インテバンSPカプセル（一般名：インドメタシン）は1974年から発売されているお薬です。非ステロイド性消炎鎮痛剤（NSAIDs）と呼ばれ、炎症を抑える事で熱を下げたり痛みを抑えたりする作用を持ちます。
NSAIDsにはたくさんの種類があります。どれも大きな違いはありませんが、細かい特徴や作用には違いがあり、医師は痛みの程度や性状に応じて、その患者さんに一番合いそうな痛み止めを処方しています。
NSAIDsの中でインテバンSPはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに向いているお薬なのでしょうか。ここでは、インテバンSPの効能や特徴、副作用などを紹介していきます。
目次
１．インテバンSPの特徴
まずはインテバンSPの特徴を紹介します。
インテバンSPは熱を下げたり（解熱）、痛みを抑えたり（鎮痛）する作用を持ちます。古いお薬のため副作用はやや多めです。
インテバンSPはNSAIDsに属します。NSAIDsの中でも「アリール酢酸系」という種類に属します。
NSAIDsとは「非ステロイド性消炎鎮痛剤」の事で、ステロイド作用を持たない炎症を抑えるお薬の事です。炎症が抑えられると熱を下げたり、痛みを抑えたりといった効果が期待できるため、臨床では主に熱さまし（解熱剤）・痛み止め（鎮痛剤）として用いられています。
インテバンSPはNSAIDsの中でも古い部類に入ります。そのため効果は強めですが、副作用も多めになります。インテバンSPは徐放製剤（ゆっくりと効くタイプのお薬）にする事で副作用軽減の工夫はされていますが、そうは言っても新しいNSAIDsと比べると副作用はやや多い印象があります。
服用してから血中濃度が最大になるまでにかかる時間は2時間程度であり、そこまで即効性があるわけではありません。半減期（お薬の血中濃度が半分に下がるまでの時間）は約6時間程度になります。そのため定期的に服用する場合は1日2回の服用が推奨されています。
副作用としては、長期使用による胃腸障害に注意しなければいけません。これはインテバンSPに限らずほとんどのNSAIDsに言えることですが、NSAIDsは胃腸を痛めてしまうリスクのあるお薬になります。効果が強めであるインテバンは特にこれらの副作用には注意を払う必要があります。
またNSAIDsは喘息を誘発しやすくすることが知られており、喘息の方にはできる限り用いるべきではありません。
以上からインテバンSPの特徴として次のような点が挙げられます。
【インテバンSPの特徴】
・解熱作用・鎮痛作用は強めだが副作用も多め
・副作用の胃腸障害に注意（他のNSAIDsと同様）
・喘息には使えない（他のNSAIDsと同様）
２．インテバンSPはどのような疾患に用いるのか
インテバンSPはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。
【効能又は効果】
〇下記疾患の消炎、鎮痛、解熱
関節リウマチ、変形性脊椎症、変形性関節症、腰痛症、痛風発作、肩関節周囲炎、急性中耳炎、症候性神経痛、膀胱炎、前立腺炎、歯痛、顎関節症、歯槽骨膜炎、多形浸出性紅斑、結節性紅斑、掌蹠膿疱症
〇手術後及び外傷後の炎症及び腫脹の緩解
〇下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
インテバンSPは解熱鎮痛剤であり、炎症を抑える事で熱を下げたり痛みを和らげる作用があります。
そのため用いる疾患は、発熱を来すようなもの、痛みを来すようなものになります。
難しい病名が書かれていますが、大きな認識としては「痛みや熱などが認められる疾患に対して、その症状の緩和に用いる」という認識で良いでしょう。
インテバンSPはこれらの疾患に対してどのくらいの効果があるのでしょうか。
インテバンSPの有効率（改善以上の率）は、
- 関節リウマチに対する有効率は64.5%
- 変形性関節症に対する有効率は58.2%
- 変形性脊椎症に対する有効率は60.4%
- 腰痛症に対する有効率は62.1%
- 肩関節周囲炎・神経痛・痛風に対する有効率は68.0%
- 咽喉頭炎・中耳炎に対する有効率は76.9%
- 膀胱炎・前立腺炎に対する有効率は77.0%
- 皮膚科疾患（多形浸出性紅斑、結節性紅斑、掌蹠膿疱症）に対する有効率は60.5%
- 歯科疾患（歯痛、顎関節症、歯槽骨膜炎）に対する有効率は80.0%
- 手術後に対する有効率は78.0%
- 外傷後に対する有効率は85.9%
と報告されています。
インテバンSPを始めとするNSAIDsを使用する際は、これらは根本を治す治療ではなく、あくまでも対症療法に過ぎないことを忘れてはいけません。
対症療法とは「症状だけを抑えている治療法」の事です。あくまでも表面的な症状を感じにくくさせているだけの治療法で根本を治している治療ではない事を忘れてはいけません。
例えば腰の筋力低下によって腰痛が出現している方に対してインテバンSPを投与すれば、確かに痛みは軽減します。しかしこれは原因である腰部の筋肉低下を治しているわけではなく、あくまでも発痛を起こしにくくしているだけに過ぎません。
対症療法が悪い治療法だということではありませんが、対症療法だけで終わってしまうのは良い治療とは言えません。対症療法と合わせて、根本を治すような治療も併用することが大切です。
例えば先ほどの腰痛であれば、インテバンSPを使用しつつも、
- 適度な運動・リハビリをする
- 栄養をしっかり取る
などの根本的な治療法も併せて行う必要があるでしょう。
３．インテバンSPにはどのような作用があるのか
インテバンSPは「非ステロイド性消炎鎮痛剤（NSAIDs）」という種類に属しますが、NSAIDsの作用は、消炎（炎症を抑える）事によって解熱（熱を下げる）と鎮痛（痛みを抑える）ことになります。
インテバンSPも他のNSAIDsと同様に鎮痛作用と解熱作用を有しています。その作用機序について説明します。
炎症とは、
- 発赤 （赤くなる）
- 熱感 （熱くなる）
- 腫脹（腫れる）
- 疼痛（痛みを感じる）
の4つの徴候を生じる状態のことで、感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。
みなさんも身体をぶつけたり、ばい菌に感染したりして、身体がこのような状態になったことがあると思います。これが炎症です。
インテバンSPは、炎症の原因が何であれ、炎症そのものを抑える作用を持ちます。つまり、発赤・熱感・腫脹・疼痛を和らげてくれるという事です。
具体的にどのように作用するのかというと、インテバンSPなどのNSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)という物質のはたらきをブロックするはたらきがあります。
COXは、プロスタグランジン(PG)が作られる時に必要な物質であるため、COXがブロックされるとプロスタグランジンが作られにくくなります。
プロスタグランジンは炎症や痛み、発熱を誘発する物質です。そのため、インテバンSPがCOXをブロックすると炎症や痛み、発熱が生じにくくなるのです。
４．インテバンSPの副作用
インテバンSPにはどんな副作用があるのでしょうか。またどの頻度はどのくらいなのでしょうか。
インテバンSPの副作用発生率は5.5%と報告されています。古いお薬であり他のNSAIDsと比べると副作用の頻度はやや多めになります。
生じうる副作用としては、
- 消化器症状（腹痛、悪心、嘔吐、食欲不振など）
- 頭痛、めまい
- 浮腫
- 発疹
などが報告されています。
インテバンSPをはじめとしたNSAIDsには共通する副作用があります。
もっとも注意すべきなのが「消化管の障害」です。これはNSAIDsがプロスタグランジンの生成を抑制するために生じます。
プロスタグランジンは、胃などの腸管粘膜を保護するはたらきを持っているため、NSAIDsによってこれが抑制されると胃腸が荒れやすくなってしまうのです。これにより、腹痛・吐き気などが生じる事があります。
頻度は稀ですが重篤な副作用としては、
- ショック、アナフィラキシー様症状
- 消化管穿孔、消化管出血、消化管潰瘍、腸管の狭窄・閉塞、潰瘍性大腸炎
- 再生不良性貧血、溶結性貧血、骨髄抑制、無顆粒球症
- 中毒性表皮壊死融解症（TEN)、皮膚粘膜眼症候群（SJS)、剥離性皮膚炎
- 喘息発作（アスピリン喘息）
- 急性腎不全、間質性自腎炎、ネフローゼ症候群
- 痙攣、昏睡、錯乱
- 性器出血
- うっ血性心不全、肺水腫
- 血管浮腫
- 肝機能障害、黄疸
などが報告されています。これらの副作用は滅多に生じるものではありませんが、報告がないわけではありませんので一応の注意が必要です。
またインテバンSPは次のような患者さんには投与する事が出来ません（禁忌）。
- 消化性潰瘍のある方（胃潰瘍・十二指腸潰瘍などをより悪化させる）
- 重篤な血液の異常のある方（血液異常を更に悪化させる）
- 重篤な肝障害のある方（肝障害をより悪化させる）
- 重篤な腎障害のある方（腎障害をより悪化させる）
- 重篤な心機能不全のある方（心機能をより悪化させる）
- 重篤な高血圧症の方（高血圧を更に悪化させる）
- 重篤な膵炎の方（膵炎を増悪させる可能性がある）
- インテバンSPの成分またはサリチル酸系化合物に対して過敏症の既往歴のある方
- アスピリン喘息またはその既往歴のある方（重症喘息発作を誘発する）
- 妊婦又は妊娠している可能性のある方
- トリアムテレン（商品名トリテレン）を投与中の方（腎障害を発症する可能性がある）
また原則禁忌（基本的には使用する事が出来ないが、やむを得ない時のみ慎重に使用して良い）として、
- 小児
が挙げられています。
胃を荒らす可能性のあるお薬ですので、胃腸に潰瘍がある方はそれを更に増悪させる可能性があり用いてはいけません。
また心臓、肝臓、腎臓といった臓器にダメージを与える可能性がありますので、これらの臓器に重篤な機能不全がある場合もインテバンSPは用いてはいけません。
インテバンSPを妊娠後期に投与すると、胎児動脈管収縮、脳内出血、壊死性腸炎、腎機能障害、心室性期外収縮、低血糖などが報告されており、妊娠中は服用してはいけません。
また、NSAIDsは喘息を誘発する危険があるため、できる限り喘息の患者さんには投与しない方が良いでしょう。
５．インテバンSPの用法・用量と剤形
インテバンSPは次の剤型が発売されています。
インテバンSPカプセル 25mg
インテバンSPSカプセル 37.5mg
SPと言うのは「Spansule」の略になります。これは「持続性カプセル」の意味で、剤型を工夫して薬剤の放出をコントロールする事でゆっくり長く効くタイプのお薬になります。
SP製剤は、即効性はありませんが持続力に優れ、また急激な効き方をしないため副作用も出にくいと言われています。
また、インテバンSPの使い方は使用する疾患によって異なります。
〇下記疾患の消炎、鎮痛、解熱
関節リウマチ、変形性脊椎症、変形性関節症、腰痛症、痛風発作、肩関節周囲炎、急性中耳炎、症候性神経痛、膀胱炎、前立腺炎、歯痛、顎関節症、歯槽骨膜炎、多形浸出性紅斑、結節性紅斑、掌蹠膿疱症
〇手術後及び外傷後の炎症及び腫脹の緩解
に対しては、
通常成人には、1回25mgを1日2回投与する。症状により1回37.5mgを1日2回投与する。
という使い方です。
また、
〇下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)
に対しては、
通常成人には、1回25mgを屯用する。なお年齢、症状により適宜増減する。ただし原則として1日2回までとし1日最大75mgを限度とする。
また空腹時の投与は避けさせる事が望ましい。
という使い方になっています。
インテバンSPに限らずNSAIDsは空腹時に服用すると胃腸に負担がかかり、胃腸系の副作用（胃痛や胃潰瘍など）が生じやすくなるため、食後の服用が推奨されています。
６．インテバンSPが向いている人は？
インテバンSPはどのような方に向いているお薬なのでしょうか。
インテバンSPの特徴をおさらいすると、
・解熱作用・鎮痛作用は強めだが副作用も多め
・副作用の胃腸障害に注意（他のNSAIDsと同様）
・喘息には使えない（他のNSAIDsと同様）
といった特徴がありました。
基本的にNSAIDsは、どれも大きな差はないため、処方する医師が使い慣れているものを処方されることも多々あります。
インテバンSPは普通のNSAIDsであり、特に「こういう発熱や痛みに向いている」という特徴はありません。1974年発売の古いNSAIDsであるため、現在では使用される頻度は多くはありません。
しかし昔からあるお薬のため、使い慣れている患者さんに用いる事があります。また効果は強いため、発熱・痛みが強い患者さんに用いる事もあります。