ロトリガ粒状カプセルの効果と副作用

ロトリガ粒状カプセル(一般名:オメガ−3脂肪酸エチル)は2013年から発売されているお薬で「EPA・DHA製剤」という種類になります。

EPAやDHAという物質は魚などの食品にも含まれている成分であり、食事からも摂取することができます。

EPA・DHAには多くの作用がありますが、中性脂肪を下げる作用に優れているため、医療領域においては中性脂肪が高い方への治療薬として用いられています。

中性脂肪は脂質の一種になりますが、脂質を下げるお薬には他にも「スタチン系」や「フィブラート系」などがあります。

これらと比べてロトリガはどのような位置づけのお薬となるのでしょうか。今回はロトリガの特徴や効果・副作用について紹介します。

 

1.ロトリガの特徴

まずはロトリガの全体的な特徴を紹介します。

ロトリガは、脂質の中でも特に中性脂肪(トリグリセリド)を下げる作用に優れます。また食べ物にも含まれている成分であり、安全性の高いお薬となります。

そのため、脂質異常症の中でも

・中性脂肪(トリグリセリド)が高い

というタイプに処方されるお薬になります。

ロトリガには悪玉コレステロール(LDL)はほとんど下げません。むしろ一部の患者さんにおいては悪玉コレステロールを上げてしまうこともあり注意が必要です(そのため、ロトリガ服薬中は定期的にLDLも測定する必要があります)。

善玉コレステロール(HDL)に対しては多少増やしてくれる作用がありますが、強いものではありません。

同じ高脂血症の治療薬でもスタチン系は、主にLDLを下げる作用に優れます。フィブラート系は中性脂肪(TG)を下げる作用とHDLを上げる作用を持ちます。

同じ高脂血症の治療薬でもそれぞれ作用機序が異なるため、得られる効果もこのように異なってきます。

ロトリガの主成分はオメガ3脂肪酸と呼ばれるもので、これは食べ物(主に魚)にも含まれている成分になります。DHAやEPAというのはみなさんも聞いたことがあるかもしれませんが、これらを総称してオメガ3脂肪酸と呼びます。

元々が食べ物に含まれているものですので安全性は高く、重篤な副作用はほとんど生じません。ただし血液をサラサラにして固まりにくくする作用があるため、出血している方は服用することができません。また出血リスクが高い方も服薬は慎重に考える必要があります。

ちなみにDHAなどのオメガ3脂肪酸は、「食べると頭が良くなる」と一時期もてはやされましたが、しっかりとした根拠はありません。オメガ3脂肪酸が欠乏すれば、脳の機能が落ちる可能性はありますが、たくさん摂取したからといって知能が上がるとは考えられていません。

以上からロトリガの特徴として次のような点が挙げられます。

【ロトリガの特徴】

・中性脂肪を下げる作用に優れる
・悪玉コレステロールを上げてしまうことがあるので注意
・魚に含まれる成分であり、安全性が高い
・出血しやすくなるため、出血リスクの高い方は注意

 

2.ロトリガカプセルはどんな疾患に用いるのか

ロトリガはどのような疾患に用いられるのでしょうか。ロトリガの添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

高脂血症

ロトリガは保険適応としては、高脂血症に対して用いられます。

高脂血症にも様々なタイプがありますが、ロトリガのようなオメガ3脂肪酸製剤は、特に中性脂肪(TG)が高いタイプの高脂血症に向いているお薬になります。

ロトリガは中性脂肪を下げる以外にもいくつかの作用があるのですが、それに対しては現時点では保険適応にはなっていません。

 

3.ロトリガカプセルにはどのような作用があるのか

ロトリガは高脂血症の患者さんの治療に用いられます。高脂血症の中でも中性脂肪(TG)を下げる作用に優れるため、中性脂肪が高い方に向いているお薬になります。

しかし実はロトリガな中性脂肪を下げる以外にも様々な作用があります。

 

ロトリガの作用やそれぞれの作用機序について紹介します。

 

Ⅰ.中性脂肪(トリグリセリド)を下げる

ロトリガの最大の特徴は、脂質の中でも中性脂肪(TG:トリグリセリド)を下げる作用に優れることです。

「ロトリガ」という名前もLow Triglyceride(低いTG)から来ています。

ではロトリガはどのようにして中性脂肪を下げてくれるのでしょうか。

ロトリガは「オメガ3脂肪酸」であるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)からなっています。

DHAとEPAは肝臓で中性脂肪(TG)が作られるのを抑えるはたらきがあります。また中性脂肪を分解する酵素であるLPL(リポ蛋白リパーゼ)を活性化させることで、中性脂肪の分解を促進させます。

 

ちなみに、中性脂肪って何故高いと問題で、下げる必要があるのでしょうか。

中性脂肪は脂肪酸に分解されることでエネルギー源になるため、ある程度の量は身体にとって必要です。しかし過剰になってしまうと、様々な問題を引き起こす事が知られています。

具体的には、慢性的に中性脂肪が高い状態が続いていると炎症が引き起こされ、ここから膵炎が発症したり、動脈硬化を徐々に進行させ心筋梗塞や脳梗塞の原因となったりするのです。

このような事態を避けるため、中性脂肪を適正値にしておく必要があるのです。

 

Ⅱ.血小板凝集抑制作用

ロトリガに含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、どちらも血小板凝集抑制作用があります。

血小板というのは、集まる(凝集)することで血を固まらせる作用を持ちます。私たちが普段、皮膚から出血しても自然と止まるのは、血小板が血を固まらせて止めてくれるからなのです。

ロトリガはこの血小板のはたらきを低下させる作用があります。

これは出血をした時に血が止まりにくくなるというデメリットにもなりますが、一方で血液中に血栓ができにくくなるというメリットにもなります。

実際ロトリガと同じような作用を持つ「エパデールS」というお薬は、「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善」に対しての使用が認められています。

閉塞性動脈硬化症では血管が細くなったり、血栓が詰まってしまうことで末梢の血流が悪くなってしまう疾患です。エパデールSは血栓を出来にくくする作用によってこれらの症状を改善させてくれるという事です。

ロトリガにも同様の効果が期待できますが、残念ながらロトリガは血栓症や閉塞性動脈硬化症に対しては適応を持ってはいません。

 

Ⅲ.コレステロールの質を改善する

オメガ3脂肪酸にはコレステロールの質を改善させる作用があります。

具体的には、LDLの粒子のサイズを大きくするのです。

実はLDLにも様々な種類があり、大きく言えば「小型LDL(small dense LDL)」と「大型LDL」があります。

このうち、特に身体に害を与えるのは小型LDLの方なのです。

小型LDLは大型と比べてLD受容体に結合しにくいため、長く血液中に留まる事が知られています。長く血液中にいるということは、それだけ血管壁と触れる機会が多くなり、血管を傷付けやすいという事です。

また小型LDLはサイズが小さいために血管壁に侵入して悪さをしやすかったり、酸化して身体に有害な酸化LDLになりやすかったりもします。

ロトリガに含まれるオメガ3脂肪酸は小型LDLを減らし大型LDLを増やしてくれる作用があります。

 

Ⅳ.抗不整脈作用

動物実験において、ロトリガに含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)は心室性不整脈を低下させる作用が確認されています。

この不整脈を減らす作用や、中性脂肪を減らす作用、そして血液を固まりにくくする作用から、海外の一部の国では、ロトリガは「心筋梗塞の再発予防」に対して適応を持っており、この目的で投与することが可能です。

(日本では「心筋梗塞の再発予防」には適応はありません)

 

Ⅴ.抗うつ作用

オメガ3脂肪酸は、うつ病を改善させる作用があるのではないかと言われています。

しかしこれはまだ議論中であり、しっかりと確認されている効果ではありません。

うつ病とオメガ3脂肪酸の関係に対しては複数の研究が行われていますが、高用量のEPAがうつ病の改善に効果があるとする報告もあれば、オメガ3脂肪酸の抗うつ作用は明らかでないとするものもあります。

うつ病で苦しんでいる患者様は多いため、今後の研究の成果が待たれるところです。

 

4.ロトリガの副作用

ロトリガにはどんな副作用があるのでしょうか。

ロトリガの副作用発生率は約9.6%と報告されています。

生じる副作用としては、

  • 下痢

が多く報告されています。またそれ以外にも頻度は低いながらも

  • 頭痛、めまい
  • 高血糖
  • 発疹
  • 掻痒(かゆみ)
  • 鼻出血
  • 吐き気

なども生じる可能性があります。

頻度は稀ですが、注意すべき重篤な副作用として、

  • 肝機能障害、黄疸

などが報告されています。また、

  • LDL(悪玉コレステロール)が上昇する

可能性もあり、ロトリガ服用中は定期的に血液検査で肝機能やコレステロールをチェックすることが望ましいでしょう。

またロトリガは前述のように、血小板凝集抑制作用があります。これは「血が止まりにくくなる」ということです。そのため、ロトリガは、

  • 出血している患者さん

への投与は禁忌(絶対にダメ)になっています。

 

5.ロトリガの用法・用量と剤形

ロトリガには、

ロトリガ粒状カプセル 2g

と、1剤型のみ発売されています。

ロトリガ2g中には

DHA 750mg
EPA 930mg

が含まれています。ちなみに、これを食事で取ろうとすると、

サンマ 90g(1尾程度)
ほっけ 180g(1枚程度)
サケ 100g(一切れ程度)

となります。ロトリガを2g服薬すると、これらの魚を食べたのと同じくらいのオメガ3脂肪酸が摂取できるという事です。

ロトリガの使い方は、

通常成人には1回2gを1日1回、食直後に経口投与する。ただし、トリグリセリド高値の程度により1回2g、1日2回まで増量できる。

と書かれています。

効果は個人差がありますが、ロトリガを長期(52週)服用したところ

  • 2g/日を服薬した場合、平均でTGが約14mg/dL下がる
  • 4g/日を服薬した場合、平均でTGが約25.5mg/dL下がる

という結果が出ています。

ロトリガは噛んでしまうと、独特の臭みがありますので、できれば噛まずに飲み込んでください。オメガ3脂肪酸製剤は、魚の油から作られているため、独特の臭みがあるのです。ロトリガはカプセル内に成分を封じることで臭みを発しないように工夫がされています。

またロトリガは食事の影響を受けるお薬であり、食後の服薬となっています。空腹時に服薬してしまうと吸収が悪くなり、お薬の効果も弱まってしまいますので、必ず食直後に服用するようにして下さい。

 

6.ロトリガが向いている人は?

以上から考えて、ロトリガが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ロトリガの特徴をおさらいすると、

・中性脂肪を下げる作用に優れる
・悪玉コレステロールを上げてしまうことがあるので注意
・魚に含まれる成分であり、安全性が高い
・出血しやすくなるため、出血リスクの高い方は注意

などがありました。

ここから、

・特に中性脂肪が高い方

に推奨される治療薬となります。

ちなみに脂質というと、血液検査で中性脂肪(TG:トリグリセリド)とコレステロール(Chol)の2つがありますが、この2つはどう違うのでしょうか。

中性脂肪は、俗に言う「体脂肪」の脂肪分が血液中に流れているもので、これはエネルギー源として使われます。中性脂肪は体脂肪として貯蔵される事で、いざという時に活動するためのエネルギーになるのです。

一方コレステロールはというと「身体を作るための材料」として使われています。コレステロールは細胞を構成する材料となったり、体内で様々なはたらきをしているホルモンを作る材料となったり、胆汁酸やビタミンの材料となったりします。

中性脂肪もコレステロールも、どちらも身体にとって必要なものですが、過剰になりすぎれば害となります。