ボラザG軟膏・坐剤(一般名:トリベノシド・リドカイン)は「痔疾患治療薬」に属するお薬で、1983年から発売されています。主に痔の諸症状の改善に用いられます。
痔の治療薬には「飲み薬」と、患部にのみ使う「軟膏」「坐薬」に分けられますが、ボラザGは軟膏・坐薬になり、患部に直接塗ったり注入することで痔を改善させる効果を発揮します。
ボラザG軟膏・坐剤はどんな特徴を持っていて、どのような効果が期待できるお薬なのでしょうか。
ボラザG軟膏・坐剤の効果・効能や特徴、副作用についてみてみましょう。
1.ボラザGの特徴
まずはボラザGの特徴をざっくりと紹介します。
ボラザGは2つの成分が配合されたお薬になります。
具体的には、
・トリベノシド
・リドカイン
の2つが配合されています。
トリベノシドは、同じく痔の薬である「ヘモクロン」というカプセル剤に含まれている成分になります。トリベノシドには、
- 循環改善作用(血液の流れを良くする)
- 抗浮腫作用(患部の腫れを改善する)
- 創傷治癒促進作用(傷の治りを早める)
といった3つの作用があり、これが痔の症状を和らげ、治りを早めてくれます。
またリドカインは、「キシロカイン」という商品名で使われている局所麻酔薬になります。よく歯医者さんで抜歯をするときに麻酔をしますが、そういった時によく使われるお薬です。
リドカインは痔の治療においては、痔によって生じる痛みを抑えてくれる作用があります。
ただしこれは痛みの原因を治しているわけではなく、あくまでも痛みを感じにくくしているだけですので、痛みが治まったから痔が治っていると誤解しないように気を付ける必要があります。
つまりボラザGは、リドカインで痛みを抑えながら、トリベノシドで患部の血流を改善して治りを早めてくれるお薬だという事です。
痔の治療薬はステロイドを含むものも多いのですが、ボラザG軟膏・坐剤はステロイドを含まないため、長期間使用しても比較的安全なお薬になります。
以上からボラザG軟膏・坐剤の特徴を挙げると、次のようなことが挙げられます。
【ボラザG軟膏・坐剤の特徴】
・痔を改善させる治療薬
・血流を良くする事で痔を改善させる
・腫れを抑える作用がある
・傷の治りをはやめる作用がある
・痛みを抑える作用がある
・ステロイドを含まないため長期使いやすい
2.ボラザGはどのような疾患に用いるのか
ボラザG軟膏・坐剤はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。
【効能又は効果】
(坐剤)
内痔核に伴う症状の緩解(軟膏)
痔核に伴う症状(出血、疼痛、腫脹)の緩解
裂肛に伴う症状(出血、疼痛)の緩解、裂創上皮化の促進
ボラザGには軟膏と坐剤(坐薬)があります。
どちらも効果は変わりませんが、剤型の違いから適応範囲が異なっています。
坐剤は直接肛門に挿入しますから、適応は内痔核だけになります。
軟膏は肛門内に挿入することもできますが、肛門周辺に塗る事も出来るため、裂肛や外痔核にも適応を有しています。
3.ボラザGにはどのような作用があるのか
ボラザG軟膏・坐剤は痔を治すために使われますが、どのような作用を持っているのでしょうか。
ボラザGには次のような作用があります。
Ⅰ.血流促進作用
ボラザGに含まれるトリベノシドは、血流を促進する作用があります。
明確な作用機序は分かっていないところもあるのですが、血液を固まりにくくしてサラサラにしたり、血液のうっ滞を防ぐような作用があることが確認されています。
血液には傷を治すための栄養が含まれています。ボラザGによって患部に十分な血液が届きやすくなれば、傷の治りを促進することにつながります。
Ⅱ.抗浮腫作用
ボラザGは腫れやむくみを取る作用があります。
これは先ほど紹介した、ボラザGの血流を改善する作用によります。血流が良くなれば末梢の血液がうっ滞しにくくなりますので、むくみが軽減するのです。
Ⅲ.創傷治癒促進作用
ボラザGは、傷の治りを早める作用があることが確認されています。
痔の治療薬にはステロイドを含むものもありますが、ステロイドは炎症は抑えてくれますが、傷の治り自体は遅めてしまう傾向があります。
その点ボラザGは、炎症を抑える作用はおだやかですが(腫れを取る作用があるため、これが炎症を抑える作用にもつながります)、傷の治りを早めてくれるお薬になります。
Ⅳ.麻酔作用
ボラザGに含まれる、リドカインは「局所麻酔薬」になります。
歯医者さんなどで抜歯をするときに「キシロカイン」というお薬で麻酔をしますが、このキシロカインに含まれる麻酔成分がリドカインです。
痔は症状の1つに「痛み」があり、これはしばしば患者さんを苦しめます。
ボラザGは麻酔作用があるため、痛みを軽減してくれます。
ただし、あくまでもお薬によって痛みを感じないようにしているだけで、痛みの原因そのものを治しているわけではありません。
痛みが治まったからとそれだけで安心してしまうのではなく、根本の原因も合わせてしっかりと治すようにしなくてはいけません。
4.ボラザGの副作用
ボラザG軟膏・坐剤は全身に投与するものではないのでその副作用も局所に留まる事がほとんどです。そのためボラザGの副作用は多くはなく、副作用発生率は0.4~1.3%前後と報告されています。
ボラザGの副作用は、
- 皮膚症状(発疹、かゆみなど)
- 消化器症状(下痢など)
- 局所の刺激感
などが報告されています。
いずれも重篤となることは少なく、多くは様子を見たりボラザGの使用を中止すれば自然と軽減・改善していきます。
5.ボラザGの用量・用法と剤型
ボラザGは、
ボラザG坐剤
ボラザG軟膏 2.4g/個
の2剤型があります。
ボラザGの使い方は、
(坐剤)
通常1回1個ずつ、1日2回朝夕肛門内に挿入する。症状に応じて適宜増減する。(軟膏)
内痔核には、通常1回1容器分を1日2回朝夕後肛門内に注入する。症状に応じて適宜回数を増減する。
裂肛、外痔核には、通常適量を1日2回朝夕患部に塗布または注入する。症状に応じて適宜回数を増減する
と書かれています。
使い方としては、坐剤はそのまま肛門に挿入して使用します。
軟膏は肛門内の痔に対して用いる際は、先端が細くなっていますので先端を肛門内に入れてから軟膏を出します。肛門に挿入する前にちょっとだけ軟膏を出しておくと、それが滑りを良くしてくれ、肛門を刺激せずに済みます。
肛門外に使う場合は、そのまま軟膏を塗るか、ガーゼなどに軟膏を出してから患部に当てましょう。
6.ボラザGが向いている人は?
以上から考えて、ボラザGが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
ボラザG軟膏・坐剤の特徴をおさらいすると、
・痔を改善させる治療薬
・血流を良くする事で痔を改善させる
・腫れを抑える作用がある
・傷の治りをはやめる作用がある
・痛みを抑える作用がある
・ステロイドを含まないため長期使いやすい
というものでした。
ボラザGをはじめとした痔に対するお薬は主に軽症例に対して用いられます。軽度のものであればお薬だけでも改善しますが、ある程度進行しているものだと手術などを検討する必要もあります。
ボラザGカプセルは穏やかに効き、血流を良くして腫れを取り、傷の治りも早めてくれます。ステロイドを含まないため長期間でも使いやすいのですが、炎症を抑える作用は弱めになります。
そのため、激しい炎症がないような症例において向いているお薬でしょう。
また痔の治療はお薬だけでなく生活習慣の改善が一番大切です。
- 座る時間を減らす
- 食事を規則正しく、バランス良く
- 飲酒やタバコを控える
- しっかりと睡眠を取る
- 刺激物(からいものなど)の摂取を控える
など、生活習慣の改善も忘れないようにしましょう。