ジゴシンの効果と副作用【心不全治療薬】

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ジゴシン(一般名:ジゴキシン)は1957年から発売されているお薬で、心不全の治療薬です。

心不全の治療薬の中でも「強心薬」と呼ばれ、お薬の力で心臓をはたらかせることで心不全の症状を改善させます。

古いお薬であるため、現在では第一選択として用いられることは少なくなってきましたが、心不全の症状や程度によっては現在でも使われることがあります。

心不全に用いるお薬には多くのものがあり、その作用や特徴はそれぞれで違いがあります。その中でジゴシンはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに使うお薬なのでしょうか。

ここではジゴシンの特徴や効果・副作用を紹介させて頂きます。

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1.ジゴシンの特徴

まずはジゴシンの全体的な特徴をかんたんに紹介します。

ジゴシンは、

  • 心臓の収縮力を強めて
  • 心拍数を減らす

という作用をもたらすお薬になります。

そのため、この作用で心不全の改善が得られると考えられる症例に使われます。

具体的には、頻脈性の心房細動を合併した心不全が該当します。

頻脈性の心房細動は、心房細動という不整脈によって心拍数が速くなりすぎています。また心不全もきたしている事により心臓の収縮力が弱まっています。

この状態にジゴシンを用いると、心収縮力を上げる事で心不全症状を改善させ、更に心拍数を減らす事で頻脈も改善できるという一石二鳥の効果が期待できます。

ジゴシンは「ジギタリス製剤」と呼ばれ、植物から抽出されたジギタリスという物質が主成分となっています。

欠点としては、中毒域に注意すべきお薬だという点が挙げられます。

ジゴシンは治療をするのにちょうどいい血中濃度(治療域)と、中毒になってしまう危険な血中濃度(中毒域)の差が小さく、何らかの原因で血中濃度が高くなってしまうと「ジギタリス中毒」になってしまう事があります。

ジギタリス中毒では多彩な症状が生じますが、循環器症状(不整脈、動悸など)、消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など)、精神神経症状(めまい、頭痛、錯乱など)などが生じます。

特に高齢者や腎機能が低下している方、ジゴシンを高用量服用している方は注意しなくてはいけません。

またジゴシンをはじめとした強心薬というのは、言うなれば疲弊した心臓に鞭を打って無理矢理働かせるような面があります。過度にこれを続ければ心臓はより疲弊してしまうため、心不全に対する安易な処方は控えなければいけません。

ジゴシンは古いお薬であり、最近では安全性も高く効果も優れている新しい心不全の治療薬も増えてきたため、ジゴシンが使われる頻度というのは徐々に少なくなってきています。

ジギタリス製剤はいくつかの会社から発売されていますが、その中でジゴシンは小児にも保険適応を有しているという特徴もあります。

別に小児に適して作られているというわけではないのですが、小児に対する試験もしっかりと行っているため保険適応があるのです。

そのため小児にジギタリスを使うべき病態の時にも使用する事にも使いやすいお薬になります。

以上からジゴシンの特徴として次のような点が挙げられます。

【ジゴシンの特徴】

・心臓の収縮力を上げる事で心不全を改善させる作用を持つ
・心拍数を下げることで頻脈を改善させる作用を持つ
・中毒域が近く、ジギタリス中毒に注意(特に高齢者や腎機能が悪い方など)
・古いお薬であり、現在では心不全に使用される頻度は減ってきている
・保険上、小児にも使う事ができる

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2.ジゴシンはどのような疾患に用いるのか

ジゴシンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

・次の疾患に基づくうっ血性心不全(肺水腫、心臓喘息などを含む)

先天性心疾患、弁膜疾患、高血圧症、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)、肺性心(肺血栓・塞栓症、肺気腫、肺線維症などによるもの)、その他の心疾患(心膜炎、心筋疾患など)、腎疾患、甲状腺機能亢進症ならびに低下症など

・心房細動・粗動による頻脈
・発作性上室性頻拍
・次の際における心不全および各種頻脈の予防と治療

手術、急性熱性疾患、出産、ショック、急性中毒

難しい用語がたくさん並んでいますが、ジゴシンの作用というのは、

  • 心収縮力を上げて心不全を改善させる
  • 心拍数を下げて頻脈を改善させる

の2つが主です。

適応も基本的にはこれらを来たす疾患であり、

  • 心不全
  • 頻脈(心房細動・心房粗動によるもの)

になります。

心不全というのは心臓のはたらきが低下してしまう状態の総称です。心臓は全身に血液を送るはたらきがありますが、心不全になってしまうとそれが行えなくなります。

すると全身に十分な血液が送れないため、疲労感や息切れ、四肢の冷感などが生じます。また全身に送れない分の血液は、身体のどこかにどんどんと溜まってしまうため、全身のむくみや肺水腫(肺に水が溜まる状態)が生じます。

ジゴシンは心臓の収縮力を高めることで、全身に血液を送られるように助けます。これにより、これらの症状を改善させる事が期待できます。

またジギタリスには心拍数を下げる作用があります。その作用は強くはないのですが、これによって頻脈性の不整脈の心拍数を抑える作用が得られることがあります。

3.ジゴシンにはどのような作用があるのか

ジゴシンはどのような作用機序によって心不全や頻脈を改善させているのでしょうか。

ジゴシンは「ジギタリス製剤」と呼ばれており、ジギタリスという植物に含まれる成分になります。

昔からジギタリスは民間療法に用いられていたようですが、強心作用がある事が発見され、以降は心不全の治療薬として世界的に用いられてきました。

ジギタリスは主に次の作用によって心不全を改善させていると考えられています。

Ⅰ.強心作用

ジゴシンは心臓の収縮力を上げるはたらき(強心作用)があります。これにより心臓がしっかりと全身に血液を送れるようになるため、心不全症状の改善が得られます。

ではジゴシンはどのようにして強心作用をもたらしているのでしょうか。

ジゴシンは心臓の細胞内のNa(ナトリウム)イオン濃度を増加させるはたらきがあります。細胞内のNaイオン濃度が上昇すると、NaイオンとCa(カルシウム)イオンの交換が行われ、今度は細胞内のCaイオン濃度が上がります。Caイオンは心臓の筋肉(心筋)を収縮させるはたらきがあるため、これによって心臓が強く収縮しやすくなります。

このような機序によって、ジゴシンは心収縮力を増加させ、心不全を改善させてくれるのです。

強心作用のあるジゴシンは、心臓の収縮力が低下している心不全において効果が期待できる一方で、心臓が強く収縮するとまずい状態においては使用してはいけません。

具体的には「大動脈弁狭窄症」などに使う事は禁忌(絶対にダメ)となっていますので注意が必要です。

大動脈弁狭窄症では、心臓から全身に血液を送り出す出口である大動脈の弁が狭くなっています。ただでさえ狭い出口を頑張って血液が通っているのに、そこで更に心臓の収縮を強くしてしまうと、心臓の内圧が上がりすぎてしまいます。これは心臓を更に傷めたり、心破裂などの原因にもつながり、とても危険です。

また心不全は心臓が疲れ切っている状態ですので、疲れ切っている心臓を無理矢理はたらかせる面を持つ強心薬は、使い方を間違えれば更に心臓を疲れさせてしまう可能性もあります。

そのため、心不全の程度によっては強心薬は使わない方が良い場合もあり、ジギタリスがどんな心不全にも適したお薬だというわけではありません。

高用量のジゴシンの長期投与や女性患者さんへのジゴシンの投与は予後をかえって悪化させるという報告もあるため、心不全に対してジゴシンを使うかどうかは心疾患の治療に精通した循環器科医にしっかりと判断してもらう必要があります。

Ⅱ.徐脈作用

ジギタリスは心臓の収縮力を上げますが、心拍数は下げる方向にはたらきます。これはジギタリスが交感神経(興奮の神経)を抑制し、副交感神経(リラックスの神経)を刺激するためだと考えられています。

特に心臓にある房室結節という心拍数に影響を与える部位の副交感神経を刺激するため、これによって心拍数の低下が得られます。

ただしジギタリスの心拍数を下げる作用は強くはないため、頻脈性不整脈の治療として第一選択になるわけではありません。

ただし心不全の患者さんに頻脈性の不整脈が生じた時には、一石二鳥の作用が期待できるため、用いられる事があります。

ジギタリスが頻脈性の心房細動に伴う心不全によく用いられるのはこのためです。

しかし心拍数を下げるはたらきがあるという事は、これ以上心拍数を下げたらまずい状況では使う事は推奨されないということでもあります。

具体的には、房室ブロック、洞房ブロックなどの徐脈性の不整脈がある方に対してはジゴシンを投与することは禁忌となっています。

Ⅲ.利尿作用

ジゴシンには利尿作用がある事が報告されています。

これは、心収縮力が上がることで腎臓に届く血流が増えること、腎臓においてNaイオンの再吸収を抑制するはたらきがあることが理由だと考えられています。

心不全は心臓が十分に血液を循環させられないため、体液が過剰となってしまって身体のいたるところに水がたまりやすくなってしまいます。身体に体液が溜まれば「浮腫」となりますし、肺に水が溜まれば「肺水腫」となり呼吸苦の原因となります。

ジゴシンは利尿作用によって、余分な体液を尿として身体の外へ出してくれるため、これも心不全症状の改善に貢献します。

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4.ジゴシンの副作用

ジゴシンにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。

ジギタリスではいくつかの副作用の注意する必要があります。副作用の種類を大きく分けると、

  • 循環器症状
  • 消化器症状
  • 視覚症状
  • 精神神経症状

などが挙げられます。

ジギタリスは脳を刺激することにより食欲不振、悪心、嘔吐、下痢などの消化器系の副作用を生じる可能性があります。

また黄視、緑視、複視などの視覚異常が認められる可能性があることも報告されています。

他にも、めまい、頭痛、せん妄などの精神症状や不整脈などの循環器症状の報告もあります。

ジゴシンで注意すべき重篤な副作用としては、「ジギタリス中毒」や「非閉塞性腸間膜虚血」が挙げられます。

ジギタリス中毒はジギタリスの血中濃度が高くなりすぎることにより、上記で紹介した副作用がより重篤となって出現します。高度の徐脈が生じたり、危険な不整脈が生じたりすることもあります。

ジギタリスの有効治療血中濃度範囲は一般的に0.5~2.0ng/mlだと添付文書には記載されていますが、実際はもっと低くても有効なのではないかという指摘もあります。

少なくとも2.0ng/mlを超えるとジギタリス中毒の危険性が高まります。ジギタリス中毒を防ぐためには、定期的に血液検査でジゴシン濃度を測定し、この治療域に収まっているのかを確認しないといけません。

ただし、どこからが中毒域なのかは明確に決まっているわけではなく、高齢者や腎機能の悪い方は治療域内の血中濃度であってもジギタリス中毒が出現する可能性はあります。

5.ジゴシンの用法・用量と剤形

ジゴシンは次の剤型が発売されています。

ジゴシン錠 0.125mg
ジゴシン錠 0.25mg

ジゴシン散 0.1%

ジゴシンエリキシル 0.05mg/ml

「エリキシル」というのは内用液剤(いわゆる水薬)の剤型になります。

ジゴシンの使い方は、

通常成人に対して

1. 急速飽和療法(飽和量:1.0~4.0mg)

初回0.5~1.0mg、以後0.5mgを6~8時間毎に経口投与し、十分効果のあらわれるまで続ける。

2. 比較的急速飽和療法を行うことができる。
3. 緩徐飽和療法を行うことができる。
4. 維持療法

1日0.25~0.5mgを経口投与する。

となっています。

急速飽和療法は昔に行われていた方法で現在ではあまり行れていません。

現在は維持療法として用いることが多く、1日0.25~0.5mgの範囲内で使用します。ただしジギタリス中毒を予防するため、可能な限り低用量での使用が望まれます。

またジゴシンは小児にも適応があり、小児に対しては、

通常小児に対して

1.急速飽和療法
2歳以下:1日0.06~0.08mg/kgを3~4回に分割経口投与する。
2歳以上:1日0.04~0.06mg/kgを3~4回に分割経口投与する。

2.維持療法
飽和量の1/5~1/3量を経口投与する。

となっています。

ジゴシンは半減期が約22~30時間ほどのお薬です。半減期とはお薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、そのお薬の作用時間の一つの目安になる数値です。半減期には幅がありますが、1回の投与でおおよそ1日持つと考えられます、

6.ジゴシンが向いている人は?

以上から考えて、ジゴシンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ジゴシンの特徴をおさらいすると、

【ジゴシンの特徴】

・心臓の収縮力を上げる事で心不全を改善させる作用を持つ
・心拍数を下げることで頻脈を改善させる作用を持つ
・中毒域が近く、ジギタリス中毒に注意(特に高齢者や腎機能が悪い方など)
・古いお薬であり、現在では心不全に使用される頻度は減ってきている
・保険上、小児にも使う事ができる

というものでした。

現在では優れた心不全治療薬が多くなってきたこと、そしてジギタリス中毒などのリスクを考えると、心不全に対して最初から用いるお薬ではないでしょう。

しかしメリットもあるお薬であるため、他の心不全治療薬で充分な効果が得られなかった患者さんに対して検討されるお薬だと思われます。しかし特に腎機能の悪い方や高齢者に使用する場合は、ジギタリス中毒にならないよう注意が必要です。

また女性に使用する際の予後があまり良くないという報告もありますので、女性に使えないわけではありませんがその適応は主治医にしっかりと判断してもらう必要があるでしょう。

ジギタリスを小児に使う事は多くはありませんが、ジゴシンは小児にも保険適応を有しています。保険適応を有しているという事は、発売前にしっかりと小児で効果と安全性の調査が行われているという事です。

そのため小児にジギタリスを使わないといけない時にジゴシンは比較的使いやすいと言えます。

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