フロジン外用液（一般名：カルプロニウム）は病院で処方される塗り薬で、「脱毛症・白斑治療薬」という種類のお薬になります。1969年から発売されています。
フロジン外用液は主にストレスなどで円形脱毛症を発症してしまった方に対して用いられることの多いお薬です。
フロジン外用液はどのような作用機序があって、どのような効果が期待できるお薬なのでしょうか。
フロジン外用液の効果・効能や特徴、副作用について詳しくみてみましょう。
目次
１．フロジン外用液の特徴
まずはフロジン外用液の特徴をざっくりと紹介します。
フロジン外用液は、塗った部位の血流を増やす作用があり、これによって発毛を促します。
フロジン外用液は「アセチルコリン」という副交感神経から出る神経伝達物質と似た作用をします。アセチルコリンは血管を拡げる作用があるため、フロジン外用液も塗った部位の血管を拡げます。
するとその部位の血流が豊富になります。血液中には栄養分が含まれているため、血流が増えれば発毛も促進されるというわけです。
効果は穏やかで強くはありません。
副作用は多くはありませんが、入浴後などの血管が拡がりやすい状態の時にフロジン外用液を塗ってしまうと、更に血管が拡がってしまい副作用が出やすくなるため、入浴直後の使用は避けた方が良いでしょう。
以上からフロジン外用液の特徴を挙げると、次のようなことが挙げられます。
【フロジン外用液の特徴】
・塗った部位の血流を増やし、発毛を促進する
・効果は穏やか
・入浴直後に塗ると副作用が出やすくなる
２．フロジン外用液はどのような疾患に用いるのか
フロジン外用液はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。
【効能又は効果】
・下記のごとき疾患における脱毛防止ならびに発毛促進
円形脱毛症（多発円形脱毛症を含む）
悪性脱毛症、び漫性脱毛症、粃糠性脱毛症、壮年性脱毛症、症候性脱毛症など・乾性脂漏
・尋常性白斑
フロジン外用液はいくつかの皮膚疾患に適応を持っていますが、実際は軽度の円形脱毛症に用いられることがほとんどです。
乾性脂漏とは、乾燥した「ふけ」が多くなってしまう疾患です。脱毛の前兆として現れることがあったり、頭部の血流不足が原因となることもあるためフロジン外用液が効果を示します。
尋常性白斑とは何らかの原因で皮膚の色素が作れなくなってしまい、皮膚の一部が白くなってしまう疾患です。
フロジンの有効率は、
- 脱毛症（円形、悪性、びまん性、壮年性など）に対する有効率は55.9%
- 尋常性白斑に対する有効率は54.3%
- 乾性脂漏に対する有効率は75.9%
と報告されています。
３．フロジン外用液はにはどのような効果・作用があるのか
フロジン外用液は、主に脱毛症に対して用いられますが、どのような機序で発毛を促進しているのでしょうか。
フロジン外用液の主成分であるカルプロニウムは、アセチルコリン様の作用を持つ物質です。アセチルコリンには様々な作用があるのですが、その1つに「血管を拡げる」という作用があります。
動物実験において、カルプロニウムはアセチルコリンの約10倍の血管拡張作用があることが確認されています。
血管が拡がるとその部位には血液が多く流れてくるようになります。血液は全身に栄養を渡すはたらきをしていますので、血液がたくさんくればその部位は栄養が豊富になり、発毛が促進され、脱毛が予防されます。
更にカルプロニウムは、アセチルコリンを分解する酵素である「コリンエステラーゼ」のはたらきをブロックする作用も持っています。アセチルコリンが分解されにくくなれば、更に血管が拡がる作用が持続しやすくなり、より長期にわたって血液がその部位に豊富に来続けることになります。
このようにフロジン外用液は、塗った部位の血流を豊富にすることで毛髪に豊富な栄養を与え、発毛を促進するのです。
４．フロジン外用液の副作用
フロジン外用液にはどのような副作用があるのでしょうか。
副作用発生率は4％前後と報告されています。
重篤な副作用は少なく、副作用の内容としてはアセチルコリン様の副作用が多く見られます。
具体的には
- 発汗
- 掻痒感（かゆみ）
などです。
フロジンは塗り薬ですので全身に作用することは少ないのですが、アセチルコリンのようなはたらきをするため、稀に
- 嘔気・嘔吐
- 顔面紅潮
- 心悸亢進
などが現れることもあります。
またフロジン外用液を使用する際の注意点として、「入浴直後の塗布は避ける」というものがあります。
入浴後は血管が拡がっている状態であるため、副作用が起こりやすいのです。
５．フロジン外用液の用量・用法と剤型
フロジン外用液は、
フロジン外用液5%（カルプロニウム） 30ml
と1剤型のみがあります。
フロジン外用液は緑色をしています。珍しい色なので最初はびっくりされる方もいらっしゃいます。
フロジン外用液の使い方は、
【脱毛症・乾性脂漏の場合】
1日2～3回適量を患部に塗布、あるいは被髪部全体にふりかけ、軽くマッサージする。【尋常性白斑の場合】
1日3～4回適量を患部に塗布する。
と書かれています。
６．フロジン外用液が向いている人は？
以上から考えて、フロジン外用液が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
フロジン外用液の特徴をおさらいすると、
・塗った部位の血流を増やし、発毛を促進する
・効果は穏やか
・入浴直後に塗ると副作用が出やすくなる
というものでした。
大きな副作用も少ないフロジン外用液は、ストレスなどで円形脱毛症を発症してしまった場合に最初に用いるお薬として適しています。
効果は穏やかであり、劇的に発毛を実感できるというものではありません。
使用する際は、入浴後に塗らないように気を付けて下さい。