エピナスチンは1994年から発売されている「アレジオン」というお薬のジェネリック医薬品になります。
抗アレルギー薬と呼ばれ、アレルギーによって生じる諸症状を抑え、主に花粉症(アレルギー性鼻炎)やじんま疹、皮膚のかゆみなどに用いられています。
エピナスチンは主にヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状を抑えるため、「抗ヒスタミン薬」と呼ばれることもあります。
抗アレルギー薬の中でエピナスチンはどのような特徴のあるお薬で、どんな作用を持っているお薬なのでしょうか。
エピナスチンの効果や特徴・副作用についてみていきましょう。
目次
1.エピナスチンの特徴
まずはエピナスチンの全体的な特徴についてみてみましょう。
エピナスチンはヒスタミンのはたらきをブロックすることでアレルギー症状を抑えます。効果は穏やかですがその分副作用も少なく、眠気を起こしにくい抗ヒスタミン薬です。
ヒスタミンはアレルギーを誘発する原因となる物質(ケミカルメディエーター)です。そのため、このヒスタミンのはたらきをブロックできればアレルギー症状を改善させることができます。それを狙っているのがエピナスチンをはじめとした「抗ヒスタミン薬」になります。
抗ヒスタミン薬には古い第1世代抗ヒスタミン薬と、比較的新しい第2世代抗ヒスタミン薬があります。第1世代は効果は良いのですが眠気などの副作用が多く、第2世代は効果もしっかりしていて眠気などの副作用も少なくなっています。
この違いは第1世代は脂溶性(脂に溶ける性質)が高いため脳に移行しやすく、第2世代は脂溶性が低いため脳に移行しにくいためだと考えられています。また第2世代の方がヒスタミンにのみ集中的に作用するため、余計な部位への作用が少なく、これも副作用を低下させる理由となっています。
そのため、現在では副作用が少ない第2世代から使用するのが一般的です。
エピナスチンはというと第2世代の抗ヒスタミン薬になり、現在もアレルギー症状の改善によく用いられているお薬の1つです。
エピナスチンは主に「抗ヒスタミン作用」によってアレルギー症状を抑えますが、それ以外にもロイコトリエンやセロトニン、ブラジキニンなど多くの物質の作用を抑える事でアレルギー症状を改善させます。またアレルギー物質を放出する好酸球のはたらきを抑える作用もあります。
一方でヒスタミンは覚醒に関わっている物質であるため、ヒスタミンをブロックすると眠くなってしまうことがあります。抗ヒスタミン薬はどれも眠気の副作用が生じるリスクがあるのです。
エピナスチンは第1世代抗ヒスタミン薬よりは眠気が生じる頻度は少なく、また第2世代の中でも眠気の頻度が少ない抗ヒスタミン薬です。眠気の程度を見るためにお薬を服用してから自動車の運転操作をするという実験では、プラセボ(偽薬)と差がなかったと報告されており、これはつまり眠気がほぼ生じていないという事が出来ます。しかし眠気が絶対に生じないとは言えないため、一定の注意は必要です。
またエピナスチンは「アレジオン」のジェネリック医薬品になりますので、薬価が安いのもメリットの1つです。
以上から、エピナスチンの特徴として次のようなことが挙げられます。
【エピナスチンの特徴】
・花粉症や蕁麻疹、気管支喘息などのアレルギー症状を抑える
・抗ヒスタミン作用、抗ロイコトリエン作用、抗好酸球作用などがある
・第2世代抗ヒスタミン薬であり、第1世代よりは副作用が少ない
・眠気の副作用は少ないが一定の注意は必要
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い
2.エピナスチンはどのような疾患に用いるのか
エピナスチンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
・気管支喘息
・アレルギー性鼻炎
・蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚瘙痒症、痒疹、瘙痒を伴う尋常性乾癬
基本的にアレルギー疾患に効くお薬という認識で良いでしょう。
エピナスチンの適応疾患の特徴としては「気管支喘息」に適応を持っていることで、これが他の抗ヒスタミン薬との違いになります。
気管支喘息はアレルギー性疾患ですので、当然アレルギーを抑える作用を持つ抗ヒスタミン薬は効果があります。しかしその効果をしっかりと試験で確認しているのはエピナスチンをはじめとした数少ない抗ヒスタミン薬のみです。
理論上は他の抗ヒスタミン薬も気管支喘息に効くはずだとは言えますが、「喘息に効くという事をしっかりと試験で確認した」というエピナスチンは他の抗ヒスタミン薬よりも安心して気管支喘息に用いることが出来ます。
気管支喘息の治療として服用する時の注意点として、喘息における抗ヒスタミン薬の位置づけは、「喘息発作を予防するお薬」であり「今起こっている発作をすぐに治してくれるお薬」ではないことに注意しましょう。今発作が起きているのであれば、それを抑えるのには抗ヒスタミン薬以外のお薬(即効性のβ刺激薬など)の方が適しています。
また、その他アレルギーで生じる疾患として代表的なものには、アレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症など)やじんましんなどがあります。
エピナスチンはジェネリックであるため有効性についての詳しい調査は行われていませんが、先発品の「アレジオン」においては、
- 気管支喘息で中等度以上に改善した率は47.0%
- 通年性アレルギー性鼻炎で中等度以上に改善した率は47.7%
- そう痒性皮膚疾患で中等度以上に改善した率は74.2%
という結果が出ており、エピナスチンも同程度の有効率があると考えられます。
臨床的な印象としてはエピナスチンは第2世代抗ヒスタミン薬と比べると、その効果は「やや弱め」の印象を持つお薬ではあります。
しかし弱いから悪いというわけではなく、効果は穏やかですがその分副作用も少なく、安全に使える抗ヒスタミン薬になります。
3.エピナスチンにはどのような作用があるのか
エピナスチンはどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えてくれるのでしょうか。
エピナスチンの作用について詳しく紹介させて頂きます。
Ⅰ.抗ヒスタミン作用
エピナスチンは抗ヒスタミン薬というお薬に属し、その主な作用は「抗ヒスタミン作用」になります。これはヒスタミンという物質のはたらきをブロックするという作用です。
アレルギー症状を引き起こす物質の1つに「ヒスタミン」があります。
アレルゲン(アレルギーを起こすような物質)に暴露されると、アレルギー反応性細胞(肥満細胞など)からアレルギー誘発物質(ヒスタミンなど)が分泌されます。これが受容体などに結合することで様々なアレルギー症状が発症します。
ちなみに肥満細胞からはヒスタミン以外にもアレルギー誘発物質が分泌されますが、これらはまとめてケミカルメディエータ―と呼ばれています。
エピナスチンのような抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応性細胞からヒスタミンが分泌されるのを抑える作用があります。またヒスタミンが結合するヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー症状の出現を抑える作用もあります。
これらの作用によりアレルギー症状を和らげてくれるのです。
Ⅱ.抗ロイコトリエン作用
ヒスタミン以外のケミカルメディエーターとして、ロイコトリエン(LT)などがあります。
ロイコトリエンも肥満細胞から分泌され、身体にアレルギー反応を起こすケミカルメディエーターの一種になります。
エピナスチンは、このロイコトリエンの分泌を抑えたり、ロイコトリエンが受容体にくっつくのをブロックするはたらきがあります。
これによってアレルギー症状を緩和させてくれます。
Ⅲ.抗好酸球作用
アレルギー反応の1つに、アレルゲン(アレルギーの原因になる物質)によって好酸球の脱顆粒(好酸球が顆粒を分泌する)という現象があります。
好酸球から分泌される顆粒には様々な成分が含まれています。中にはヒスタミンやロイコトリエンなどのアレルギーの原因となる物質のはたらきを中和する作用もあります。
しかし一方で、炎症の原因となる物質も放出してしまい、これによってアレルギー反応がより悪化してしまう事もあります。
アレルギーのある方は、アレルゲン(アレルギーを引き起こす原因となる物質)の刺激によって好酸球がその部位に浸潤し、アレルギー反応を引き起こしてしまうことがあります。
エピナスチンはアレルゲンの刺激によって好酸球が浸潤してくるのを防ぐはたらきがあります。
またPAF(血小板活性化因子)という物質も、好酸球を浸潤させてアレルギー反応を引き起こすことがありますが、エピナスチンはこのPAFによって誘発される好酸球の浸潤を抑えるはたらきも確認されています。
PAFは本来は血小板を活性化させることで凝集させたり、血管を拡張させたりするための物質ですが、アレルギーを誘発する物質の1つでもあることが明らかになっています。
Ⅳ.抗炎症作用
アレルギーが起きると、その部位に炎症が生じてしまいます。
炎症は、
- 発赤(赤くなる)
- 腫脹(腫れる)
- 熱感(熱くなる)
- 疼痛(痛くなる)
の4つの徴候を起こす反応のことで、例えば身体をぶつけて傷が出来るとこのような炎症が皮膚に生じたりします。
アレルギーでもケミカルメディエーターによってアレルギー反応が誘発されると炎症が生じます。
エピナスチンはアレルギー反応を抑えるだけでなく、このような炎症反応を緩和するはたらきもあります。
具体的には炎症を誘発するブラジキニンやセロトニンのはたらきをブロックしたり、炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす物質)であるインターロイキン6(IL-6)・インターロイキン8(IL-8)の産生を抑えるはたらきがあります。
これもアレルギー症状の緩和に役立ってくれます。
4.エピナスチンの副作用
エピナスチンにはどんな副作用があるのでしょうか。
エピナスチンはジェネリック医薬品であるため副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし先発品の「アレジオン」においては副作用発生率は3.12%前後と報告されており、エピナスチンも同程度だと思われます。
第1世代抗ヒスタミン薬と比べると第2世代であるエピナスチンは副作用が少なく、服薬しやすいお薬となります。また他の第2世代抗ヒスタミン薬と比べても副作用が少なめになります。
エピナスチンは効果も穏やかですが、副作用も少ない抗ヒスタミン薬なのです。
副作用として多いのは、
- 眠気
です。抗ヒスタミン薬はどれも眠気の副作用が生じるリスクがあります。エピナスチンも例外ではありません。
しかしエピナスチンは抗ヒスタミン薬の中では眠気の程度は軽く、自動車を運転する時の影響は全くない(プラセボと同等)という試験結果も出ています。
その他の副作用としては、
- 口渇(口の渇き)
- 倦怠感
- 胃部不快感
- 吐き気
などが報告されています。これらは抗ヒスタミン薬がわずかに持つ抗コリン作用というアセチルコリンのはたらきを抑えてしまう作用が関係しています。ヒスタミンの受容体とアセチルコリンの受容体は構造が類似しているため、抗ヒスタミン薬は時にアセチルコリン受容体にも作用してしまうのです。
抗コリン作用は唾液の分泌を減少させたり、胃腸の動きを低下させてしまいます。エピナスチンのような第2世代は第1世代と比べると抗コリン作用は少なくはなっているのですがゼロではないため、時にこのような副作用が生じることがあります。
頻度は稀ですが、重大な副作用として、
- 肝機能障害
- 黄疸
- 血小板減少
が報告されています。
5.エピナスチンの用法・用量と剤形
エピナスチンは、
エピナスチン錠 10mg
エピナスチン錠 20mgエピナスチン ドライシロップ小児用1%
エピナスチン内用液 0.2%
といった剤形があります。
ドライシロップというのは「甘い粉薬」のような剤型で、主に小さい子供に処方するために用いられます。
エピナスチンの使い方としては、
<気管支喘息、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚瘙痒症、痒疹、瘙痒を伴う尋常性乾癬>
通常、成人には1回20mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。<アレルギー性鼻炎>
通常、成人には1回10~20mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
となっています。
6.エピナスチンが向いている人は?
以上から考えて、エピナスチンが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
エピナスチンの特徴をおさらいすると、
・花粉症や蕁麻疹、気管支喘息などのアレルギー症状を抑える
・抗ヒスタミン作用、抗ロイコトリエン作用、抗好酸球作用などがある
・第2世代抗ヒスタミン薬であり、第1世代よりは副作用が少ない
・眠気の副作用は少ないが一定の注意は必要
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い
といったものがありました。
エピナスチンは、第2世代抗ヒスタミン薬になり、アレルギー性鼻炎やじんましんなどに対してよく用いられているお薬の1つです。
第2世代であり効果がしっかりと得られつつも眠気などの副作用が少なめであるため、まず検討されるお薬となります。
エピナスチンは効果は穏やかであるものの、眠気なども少ない傾向があります。また気管支喘息にも適応を持っている、ジェネリック医薬品であり薬価が安いというのも利点になります。
ここから、
- 比較的軽症のアレルギー症状(気管支喘息含む)の方
- 眠気などの副作用をなるべく起こしたくない方
- お薬代をなるべく抑えたい方
に向いているお薬だと言えるでしょう。
7.先発品と後発品は本当に効果は同じなのか?
エピナスチンは「アレジオン」というお薬のジェネリック医薬品になります。
ジェネリックは薬価も安く、剤型も工夫されているものが多く患者さんにとってメリットが多いように見えます。
しかし「安いという事は品質に問題があるのではないか」「やはり正規品の方が安心なのではないか」とジェネリックへの切り替えを心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
同じ商品で価格が高いものと安いものがあると、つい私たちは「安い方には何か問題があるのではないか」と考えてしまうものです。
ジェネリックは、先発品と比べて本当に遜色はないのでしょうか。
結論から言ってしまうと、先発品とジェネリックはほぼ同じ効果・効能だと考えて問題ありません。
ジェネリックを発売するに当たっては「これは先発品と同じような効果があるお薬です」という根拠を証明した試験を行わないといけません(生物学的同等性試験)。
発売したいジェネリック医薬品の詳細説明や試験結果を厚生労働省に提出し、許可をもらわないと発売はできないのです、
ここから考えると、先発品とジェネリックはおおよそ同じような作用を持つと考えられます。明らかに効果に差があれば、厚生労働省が許可を出すはずがないからです。
しかし先発品とジェネリックは多少の違いもあります。ジェネリックを販売する製薬会社は、先発品にはないメリットを付加して患者さんに自分の会社の薬を選んでもらえるように工夫をしています。例えば飲み心地を工夫して添加物を先発品と変えることもあります。
これによって患者さんによっては多少の効果の違いを感じてしまうことはあります。この多少の違いが人によっては大きく感じられることもあるため、ジェネリックに変えてから調子が悪いという方は先発品に戻すのも1つの方法になります。
では先発品とジェネリックは同じ効果・効能なのに、なぜジェネリックの方が安くなるのでしょうか。これを「先発品より品質が悪いから」と誤解している方がいますが、これは誤りです。
先発品は、そのお薬を始めて発売するわけですから実は発売までに莫大な費用が掛かっています。有効成分を探す開発費用、そしてそこから動物実験やヒトにおける臨床試験などで効果を確認するための研究費用など、お薬を1つ作るのには実は莫大な費用がかかるのです(製薬会社さんに聞いたところ、数百億という規模のお金がかかるそうです)。
しかしジェネリックは、発売に当たって先ほども説明した「生物学的同等性試験」はしますが、有効成分を改めて探す必要もありませんし、先発品がすでにしている研究においては重複して何度も同じ試験をやる必要はありません。
先発品と後発品は研究・開発費に雲泥の差があるのです。そしてそれが薬価の差になっているのです。
つまりジェネリック医薬品の薬価は莫大な研究開発費がかかっていない分が差し引かれており先発品よりも安くなっているということで、決して品質の差が薬価の差になっているわけではありません。