ランデル錠の効果と副作用【降圧剤】

ランデル錠(一般名:エホニジピン塩酸塩エタノール付加物)は1995年から発売されている降圧剤(血圧を下げるお薬)で、カルシウム拮抗薬という種類に属します。

高血圧症の患者さんは日本で1000万人以上と言われており、降圧剤は処方される頻度の多いお薬の1つです。

降圧剤にも様々な種類がありますが、その中でランデルはどのような特徴を持つお薬で、どのような方に向いているお薬なのでしょうか。

ここではランデルの特徴や効果・副作用についてみていきましょう。

 

1.ランデルの特徴

ランデルはどのような特徴を持つお薬なのでしょうか。

ランデルはカルシウム拮抗薬という種類の降圧剤になります。まずはカルシウム拮抗薬の主な特徴を紹介しましょう。

・血圧を下げる力(降圧力)が確実
・ダイレクトに血管を広げる作用であるため、その他の余計な作用が少ない
・安い

カルシウム拮抗薬の一番の特徴は、血圧を下げる力がしっかりとしている点です。単純に血圧を下げる力だけを見れば、降圧剤の中で一番でしょう。カルシウム拮抗薬の他にも、ARB、ACE阻害剤、利尿剤など降圧剤はたくさんありますが、単純な降圧力だけでみれば、カルシウム拮抗薬にかなうお薬はありません。

また、詳しくは後述しますがカルシウム拮抗薬は血管に存在する筋肉を拡張させるはたらきを持ち、血管にダイレクトに作用して血圧を下げるお薬です。血管に直接作用するため、その他の余計なはたらきが少ないお薬なのです。

これは他の作用がないというデメリットでもあり、余計な作用がないというメリットでもあります。

カルシウム拮抗薬は、価格が安いものが多いのも大きな特徴です。これも詳しくは後述しますが、血圧を下げるコストパフォーマンスで言えば、かなり優れたお薬になります。

では次にカルシウム拮抗薬の中でのランデルの特徴を紹介します。

・腎臓への血流を増やし、尿量を増やす作用がある
・1日1~2回の服用が必要
・腹膜透析中の方は、排液が白濁する事がある

カルシウム拮抗薬は血圧を下げる力がしっかりしているお薬ですが、ランデルも他のカルシウム拮抗薬と同様に血圧を下げてくれます。

ランデルは腎臓の血管も拡張させる事で、腎臓への血流を増やす作用が報告されています。腎臓は尿を作る臓器ですので、腎臓の血流が増えれば尿が多く作られます。

これは尿量増加・頻尿という副作用となってしまう事もありますが、腎臓の機能を活性化させ、利尿作用(尿を体外に排出する作用)によって血圧を更に下げてくれるという良い作用とも考えられます。

服用回数は1日1~2回となっていますが、報告から推定される作用時間はそこまで長くはないため、1日1回の服用だと効果は1日持続しない可能性があります。1日を通してしっかりと血圧を下げたい場合は1日2回の服用が良いでしょう。

1日1回の服用で1日を通してしっかりと血圧を下げてくれるカルシウム拮抗薬もありますので、この点はランデルのデメリットになります。

また実害のあるデメリットではありませんが、稀に腹膜透析をしている方がランデルを服用すると排液が白濁する事がありますので注意が必要です。

ランデルの特徴を挙げると次のようになります。

【ランデルの特徴】

・カルシウム拮抗薬であり降圧作用はしっかりしている
・1日1~2回の服用が必要
・腎臓への血流を増やし、尿量を増やす作用がある
・他の降圧剤と比べて薬価が安い

 

2.ランデルはどんな疾患に用いるのか

ランデルはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】

高血圧症、腎実質性高血圧症、狭心症

実際の臨床では、主に高血圧症の治療に対して用いられています。

ランデルはカルシウム拮抗薬に属しますが、カルシウム拮抗薬は血管を拡張させることで血圧を下げます。

腎実質性高血圧とは、何らかの原因で腎臓に障害が生じ、それで血圧が上がってしまう事です。糖尿病による腎障害などが原因として挙げられます。腎臓は尿を作る臓器ですので、腎臓に障害が生じると尿を作りにくくなり、身体の水分が過剰となるため血圧が上がります。

また狭心症というのは、心臓の周りの血管(冠動脈)が狭くなったり、痙攣してしまったりすることで、心臓に血液が届かなくなって胸痛などが生じる疾患のことです。

ランデルは血管を拡張させるため、冠動脈も拡張させるはたらきがあり、狭心症にも効果は望めます。しかしランデルは即効性のあるお薬ではありませんので、狭心症発作などの急性期の治療薬としては適しておらず、狭心症発作が起きないように予防するという目的で投与されます。

ランデルはこれらの疾患に対してどのくらいの効果があるのでしょうか。

上記疾患にランデルを使用して「有効」と判定される効果が認められた率は、

  • 本態性高血圧症(軽度・中等症)に対する有効率は88.0%
  • 腎障害を伴う高血圧症に対する有効率は89.7%
  • 重症高血圧症に対する有効率は95.8%
  • 腎実質性高血圧症に対する有効率は95.3%
  • 狭心症に対する有効率は73.3%

と報告されています。

 

3.ランデルはどのような作用があるのか

血圧を下げるはたらきを持つランデル錠ですが、どのような機序で血圧を下げているのでしょうか。

血圧を下げるお薬にはいくつかの種類がありますが、そのうちランデル錠は「カルシウム拮抗薬」という種類に分類されます。カルシウム拮抗薬は、血管の平滑筋という筋肉に存在しているカルシウムチャネルのはたらきをブロックするというのが主なはたらきです。

チャネルという用語が出てきましたが、これはかんたんに言うと、様々なイオンが通る穴だと思ってください。つまりカルシウムチャネルは、カルシウムが通ることが出来る穴です。

カルシウムチャネルは、カルシウムイオンを通すことにより、筋肉を収縮させるはたらきがあります。これをブロックするのがランデルです。ランデルの作用で、カルシウムイオンが流入できなくなると、筋肉が収縮できなくなるため拡張します。そして血管が拡張する(広がる)と、血圧が下がります。

ちなみにカルシウムチャネルにはL型、T型、N型の3種類があることが報告されています。このうち、平滑筋に存在しているカルシウムチャネルはほとんどがL型です。

L型カルシウムチャネル:主に血管平滑筋・心筋に存在し、カルシウムが流入すると筋肉を収縮させる。ブロックすると血管が拡張し、血圧が下がる

T型カルシウムチャネル:主に心臓の洞結節に存在し、規則正しい心拍を作る。また脳神経にも存在し神経細胞の発火に関係している

N型カルシウムチャネル:主にノルアドレナリンなど興奮性の神経伝達物質を放出する。

ランデルはL型カルシウムチャネルに選択性が高いため、しっかりと血圧を下げてくれます。

またT型にも多少作用し、心臓への負担を軽くする作用もあります。

 

4.ランデルの副作用

ランデルにはどのような副作用があるのでしょうか。また副作用はどのくらいの頻度で生じるのでしょうか。

ランデルの副作用発生率は7.74%と報告されています。

生じうる副作用としては、

  • 動悸
  • 顔面潮紅、顔のほてり
  • 頭痛

などが報告されています。これらは血圧が下がりすぎたり、血管が拡張することで生じる副作用だと考えられます。またこれらの副作用はランデルの服薬量が多いほど高くなる傾向にあります。

また検査値の異常としては、

  • 血清総コレステロール上昇
  • AST、ALT上昇(肝機能)
  • BUN上昇(腎機能)

が報告されています。

長期服薬している方は定期的に血液検査にて肝機能、腎機能などの評価を行うようにしましょう。

頻度は稀ですが重篤な副作用としては、

  • 洞不全症候群
  • 房室接合部調律
  • 房室ブロック
  • ショック

などが報告されています。

洞不全症候群、房室接合部調律、房室ブロックといった不整脈の副作用は、ランデルが脈拍に関係するT型カルシウムチャネルに作用する事で生じると考えられています。

またショックはランデルで過度に血圧が下がって果生じる事があります。

ただしいずれも頻度は稀で、適正に使用している限りはほとんど出会う事はありません。

ランデルを投与してはいけない方(禁忌)としては、

  • 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人

が挙げられます。

動物実験で妊娠動物にランデルを投与したところ、親動物および出生児の体重増加の抑制が報告されています。ヒトにおいても同じ事が生じる可能性を考え、このような方にはランデルの使用は禁忌となっています。

 

5.ランデルの用法・用量と剤形

ランデルは、

ランデル錠 10mg
ランデル錠 20mg
ランデル錠 40mg

の3剤形があります。

ランデルの使い方は、

<高血圧症、腎実質性高血圧症>
通常、成人には1日20~40mgを1~2回分割経口投与する。年齢、症状に応じて適宜増減する。なお、十分な降圧効果が得られない場合でも1日最大量は60mgまでとする。

<狭心症>
通常、成人には1日40mgを1回(食後)経口投与する。年齢、症状に応じて適宜増減する。

となっています。

 

6.ランデル錠が向いている人は?

以上から考えて、ランデルが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ランデルの特徴をおさらいすると、

・カルシウム拮抗薬であり降圧作用はしっかりしている
・1日1~2回の服用が必要
・腎臓への血流を増やし、尿量を増やす作用がある
・他の降圧剤と比べて薬価が安い

というものがありました。

カルシウム拮抗薬全体にいえることですが、血管の平滑筋にダイレクトに作用するカルシウム拮抗薬は、単純に血圧を下げたい時に有用です。

他の代表的な降圧剤として、ACE阻害剤やARBなどがあります。これらももちろん優れたお薬で、腎臓を保護したり、血糖にも影響したりと様々な付加効果があります。これらはうまく利用すれば、1剤で様々な効果が得られる利点になりますが、「単純に血圧だけを下げたい」という場合には、カルシウム拮抗薬の方が適しています。

ランデルはカルシウム拮抗薬の中では古く、現在ではそこまで処方されているお薬ではありませんが、腎血流を増やす作用がしっかりと確認されているのが特徴の1つです。

そのため、尿がしっかり作られていない事で血圧が上がっていると考えられるような方や、むくみがあり、体液が過剰に蓄積していると考えられる患者さんに向いています。

またランデルをはじめとしたカルシウム拮抗薬は、薬価が安いというのもメリットの1つです。