バルコーゼ顆粒(一般名:カルメロース)は1953年から発売されている下剤(瀉下薬、便秘薬)になります。
非常に古いお薬であるため近年では使用頻度は少なくなっていますが、バルコーゼは効果が穏やかである代わりに大きな副作用も少なく、安全性が高いため、現在でも用いられることのある下剤になります。
バルコーゼはどんな特徴のある便秘薬で、どんな患者さんに向いているお薬なのでしょうか。バルコーゼ顆粒の効果や特徴についてみていきましょう。
目次
1.バルコーゼ顆粒の特徴
まzはバルコーゼ顆粒というお薬の特徴についてみてみましょう。
バルコーゼ顆粒(一般名:カルメロース)は下剤になりますが、その中でも「膨張性下剤」という種類に属します。
便秘薬にはお薬によって作用機序が異なりますが、その中でバルコーゼは水分を含むことで膨らみ、ゼラチン状になるという特徴を持ちます。これが硬くなっている便と混じることで便が柔らかくなり容積が増大します。すると、
・便が柔らかくなるため、排便しやすくなる
・膨張した便が大腸壁を刺激するため、排便しやすくなる
といった効果が得られるのです。そのためバルコーゼはたくさんの水(コップ1杯以上)と一緒に服用しなければいけません。
バルコーゼの一般名は「カルメロース」ですが、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」とも呼ばれています。「セルロース」という言葉を含んでいることからも分かる通り、実はバルコーゼは「セルロース」の誘導体なのです。
セルロース、といっても聞き覚えがないかもしれませんが、セルロースは主に野菜に多く含まれる炭水化物に一種で、俗にいう「食物繊維」のことです。
「便秘には野菜に含まれる食物繊維が良い」という事はよく言われますが、これはセルロースが水分を含んで膨張し、腸管を刺激して排便を促すからです。
バルコーゼは食物繊維と同じような物質であり、食物繊維のように作用して排便を促してくれます。
その効果は強くはなく、他の便秘薬と比べると「穏やかに効く」というものですが、その分副作用も少ないお薬です。効きすぎて下痢になってしまう、という事もほとんどありません。食物繊維も取りすぎたからといって下痢にはなりませんよね。
大腸刺激性下剤(プルゼニド、アローゼンなど)などと違い、耐性形成や習慣性もありませんが、欠点としては「飲みにくい事」が挙げられます。バルコーゼは顆粒ですが、水と混ざると膨張してゼラチンのようになるため、口の中に張り付いてしまってうまく飲み込めないという方もいます。
そのような場合は、バルコーゼをオブラートに包んだり、カプセルに入れたりして服用することで対処します。
バルコーゼ顆粒の特徴として次のようなことが挙げられます。
【バルコーゼ顆粒(カルメロース)の特徴】
・たくさんの水(コップ一杯以上)と一緒に服用する必要がある
・穏やかに効き、下痢になることは非常に少ない
・耐性形成もなく、安全性は高い
・服用しにくいことがある
2.バルコーゼ顆粒はどんな疾患に用いるのか
バルコーゼ顆粒はどのような疾患に用いられるのでしょうか。バルコーゼの添付文書を見ると、次のように記載されています(2015年7月現在)。
【効能又は効果】
便秘症
バルコーゼを用いる疾患は「便秘症」と書かれています。まぁ、当然ですね。
バルコーゼは下剤の中でも膨張性下剤に属します。前述の通り、膨張性下剤は水分を取り込んで膨張し、便と混じることで便を柔らかくし、また便容積を増大させるために腸管壁を刺激して排便を促します。
バルコーゼは、便が硬くなっている方に向いているお薬であることが分かります。便に水分が足りず、硬くなりすぎて排泄できないような時、バルコーゼが便を膨張させ、柔らかくしてあげることで排便がしやすくなるのです。
3.バルコーゼ顆粒の作用機序
便秘症に対して用いられるバルコーゼ顆粒ですが、どのような機序で便秘を改善させているのでしょうか。
バルコーゼは服用にあたり、「多量の水」と共に飲む必要があります。「多量」とは具体的にはコップ1杯以上と添付文書には書かれています。
バルコーゼは、一緒に服用した水を吸収することで、膨張する特徴があります。この膨張したバルコーゼが腸管内で便を取り込みます。便は膨張したゼラチン状のバルコーゼと混ざるため柔らかくなり、また便の容積も増えます。
便が柔らかくなれば、腸管を移動しやすくなるため、排便されやすくなります。また容積が増えれば腸管壁が刺激されるため、これも排便されやすくなります。
バルコーゼはこのような機序で便秘症に対して効果を発揮するのです。
なおバルコーゼは食物繊維と同じで腸管から体内にほとんど吸収されないため、安全性も高いお薬になります。
4.バルコーゼ顆粒の用法・用量と剤形
バルコーゼ顆粒は、
バルコーゼ顆粒75%(カルメロース顆粒)
の1剤形のみになります。
使い方としては、
通常成人1日1.5g~6g(本剤2.0g~8.0g)を、多量の水とともに、3回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
と書かれています。
バルコーゼは含有率が75%ですので、バルコーゼ顆粒75%の1g中にはバルコーゼは0.75g含有されています。同様にバルコーゼ顆粒75%の2g中にはバルコーゼは1.5g、8g中には6g含有されているため、上記のような書き方になっています。
また「多量の水」というのは、「コップ1杯以上の水」と定義されていますので、だいたい200ml以上だと考えると良いでしょう。「多量」と書いてあるからと言って、何リットルもの水を飲む必要はありません。
ちなみにバルコーゼは水がないと膨張しないため、バルコーゼ単品で服用してしまうと効果はかなり薄れてしまいます。必ず多量の水とともに服用しましょう。
5.バルコーゼ顆粒の作用時間・効果発現時間
バルコーゼ顆粒は、1回服薬すると12~24時間後に効果が出てくると考えられています。もちろん個人差はありますので、必ずこの時間に排便できるというわけではありません。
また、効果が最大になるまでに2~3日飲み続ける必要があります。1回飲んで効果が弱かったからといって、すぐに服用を止めず、効果をしっかりと確かめるには少なくとも2~3日は服用を続けてみてください。
6.バルコーゼ顆粒が向いている人は?
以上から考えて、バルコーゼが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
アローゼンの特徴をおさらいすると、
・たくさんの水(コップ一杯以上)と一緒に服用する必要がある
・穏やかに効き、下痢になることは非常に少ない
・耐性形成もなく、安全性は高い
・服用しにくいことがある
というものでした。
ここから、多量の水を服用できない人は本剤があまり向きません。例えば重度の心不全などがあり主治医から水分摂取量を制限されている方では難しいかもしれません。
また、穏やかに服用少なく効くということから、効果は強くなくてもいいから安全性を重視して便秘を改善させたい方にも良いお薬だといえます。
普通の錠剤などのお薬と比べると飲み心地が独特であるため、バルコーゼの飲み心地が気に入らない方も別のお薬がいいかもしれません。
7.バルコーゼ顆粒の薬価
バルコーゼ顆粒の薬価はどれくらいでしょうか。
薬価は2年に1回改訂されますが、2015年5月の薬価基準収載では次のように薬価が設定されています。
バルコーゼ顆粒(カルメロース) 1g 6.20円
(2015年7月現在)
下剤はほとんどが安価ですが、バルコーゼも安価であるのが分かります。
なお薬価の改訂は定期的に行われているため、バルコーゼ顆粒の薬価も今後、変更される可能性がありますことをご了承下さい。最新の薬価は、厚生労働省のサイトや製薬会社のサイトにてご確認下さい。