フロセミドの効果と副作用【ループ利尿薬】

フロセミドは、1988年から発売されている「ラシックス」という利尿剤のジェネリック医薬品になります。

利尿剤とは尿量を多くするお薬で、尿の量を増やす事で身体の水分を減らし、むくみなどを改善させるはたらきがあります。

下肢などのむくみの改善に用いられる他、心不全や肝不全、腎不全などに伴うむくみなどにも用いられています。

利尿剤の中でフロセミドはどのような特徴を持つお薬で、どのような方に向いているお薬なのでしょうか。

フロセミドの特徴や効果・副作用についてみていきましょう。

 

1.フロセミドの特徴

フロセミドはどのような特徴を持つお薬なのでしょうか。

フロセミドは利尿剤です。利尿剤とは、尿の量を増やす事で体内の水分を減らすお薬になります。

この作用から、利尿剤は身体に余分な水が溜まってしまった時に用いられます。具体的には浮腫(むくみ)などを改善させるの他、肺に水が溜まってしまう「胸水」やお腹に水が溜まってしまう「腹水」を改善させるためにも用いられます。

フロセミドは利尿剤の中でも「ループ利尿薬」という種類に属します。

利尿剤にはループ利尿薬の他にも、「カリウム保持性利尿剤」「チアジド系(サイアザイド系)」「チアジド類似薬」などいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。

まずは利尿剤の中でのループ利尿薬がどんな特徴を持ったお薬なのかを紹介しましょう。

【ループ利尿薬の特徴】

・尿量を増やす事でむくみを改善させる利尿剤である
・利尿剤の中でも利尿作用(尿量を増やす作用)が強い
・降圧作用(血圧を下げる作用)は利尿剤の中では弱い

ループ利尿薬は主に、尿を作る器官である「尿細管」にある「ヘンレのループ」という部位に作用するお薬になります。ヘンレのループに作用するから「ループ利尿薬」と呼ばれています。

尿細管でループ利尿薬がどのように作用するのかといった詳しい機序については後述しますが、まずは簡単に、尿細管(ヘンレのループ)に作用して尿量を増やすのがループ利尿薬だと覚えてください。

フロセミドをはじめとしたループ利尿薬は、利尿作用(尿量を増やす作用)が強い事が特徴です。利尿剤にはいくつかの種類がありますが、利尿作用だけをみればループ利尿薬が圧倒的に強力です。

しかし他の利尿薬(カリウム保持性利尿薬、チアジド系など)は、利尿作用のみならず降圧作用(血圧を下げる作用)なども有しています。しかしループ利尿薬は降圧作用は極めて弱く、尿量を増やす事に特化したお薬です。

そのため、「むくみを取りたい」「胸水を抜きたい」「腹水を抜きたい」など、身体に余計な水分が溜まっていて、それを改善させたいような時に適しています。

では次にループ利尿薬の中でのフロセミドの特徴を紹介します。

【ループ利尿剤の中でのフロセミドの特徴】

・即効性があり切れが良いが、作用時間は短い
・腎機能を増悪させず、腎機能障害の方でも使いやすい
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い

ループ利尿薬にもいくつかのお薬がありますが、その中でフロセミドの特徴は、「素早く効く」「持続性は短い」という点です。効果発現は速いのですが、持続力はありません。

そのため、主に急性期などで水分を早めに抜きたいような時に用いられます。効果発現が速く、キレは良いのですが、それは急激に身体の水分バランスを変化させるという事でもありますので副作用(脱水やめまいなど)にも注意が必要になります。

ちなみにフロセミドと同じループ利尿剤に「ダイアート(一般名:アゾセミド)」というお薬がありますが、このダイアートはフロセミドと反対で即効性は低いものの、持続力があります。

ダイアートはフロセミドよりもゆっくり長く効くため、急激に身体の水分量や電解質を変化させず、身体にも優しいという利点があります。

そのため、急いで身体の水を抜かないといけないような急性期にはフロセミドの方が適していますが、身体に負担少なく安全に余分な水分を排泄していくような慢性期にはダイアートの方が適している事もあります。

またフロセミドは腎臓に作用するお薬であるにも関わらず、腎臓にあまり負担をかけないとう特徴があります。そのため腎機能が悪い方にも比較的使いやすい利尿剤になります。

更にフロセミドはジェネリック医薬品ですので、先発品のラシックスと比べて薬価が安いのも利点です。

以上からフロセミドの特徴を挙げると次のようになります。

【フロセミドの特徴】

・尿量を増やす事でむくみを改善させるループ利尿薬である
・利尿剤の中でも利尿作用(水分を尿として排泄する作用)が強い
・降圧作用(血圧を下げる作用)は利尿剤の中では弱い
・即効性があり切れが良いが、作用時間は短い
・腎機能を増悪させず、腎機能障害の方でも使いやすい
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い

 

2.フロセミドはどんな疾患に用いるのか

フロセミドはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

〇 高血圧症(本態性、腎性等)、悪性高血圧

〇 心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫

〇 月経前緊張症

〇 末梢血管障害による浮腫

〇 尿路結石排出促進

フロセミドは利尿剤に属し、尿量を増やす事で身体の水分を減らす作用があります。そのため身体に余分な水分が溜まっているような方に用いられます。

また水分量やNa+(ナトリウムイオン)を減らす事で、血圧を多少下げる作用も期待できます。

本態性高血圧症とは、原因が特定されていない高血圧の事です。いわゆる通常の高血圧の事で、高血圧症の9割は本態性高血圧になります。

本態性でない高血圧は「二次性高血圧」と呼ばれ、これは何らかの原因があって二次的に血圧が上がっているような状態を指します。これにはお薬の副作用による血圧上昇、ホルモン値の異常による高血圧(原発性アルドステロン症など)があります。

本態性高血圧のほとんどは単一の原因ではなく、喫煙や食生活の乱れ、運動習慣の低下などの複数の要因が続く事による全身の血管の動脈硬化によって生じます。

腎性高血圧は二次性高血圧の1つで、何らかの原因で腎臓に障害が生じて血圧が上がってしまう疾患です。例えば糖尿病による腎障害などが原因として挙げられます。腎臓は尿を作る臓器ですので、腎臓に障害が生じると尿を作りにくくなり、身体の水分が過剰となるため血圧が上がります。

悪性高血圧症とは「高血圧緊急症」とも呼ばれ、血圧が顕著に高く、すぐに血圧を下げないと重篤な障害が生じる可能性が高い状態を指します。実際に悪性高血圧症が生じたら、速やかにかつ厳密に血圧を下げていく必要があるため、飲み薬ではなく静脈から点滴するような降圧剤が用いられます。そのため飲み薬のフロセミドが用いられる事はほとんどありませんが、一応保険適応は有しています。

そして悪性高血圧に対してフロセミドを用いる場合は、単独で用いる事はせず、必ず他の降圧剤と併用すべきとなっています。

心性浮腫、腎性浮腫、肝性浮腫というのは、それぞれ「心臓が原因で生じる浮腫」「腎臓が原因で生じる浮腫」「肝臓が原因で生じる浮腫」の事です。

心臓は血液を全身に送り出すはたらきをしていますので、心臓のはたらきが弱くなると血液が送り出せない分、心臓の手前の血管(静脈)に血液が溜まっていきます。この状態が続くと血管にたまった水分は次第に血管外に漏れ出していくため、肺に水がたまったり(肺うっ血、胸水など)、身体に浮腫(むくみ)が生じます。

また腎臓は尿を作るはたらきをしていますので、腎臓のはたらきが弱まると尿を作りにくくなり、尿として排泄できない分だけ血管に水分が溜まっていきます。この状態が続くと、同様に血管にたまった水分は次第に血管外に漏れ出していくため、浮腫が生じます。

肝臓は解毒作用をもつ臓器で、全身を巡り終わった血液は門脈という静脈を通じて肝臓に入っていきます。肝臓のはたらきが悪くなり肝硬変になると、門脈から肝臓に血液が入りにくくなります。すると門脈より手前の血管(静脈)に血液が溜まっていき、この状態が続くと血管にたまった水分は次第に血管外に漏れ出していくため、お腹に水がたまったり(腹水)、浮腫が生じます。

月経前緊張症(PMS)とは、月経前に女性ホルモンのバランスが崩れる事で様々な症状が生じる状態です。典型的には、気分不安定(イライラ、落ち込み、不安など)、肌荒れ、頭痛、倦怠感などが生じ、むくみが生じる事もあります。

末梢血管障害による浮腫というのは、身体の末梢(手足など)の静脈の血流が悪くなる事によって心臓に血液が戻りにくくなり、四肢にむくみが生じるような状態です。

またフロセミドは尿量を増やしますので、尿路に結石がある場合にその排出を促す作用も期待できます。

フロセミドはこれらの疾患に対してどのくらい効果があるのでしょうか。

フロセミドはジェネリック医薬品ですので、有効性に対する詳しい調査は行われていませんが、先発品のラシックスでは行われています。

上記疾患に対してラシックスを投与した調査では、

  • 心性浮腫に対する有効率は87.7%
  • 腎性浮腫に対する有効率は87.%
  • 肝性浮腫に対する有効率は70.0%
  • 本態性高血圧に対する有効率は84.0%
  • 腎性高血圧に対する有効率は88.9%

であったと報告されており、フロセミドの有効率もこれと同程度だと考えられます。

 

3.フロセミドにはどのような作用があるのか

フロセミドにはどのような作用があるのでしょうか。フロセミドの作用機序について紹介します。

 

Ⅰ.尿中に電解質を排泄し、尿量を増やす

フロセミドの主な作用は、尿の量を増やす事です。

尿量が増えれば身体の水分の量が減りますので、身体に溜まってしまった余計な水分を抜く事が出来ます。

フロセミドの作用機序を更に深く理解するためには、尿がどのように作られるのかを知る必要があります。

尿は腎臓で作られます。腎臓に流れてきた血液は、腎臓の糸球体という部位でろ過され、尿細管に移されます。このように尿細管に移された尿の素(もと)は、「原尿」と呼ばれます。

糸球体は血液をざっくりとろ過しておおざっぱに原尿を作るだけですので、原尿には身体にとって必要な物質がまだたくさん含まれています。

原尿をそのまま尿として排泄してしまうと、身体に必要な物質がたくさん失われてしまいます。それでは困るため、尿細管には原尿から必要な物質を再吸収する仕組みがあります。

つまり糸球体でざっくりと血液がろ過されて原尿が作られ、尿細管によって原尿から必要な物質が体内に戻され、最終的に排泄される尿が出来上がるわけです。

原尿から必要な物質が再吸収されて最終的に作られた尿は、腎臓から尿管を通り膀胱に達し、そこで一定時間溜められます。膀胱に尿がある程度溜まって膀胱が拡張してくると、その刺激によって尿意をもよおし、排尿が生じます。

これが尿が作られる主な機序になります。

ループ利尿薬は、原尿から必要な物質を再吸収する尿細管の仕組みの1つをブロックするお薬になります。

尿細管は糸球体に近い方から「近位尿細管」「ヘンレのループ(ヘンレ係蹄)」「遠位尿細管」「集合管」の4つの部位に分けられています。

このうち主に「ヘンレのループ」に作用するのがループ利尿薬です。ループ利尿薬の「ループ」はヘンレのループから来ているのです。

厳密に言えばフロセミドはヘンレのループだけでなく尿細管全域でのイオンの再吸収をブロックしている事が確認されていますが、その中でも主な部位はヘンレのループになります。

ヘンレのループにはNa+(ナトリウムイオン)、K+(カリウムイオン)、Cl-(クロールイオン)を体内に再吸収する仕組みがあります。

フロセミドをはじめとしたループ利尿剤は、この仕組みをブロックします。つまりNa+、K+、Cl-が体内に再吸収されるのをブロックするという事です。これにより、Na+、K+、Cl-は尿としてそのまま排泄されてしまいます。

ちなみにNa+は一緒に水分も引っ張る性質があります。Na+が増えると、その液体の浸透圧が上がるため、水を引き寄せるようになるのです。難しい説明はここでは省略しますが、体内では水はNa+と一緒に動く性質があると覚えてください。

つまり、フロセミドは尿中のNa+(とK+、Cl-)を増やす事によって尿中の水分も増やすという事です。これによって尿量を増やします。

これがフロセミドをはじめとしたループ利尿剤の基本的な作用機序になります。

 

Ⅲ.降圧作用

フロセミドは血圧を下げる作用(降圧作用)も確認されています。ただしその作用は強くはありません。

フロセミドの降圧作用は、尿量を増える事で身体の中の水分量やNa+(ナトリウムイオン)の量を減り、その結果血液の量が減るために生じると考えられています。

血液の量が減れば、血液が血管の壁を押す力(血圧)は下がります。

フロセミドの降圧作用は強くはなく、またその効果は徐々に発現する事が報告されており、利尿作用と異なり服用してすぐに血圧が下がるというものではありません。

 

4.フロセミドの副作用

フロセミドにはどのような副作用があるのでしょうか。また副作用はどのくらいの頻度で生じるのでしょうか。

フロセミドはジェネリック医薬品でもあるため、副作用発生率の詳しい調査は行われていません。しかし類薬のオイテンシン(持効性フロセミド)では行われており、副作用発生率は2.18%と報告されています。

フロセミドとオイテンシンは全く同じお薬ではありませんが、主成分は同じであり副作用発生率も類似していると考えられます。

フロセミドで生じうる副作用としては、

  • 貧血
  • 低ナトリウム血症、低カリウム血症
  • 高尿酸血症
  • 発疹、蕁麻疹
  • 食欲不振、悪心
  • めまい、頭痛、起立性低血圧
  • BUN、Cr上昇

などが報告されています。

フロセミドは身体の水分を減らす事で脱水状態にしてしまうリスクがあります。その結果、頭痛やめまい、起立性低血圧が生じたり、BUN、Cr(クレアチニン)といった腎臓系の酵素を上昇させてしまう事があります。また脱水になると尿酸値も上昇させてしまいます。

また、フロセミドはNa+、K+、Cl-といった電解質の再吸収をブロックしますから、これらの電解質が少なくなってしまう副作用が生じえます。

ナトリウムイオンがあまりに少なくなると、倦怠感、食欲不振、嘔気、嘔吐、痙攣、意識障害などといった症状が出現します。カリウムイオンが少なくなると、倦怠感、脱力感、不整脈などが生じます。

このような副作用の可能性から、フロセミドを長期にわたって服用する際は定期的に血液検査を行う事が望ましいでしょう。

頻度は稀ですが、フロセミドで生じうる重篤な副作用としては、

  • ショック、アナフィラキシー
  • 再生不良性貧血、汎血球減少症、無顆粒球症、血小板減少、赤芽球癆
  • 水疱性類天疱瘡
  • 難聴
  • 中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)、 多形紅斑、急性汎発性発疹性膿疱症
  • 心室性不整脈
  • 間質性腎炎

が報告されています。

ショック、アナフィラキシーはお薬で生じる重篤なアレルギー反応で、フロセミドのみならずほとんどの薬剤で生じる可能性があります。

様々な症状が生じえますが、代表的なものとして口内異常感、そう痒感、紅潮・熱感、くしゃみ、しびれ感、悪心、嘔吐、尿意、喘息などが挙げられ、さらに進行すると、血圧低下、チアノーゼ、眼前暗黒感、痙攣、気道浮腫、呼吸困難などが生じる事もあります。

また中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)、 多形紅斑、急性汎発性発疹性膿疱症も皮膚に生じる重篤なアレルギー反応で、全身の皮膚にアレルギー反応が生じ、最悪の場合は命に関わる事もあります。

フロセミドは免疫反応の異常を引き起こし血球系の異常や類天疱瘡を生じさせる事があります。詳細な機序は不明であり、頻度も稀ですが一応の注意は必要です。

フロセミドは内耳のらせん器という器官にある外有毛細胞に作用する事で細胞体を膨化させ、難聴を引き起こす可能性がある事も報告されています。

フロセミドを投与してはいけない方(禁忌)としては、

  • 無尿の方
  • 肝性昏睡の方
  • 体液中のナトリウム・カリウムが明らかに減少している方
  • スルフォンアミド誘導体に対し過敏症の既往歴のある方

が挙げられています。

フロセミドは尿の排泄を増やす事で血圧を下げるお薬ですので、尿が出ない状態にある方(無尿)に投与しても意味がありません。

またフロセミドは血中の脱水状態を誘発する事によりアンモニアを上昇させる可能性があるため、肝性昏睡(肝不全によってアンモニアが蓄積し、意識レベルが低下する状態)の方に投与すると、状態をより悪化させる可能性があります。

フロセミドはナトリウム、カリウムといった電解質の排泄をお薬によって増やしてしまうお薬です。そのため低ナトリウム血症、低カリウム血症など、元々電解質に異常がある方が服用すると更に電解質の異常を悪化させてしまう危険があります。

またフロセミドはスルフォンアミド誘導体の1つであるため、似た化学構造を持つスルフォンアミド誘導体のお薬が合わない方は投与する事は出来ません。

 

5.フロセミドの用法・用量と剤形

フロセミドは、

フロセミド錠 10mg
フロセミド錠 20mg
フロセミド錠 40mg

フロセミド細粒 4%

といった剤形があります。

また飲み薬ではありませんが、

  • フロセミド注 20mg

と注射製剤もあります。注射製剤は主に急性期や入院時など、急いで身体の水分を抜きたい時に使われます。

フロセミドの使い方は、

通常、成人には1日1回40~80mgを連日又は隔日経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

腎機能不全等の場合にはさらに大量に用いることもある。

ただし、悪性高血圧に用いる場合には、通常、他の降圧剤と併用すること。

となっています。

フロセミドはループ利尿剤の中でも即効性があり、キレの良いお薬です。その代わり持続力はありません。

具体的には、フロセミドの利尿作用は服用してから1時間以内に認められ、6時間ほど続くと報告されています。

フロセミドは服用する時間は厳密には決められてはいませんが、基本的には昼間の服用が推奨されています。これは夜に服用してしまうと、夜間眠っている時に利尿作用が最大となってしまい、何度もトイレで起きるようになってしまうためです。

朝や昼に服用すれば就寝時の頃には利尿作用は弱まっていますので、夜間の睡眠に悪影響をきたす可能性は低くなります。

 

6.フロセミドが向いている人は?

以上から考えて、フロセミドが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

フロセミドの特徴をおさらいすると、

【フロセミドの特徴】

・尿量を増やす事でむくみを改善させるループ利尿薬である
・利尿剤の中でも利尿作用(水分を尿として排泄する作用)が強い
・降圧作用(血圧を下げる作用)は利尿剤の中では弱い
・即効性があり切れが良いが、作用時間は短い
・腎機能を増悪させず、腎機能障害の方でも使いやすい
・ジェネリック医薬品であり薬価が安い

というものでした。

ループ利尿薬であるフロセミドは、身体の余分な水分(浮腫や胸腹水など)を取りたいというケースにおいて有用です。

ループ利尿剤の中では素早く効くフロセミドは、「なるべく早く水分を抜きたい」といった急性期に向いています。キレが良いため頼れるお薬ですが、反面で急激に水を抜くため副作用にも注意が必要になります。

そのため定期的に血液検査で脱水状態や電解質の評価を行うようにしましょう。

腎機能を悪化させないため、腎機能が悪い方に対しても比較的使いやすい利尿剤になります。

またジェネリック医薬品でもあるフロセミドは経済的負担少なく治療をしたい方にも適しています。

 

7.フロセミドはダイエットに向いているのか

「フロセミドを服用すると体重が減るらしい」という事をインターネットで調べ、ダイエット目的でフロセミドの服用を希望される方がいらっしゃいます。

最近ではネット通販で海外からフロセミドを取り寄せる事も出来るため、自分で購入する方もいらっしゃるようです。

では、フロセミドはダイエットに向いているお薬なのでしょうか。

ここまで読まれたみなさんはお分かりかと思いますが、答えは「No」です。

フロセミドを服用すれば確かに体重は落ちる可能性があります。そのため見かけ上の体重を落とすという事であればそれは確かに達成できるかもしれません。

しかしその内訳は「水分を無理矢理抜いている」だけです。フロセミドで身体を脱水状態にすることで、抜いた水分の分だけ体重を減らしているだけなのです。

これは本来のダイエットからはずれた体重の減らし方である事は明らかでしょう。

本来、ダイエットというのは、身体についてしまった余分な脂肪を落とすために行われるものです。余分な皮下脂肪や内臓脂肪が減った結果として体重が減っているのであれば、これは正しいダイエットであると言えます。

フロセミドによる体重減少は脂肪を減らす作用は全くありません。本来身体にとって必要な水分を無理矢理抜く事で見かけ上の体重を減らしているだけであり、ダイエットにフロセミドを使う事はただ健康を損なうだけで、実質的にはダイエットに全く役立っていないと考えてよいでしょう。