顔にお薬を使う時、「この薬って顔に塗って安全なの?」と気になっている方は多いのではないでしょうか。
顔は皮膚の中でも特にデリケートな部位です。また一番目立つ部位でもあるため、できる限り綺麗に治したいと誰もが考えます。
実際、顔の皮膚に軟膏を処方すると、
「これって安全なお薬ですか」
「強いお薬じゃないですよね?」
「顔が荒れたり赤くなったりしませんか」
といった質問を多く頂きます。
フルコートF(一般名:フルオシノロンアセトニド・フラジオマイシン硫酸塩)は病院で処方される外用剤(塗り薬)の1つで、皮膚の炎症を抑えたり、細菌をやっつける作用を持ちます。
このフルコートFって、顔に塗っても大丈夫なお薬なのでしょうか。
ここではフルコートFが顔に安全に使えるお薬なのかどうかを、その作用機序と顔の皮膚の特徴を説明していきながら考えていきたいと思います。
1.フルコートFは顔に使えるのか
フルコートFは顔に使える塗り薬なのでしょうか。
結論から言うと、フルコートFを顔に使用する事は可能です。
しかし安易に使用すべきではなく、使うとしてもできる限り短期間(約1週間以内)にとどめることが推奨されています。
フルコートFは「フルオシノロンアセトニド」というステロイドと、「フラジオマイシン硫酸塩」という抗菌薬が配合されている外用剤です。
ステロイドには炎症を抑える作用があります。
炎症とは何らかの原因によって身体の細胞がダメージを受けたときに生じる反応の事で、「発赤(赤くなる)」「腫脹(腫れる)」「熱感(熱くなる)」「疼痛(痛みが出る)」といった症状が生じます。
身体をぶつけると、その部位にこのような症状が生じますね。あるいは風邪をひくと喉にこのような症状が生じる事もあります。このように炎症は、外傷やばい菌の感染・アレルギーなど様々な原因で生じる反応なのです。
ステロイドは炎症を抑える事でこれらの症状を和らげてくれます。
また抗菌薬には細菌をやっつける作用があり、細菌が感染している部位に塗る事で症状の改善が期待できます。
このようなにフルコートFは、皮膚に炎症が生じていたり、細菌感染が生じている際に効果が期待でき、もちろん顔の皮膚に対しても同様に効果が期待できます。
しかし一方でステロイドには免疫を抑えたり、皮膚細胞の増殖を抑える作用もあります。これによって皮膚にばい菌が感染しやすくなってしまったり、皮膚が薄くなってしまう副作用が生じる可能性もあります。
顔というのは私たちの身体の中でも、とりわけ皮膚が薄い部位です。ステロイドを使う事で、顔の薄い皮膚が更に薄くなってしまうと、血管が浮き出てしまってあから顔になったり(ステロイド性酒さ)、皮膚の中に細菌やウイルスなどの病原体が侵入しやすくなってしまう事もあるのです。
フルコートFに含まれるステロイドの強さは、中くらいに分類されています。ものすごく強いわけではないため、どうしても必要な時に短期間に限って顔に用いる事は可能です。しかしその際も医師に必要性を判断してもらって慎重に使う必要があるでしょう。
2.顔の皮膚の特徴と治療の際の注意点
顔にお薬を塗る際に、みなさんに知っておいて頂きたい事があります。
それは、顔の皮膚は他の部位の皮膚と比べると、とても薄いという事です。
顔の皮膚が薄いのには理由があり、顔の皮膚は常に外界にさらされているため、皮膚を薄くする事で感覚を敏感にして外界の情報を多く得るためではないかと考えられています。
皮膚が薄いと、外界の情報を敏感に感じ取れるというメリットがあります。しかし一方で皮膚のバリア機能が弱くなるため、皮膚が傷つきやすくなり、また異物が体内に浸透してしまいやすいという事でもあります。
顔にお薬を塗る際は、この事が重要になってきます。
同じステロイドであっても、顔と手足に塗った場合では、顔の方が10倍以上も吸収力が高くなる事が確認されており、顔というのは良い意味でも悪い意味でも敏感な部位なのです。
顔にとって良い成分が浸透しやすいだけであれば好ましい事ですが、何か皮膚にダメージを与える成分が顔に塗られてしまった時、手足であれば大したダメージが生じないものであったとしても、顔であれば大きなダメージが生じてしまうのです。
また顔というのは、身体の中でも「日光」を浴びやすい部位です。日光は紫外線を含むため、過度に浴びれば皮膚細胞を傷付けます。
同じ皮膚でも体幹や上腕・大腿などは衣服に覆われている事が多いため、紫外線の影響はあまり受けません。しかし顔は紫外線の影響を強く受けるため、ダメージを受けやすいという特徴もあります。
このような理由から、顔にお薬を塗る場合は、他の部位に使うお薬と比べて作用の穏やかなものを選ぶ必要がある事は知っておいた方が良いでしょう。
ステロイドはその強さによって5段階に分けられています。このうち、顔に塗れるのは弱いものか、最大でも中くらいの強さを持つものまでになります。
顔の皮膚というのは、
- 皮膚が薄い
- お薬がたくさん吸収されやすい
- 紫外線を浴びる量が多いため、皮膚細胞がダメージを受けやすい
という特徴があります。
このような特徴から、他の部位と比べて作用も副作用も生じやすいため、なるべく作用や副作用が穏やかなお薬を用いる必要があるのです。