リピトールの効果と副作用【高脂血症治療薬】

リピトール(一般名:アトルバスタチンカルシウム)は2000年から発売されているお薬で「スタチン系(HMG-CoA還元酵素阻害薬)」という種類に属します。

主に悪玉(LDL)コレステロールを下げる作用に優れ、LDLが高い高コレステロール血症の患者さんに用いられています。また善玉(HDL)コレステロールを上げたり中性脂肪(TG)を下げる作用も持ちます。

リピトールはどのような特徴のあるお薬で、どのような患者さんに使うお薬なのでしょうか。今回はリピトールの特徴や効果・副作用について紹介します。

 

1.リピトールの特徴

まずはリピトールの全体的な特徴を紹介します。

リピトールはスタチン系と呼ばれる脂質異常症治療薬で、主に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を下げる作用に優れます。スタチン系の中でも強力な強さを持ち「ストロングスタチン」に分類されています。

リピトールをはじめとしたスタチン系(HMG-CoA還元酵素阻害薬)は、主に悪玉コレステロールを下げる作用に優れます。

スタチン系にもいくつかお薬はあるのですが、大きく分けると、

  • スタンダードスタチン:LDLを下げる力は中等度
  • ストロングスタチン:LDLを下げる力が強力

の2種類があります。

このうちリピトールはストロングスタチンに属し、強力にLDLを下げる力を持っています。

またリピトールには善玉コレステロール(HDL)を上げたり、中性脂肪(TG)を下げる作用もあります。この作用は強くはありませんが補助的な作用として使えます。

副作用としては、肝臓に作用するお薬であるため肝臓に負担をかけ、肝機能が悪化してしまう事があります。また腎臓が悪い方が使うと、腎臓を更に傷めたり横紋筋融解症という重篤な副作用が出現してしまう可能性が高くなるため、注意が必要です。

リピトールはスタチン系のお薬の中でも、多く使われており実績も豊富なお薬です。世界的にみても知名度も高いお薬であり、安心して使用する事が出来る点もメリットでしょう。

以上からリピトールの特徴として次のような点が挙げられます。

【リピトールの特徴】

・ストロングスタチンであり、強力な効果がある
・悪玉コレステロール(LDL)を下げる作用に優れる
・善玉コレステロール(HDL)を上げてくれる
・中性脂肪(TG)を下げてくれる

 

2.リピトールはどんな疾患に用いるのか

リピトールはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

高コレステロール血症
家族性高コレステロール血症

リピトールは主にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げる作用に優れ、高コレステロール血症の患者さんに用いられます。

リピトールは高コレステロール血症に対してどれくらいの効果があるのでしょうか。

リピトールを1日1回10mgの投与した調査では、

  • 総コレステロール値を220mg/dl未満に到達させた率は81.4%
  • LDLコレステロール値を140mg/dl未満に到達させた率は85.1%

と報告されており、高い有効率を持ちます。

またリピトール10mg/日を投与した調査で、血中脂質がそれぞれどのくらい変化したのかをみた調査では、

  • 総コレステトールは30%低下
  • 悪玉(LDL)コレステロールは40%低下
  • 善玉(HDL)コレステロールは5mg/dl増加
  • 中性脂肪(TG)は17%低下

した事が報告されています。

さらに総コレステロールとLDLコレステロールの低下率は、リピトールの投与量が増えるほど上昇する事が報告されています。

一方でHDLコレステロールとTGは投与量を増やしても改善率はあまり変化しない事も報告されています。

 

 

3.リピトールにはどのような作用があるのか

高コレステロール血症の患者さんの血中コレステロールを下げるために投与されるリピトールですが、どのような機序で高コレステロール血症を改善させるのでしょうか。

リピトールは「HMG-CoA還元酵素阻害薬」と呼ばれるお薬で、その名の通りHMG-CoA還元酵素という酵素のはたらきをブロックし、これがコレステロールを下げる作用になります。

リピトールの具体的な作用機序を紹介します。

 

Ⅰ.悪玉(LDL)コレステロールを強く下げる

リピトールをはじめとしたスタチン系は、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を下げる作用に優れます。

HMG-CoA還元酵素というのは、どのような酵素なのでしょうか。

ざっくりと言ってしまうと、HMG-CoA還元酵素は肝臓においてコレステロールを合成する酵素になります。

HMG-CoA還元酵素のはたらきがブロックされると、コレステロールが合成されにくくなりますので、コレステロールが下がるというわけです。

更にコレステロールが少なくなると、コレステロールは重要なエネルギー源でもあるため、身体は「エネルギーが少ないから蓄えなくては!」と考えます。すると肝臓に存在するLDL受容体という悪玉コレステロールを肝臓に取り込む受容体の数を増やし、肝臓に悪玉コレステロール(LDL)をため込もうとします。

これにより血液中の悪玉コレステロールも低下します。

このような機序により、リピトールは悪玉コレステロールを低下させます。

 

Ⅱ.善玉コレステロールを増やす

リピトールはHDLコレステロール、通称「善玉コレステロール」を増やす作用を持ちます。

善玉コレステロールは、動脈硬化を抑えるはたらきを持ちます。具体的には動脈にこびりついてしまっているコレステロールを回収して、肝臓に運ぶはたらきがあるのです。

動脈のコレステロールがこびりついていると、動脈硬化や狭窄の原因になるためHDLコレステロールは高いことが良いと考えられています。

リピトールは善玉コレステロールを増やす作用も報告されています。しかしその程度は強くはなく、あくまでも補助的な作用にとどまります。

 

Ⅲ.中性脂肪(TG)を下げる

リピトールは中性脂肪(TG:トリグリセリド)を多少下げる作用もあります。

これはHMG-CoA還元酵素のはたらきをブロックする事によってコレステロールの合成が低下すると、VLDL(超低密度リポタンパク質)を合成しにくくなくなるためだと考えられています。

VLDLは末梢組織に中性脂肪(TG)を運ぶはたらきがあるため、VLDLが少なくなれば中性脂肪(TG)も少なくなるというわけです。

リピトールは中性脂肪を減らすも報告されていますが、その程度も強くはなく、あくまでも補助的な作用にとどまります。

 

Ⅳ.脳梗塞・心筋梗塞のリスクを下げる

高コレステロール血症は、脳梗塞・心筋梗塞といった心血管系イベントの危険因子になります。

これらの疾患はいずれも血管が詰まる事で生じます。脳の血管が詰まれば脳梗塞が生じ、心臓を栄養する冠動脈が詰まれば心筋梗塞が生じます。

血管が詰まる原因はいくつかありますが、その1つとして血管内壁にコレステロールが沈着してしまう事が挙げられます。

コレステロールが沈着すれば、その分だけ血管の内腔が狭くなるため血管が詰まりやすくなってしまうのです。また付着したコレステロールは血栓などを誘発しやすいため、これも血管を詰まらせる原因になります。

リピトールをはじめとしたスタチン系はコレステロールを下げることで、血管内壁にコレステロールが沈着する事も予防してくれます。これにより脳梗塞・心筋梗塞を予防する事ができるのです。

 

4.リピトールの副作用

リピトールにはどんな副作用があるのでしょうか。また副作用の頻度はどのくらいなのでしょうか。

リピトールの副作用発生率は12.0%と報告されています。数値だけみれば多く感じるかもしれませんがリピトールをはじめとしたスタチン系は副作用は少なく安全性に優れるお薬です。

生じうる副作用としては、

  • 胃不快感
  • 搔痒感(かゆみ)
  • 手指しびれ
  • 不眠
  • 下痢
  • 胸やけ
  • 便秘
  • 頭痛
  • 全身倦怠感

などが報告されています。

また検査値の異常として、

  • CK(CPK)上昇
  • 肝胆道系酵素の上昇(AST、ALT、LDH、γGTP上昇)
  • テストステロン低下

などが報告されています。

リピトールをはじめとしたスタチン系は肝臓に負担をかけてしまうことがあります。また頻度は稀ですが、横紋筋融解症という筋肉を壊してしまう副作用が生じる事もあり、これにより筋肉中のCK(CPK)が血液中に放出され、上昇する事があります。

スタチンを服用中は、定期的に血液検査などで肝臓の数値を確認しておく事が望まれます。特に投与初期は投与開始後3か月前後を目安に必ず確認するようにしましょう。

テストステロンはいわゆる「男性ホルモン」です。テストステロンはコレステロールを原料に作られますので、コレステロールを少なくするリピトールはテストステロンの量も低下させてしまう可能性があります。

頻度は稀ですが、注意すべき重篤な副作用として、

  • 横紋筋融解症
  • ミオパチー
  • 劇症肝炎、肝炎、肝機能障害、黄疸
  • 過敏症
  • 無顆粒球症、汎血球減少症、血小板減少症
  • 皮膚粘膜眼症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、多型紅斑
  • 高血糖、糖尿病
  • 間質性肺炎

などが報告されています。

横紋筋融解症は、筋肉が破壊されて筋肉中の酵素(CK)が腎臓に流れて腎障害を生じる疾患です。

リピトールを使ってはいけない患者さん(禁忌)としては、

  • リピトールの成分に対し過敏症の既往のある方
  • 肝代謝能が低下している方(急性肝炎、慢性肝炎の急性増悪、肝硬変、肝癌、黄疸など)
  • 妊婦さん又は妊娠している可能性のある方
  • 授乳婦
  • テラプレビルを投与中の方

が挙げられています。

リピトールは主に肝臓に作用し、肝臓で代謝されます。そのため肝臓に負担をかける可能性があるため肝機能がきわめて悪い方には使う事ができません。

またリピトールは動物実験において出生児数の減少や発育への影響が認められる事があります。人間で同様の副作用が生じるかは不明ですが、このような報告から妊婦さんへの投与は禁忌となっております。

リピトールは乳汁中に移行する事が分かっているため、授乳中の方が服用するとお薬の成分が乳汁を通じて赤ちゃんにまで届いてしまいます。そのためリピトールは授乳婦さんも服用は禁忌となっております。

テラプレビル(商品名:テラビック)はC型肝炎の治療薬です。テラプレビルとリピトールを併用するとリピトールの血中濃度が極めて高くなってしまい危険なため両者を併用する事が出来ません。

また原則禁忌(基本的には使ってはいけないが、やむを得ない場合のみ慎重に使用できる)として、

  • 腎機能に異常を認める方にリピトールとフィブラート系を併用する事

が挙げられています。

リピトールをはじめとしたスタチン系とフィブラートはともに横紋筋融解症を稀ながら生じるリスクがあるお薬です(フィブラート系も脂質異常症の治療薬です)。

両者を併用する事で横紋筋融解症のリスクが高まる可能性があり、また腎機能が悪いとお薬が身体から抜けにくいため、よりリスクが高まる可能性があるため、原則として腎機能が悪い方に両者を併用する事は出来ません。

しかし最近の研究では両者を併用しても横紋筋融解症の発症リスクは上がらないという報告もあり、必要な症例においては両者を慎重に併用することもあります。

 

5.リピトールの用法・用量と剤形

リピトールには、

リピトール錠 5mg
リピトール錠 10mg

といった剤型が発売されています。

リピトールの使い方は、

<高コレステロール血症>
通常、成人には10mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、重症の場合は1日20mgまで増量できる。

<家族性高コレステロール血症>
通常、成人には10mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、重症の場合は1日40mgまで増量できる。

と書かれています。

リピトールのようなスタチン系は原則として夕方の服用が推奨されています。

その理由は、コレステロールの合成は主に夜間に行われるためです。夕方に投与した方が夜間にしっかりと効かせる事が出来るため、コレステロールの合成を効率よく抑える事が出来るのです。

またリピトールは食事の影響をほとんど受けないため、食前・食後のどちらに投与しても問題ありません。

 

6.リピトールが向いている人は?

以上から考えて、リピトールが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

リピトールの特徴をおさらいすると、

・ストロングスタチンであり、強力な効果がある
・悪玉コレステロール(LDL)を下げる作用に優れる
・善玉コレステロール(HDL)を上げてくれる
・中性脂肪(TG)を下げてくれる

などがありました。

ここから、

・特に悪玉(LDL)コレステロールが高い方

に向いているお薬になります。

更に脳梗塞・心筋梗塞といった心血管イベントを抑えてくれる作用がありますので、脳梗塞や心筋梗塞の既往があり、悪玉コレステロールも高値である方は服用が強く望まれます。

ストロングスタチンに属するリピトールは、スタンダートスタチンと比べてコレステロールを下げる作用が強力です。

そのため、特にしっかりとコレステロールを下げたい方(悪玉コレステロールが極めて高値の方や血管系の疾患の既往のある方)に推奨されます。

また日本を含めた世界中で広く用いられており、豊富な実績とデータを有するお薬でもあり、安心して服用する事ができることもメリットになります。

ちなみに脂質というと、血液検査で中性脂肪(TG:トリグリセリド)とコレステロール(Chol)の2つがありますが、この2つはどう違うのでしょうか。

中性脂肪は、俗に言う「体脂肪」の脂肪分が血液中に流れているもので、これはエネルギー源として使われます。中性脂肪は体脂肪として貯蔵される事で、いざという時に活動するためのエネルギーになるのです。

一方コレステロールはというと「身体を作るための材料」として使われています。コレステロールは細胞を構成する材料となったり、体内で様々なはたらきをしているホルモンを作る材料となったり、胆汁酸やビタミンの材料となったりします。

中性脂肪もコレステロールも、どちらも身体にとって必要なものですが、過剰になりすぎれば害となります。