4.クロベタゾン酪酸エステルの副作用
クロベタゾン酪酸エステルの副作用はどのようなものがあるのでしょうか。またその頻度はどのくらいなのでしょうか。
クロベタゾン酪酸エステル軟膏はジェネリック医薬品ですので副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし先発品のキンダベート軟膏では行われており、副作用発生率は0.6%と報告されています。クロベタゾン酪酸エステル軟膏の副作用発生率もこれと同程度だと考えられます。
塗り薬であり、全身に投与するものではないのでその副作用は多くはありません。しかしステロイド剤ですので、漫然と塗り続けないように注意は必要です。
生じる副作用は、ほとんどが局所の皮膚症状で、
- 掻痒(かゆみ)
- 毛のう炎・癤(せつ)
- 刺激感
- ステロイドざ瘡
- 皮疹の増悪
- 皮膚の潮紅・腫脹
- 皮膚の乾燥
などです(「せつ」とはいわゆる「おでき」の事です)。
ステロイドは免疫を低下させてしまうため、ばい菌に感染しやすくなってしまい、毛のう炎・癤などが生じる事があります。また皮膚を薄くしてしまう副作用により刺激感が生じる事もあります。
ステロイドざ瘡とは、ステロイドの長期塗布によって皮膚に細菌・真菌が感染してしまい、にきびのようになってしまうことです。
いずれも重篤となることは少なく、多くはクロベタゾン酪酸エステルの使用を中止すれば自然と改善していきますが、安易に長期使用しないよう注意が必要です。
また滅多にありませんが、ステロイド外用薬を長期・大量に塗り続けていると全身に作用してしまい、
- 緑内障(眼圧亢進)
- 後嚢白内障
などが生じる可能性があると言われています。
ステロイド外用剤の注意点としては、ステロイドは免疫力を低下させるため免疫力が活性化していないとまずい状態での塗布はしてはいけません。具体的にはばい菌感染が生じていて、免疫がばい菌と闘わなくてはいけないときなどが該当します。
このような状態の皮膚にクロベタゾン酪酸エステルを塗る事は禁忌(絶対にダメ)となっています。
ちなみに添付文書には次のように記載されています。
【禁忌】
(1)本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者
(2)鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎
(3)潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷【原則禁忌】
細菌、真菌、ウイルス皮膚感染症(病期あるいは症状に応じて使用すること)
これらの状態でクロベタゾン酪酸エステルが禁忌となっているのは、皮膚の再生を遅らせたり、感染しやすい状態を作る事によって重篤な状態になってしまう恐れがあるためです。
5.クロベタゾン酪酸エステルの用法・用量
クロベタゾン酪酸エステルの使い方は、
通常1日1~数回適量を患部に塗布する。なお、症状により適宜増減する。
と書かれています。実際は皮膚の状態や場所によって回数や量は異なるため、主治医の指示に従いましょう。
6.クロベタゾン酪酸エステルが向いている人は?
以上から考えて、クロベタゾン酪酸エステルが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
クロベタゾン酪酸エステルの特徴をおさらいすると、
【クロベタゾン酪酸エステルの特徴】
・Ⅳ群に属するステロイド外用剤である |
というものでした。
ここから、皮膚の免疫反応が過剰となり、炎症が生じている際に使用する塗り薬だと考えられます。
ステロイドの中では効果は穏やかであるため、比較的軽症の皮膚状態や皮膚が過敏な部位(皮膚が薄い顔や陰部)に向いているお薬でしょう。
しかし、これはステロイド全てに言えることですが、漫然と使い続けることは良くありません。ステロイドは必要な時期のみしっかりと使い、必要がなくなったら使うのを止めるという、メリハリを持った使い方が非常に大切です。
8.先発品と後発品(ジェネリック)の効果は本当に同じなのか?
クロベタゾン酪酸エステルは「キンダベート」というお薬のジェネリック医薬品になります。
ジェネリックは薬価も安く、患者さんにとってメリットが多いように見えます。
しかし「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」とジェネリックへの切り替えを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。
ジェネリックは、先発品と比べて本当に遜色はないのでしょうか。
結論から言ってしまうと、先発品とジェネリックはほぼ同じ効果・効能だと考えて問題ありません。
ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。
発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、
ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。
しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば使い心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。
これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。この多少の違いが人によっては大きく感じられることもあるため、ジェネリックに変えてから調子が悪いという方は先発品に戻すのも1つの方法になります。
では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。
先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから実は発売までに莫大な費用が掛かっています。有効成分を探す開発費用、そしてそこから動物実験やヒトにおける臨床試験などで効果を確認するための研究費用など、お薬を1つ作るのには実は莫大な費用がかかるのです(製薬会社さんに聞いたところ、数百億という規模のお金がかかるそうです)。
しかしジェネリックは、発売に当たって先ほども説明した「生物学的同等性試験」はしますが、有効成分を改めて探す必要もありませんし、先発品がすでにしている研究においては重複して何度も同じ試験をやる必要はありません。
先発品と後発品は研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてそれが薬価の差になっているのです。
つまりジェネリック医薬品の薬価は莫大な研究開発費がかかっていない分が差し引かれており先発品よりも安くなっているということで、決して品質の差が薬価の差になっているわけではありません。