ウリトス錠の効果と副作用【頻尿・過活動膀胱治療薬】

ウリトス錠(一般名:イミダフェナシン)は2007年に発売された頻尿・過活動膀胱治療薬です。2011年には口腔内崩壊錠であるウリトスOD錠も発売されました。

ウリトスは膀胱の収縮を抑えることで頻尿を改善します。そのため、膀胱の収縮が過剰になっており、それによる頻尿で困っている方には役立つお薬です。

頻尿を改善するお薬にもいくつかの種類がありますが、その中でウリトスはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。

ここではウリトスの特徴や効果・効能・副作用について紹介させていただきます。

 

1.ウリトスの特徴

まずはウリトスの全体的な特徴を紹介します。

ウリトスの最大の特徴は、膀胱のムスカリン1受容体とムスカリン3受容体の2か所に作用することにより、しっかりと頻尿を抑えてくれることです。

難しい言い方ですが、これは要するに膀胱の過剰な収縮をムスカリン1受容体ブロックとムスカリン3受容体ブロックという、2つの箇所でブロックしているため、よりしっかりと頻尿を抑えてくれるということです。

2か所に作用するため、1か所にしか作用しない頻尿改善薬よりも効果が期待できる反面、副作用も出やすくなる可能性もあり、これは一長一短の特徴になります。

また半減期が約3時間と非常に短いため、1日1回の服用では不十分で1日2回(朝・夕食後)に服用する必要があります。薬効が短いのは、1日に何回も飲まないといけないという手間ではデメリットになりますが、すぐにお薬が身体から抜けるため蓄積しない、細かい用量調整がしやすいという点ではメリットとも捉えることができます。

ウリトスはOD錠(口腔内崩壊錠)という剤型があるのも特徴です。最近ではOD錠があるお薬も増えてきましたが、OD錠は水なしでも服用できるため、出先で服用したい方であったり、飲み込む力が弱い高齢者の方にとって重宝する剤型です。

ウリトスは基本的には食後に服薬する必要があります。寝る前などの空腹時に服薬すると、食後服用と比べて血中濃度が若干低くなってしまう事が確認されています(血中濃度が約80%ほどに低下します)。そのため、夜間の頻尿などを改善したい場合も、眠前などの空腹時に服薬することは保険上は認められていません。

以上からウリトスの特徴として次のような点が挙げられます。

【ウリトスの特徴】

・2つのムスカリン受容体(1と3)をブロックする事でしっかりと頻尿を改善する
・1日2回服薬する必要がある
・OD錠があるため、水なしで服用することもできる
・食後服用が原則で、保険上は空腹時には服用できない

 

2.ウリトスはどのような疾患に用いるのか

ウリトスはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁

難しい専門用語が並んでいますが、ざっくりと言えば「おしっこの回数が多かったり、おしっこが間に合わない人」に対して、尿の回数を減らす作用があるお薬だということです。

過活動膀胱(OAB:OverActive Bladder)という疾患は、膀胱の本来のはたらきである「おしっこを溜めるはたらき(蓄尿能)」が低下してしまう病気です。主に高齢者に多く、少し尿が溜まっただけで排尿筋が収縮してしまい、尿意を感じるため頻尿になってしまいます。

ウリトスは、膀胱の異常な収縮を抑えることで蓄尿能を改善させ、過活動膀胱の頻尿に対して効果を発揮します。

ただし頻尿であれば何にでも効くわけではありません。あくまでも膀胱の過剰な収縮が生じている過活動膀胱の頻尿を改善させるというはたらきになります。

別の原因で頻尿が生じているのであれば、ウリトス以外のお薬の方が適切なことがありますので注意が必要です。

例えば、男性の頻尿であれば過活動膀胱ではなく、前立腺肥大症に伴って生じていることもあります。この場合はウリトスではなく、α1遮断薬と呼ばれる尿道の拡がりを良くするお薬をまずは使用することが推奨されています。前立腺肥大症で尿道が狭くなっているのに、ウリトスで更に排尿しにくくしてしまうと、かえって症状が悪化してしまう可能性もありますので注意が必要です。

また尿路感染症に伴って頻尿となっているのであれば、治療はウリトスのようなお薬ではなく、抗生物質でばい菌をやっつけたり、水分をたくさん取ってばい菌を洗い流すことになります。この場合、ウリトスを使うことによって尿の出を少なくしてしまうと、かえってばい菌が膀胱に留まりやすくなってしまい、病状が悪化してしまうこともあります。

ウリトスは過活動膀胱に伴う頻尿には有効なお薬ですが、頻尿全般に使える万能薬ではありません。ウリトスを使うべき頻尿であるのかどうかは主治医にしっかりと診察してもらい判断してもらいましょう。

ではウリトスは上記疾患に対してどのくらいの効果があるのでしょうか。

ウリトスの有効性をみた調査では、ウリトスの投与を12週間(約3か月間)続けたところ、

  • 1週間当たりの合計尿失禁回数が22.92%低下
  • 1日当たりの平均排尿回数が0.82回低下
  • 1日当たりの平均尿意切迫感回数が23.67%低下

と頻尿所見の改善が認められています。

 

3.ウリトスにはどのような作用があるのか

ウリトスは主に過活動膀胱の症状(頻尿)の改善に用いられます。つまり、尿の回数を少なくする作用があるということです。どのような作用によって尿の回数を少なくしているのでしょうか。

ウリトスは膀胱の平滑筋という筋肉に存在するムスカリン3受容体(アセチルコリン受容体と呼ばれることもあります)のはたらきをブロックするはたらきがあります。また、膀胱の神経終末に存在するムスカリン1受容体のはたらきをブロックするはたらきもあります。

このムスカリン1受容体、ムスカリン3受容体へのブロックが、ウリトスの主な作用です。

アセチルコリンという物質が膀胱のムスカリン3受容体とくっつくと、膀胱は収縮することが知られています。ウリトスはムスカリン3受容体にアセチルコリンがくっつくのをジャマします。そうなると、膀胱が収縮しにくくなるため、頻尿が改善されるというわけです。

また膀胱の神経終末に存在するムスカリン1受容体が刺激されると、アセチルコリンが分泌されることが知られています。ウリトスはムスカリン1受容体をブロックすることで、アセチルコリンの量自体をも減らす作用があります。アセチルコリンの量が減れば、ムスカリン3受容体にくっつこうとするアセチルコリンも少なくなるため、頻尿がよりしっかりと改善されます。

このようにウリトスはアセチルコリンに拮抗する(=ジャマする)ので「抗コリン薬」とも呼ばれています。

ちなみにムスカリン受容体は、1から5まであり、それぞれ全身に分布しており作用も異なります。ウリトスは主にムスカリン1受容体とムスカリン3受容体に作用するお薬です。そのため、しっかりと頻尿を抑えてくれる反面で、多くの受容体に作用する分だけ副作用も多くなってしまう可能性もあります。

同じ過活動膀胱の治療薬としてベシケア(一般面:コハク酸ソリフェナシン)がありますが、ベシケアはムスカリン3受容体に集中的に作用し、ムスカリン1受容体にはあまり作用しません。ムスカリン1受容体に作用しない分だけ、頻尿の改善作用は落ちる可能性はありますが、その分副作用は少なくなる可能性があります。

どちらも一長一短あるため、主治医とよく相談して、自分にとって最適な治療薬を選ぶことが大切です。

 

4.ウリトスの副作用

ウリトスにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。

ウリトスの副作用発生率をみた調査では、副作用発生率は12.7%と報告されています。

しょうじうる副作用としては、

  • 口渇(口の渇き)
  • 便秘
  • 羞明(まぶしく感じる事)、霧視
  • 眠気
  • 胃不快感
  • 頭痛
  • 排尿困難
  • トリグリセリド(中性脂肪)の増加
  • 肝機能の異常

などが報告されています。

先ほど説明した通り、ウリトスはムスカリン受容体をブロックするお薬です。ムスカリンの中でもムスカリン1、3受容体に作用しやすいという特徴がありますが、多少は他のムスカリン受容体にも作用してしまいます。

そのため、時に副作用が生じることがあります。

副作用としてもっとも多いものは、抗コリン作用と呼ばれるものです。抗コリン作用というのは、アセチルコリンをブロックするために生じてしまう作用のことです。ちなみにアセチルコリン受容体にはムスカリン受容体とニコチン受容体の2種類があり、ムスカリン受容体はアセチルコリン受容体の一つになります。

ウリトスがムスカリン受容体のはたらきをブロックしてしまうと、口渇(口腔内乾燥)、便秘、霧視などが生じる可能性があります。頻度は低いですが重篤なものとしては尿閉(尿が出なくなる)や不整脈、麻痺性イレウス(腸が麻痺して動かなくなってしまう病気)が生じることもあります。

また、ウリトスは肝臓や腎臓で代謝されるため、肝障害や腎障害が生じることがあり、それに伴い血液検査で腎臓系酵素や肝臓系酵素の上昇が認められることがあります。BUN、AST、ALTなどの肝臓・腎臓系酵素の上昇が生じることもあることが報告されています。

特に肝障害・腎障害などの疾患が元々ある方は特に注意しなければいけませんので、事前に主治医に自分の病気についてしっかりと伝えておきましょう。

頻度は少ないものの重篤な副作用としては、

  • 急性緑内障
  • 尿閉
  • 肝機能障害
  • 麻痺性イレウス
  • 幻覚・せん妄
  • QT延長、心室性頻拍

が報告されています。

ウリトスの抗コリン作用は眼圧を上げてしまう可能性がありますので、緑内障(眼圧が上がってしまって眼痛、視力異常などが生じる疾患)が生じる事があります。

同様にウリトスの抗コリン作用は尿を出にくくしてしまうため、尿閉(尿が出にくくなる、出なくなる)が生じる事もあります。

またウリトスは肝臓に負担をかける事があるため、肝機能障害が生じる事があります。

ウリトスは抗コリン作用によって胃腸の動きを低下させてしまうため、イレウスという胃腸がほとんど動かない状態を引き起こしてしまう事があります。

また脳や心臓に作用する事で意識レベル変容による幻覚・せん妄や心電図異常を引き起こす事があります。

いずれの場合も早急にウリトスの使用を中止し、適切な治療を導入する必要があります。

ウリトスを服用してはいけない人(禁忌)としては、

  • 尿閉を有する方
  • 幽門、十二指腸又は腸管が閉塞している方および麻痺性イレウスのある方
  • 消化管運動・緊張が低下している方
  • 閉塞隅角緑内障の方
  • 重症筋無力症の方
  • 重篤な心疾患の方
  • ウリトスの成分に対し過敏症の既往歴のある方

が挙げられています。

ウリトスの抗コリン作用で症状が悪化する可能性が高いような状態の方には用いる事が出来ません。

またウリトスは不整脈を引き起こす事が多少あるため、元々心臓が悪い方は用いてはいけません。

 

5.ウリトスの用法・用量と剤形

ウリトスにはどのような剤型があるのでしょうか。

ウリトスには、

ウリトス錠 0.1mg
ウリトスOD錠 0.1mg

と2剤型が発売されています。

OD錠とは「口腔内崩壊錠」のことで、口に入れると唾液で溶ける作用を持つ剤型のことです。

OD錠は水なしでも飲めることがメリットであり、外出先など水がない状況で服薬したい方や、飲み込みが悪い高齢者などに好まれます。

ウリトスの使い方は、

通常、成人には1回0.1mgを1日2回、朝食後及び夕食後に経口投与する。効果不十分な場合は、1回0.2mg、1日0.4mgまで増量できる。

となっています。

まずは0.2mg/日(1日2錠)より開始し、最大で0.4mg/日(1日4錠)まで使えるということです。

ウリトスは半減期が約3時間ほどであり、作用時間が非常に短いお薬です。そのため、1日1回の服用では効果は1日間持続せず、1日複数回副作用する必要があります。添付文書的には1日2回の服用が指示されています。ちなみ半減期とは、お薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、そのお薬の作用時間の一つの目安になる数値です。

また、ウリトスは基本的には食後の服用を想定して作られています。空腹時に服用すると血中濃度は0.8倍程度まで低下してしまうため注意が必要です。

特に夜間頻尿に対してウリトスを使う場合などでは寝る前などの空腹時に服用したいところです。しかし、このようなお薬の特徴のため保険的には食後投与しか認められていません。

 

6.ウリトスが向いている人は?

以上から考えて、ウリトスが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ウリトスの特徴をおさらいすると、

【ウリトスの特徴】

・2つのムスカリン受容体(1と3)をブロックする事でしっかりと頻尿を改善する
・1日2回服薬する必要がある
・OD錠があるため、水なしで服用することもできる
・食後服用が原則で、保険上は空腹時には服用できない

というものでした。

ここから、過活動膀胱と診断された方であって、

・しっかりと頻尿を改善させたい方
・OD錠を使いたい方
・1日に複数回の服用が苦ではない方
・主に夜間ではなく、日中の頻尿を改善させたい方

などにとっては向いているお薬かもしれません。

 

7.市販で買える頻尿・過活動膀胱治療薬について

頻尿・過活動膀胱でお悩みの方は、出来れば一度病院を受診し、医師の診察を受けて適切な治療薬を処方して頂きたいと考えております。

しかしどうしてもすぐには受診できないような場合、市販薬でも頻尿や過活動膀胱にある程度効果が期待できるものもあります。

ここでは頻尿・過活動膀胱に有効な市販薬をいくつか紹介します。

 

Ⅰ.レディガードコーワ

レディガードコーワは病院で処方される頻尿治療薬である「ブラダロン」と同じ成分(フラボキサート)を含む頻尿治療薬であり、薬効がしっかりと確認されている市販薬の1つです。

フラボキサートはカルシウム拮抗薬と呼ばれ、膀胱の平滑筋に存在するカルシウムチャネルという穴をふさぐ事によって膀胱が収縮できないようにするお薬です。

病院で処方されるお薬の中では効果が弱いお薬なのですが、市販薬の中では一番しっかりと効果が確認できているお薬だと言ってもよいでしょう。

基本的には女性にしか使えません。薬理的には男性にも効果があるのですが、男性に使う場合は「前立腺肥大症による頻尿」でない事を確認しないといけないためで、これは病院を受診しないと分からないため、市販薬としては女性にしか使えない事となっています。

 

Ⅱ.八味地黄丸

漢方薬である「八味地黄丸(はちみじおうがん)」も、病院でも頻尿に処方される事のあるお薬です。八味地黄丸は体力低下に伴う泌尿器機能の衰えに対して効果が期待できると考えられています。つまりこのような原因によって頻尿になっている方には向いています。

実際は高齢者などに用いられる事が多いお薬です。

 

Ⅲ.サプリメント

医学的にしっかりと効果が調査されていないものもありますが、

  • ノコギリヤシ
  • カボチャ種子
  • イソサミジン

は頻尿に効果があると言われています。

ノコギリヤシはα受容体をブロックする作用によって「前立腺肥大に伴う」頻尿に効果があるため、過活動膀胱などの頻尿には効果はあまり期待できません。特に女性には効果は期待できないでしょう。

いくつかの調査では病院で処方されるα遮断薬と同等に効果があると報告しているものもありますが、一方で効果がないと結論付けているものもあり、医学的には効果はまだ確立していないところがあります。

カボチャ種子には様々な作用が報告されていますが、女性ホルモンのバランスを整えたり、炎症を抑えたり、前立腺の肥大を抑制したりといった作用で頻尿を抑えると考えられています。男性・女性両方に効果が期待できます。

イソサミジンは、セリ科の植物である「ボタンボウフウ」に含まれる成分で、過活動膀胱への効果が期待されています。

医師としては薬効がしっかりと確認できていない以上、積極的にお勧めは出来ないのですが、上記のお薬で効果が得られない時は検討しても良いかもしれません。