コレバインの効果と副作用【高脂血症治療薬】

コレバイン(一般名:コレスチミド)は1999年から発売されているお薬で「胆汁酸排泄促進剤」という種類に属します。

コレバインはLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を下げる作用に優れており、高脂血症の中でもLDLコレステロールが高い方に主に用いられます。

コレバインはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに使うお薬なのでしょうか。ここではコレバインの特徴や効果・副作用について紹介していきます。

 

1.コレバインの特徴

まずはコレバインの特徴を紹介します。

コレバインは胆汁酸のはたらきを抑える事で、LDLコレステロールを下げる作用があります。

コレバインは胆汁酸を吸着するはたらきがあります。胆汁酸は本来、肝臓で作られて食べ物を食べると消化管に分泌される物質で、食事中に含まれる脂肪分を体内に取り込むはたらきを持っています。

コレバインが胆汁酸を吸着してしまうと、食事中の脂肪分を体内に吸収できなくなるため、体内のコレステロール量が減るのです。

またコレバインに吸着された胆汁酸もそのまま便と一緒に排泄されてしまいます。胆汁酸自体もコレステロールから作られていますので、胆汁酸がたくさん排泄されればそれだけ体内のコレステロール量は少なくなります。

このような機序からコレバインのようなレジンは「胆汁酸排泄促進剤」と呼ばれます。

デメリットとしては、コレバインは胆汁酸を吸着することで膨らむ性質を持つため、腸管内で膨らんでしまい便秘や腹部膨満といった副作用を生させる事があります。温水でも膨らんでしまうため温水と一緒に服用することは出来ません。

またコレバインのLDLコレステロール低下作用は強くはありません。LDLコレステロールを下げるお薬には他にもHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)がありますが、スタチン系と比べるとコレバインの作用は明らかに弱く、現在ではコレバインを用いるような症例のほとんどにスタチン系が処方されています。

コレバインはLDLコレステロールを低下させる作用のほか、若干ですがHDLコレステロールを上昇させる作用があります。しかし中性脂肪(TG)を低下させる作用はほとんどありません。そのため、高脂血症の中でも高TG血症に用いてもあまり良い効果は得られません。

以上からコレバインの特徴として次のような点が挙げられます。

【コレバインの特徴】

・胆汁酸を吸着する事でLDLコレステロールを下げる
・HDLコレステロールを少し上げる
・中性脂肪はほとんど下げない
・HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)と比べると効果は弱い
・腸管内で膨らむため、消化器系の副作用が生じる事がある

 

2.コレバインはどんな疾患に用いるのか

コレバインはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

高コレステロール血症
家族性高コレステロール血症

コレバインは主にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げる作用を持ち、高LDLコレステロール血症の患者さんに用いられます。

コレバインはどのくらいの効果があるのでしょうか。

コレバインの高コレステロール血症に対する有効率は71.4%と報告されています。

またコレバインを投与した試験では、

  • LDLコレステロールが21.9%低下
  • HDLコレステロールが8.4%上昇

したという結果が出ています。

ある程度の効果はありますが、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)と比べると強さとしては劣ります。

 

3.コレバインにはどのような作用があるのか

高コレステロール血症の患者さんの血中コレステロールを下げるために投与されるコレバインですが、どのような機序で高コレステロール血症を改善させるのでしょうか。

コレバインは「胆汁酸排泄促進剤」とも呼ばれ、その名の通り胆汁酸の排泄を促進する事で高コレステロール血症を改善させます。

コレバインの具体的な作用機序を紹介します。

 

Ⅰ.悪玉(LDL)コレステロールを下げる

コレバインは消化管内で胆汁酸を吸着する作用を持ちます。

胆汁酸はコレステロールから合成される物質で、消化管から脂質(脂肪)を体内に取り込むはたらきがあります。私たちは食べ物から脂肪分を摂取しますが、そのまま体内に取り込むことはできません。胆汁酸と結合する事で初めて脂肪を体内に取り込む事が出来るのです。

という事は胆汁酸がなければ、脂肪は体内に取り込まれないという事になります。

コレバインは胆汁酸を吸着してしまう事で、胆汁酸がはたらけないようにするお薬になります。

食べ物を摂取したときに分泌される胆汁酸をコレバインがからめとってしまう事で、消化管中にある脂肪分は体内に吸収されずそのまま便と一緒に排泄されてしまいます。

これにより体内のコレステロール量が低下し、血中コレステロール値も低下します。

またコレバインは胆汁酸を吸着したまま、便と一緒に排泄されます。胆汁酸はコレステロールを原料に作られていますので、胆汁酸がたくさん排泄されてしまうと、新たな胆汁酸をたくさん作らないといけませんので原料のコレステロールがたくさん消費されます。

これもコレステロールを低下させる作用になります。

この2つの作用により、コレバインは血中コレステロール値を低下させるのです。

 

Ⅱ.善玉コレステロールを少し増やす

コレバインはHDLコレステロール、通称「善玉コレステロール」を増やす作用を持ちます。

善玉コレステロールは、動脈硬化を抑えるはたらきを持ちます。具体的には動脈にこびりついてしまっているコレステロールを回収して、肝臓に運ぶはたらきがあるのです。

動脈のコレステロールがこびりついていると、動脈硬化や狭窄の原因になるためHDLコレステロールは高いことが良いと考えられています。

コレバインには善玉コレステロールを増やす作用も報告されています。しかしその程度は強くはなく、あくまでも補助的な作用にとどまります。

 

Ⅲ.脳梗塞・心筋梗塞のリスクを下げる

血液中のLDLコレステロールが高いと、脳梗塞・心筋梗塞といった血管系イベントが生じやすくなる事が知られています。

これらの疾患はいずれも血管が詰まる事で生じます。脳の血管が詰まれば脳梗塞が生じ、心臓を栄養する冠動脈が詰まれば心筋梗塞が生じます。

血管が詰まる原因はいくつかありますが、その1つとして血管内壁にコレステロールが沈着してしまう事が挙げられます。

コレステロールが沈着すれば、その分だけ血管の内腔が狭くなるため血管が詰まりやすくなってしまうのです。また付着したコレステロールは血栓などを誘発しやすいため、これも血管を詰まらせる原因になります。

コレバインは血液中のLDLコレステロールを下げることで、血管内壁にコレステロールが沈着する事を予防してくれます。これにより脳梗塞・心筋梗塞を予防する事ができるのです。

実際コレバインは動物実験において、動脈壁のコレステロール沈着を有意に減少させた事が報告されています。

 

4.コレバインの副作用

コレバインにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。

コレバインの副作用発生率は14.9%と報告されています。副作用の数としては少なくありませんが、重篤な副作用は少ないお薬になります。

生じうる主な副作用としては、

  • 便秘
  • 腹部膨満
  • 嘔気
  • 腹痛

などが報告されています。

コレバインは消化管の中だけで作用し、体内にほとんど吸収されません。そのため全身的な副作用は少なく、そのほとんどが消化器系の副作用になります。

コレバインは腸管内で膨らむ性質を持つお薬です。そのため胃腸の通りを悪くしてしまい、便秘や腹部膨満、嘔気や腹痛などといった消化器系の副作用が生じる事があります。

また検査値の異常として、

  • 肝機能の異常

が報告されています。

頻度は稀ですが重篤な副作用として、

  • 腸管穿孔
  • 腸閉塞
  • 横紋筋融解症

などが報告されています。

コレバインを使用してはいけない方(禁忌)としては、

  • 胆道の完全閉塞した方
  • コレバインの成分に対し過敏症の既往歴のある方
  • 腸閉塞の方

が挙げられてます。

コレバインは胆汁酸を吸着する事で効果を発揮します。胆汁酸は胆道を通って分泌されますので胆道閉塞がある方はそもそも胆汁を分泌できません。胆汁が分泌できない方に胆汁酸を吸着するお薬を投与しても無意味ですので、胆道閉塞の方には禁忌となっています。

またコレバインは胆汁酸を吸着する事で消化管内で膨らむという性質があります。これにより腹部膨満や便秘の副作用が生じるのですが、腸閉塞(腸が動かない状態)になっている方がコレバインを服用すると、コレバインが消化管内で膨らみ、更に消化管の通りを悪くしたり消化管の内圧を上げてしまう可能性があります。最悪の場合、腸管が穿孔(破けてしまう)恐れもあるため、腸閉塞の方にコレバインを服用させる事は禁忌となっています。

 

5.コレバインの用法・用量と剤形

コレバインには、

コレバインミニ83% 1.81g/包
コレバイン錠 500mg

の2種類が発売されています。

コレバインの使い方は、

通常、成人には1回1.5gを1日2回、朝夕食前に水とともに経口投与する。ただし、症状、服用状況を考慮して朝夕食後投与とすることもできる。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最高用量は1日4gとする。

と書かれています。

コレバインは原則として食前に服用する必要があります。

この理由は、食前に服用しないと効率的に胆汁酸を吸着できないからです。胆汁酸は食べ物に含まれる脂肪分を体内に吸収するため、食事を取ると分泌されます。

食事後だと、すでに胆汁酸が分泌されて脂肪の吸収が始まってしまっているので、このタイミングでコレバインを服用しても遅いわけです。

食前に服用することで分泌された胆汁酸を効率的に吸着し、その作用をブロックする事が可能になります。

 

6.コレバインが向いている人は?

以上から考えて、コレバインが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

コレバインの特徴をおさらいすると、

・胆汁酸を吸着する事でLDLコレステロールを下げる
・HDLコレステロールを少し上げる
・中性脂肪はほとんど下げない
・HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)と比べると効果は弱い
・腸管内で膨らむため、消化器系の副作用が生じる事がある

などがありました。

ここから、

・悪玉(LDL)コレステロールが高い方

に向いているお薬になります。

しかし高LDL血症に主に用いられているお薬は、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)であり、コレバインはあまり用いられていません。

この理由はスタチン系の方が効果が良いからです。

しかしスタチン系とコレバインは作用機序が異なるため、併用する事で更に高い効果を期待する事も出来ます。そのためスタチン系を服用しているけども、まだ十分にLDLコレステロールが下がらないという方は検討しても良いお薬になります。

中性脂肪(TG)を下げる作用はほとんどありませんので、高TG血症の方には向きません。また消化器系の副作用が生じやすいため、元々便秘がちの方なども避けておいた方が良いでしょう。

ちなみに脂質というと、血液検査で中性脂肪(TG:トリグリセリド)とコレステロール(Chol)の2つがありますが、この2つはどう違うのでしょうか。

中性脂肪は、俗に言う「体脂肪」の脂肪分が血液中に流れているもので、これはエネルギー源として使われます。中性脂肪は体脂肪として貯蔵される事で、いざという時に活動するためのエネルギーになるのです。

一方コレステロールはというと「身体を作るための材料」として使われています。コレステロールは細胞を構成する材料となったり、体内で様々なはたらきをしているホルモンを作る材料となったり、胆汁酸やビタミンの材料となったりします。

中性脂肪もコレステロールも、どちらも身体にとって必要なものですが、過剰になりすぎれば害となります。