インタール細粒(一般名:クロモグリク酸ナトリウム)は1988年から発売されている抗アレルギー薬です。抗アレルギー薬とはアレルギーによって生じる症状を抑えるお薬の事です。
インタールはちょっと変わったお薬で、服用しても消化管から体内にほとんど吸収されないという特徴があります。服用しても全身に作用させることが出来ないため、インタールは吸入したり、目や鼻に点眼・点鼻するといった局所への使い方が主にされています。
しかし飲み薬のインタール(インタール細粒)という剤型もあります。これはインタールが消化管から吸収されないことを逆手にとって、消化管内に生じるアレルギー症状に対して利用されるお薬です。
ここではインタールのうち、インタール細粒の効果や特徴・副作用についてみていきましょう。
目次
1.インタール細粒の特徴
まずはインタール細粒の全体的な特徴についてみてみましょう。
インタールの主成分であるクロモグリク酸ナトリウムは、せり科の植物である「アンミビスナガ」に含まれている物質です。この物質に気管支平滑筋の収縮を抑える作用がある事が分かり、そこから「気管支喘息の治療薬になるのではないか」と考えられました。
その後、喘息に限らずアレルギー症状を抑えるはたらきがある事が分かり、種々のアレルギー疾患に使われるようになったのです。
しかしインタールは、消化管からほとんど吸収されないという特徴を持っています。口から摂取したインタールは、消化管から体内に吸収されることなく、ほとんどがそのまま排出されてしまい、体内に吸収されるのはわずか1%程度に過ぎません。
そのため、口から摂取する剤型であるインタール細粒は喘息などのアレルギー疾患には効果を発揮しません。体内に吸収されないため、体内での抗アレルギー作用を発揮できないからです。インタールを喘息に使いたい場合は直接気管支にインタールを吸入するしかありません。
しかし口から摂取したインタールは消化管を通ってそのまま排泄されるため、消化管で生じるアレルギー症状には効果が期待できます。
消化管で生じるアレルギー症状というと、食物によって生じるアレルギーがあります。つまり、インタール細粒は主に食物アレルギーに対して利用されるお薬となります。
インタールはアレルギー反応性細胞(アレルギー症状を引き起こす物質を分泌する細胞)である肥満細胞のはたらきを抑えるはたらきがあります。
アレルギー性疾患はアレルギー反応性細胞の過剰な活動によって生じますが、インタールは肥満細胞のはたらきを抑えることによって、アレルギー症状を緩和させます。
以上から、インタール細粒の特徴として次のようなことが挙げられます。
【インタール細粒の特徴】
・抗アレルギー薬である
・消化管からほとんど吸収されない
・消化管にのみ作用するため、主に食物アレルギーに用いられる
2.インタール細粒はどのような疾患に用いるのか
インタール細粒はどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
食物アレルギーに基づくアトピー性皮膚炎
インタールには気管支平滑筋の収縮を抑制したり、アレルギー反応性細胞のはたらきを抑えたりするはたらきがあります。これによって種々のアレルギー疾患に対して効果を発揮します。
インタールは作用的には喘息や花粉症などのアレルギー性疾患にも効果があります。
しかしインタール細粒は食物アレルギーにしか適応がありません。
これはなぜかというと、インタールは服薬しても消化管から体内にほとんど吸収されないからです。投与したインタールのうち、体内に吸収されるのはわずか1%程度です。
口からインタールを摂取しても、体内に入らないため、上記の作用は消化管にしか現れず、その他の部位では発揮されないのです。
そのためインタール細粒は消化管で生じるアレルギー症状にしか効果がありません。これは具体的には食物によって生じるアレルギーが該当します。
3.インタール細粒はどのような作用があるのか
インタール細粒はどのような作用機序によって、アレルギー症状を抑えているのでしょうか。
インタール細粒の作用について詳しく紹介します。
Ⅰ.肥満細胞からの脱顆粒の抑制
インタール細粒は主に消化管でアレルギーを抑える作用を発揮します。
何か特定の食物にアレルギーを持っている場合、それを摂取してしまった時に生じるアレルギー反応を和らげることが出来ます。
アレルゲン(アレルギーの原因になる物質)に暴露されると、アレルギー反応性細胞(肥満細胞など)からアレルギー誘発物質が分泌され、これを「脱顆粒」と呼びます。アレルゲンによって肥満細胞の脱顆粒すると様々なアレルギー誘発物質が分泌されます。
アレルギー誘発物質はヒスタミンやロイコトリエンなどをはじめ様々な物質があり、これらはまとめてケミカルメディエータ―と呼ばれています。
インタール細粒は消化管で肥満細胞が脱顆粒するのを抑制するはたらきがあります。
これによって消化管におけるアレルギー反応を抑えてくれるのです。
4.インタール細粒の副作用
インタール細粒にはどんな副作用があるのでしょうか。
インタール細粒の副作用は1.87%前後と報告されており、副作用の頻度は多くはありません。
主な副作用としては、
- 下痢
- 食欲不振
- 腹痛
などといった消化器系の副作用が多く認められます。これはインタール細粒が消化管でのみ作用するためだと考えられます。
また、
- 発疹
などの皮膚症状を認めることもあります。
しかし全体的に副作用の発現率は低く、安全に使えるお薬になります。
5.インタール細粒の用法・用量と剤形
インタールは、
インタール細粒 10%
の1剤形のみがあります。内服する剤型としてはこの1剤のみです。
他にも
インタールカプセル外用 20mg
インタール吸入液 20mg
インタールエアロゾル 200mg
インタール点眼液 2%
インタール点鼻液 2%
といった剤型がありますが、これらはいずれも飲み込むお薬ではなく、吸ったり、目や鼻に差すことで局所に作用させるお薬になります。
インタール細粒の使い方としては、
通常2歳未満の幼児には1回0.5gを、また2歳以上の小児には1回1gをそれぞれ1日3~4回(毎食前ないし毎食前及び就寝前)経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。ただし、1日投与量は40mg/kgを超えない範囲とする。
と書かれています。
インタール細粒は食物アレルギーに対して用いるため、食前に服用する必要があります。食前にインタールを服用しておくことで、アレルゲンとなる食べ物から身体をよりしっかりと守ることが出来るからです。
6.インタール細粒が向いている人は?
以上から考えて、インタール細粒が向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
インタール細粒の特徴をおさらいすると、
・抗アレルギー薬である
・消化管からほとんど吸収されない
・消化管にのみ作用するため、主に食物アレルギーに用いられる
といったものでした。
インタール細粒は他の抗アレルギー薬の飲み薬と違い、一般的なアレルギー疾患に使用することが出来ません。例えば、喘息とか花粉症とかですね。
飲み薬がこれらのアレルギー疾患に効果を発揮するためには体内に吸収されなければいけませんが、インタール細粒はほとんど体内に吸収されないという特徴を持っているため、アレルギーを抑えたい部位まで到達できないからです。
インタール細粒が用いられる疾患は、「食物アレルギー」のみとなっています。