フロベンの効果と副作用【非ステロイド性消炎鎮痛剤】

フロベン(一般名:フルルビプロフェン)は1979年から発売されているお薬で、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)と呼ばれています。

非ステロイド性消炎鎮痛剤というと難しい名称ですが、いわゆる「痛み止め」のことです。ステロイドでないお薬で、炎症を和らげ痛みを抑えるはたらきを持つものを非ステロイド性消炎鎮痛剤と呼びます。

痛み止めにはたくさんの種類があります。どれも大きな違いはありませんが、細かい特徴や作用には違いがあり、医師は痛みの程度や性状に応じて、その患者さんに一番合いそうな痛み止めを処方しています。

痛み止めの中でフロベンはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここでは、フロベンの効能や特徴、副作用などを紹介していきます。

 

1.フロベンの特徴

まずはフロベンの特徴を紹介します。

フロベンは炎症を抑える事で鎮痛(痛み止め)作用を持ちます。NSAIDsの中ではやや強めの鎮痛作用を持ちます。歯科領域での報告が多く、歯医者さんで用いられる傾向があります。

一部のニューキノロン系と呼ばれる抗菌薬との併用が禁忌(絶対にダメ)となっているため、注意が必要です。

フロベンはNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)と呼ばれるお薬で、消炎(炎症を抑える)作用を持ちます。NSAIDsの中でも「プロピオン酸系」という種類に属し、同種のNSAIDsの中で作用はやや強めの部類に入ります。

一般名は「フルルビプロフェン」になります。同系統のNSAIDsである「ロピオン注(一般名:フルルビプロフェン・アキセチル)」は強力な鎮痛効果を持つ注射剤であり、ここからフロベンもある程度しっかりした鎮痛作用がある事が分かります。

NSAIDsの主な用途としては、炎症を抑える事で、

  • 解熱(熱さまし)
  • 鎮痛(痛み止め)

を目的として投与されます。

フロベンはこのうち「鎮痛」の研究報告が主に行われていため、解熱の適応はないのですが、薬効的には解熱作用も期待できます。

フロベンは鎮痛効果もしっかりとしており、比較的即効性もあるので頼れるお薬になります。

NSAIDsの中では歯科系の痛みに対しての研究報告が多いため、歯科領域で用いられる事が多いのですが、これは別に歯痛にのみ効く痛み止めだというわけではありません。恐らく、販売会社が歯科疾患をターゲットにしたかったという狙いがあったのではないでしょうか。

ほとんどのNSAIDsに言えることですが、NSAIDsは副作用としては胃腸を痛めてしまうことがあります。もちろんフロベンにもこの副作用が生じる可能性はあるため注意が必要になります。

またNSAIDsは喘息を誘発しやすくすることが知られており、喘息の方にはできるだけ服用しない方が良いでしょう。

フロベンの服用にあたって最も注意しないといけないのは、一部のニューキノロン系抗菌薬との併用が禁忌(絶対にダメ)となっている事です。これは併用により痙攣などの副作用が生じやすくなるためです。

よくあるのが、肺炎や尿路感染症などの細菌感染で発熱している際に、抗菌薬と解熱鎮痛剤であるNSAIDsを併用するというケースがあります。この時、一部のニューキノロン系抗菌薬とフロベンを併用しないようにしなければいけません。

以上からフロベンの特徴として次のような点が挙げられます。

【フロベンの特徴】

・鎮痛作用(痛みを抑える)を持ち、その強さはやや強め
・比較的即効性がある
・歯科領域での研究実績が多いお薬
・副作用の胃腸障害に注意(他のNSAIDsと同様)
・喘息の方は使用に注意(他のNSAIDsと同様)
・一部のニューキノロン系抗菌薬との併用は禁忌

 

2.フロベンはどのような疾患に用いるのか

フロベンはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

○下記疾患並びに症状の鎮痛・消炎
関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、歯髄炎、歯根膜炎

○抜歯並びに歯科領域における小手術後の鎮痛・消炎

フロベンは、消炎鎮痛剤ですから、炎症によって生じる症状を抑えるために用いられます。

実臨床では、炎症で生じた「痛み」を抑える目的で主に投与されます。

適応疾患には難しい病名がたくさん書かれていますが、おおまかな理解としては「痛みや腫れ・熱などが出現する疾患に対して、その症状の緩和に用いる」という認識で良いでしょう。

フロベンの有効率は、

  • 関節リウマチへの有効率は45.9%
  • 変形性関節症への有効率は46.3%
  • 腰痛症への有効率は59.5%
  • 歯髄炎への有効率は53.3%
  • 歯根膜炎への有効率は61.3%
  • 抜歯並びに歯科領域における小手術後の鎮痛・消炎への有効率は67.8%

と報告されています。

フロベンはNSAIDsの中でも歯科系の疾患に特に多く研究報告を行っており、歯科領域では特に処方しやすいお薬です。決して歯科疾患に特別に効くというわけではありませんし、歯科疾患以外には効かないというわけでもないのですが、多くの実績・研究報告を持っている分だけ安心して使用できます。

上記疾患にフロベンが有効なのは間違いありませんが、注意点としてフロベンを始めとするNSAIDsは根本を治す治療ではなく、あくまでも対症療法に過ぎないことを忘れてはいけません。

対症療法とは、「症状だけを抑えている治療法」で根本を治している治療ではありません。

例えば歯根にばい菌が入ってしまって痛みが生じているという時にフロベンを投与すれば、確かに痛みは軽減するでしょう。

しかしこれは原因であるばい菌をやっつけているわけではなく、あくまでも発痛を起こしにくくしているだけに過ぎません。

対症療法が悪い治療法だということはありませんが、対症療法だけで終わってしまうのは良い治療とは言えません。対症療法と言われて、根本を治すような治療も併用することが大切です。

例えば先ほどの急性上気道炎であれば、フロベンを使用しつつも、

  • 口腔内を清潔にする
  • 抗菌薬などばい菌をやっつけるお薬を使う
  • 規則的な生活をして免疫力を高める

など、ばい菌をやっつけるための治療法も併せて行いましょう。

 

3.フロベンにはどのような作用があるのか

フロベンは「非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)」という種類に属しますが、NSAIDsの作用は、その名のとおり消炎(炎症を抑える)ことで鎮痛する(痛みを抑える)事になります。

フロベンも他のNSAIDsと同様に鎮痛作用と消炎作用を有しています。その作用機序について説明します。

炎症とは、

  • 発赤 (赤くなる)
  • 熱感 (熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛みを感じる)

の4つの徴候を生じる状態のことで、感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。

みなさんも身体をぶつけたり、ばい菌に感染したりして、身体がこのような状態になったことがあると思います。これが炎症です。

フロベンは、炎症の原因が何であれ、炎症そのものを抑える作用を持ちます。つまり、発赤・熱感・腫脹・疼痛を和らげてくれるという事です。

具体的にどのように作用するのかというと、フロベンなどのNSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)という物質のはたらきをブロックするはたらきがあります。

COXは、プロスタグランジン(PG)が作られる時に必要な物質であるため、COXがブロックされるとプロスタグランジンが作られにくくなります。

プロスタグランジンは炎症や痛み、発熱を誘発する物質です。そのため、フロベンがCOXをブロックすると炎症や痛み、発熱が生じにくくなるのです。

フロベンはCOXのはたらきをブロックする事で炎症を抑え、これにより

  • 熱を下げる
  • 痛みを抑える

といった効果が期待できます。そのためフロベンのようなお薬を「COX阻害薬」と呼ぶ事もあります。

 

4.フロベンの副作用

フロベンにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。

フロベンの副作用発生率は、5.78%と報告されております。

主な副作用としては、

  • 胃部不快感
  • 食欲不振
  • 悪心
  • 発疹
  • かゆみ
  • 浮腫

などがあります。

フロベンをはじめとしたNSAIDsには共通する副作用があります。

もっとも注意すべきなのが「胃腸系の障害」です。これはNSAIDsがプロスタグランジンの生成を抑制するために生じます。

プロスタグランジンは、実は胃粘膜を保護するはたらきを持っているため、NSAIDsによってこれが抑制されると胃腸が荒れやすくなってしまうのです。

胃痛や悪心などをはじめとして、胃炎や胃潰瘍・胃腸出血などになってしまうこともあります。このため、NSAIDsは漫然と長期間使用し続けないことが推奨されています。

頻度は稀ですが重篤な副作用としては、

  • ショック、アナフィラキシー様症状
  • 急性腎不全、ネフローゼ症候群
  • 胃腸出血
  • 再生不良性貧血
  • 喘息発作
  • 中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)、剥離性皮膚炎

などが記載されています。重篤な副作用は稀ではあるものの絶対に生じないわけではありません。フロベンの服薬がやむを得ず長期にわたっている方は、定期的に血液検査にて血球異常や肝機能・腎機能などのチェックを行う必要があります。

また、フロベンは次のような方には禁忌(絶対に使ってはダメ)となっていますので注意しましょう。

1.消化性潰瘍のある方
2.重篤な血液の異常のある方
3.重篤な肝障害のある方
4.重篤な腎障害のある方
5.重篤な心機能不全のある方
6.重篤な高血圧症のある方
7.フロベンに過敏症の既往歴のある方
8.アスピリン喘息又はその既往歴のある方
9.フルマーク・ロメバクト・バレオン・バクシダール・スオード(ニューキノロン系抗菌薬)を投与の 患者(エイズ治療薬)を投与中の方
10.妊娠後期の婦人

胃を荒らす可能性のあるお薬ですので、胃腸に潰瘍がある方はそれを更に増悪させる可能性がありますので、用いてはいけません。

また心臓、肝臓、腎臓といった臓器にダメージを与える可能性がありますので、これらの臓器に重篤な機能不全がある場合もフロベンは用いてはいけません。

フロベンはニューキロノン系抗菌薬に属する一部の抗菌薬とは併用できません。フロベンとこれらの抗菌薬を併用する事で抗菌薬の血中濃度が上がりすぎてしまい痙攣などの副作用が生じやすくなるからです。

またフロベンをはじめとしたNSAIDsは動物実験において妊娠後期に投与すると、赤ちゃんの動脈管収縮、胎児循環持続症という状態が生じる可能性がある事が報告されており、ここから人においても妊娠末期には服用できない事となっています。

 

5.フロベンの用法・用量と剤形

フロベンは次の剤型が発売されています。

フロベン錠 40mg
フロベン顆粒 8%

フロベンの使い方は、

通常、成人1回40mg、1日3回食後経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

頓用の場合には、1回40~80mgを経口投与する。

と書かれています。

フロベンは比較的即効性もあるため、頓服として使用する事もできます。服薬してから血中濃度が最大になるまでに約1.4時間ほどであり、体感的には30分もすれば効果が出現しはじめます。

フロベンをはじめとしたNSAIDsはなるべく食後に服用にするようにしましょう。これは空腹時に投与すると、胃腸へのダメージが更に生じやすくなるためです。

またフロベンは食道に停留し崩壊すると、食道潰瘍を起こす可能性がある事が指摘されています。そのため服用の際は多めの水で服用しましょう。特に服用後にすぐに横になる就寝直前にはなるべく服用しないようにしましょう。

 

6.フロベンが向いている人は?

フロベンはどのような方に向いているお薬なのでしょうか。

フロベンの特徴をおさらいすると、

・鎮痛作用(痛みを抑える)を持ち、その強さはやや強め
・比較的即効性がある
・歯科領域での研究実績が多いお薬
・副作用の胃腸障害に注意(他のNSAIDsと同様)
・喘息の方は使用に注意(他のNSAIDsと同様)
・一部のニューキノロン系抗菌薬との併用は禁忌

といった特徴がありました。

基本的にNSAIDsは、どれも大きな差はないため、処方する医師が使い慣れているものを処方されることも多々あります。

まずフロベンは、一部のニューキノロン系抗菌薬と併用が禁忌であるため、ニューキノロン系抗菌薬を使う可能性がある状況(例えば、細菌感染を疑う所見があるなど)では使用しない方がいいでしょう。

歯科疾患への使用は適しています。これはフロベンが歯の痛みに特別効くというわけではなく、歯の痛みに対する使用例が多いためデータも豊富であり安全に使えるからです。