょう症の患者さんがいると推定されています。

骨粗しょう症になると、些細な刺激でも骨折しやすくなったり、骨や関節に痛みが生じやすくなってしまいます。骨粗しょう症による骨折を機に寝たきり状態になってしまう方もいます。

ボンビバは、このような方に対して骨を丈夫にする作用を持ちます。全体的に見れば安全性に優れるお薬ですが、使用にはいくつかの注意点が必要なお薬でもあります。

骨粗しょう症のお薬にもいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。骨粗しょう症治療薬の中でボンビバはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。

ここではボンビバの特徴や効果・副作用などを紹介していきます。

 

1.ボンビバの特徴

まずはボンビバというお薬の全体的なイメージとその特徴をお話します。

ボンビバは破骨細胞(骨を壊す細胞)のはたらきを抑え、骨が破壊されないようにするお薬です。同系統のビスホスホネート系の中では、効果発現が速いというメリットがあります。

飲み薬と注射剤の2剤型があり、どちらも月1回の投与で1カ月間効果が持続します。飲み薬は食道や胃への刺激性があるため、多くの水で服用したり服用後60分は横になれないなどの服用の制限があります。

ボンビバは骨粗しょう症の治療薬で「ビスホスホネート系」という種類に属します。

骨粗しょう症というのは、主に加齢などが原因で骨がもろくなってしまい、転倒などの軽いダメージで骨折しやすい状態になってしまう事です。

骨の形成には、「骨芽細胞(骨を作る細胞)」と「破骨細胞(骨を壊す細胞)」の2つの細胞が関わっています。破骨細胞によって古い骨が壊され、骨芽細胞によって新しい骨が作られるというサイクルで、私たちの骨は常に強度を保てているのです。

しかし骨粗しょう症では骨芽細胞よりも破骨細胞の活性が高くなってしまっており、骨が作られるよりも破壊されるペースが速くなるため、骨がどんどんともろくなってしまいます。

ボンビバをはじめとしたビスホスホネート系は、破骨細胞のはたらきを抑える事で相対的に骨芽細胞のはたらきを高め、これにより骨粗しょう症の改善をはかるお薬になります。

骨の形成を促進するというわけではなく、骨の分解を抑えるという防戦重視のお薬であるため、その作用は強力とは言えません。しかし服用を続けることで穏やかに骨粗しょう症を改善させてくれます。

ビスホスホネート系の中でのボンビバの特徴としては、他のビスホスホネート系よりも「効果発現が速い(即効性がある)」事が挙げられます。これの理由について詳しくは後述しますが、ボンビバは骨親和性が低いため、破骨細胞に取り込まれやすいためだと考えられています。

ボンビバには静脈に注射する剤型と、飲み薬があります。注射は月に1回病院を受診し、医師や看護師に打ってもらう必要があります。どちらも月に1回の投与で1カ月間効果が持続します。

飲み薬でも注射でも、どちらも効果は同等ですが、

  • 飲み薬は胃・食道への刺激性があるためたくさんの水とともに服用し、服用後60分は横になってはいけない
  • 注射剤は投与する時に多少の痛みがある

とそれぞれデメリットがありますので、患者さんの状態に合わせて使用しやすい方を選びます。

飲み薬のボンビバはデメリットとして、食道・胃などへの刺激性がある事が挙げられます。食道や胃粘膜を荒らしてしまい、食道炎・食道潰瘍などを引き起こす事があるのです。

そのためボンビバを服用する際には多くの水(180ml程度)で服用し、服用後になるべく早く胃内に到達させるために60分は横になってはいけない事が求められています。

骨粗しょう症の患者さんは高齢者が多く、お水を一気にたくさん飲めなかったり、体力が落ちていて60分も座っていられないという方もいらっしゃいます。このような方には飲み薬のボンビバはあまり向かず、注射剤が検討されます。

一方で注射剤は消化管への刺激性はありませんが、注射ですので投与の際に多少の痛みを伴います。

以上からボンビバの特徴として次のような点が挙げられます。

【ボンビバの特徴】

・骨の分解を抑制する事により骨を丈夫にする
・骨粗しょう症による骨折を予防したり、骨の痛みの改善が期待できる
・ビスホスホネート系の中では効果発現が速い
・注射剤と飲み薬があり、どちらも月に1回の投与で1カ月間効果が持続する
・飲み薬は多くの水とともに飲み、服用後は60分は横になってはいけない

 

2.ボンビバはどのような疾患に用いるのか

ボンビバはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

骨粗鬆症

ボンビバは骨粗しょう症の治療薬になりますので、その適応はもちろん「骨粗しょう症」です。

ボンビバは骨粗しょう症の診断をしっかりと確定させてからでないと服用を開始する事は出来ません。

骨粗しょう症は骨がもろくなってしまう疾患ですが、その診断には、

  1. 椎体または大腿骨近位部の脆弱性骨折
  2. その他部位の脆弱性骨折があり骨密度が成人平均値の80%未満
  3. 骨密度が低く、成人平均値の70%以下または-2.5SD以下

のいずれかを満たす事が必要です。

脆弱性骨折というのは、転倒などの軽い外力によって容易に骨折してしまう事です。

特に椎体(背骨)や大腿骨近位部(足の付け根付近)に脆弱性骨折が生じた場合は、それだけで骨粗しょう症と診断が出来ます。転倒による腰椎圧迫骨折や大腿骨頸部骨折というのは、骨粗しょう症の患者さんに非常に多い骨折になります。

それ以外の部位で脆弱性骨折が生じた場合は、骨折に加えて骨密度が成人平均値の80%未満である事を確認する必要があります。

また脆弱性骨折が生じていない状態では、骨密度が成人平均値の70%以下であるか、-2.5SD以下であれば診断できます。

ちなみに骨密度はレントゲン撮影やエコー検査などで測定する事が出来ます。

骨粗しょう症に対してボンビバはどのくらいの効果があるのでしょうか。

骨粗しょう症の患者さんにボンビバ静注を3年間投与してた調査では、

  • 腰椎の骨密度が約9.02%増加
  • 大腿骨近位部の骨密度が約3.09%増加

した事が報告されています。

ボンビバは注射剤が先に発売されたため注射剤での調査となっていますが、注射剤も飲み薬もほぼ同等の効果が得られる事がのちの調査で確認されています。

腰椎も大腿骨近位部も骨粗しょう症の方が良く骨折する部位ですので、これらの部位でしっかりと骨密度の上昇が得られたという事は、骨折リスクを減少させる効果がある事を示しています。

 

3.ボンビバにはどのような作用があるのか

ボンビバはどのような機序によって骨粗しょう症を改善させるのでしょうか。

骨粗しょう症は加齢などによって骨がもろくなってしまい、骨折しやすくなってしまう疾患ですが、骨粗しょう症の治療薬は大きく分けると2つの種類があります。

  • 骨形成促進薬:骨の形成を促進する事で骨を強くする
  • 骨吸収抑制薬:骨が分解されるのを抑える事で骨が弱くならないようにする

このうち、ボンビバは後者の「骨吸収抑制薬」になります。

ボンビバは服用後、全身の骨組織に沈着します(より正確に言うと、骨の構成成分であるハイドロキシアパタイトに沈着します)。骨は古くなってくると破骨細胞によって壊されてしまうのですが、破骨細胞がボンビバの沈着した骨組織を壊す際に、ボンビバは破骨細胞内に取り込まれます。

破骨細胞内に取り込まれると、ボンビバはFPPS(ファルネシルピロリン酸合成酵素)という酵素のはたらきをブロックする作用を発揮します。

FPPSは破骨細胞の細胞骨格を作るのに必要な酵素です。そのため、これがブロックされると破骨細胞は細胞骨格を維持できなくなり、アポトーシス(細胞死)が引き起こされます。

またFPPSは破骨細胞内での情報伝達の役割も持つため、ブロックされると「骨を破壊しなさい」という破骨細胞の主な機能の情報伝達がうまく行えなくなります。これによって破骨細胞の機能が低下します。

このように破骨細胞の機能が低下し、また破骨細胞のアポトーシス(細胞死)が誘導されると、骨が壊されるよりも、骨が作られる率の方が高くなります。

このような機序によって骨がもろくなるのを防ぐのがボンビバです。

ビスホスホネート系のお薬はどれもこのような作用機序によって骨粗しょう症を改善させますが、ビスホスホネート系の中でのボンビバの特徴は、骨親和性が低いために効果発現が速い事が挙げられます。

「骨親和性が低い」というのは、簡単に言うと「骨からはがれやすい」という事です。

ボンビバは破骨細胞が骨を破壊した時に、簡単に骨からはがれるため、破骨細胞にすぐに吸収されます。これは破骨細胞の機能低下やアポトーシスを生じさせやすいという事であり、骨を強くする作用がより早く出るという事につながります。

このような特徴から、ボンビバはビスホスホネート系の中では即効性に優れるのだと考えられています。

 

4.ボンビバの副作用

ボンビバにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。

ボンビバの副作用は、

  • 100mg錠で27.7%
  • 1mg静注で24.4%

と報告されています。

錠剤(飲み薬)で生じる主な副作用としては、

  • 下痢
  • 背部痛
  • 頭痛
  • 関節痛
  • 倦怠感
  • 悪心・嘔吐

などが報告されています。

一方で注射剤で生じる主な副作用としては、

  • 背部痛
  • 筋肉痛
  • 関節痛

などが報告されています。

ボンビバは他のビスホスホネート系のお薬と比較すると、「骨の痛み」が生じやすい傾向にあります。この理由は明確にはされてませんが、元々ビスホスホネート系のお薬は破骨細胞に作用するため、骨にダメージを与える副作用が稀に生じる事があります。それに加えて、ボンビバは効果発現が速いため、そのような副作用が目立つのではないかと考えられます。

またボンビバのうち飲み薬の方は、口腔・食道・胃などの消化管粘膜に刺激性を持つため、時に消化管粘膜を傷付けてしまい、胃腸症状を来たす事があります。

このような副作用をなるべく生じさせないように、ボンビバは多くの水とともに服用する必要があり、また服用後60分は横になってはいけないという決まりがあります。

頻度は稀ですが重篤な副作用としては、

  • 上部消化管障害(食道穿孔、食道狭窄、食道潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、食道炎、食道びらん等)
  • アナフィラキシーショック、アナフィラキシー反応
  • 顎骨壊死・顎骨骨髄炎
  • 外耳道骨壊死
  • 大腿骨転子下及び近位大腿骨骨幹部の非定型骨折
  • 低カルシウム血症

が報告されています(ボンビバ静注は上部消化管障害は除く)。

ボンビバをはじめとしたビスホスホネート系のお薬には、前述の消化管粘膜に対する刺激性の他に、もう1つ注意すべき副作用があります。

それは「骨の壊死」が生じるリスクが稀ながらあるという事です。特に顎骨壊死には注意が必要で、これは顎の骨が壊死してしまう(死んでしまう)副作用になります。特に抜歯などの歯科治療をした際に生じやすい事が知られています。

ボンビバを服用している方で歯科治療をする際は、必ず歯科医にボンビバを服用している事を伝える必要があります。また現在歯科治療中の方は、可能であればボンビバの服用は歯科治療が終了してから開始するのが無難でしょう。

またボンビバは破骨細胞のはたらきを抑えますので、これにより低カルシウム血症が生じる事があります。

破骨細胞は骨を破壊しますので、破骨細胞が活動すると骨に含まれるカルシウムが血中に遊離し、血中カルシウム濃度は増える方向となります。しかしボンビバによって破骨細胞のはたらきが抑えられると、骨に含まれるカルシウムが血中に遊離しにくくなりますので、その分カルシウムが下がりやすくなるのです。

ボンビバは次のような方には禁忌(絶対に使ってはダメ)となっていますので注意しましょう(ボンビバ静注は上2つは除く)。

  • 食道狭窄又はアカラシア(食道弛緩不能症)等の食道通過を遅延させる障害のある方
  • 服用時に立位又は坐位を60分以上保てない方
  • ボンビバの成分又は他のビスホスホネート系薬剤に対し過敏症の既往歴のある方
  • 低カルシウム血症の方
  • 妊婦又は妊娠している可能性のある方

飲み薬のボンビバは消化管粘膜(特に食道)に対して刺激性がありますので、元々食道の通りが悪くなるような疾患を持っている方は服用する事が出来ません。

食道狭窄症とは文字通り食道が狭窄している疾患です。またアカラシアというのは、食道と胃の堺にある下部食道括約筋という筋肉が緩みにくく、食道から胃に食べ物が移動しにくくなってしまう疾患です。

またボンビバは破骨細胞のはたらきを抑える事で血中カルシウムを低下させるリスクがありますので、元々血中カルシウム値が低い低カルシウム血症の方はボンビバを使用する事は出来ません。

ボンビバは妊娠中ラットにおける動物実験で、胎児出生率の低下や母動物の死亡が報告されています。人でも同様の事が生じる可能性があるため、妊娠中の方への投与も禁忌となっています。

 

5.ボンビバの用法・用量と剤形

ボンビバは次の剤型が発売されています。

ボンビバ錠 100mg

ボンビバ静注 1mgシリンジ

ボンビバ錠は飲み薬で、ボンビバ静注は注射剤になります。

それぞれのボンビバの使い方は、

【100mg錠】
通常、成人には100mgを1カ月に1回、起床時に十分量(約180mL)の水とともに経口投与する。

なお、服用後少なくとも60分は横にならず、飲食(水を除く)及び他の薬剤の経口摂取を避けること。

【1mg静注】
通常、成人には1mgを1カ月に1回、静脈内投与する。

となっています。

ボンビバ100mg錠は飲み薬で、月に1回服用します。

服用に当たっては、

  • 起床時(朝食の60分以上前)に服用する必要がある
  • 180ml程度の水分とともに服用する
  • 服用後少なくとも60分は横にならず、他のお薬や食べ物を食べない

という制限があります。

ボンビバは口腔内や食道、胃に長く停滞していると口腔潰瘍や食道潰瘍などを生じさせてしまうリスクがあります。そのため、なるべくたくさんの水分と一緒に摂取し、服用後は速やかに消化吸収させるために一定時間横にならない事が推奨されています。

ちなみに他のビスホスホネート系は、「服用後少なくとも『30分』は横にならず・・・」と記載されていますが、ボンビバは倍の時間の60分となっています。

これをみるとボンビバが他のビスホスホネート系よりも消化管への刺激性が強いように感じられるかもしれませんがそんな事はありません。消化管粘膜に対する刺激性はどのビスホスホネート系もおおむね同じです。

ではなぜボンビバだけ長く設定されているかというと、日本より先行して発売された海外のボンビバの添付文書が「60分」となっていたため、同じお薬で海外は60分で日本が30分なのはおかしいため、海外に合わせて60分にしているというだけです。

またボンビバは電解質を含んだ食事や飲料と一緒に服用してしまうと、吸収率が低下する可能性があります。そのため何も食べていない状態で服用する事が望ましく、添付文書では起床時の服用が勧められています。

ちなみに注射剤の方は、お薬の成分は直接血管に入り、消化管を通りませんので、起床時に投与、投与後は60分は横になってはいけない、などの制限はありません。

 

6.ボンビバが向いている人は?

ボンビバはどのような方に向いているお薬なのでしょうか。

ボンビバの特徴をおさらいすると、

・骨の分解を抑制する事により骨を丈夫にする
・骨粗しょう症による骨折を予防したり、骨の痛みの改善が期待できる
・ビスホスホネート系の中では効果発現が速い
・注射剤と飲み薬があり、どちらも月に1回の投与で1カ月間効果が持続する
・飲み薬は多くの水とともに飲み、服用後は60分は横になってはいけない

といった特徴がありました。

飲み薬のボンビバは、服用に当たっていくつかのルールがあります。

  • 起床時(朝食の60分以上前)に服用する必要がある
  • 180ml程度の水分とともに服用する
  • 服用後少なくとも60分は横にならず、他のお薬や食べ物を食べない

この3つを守れる方でなければ使用するのは難しいでしょう。

更に添付文書上、他のビスホスホネート系が「30分」なのに対してボンビバは「60分」であり、服用のハードルが一段階上がっています。

例えば水を一気にたくさんは飲めない、60分も座っておく事が出来ない、という場合は飲み薬ボンビバは難しいでしょう。この場合はボンビバの注射剤などが候補に挙がります。

飲み薬のボンビバ錠100mgも、注射剤のボンビバ1mg静注も、どちらも効果はほとんど同じですので、自分に適した剤型を選択するようにしましょう。

また他にもビスホスホネート系のお薬には、

  • 1日1回服用するタイプ
  • 週に1回服用するタイプ
  • 年に1回注射するタイプ

など様々な剤型がありますので、自分のライフスタイルに合わせて選択するようにしましょう。