エビプロスタット配合錠SG・DBの効果と副作用【前立腺肥大症治療薬】

エビプロスタット配合錠は、1967年から発売されているお薬です。

前立腺肥大症の治療薬であり、前立腺肥大およびそれに伴う排尿困難(尿が出にくくなる症状)・残尿感・頻尿などに対して用いられています。

植物由来のエキス製剤であるため、副作用が少なく安全性が高いというメリットがあり、古いお薬ではありますが現在においても軽症例を中心に用いられています。

エビプロスタットはどのような特徴のあるお薬でどのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。

ここではエビプロスタットの特徴や効果・副作用を紹介させて頂きます。

 

1.エビプロスタット配合錠の特徴

まずはエビプロスタット配合錠の全体的な特徴をかんたんに紹介します。

エビプロスタットは、副作用が少なく安全に前立腺肥大症及びそれに伴う症状を改善させる事が出来ます。

ただしその作用は弱めであり、主に軽症例の前立腺肥大症に適しています。

エビプロスタットに含まれる成分は人工的な化学物質ではなく植物性由来のエキス製剤です。

具体的には、

  • オオウメガサソウエキス
  • ハコヤナギエキス
  • セイヨウオキナグサエキス
  • スギナエキス
  • 精製小麦胚芽油

の5種類の植物性エキス製剤が配合されています。エビプロスタット「配合錠」となっているのは、このように複数の成分が配合されているためです。

天然の植物由来成分から作られているため、副作用は少なめになります。

しかし副作用が少ないだけでなく、その効果も弱めであり、エビプロスタットのみで症状の劇的な改善を期待するのは難しいお薬になります。

このような特徴から、主に軽症例の前立腺肥大症に用いられています。

作用時間は長くはないようで、1日3回に分けて服用することとなっています。SG錠だと1回で2錠服薬する必要があるため1日で計6錠も服薬しないといけません。これは人によっては手間だったり面倒に感じるかもしれません。

以上からエビプロスタット配合錠の特徴として次のような点が挙げられます。

【エビプロスタット配合錠の特徴】

・前立腺肥大症およびそれに伴う症状(排尿困難、残尿感、頻尿など)に用いられる
・植物由来のエキス製剤であり、副作用は少なく安全性に優れる
・効果は弱く、軽症例を中心に使われている
・服用回数が多い(1日3回に分けて服薬しなくてはいけない)

 

2.エビプロスタット配合錠はどのような疾患に用いるのか

エビプロスタットはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

前立腺肥大に伴う排尿困難、残尿及び残尿感、頻尿

エビプロスタットは前立腺肥大症の方に用いられるお薬です。

前立腺肥大症とは、その名の通り前立腺が肥大してしまう疾患です。前立腺は前立腺液を作る臓器で、これは精子の一部となる液です。男性にしかない臓器であるため、前立腺肥大症は男性特有の疾患になります。

なぜ前立腺が肥大するのかははっきりとは分かっていませんが、加齢や高血圧、高脂血症、遺伝などが関係すると言われています。特に加齢の影響は大きく、高齢者では高い確率で前立腺肥大症が認められます。

前立腺は膀胱の下部にある尿道を囲むようにして存在しています。そのため、前立腺が肥大すると尿道が圧迫され尿が出にくくなってしまいます。これを「排尿困難」と言います。

尿が出にくくなるため、全ての尿が排出されずに膀胱内に尿が残ってしまい残尿や残尿感が生じることもあります。

また排尿困難とは逆に、膀胱が刺激されることによる頻尿が生じることもあります。

エビプロスタットは前立腺肥大症によって生じる様々な症状(排尿困難、残尿、頻尿など)を改善させる効果のあるお薬だということです。

ではエビプロスタットは前立腺肥大症およびそれに伴う症状に対してどのくらいの効果があるのでしょうか。

前立腺肥大症の方にエビプロスタットを投与した試験では、エビプロスタットの有効率は62.1%と報告されています。

また前立腺肥大症の症状の程度を評価するための方法として、IPSS(国際前立腺症状スコア)というものがあります。

症状を点数化し、0~8点を継承、9~20点を中等症、20以上を重症と判断します。

前立腺肥大症に伴う排尿障害を有している患者さんにエビプロスタットを8週間投与した試験では、IPSSが約5.9点低下した事が報告されています。

 

3.エビプロスタット配合錠にはどのような作用があるのか

エビプロスタット配合錠は、どのような作用機序によって前立腺肥大症およびそれに伴う症状を改善させているのでしょうか。

エビプロスタットには、

  • オオウメガサソウエキス
  • ハコヤナギエキス
  • セイヨウオキナグサエキス
  • スギナエキス
  • 精製小麦胚芽油

の5つの植物由来のエキス製剤が含まれており、これらによって主に次の3つの作用をもたらします。

 

Ⅰ.抗炎症作用

エビプロスタットは炎症を抑えるはたらき(抗炎症作用)があることが確認されています。

実は前立腺肥大症の発症は、炎症が関係しているのではないかという報告があります。

前立腺が肥大して尿道が圧迫されてしまって尿が出にくくなると、膀胱壁内の神経や膀胱排尿筋の損傷が引き起こされ、炎症が生じます。

この炎症が前立腺肥大を更に悪化させてしまい、更に尿道が圧迫されてしまうという悪循環が前立腺肥大症では生じており、これによって症状が悪化していく可能性があります。

となると炎症を抑えるエビプロスタットは前立腺肥大症に効果があるということになります。

実際、エビプロスタットを投与した前立腺肥大症患者さんの膀胱を膀胱鏡で観察したところ、前立腺の浮腫や膀胱粘膜の炎症の改善が確認されています。

 

Ⅱ.活性酸素の除去作用

活性酸素は細胞やDNAに損傷を与える物質で、前立腺肥大の増悪にも関係していると考えられています。

前立腺が肥大し尿道が圧迫されると膀胱は虚血状態となります。その後に排尿が行われると虚血は解除されますが、前立腺肥大症ではこの「虚血⇄解除」が何度も何度も繰り返されることになります。

これにより活性酸素が発生してしまい、前立腺肥大を悪化させてしまいます。また活性酸素は組織の炎症を引き起こすため、これも前立腺肥大の悪化要因となります。

エビプロスタットは活性酸素を除去するはたらきを持ちます。これにより、前立腺肥大症を改善させてくれるのです。

 

Ⅲ.抗菌作用・利尿作用

セイヨウオキナグサには抗菌作用があることが知られており、尿路感染症を予防して膀胱・尿道内を細菌の感染から守るはたらきがあります。

またオオウメガサソウ、スギナは抗菌作用および利尿作用があり、尿路感染症の予防の他、尿を出しやすくするはたらきがあります。

これらの作用は膀胱や尿道・前立腺の炎症を予防する作用となり、前立腺肥大症を生じにくくさせてくれます。

 

4.エビプロスタット配合錠の副作用

エビプロスタットにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。

エビプロスタット配合錠の副作用発生率は2.16%と報告されています。

前述の通りエビプロスタットは植物性の製剤であるため、安全性は高く、副作用も少なめになります。

生じうる副作用としては、

  • 食欲不振
  • 腹痛
  • 胃部不快感

など主に消化器系の副作用になります。

いずれも軽度である事がほとんどで、重篤になる事はまずありません。

 

5.エビプロスタットの用法・用量と剤形

エビプロスタットは、

エビプロスタット配合錠SG
エビプロスタット配合錠DB

の2剤型が発売されています。

この2つは製剤の配合量が異なり、DBの方はSGの2倍量が含まれています。

エビプロスタットの使い方は、

【エビプロスタット配合錠SG】

通常1回2錠、1日3回経口投与する。症状に応じて適宜増減する。

【エビプロスタット配合錠DB】
通常1回1錠、1日3回経口投与する。症状に応じて適宜増減する。

となっています。

DB錠はSG錠の2倍多く含まれているため、服薬量は半分になっています。

つまりどちらも使っても同じだという事ですね。

 

6.エビプロスタット配合錠が向いている人は?

以上から考えて、エビプロスタットが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

エビプロスタットの特徴をおさらいすると、

【エビプロスタット配合錠の特徴】

・前立腺肥大症およびそれに伴う症状(排尿困難、残尿感、頻尿など)に用いられる
・植物由来のエキス製剤であり、副作用は少なく安全性に優れる
・効果は弱く、軽症例を中心に使われている
・服用回数が多い(1日3回に分けて服薬しなくてはいけない)

などがありました。

ここから軽症の前立腺肥大症であり、安全性を重視して治したい方に向いているお薬であると言えます。

効果も副作用も少ないお薬ですから、前立腺肥大症の初期の治療薬としても向いています。

他の前立腺肥大症治療薬と比べると服用回数が多いため、1日に何度も服用するのが面倒だという方にはあまり向かないかもしれません。