ロキソニンテープの効果と副作用【湿布】

ロキソニンテープ(一般名:ロキソプロフェンナトリウム水和物)は2008年から発売されている痛み止めの湿布です。「非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)」という種類に属します。

NSAIDsは痛み止めとして広く用いられている成分で、湿布以外にも軟膏や飲み薬としても使用されています。ロキソニンも湿布だけでなく「ロキソニン錠」「ロキソニンゲル」といった剤型があります。

湿布剤のNSAIDsは主に関節や骨・筋肉などの痛みに対して、炎症を抑えたり痛みを軽減する目的で処方されます。

痛み止めの湿布にもたくさんの種類があり、それぞれがどのような特徴を持つのか分かりにくいと思います。ロキソニンテープがどんな特徴のあるお薬で、どんな患者さんに向いているお薬なのか、その効果・効能や特徴、副作用についてみていきましょう。

 

1.ロキソニンテープの特徴

まずはロキソニンテープの特徴をざっくりと紹介します。

ロキソニンテープは皮膚に貼ることで、その部位の筋肉や骨・関節の痛みを和らげるはたらきがあります。

伸縮性と粘着力に優れたテープ剤であり、膝などの可動部に貼ってもはがれにくいのがメリットです。清涼感(ひんやり感)がしにくいため、そこに不満を感じる患者さんもいらっしゃいます。

ロキソニンテープは「非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)」と呼ばれる成分が含まれています。

NSAIDsは炎症を抑えて熱を下げたり痛みを抑えるはたらきがあるため、解熱剤(熱さまし)・鎮痛剤(痛み止め)として湿布以外でも広く使われています。

例えば、痛み止めの飲み薬としては、

  • ロキソニン
  • ボルタレン
  • ブルフェン(イブプロフェン)

などがありますが、これらもNSAIDsです。

その他塗り薬(軟膏やクリーム)、坐薬、点滴など多くの剤型のNSAIDsがあり、NSAIDsは痛みを和らげたり炎症を抑えたりするために欠かせない医薬品となっています。

ロキソニンテープは湿布剤ですので、主に関節や骨・筋肉の痛みを和らげる目的で使用されます。特に良く使われるのが肩・膝・腰といった関節の痛みです。ぶつけたり、年とともに関節が痛んだりした際にロキソニンテープを貼る事で、これらの症状を改善させることができます。

貼り薬(湿布)であるロキソニンテープは飲み薬と異なり、作用が局所に留まるという利点があります。これはお薬が全身に回りにくいという事です。

貼った部位にしか効かないため、全身の様々な部位が痛いという場合には向きませんが、身体の一部分のみが痛いという場合にはその部位にだけ効かせることが可能です。全身にお薬が回りにくいため、副作用が生じる頻度も少なくなります。

湿布剤は「テープ」と「パップ」があります。テープは適度な伸縮性(伸び)と粘着性(くっつきやすさ)があり、膝や肩といった関節部位に貼ってもはがれにくいというメリットがあります。

反対にパップは伸縮性や粘着性は低いのですが、貼った際に清涼感(ひんやり感)があるため、これが「湿布が効いている感じがする!」と好む方もいらっしゃいます。

以上から、ロキソニンテープの特徴としては次のようなことが挙げられます。

【ロキソニンテープの特徴】
・消炎作用(炎症を抑える)・鎮痛作用(痛みを和らげる)がある
・湿布であり、痛みがある部位にのみ効かせることができる
・お薬の成分が全身に回りにくいため、副作用が少ない
適度な伸縮性と粘着性があるため、関節に貼ってもはがれにくい
・パップ剤と違い、清涼感(ひんやり感)はあまりない

 

2.ロキソニンテープはどのような疾患に用いるのか

ロキソニンテープはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には次のように記載されています。

【効能又は効果】
下記疾患並びに症状の消炎・鎮痛

変形性関節症、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛

難しい言葉で書かれていますが、要するに「関節や骨、筋肉の痛み」に対して用いるという認識で良いと思います。

添付文書上の適応疾患は上記3つのみですが、実際の臨床では「関節や骨、筋肉の痛み」に対して幅広く用いられています。

 

ロキソニンテープを使用した事による改善率は、

  • 変形性関節症での改善率は75.5%
  • 筋肉痛での改善率は80.7%
  • 外傷後の腫脹・疼痛での改善率は98.1%

と報告されています。

注意点として、ロキソニンテープをはじめとしたNSAIDsは対症療法(症状を抑えるだけの治療法)に過ぎないという点があります。

あくまでもお薬の作用によって痛みを和らげているだけであり、痛みの原因を治しているわけではありません。

例えば骨にヒビが入ってしまって痛むという時、そこにロキソニンテープを貼れば確かに痛みは和らぎます。しかしあくまでも痛みを感じにくくさせているだけで、別に骨の修復を早めるような作用はありません。

 

3.ロキソニンテープにはどのような作用があるのか

ロキソニンテープは、どのような作用を持つお薬なのでしょうか。

ロキソニンテープの作用機序や得られる効果について紹介します。

 

Ⅰ.抗炎症作用

NSAIDsは「非ステロイド性消炎鎮痛剤」と呼ばれ、その作用は「消炎(炎症を抑える)」ことで「鎮痛(痛みを抑える)」ことになります。

炎症とは、

  • 発赤 (赤くなる)
  • 熱感 (熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛みを感じる)

の4つの徴候を生じる状態のことで、感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。

例えば身体をぶつけたり、身体にばい菌が入ったりすると、その部位が赤くなったり熱感を持ったり、腫れたり、痛んだりという状態になります。これが炎症です。

例えば、皮膚に炎症が生じれば皮膚炎と呼ばれます。皮膚炎は外傷でも生じるし、ばい菌に感染することでも生じるし、アレルギーでも生じます。

関節に炎症が生じれば関節炎と呼ばれます。関節炎もばい菌の感染で生じたり、関節に負担がかかりすぎて骨がすれる事で生じることもあります。

このような炎症に対して、炎症を和らげてくれるのがNSAIDsです。ロキソニンテープもNSAIDsですので炎症を和らげることで、発赤・熱感・腫脹・疼痛といった症状を和らげてくれます。

具体的にNSAIDsの作用機序を見ると、NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)という物質をブロックするはたらきがあります。

COXは、プロスタグランジン(PG)が作られる時に必要な物質であるため、COXがブロックされるとプロスタグランジンが作られにくくなります。

プロスタグランジンは炎症や痛みを誘発する物質です。そのため、ロキソニンテープがCOXをブロックすると炎症をや痛みが生じにくくなるのです。

 

Ⅱ.鎮痛作用

炎症は疼痛(痛み)も引き起こします。

ロキソニンテープはCOXをブロックすることで炎症を和らげ、これにより痛みを抑えてくれます。

ロキソニンテープのようなお薬は俗に「痛み止め」と呼ばれていますが、この痛み止めとしての作用は、抗炎症作用が生じた結果によってもたらされています。

 

4.ロキソニンテープの副作用

ロキソニンテープにはどのような副作用があるのでしょうか。また副作用はどのくらいの頻度で生じるのでしょうか。

ロキソニンテープの副作用発生率は2.9~8.5%と報告されています。数値だけを見ると多く感じられるかもしれませんが、副作用の程度は軽いものがほとんどです。

報告されている副作用としては湿布を貼った部位に生じるものが多く、

  • 掻痒(かゆみ)
  • 紅斑(赤くなる)
  • 接触性皮膚炎(かぶれる)

などが報告されています。

また頻度はわずかですが、

  • 胃不快感

の報告もあります。

これはロキソニンテープはPG(プロスタグランジン)を作りにくくするために生じます。PGは炎症を引き起こすはたらき以外にも、胃の血流を増やす作用があります。

ロキソニンテープによってPGが減ってしまうと胃の血流が減り、胃を保護する力が弱まるため、胃腸症状が出てしまう事があるのです。

また検査値の異常として

  • 肝機能障害(AST、ALT上昇)

が報告されています。

ロキソニンテープは、次に該当する方は使用禁忌(絶対に使ってはいけない)となっていますので注意が必要です。。

  • アスピリン喘息またはその既往のある方
  • チアプロフェン酸(商品名スルガム)、スプロフェン(商品名トパルジック)、フェノフィブラート(商品名リピディル)、オキシベンゾン及びオクトクリレンを含有する製品に対して過敏症の既往のある方
  • 光線過敏症の既往のある方
  • 妊娠後期の女性

妊娠後期の妊婦さんがロキソニンテープを使用してはいけないのは、妊娠後期にNSAIDsを使用した場合、赤ちゃんで開通している血管である「動脈管」を閉じてしまう事があるためです。

そのため、妊娠後期の女性には禁忌となっています。

 

5.ロキソニンテープの用量・用法と剤型

ロキソニンテープは、

ロキソニンテープ 50mg(湿布1枚7×10cm)   1袋(湿布7枚入り)
ロキソニンテープ 100mg(湿布1枚10×14cm)     1袋(湿布7枚入り)

の2剤型があります。

この2つは大きさが違うだけで含まれている痛み止めの濃度は同じです。患部が狭い場合は50mgで良いでしょうし、広い場合は100mgを使うこともあります。

またテープ以外にも

ロキソニンパップ 100mg(湿布1枚10×14cm)  1袋(湿布7枚入り)

という剤型もあります。テープ剤もパップ剤も効能は含まれている主成分は全く同じなのですが、基材の違いがあります。

まず見た目としては、パップ剤が白色でテープが肌色という事が多く、テープ剤の方が目立たないため、目立つ部位にも比較的貼りやすいと言えます。

根本的な違いとしてはパップ剤は水溶性の基材を用いており、テープ剤は脂溶性の基材を用いているという点が挙げられます。

水分を多く含む水溶性のパップ剤は貼った時に「清涼感(ひんやりした感覚)」を得やすいため、この冷たい感覚を好む方はパップ剤が良いでしょう。中にはこのひんやり感がないと「効いている感じがしない!」という方もいらっしゃいます。

脂溶性のテープ剤は油と相性が良いため、皮膚にくっつきやすくはがれにくいというメリットがあります。そのため、剥がれやすい部位(関節など動く場所)にはテープ剤が適しています。

これらの違いを理解し、自分が使いたい部位に応じて適切な剤型を選びましょう。

ロキソニンテープの使い方は、

1日1回患部に貼付する。

と書かれています。

 

6.ロキソニンテープの使用期限はどれくらい?

ロキソニンテープの使用期限って、どのくらいの長さなのでしょうか。

「家に数年前に処方してもらった湿布があるんだけど、これってまだ使えますか?」

このような質問は患者さんから時々頂きます。

これは保存状態によっても異なってきますので一概に答えることはできませんが、適切な条件(室温・遮光・気密容器)で保存されていたのであれば「3年」が使用期限となります。

ロキソニンテープは基本的には遮光、気密容器、室温で保存するものですので、この状態で保存していたのであれば上記期間持つと考えて良いでしょう。反対に暑い場所で保管していたり、光が当たる場所で保管していた場合は、使用期限は短くなる可能性があります。

 

7.ロキソニンテープが向いている人は?

以上から考えて、ロキソニンテープが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

ロキソニンテープの特徴をおさらいすると、

・消炎作用(炎症を抑える)・鎮痛作用(痛みを和らげる)がある
・湿布であり、痛みがある部位にのみ効かせることができる
・お薬の成分が全身に回りにくいため、副作用が少ない
適度な伸縮性と粘着性があるため、関節に貼ってもはがれにくい
・パップ剤と違い、清涼感(ひんやり感)はあまりない

というものでした。

「ロキソニン」はNSAIDsの中でも有名なお薬です。患者さんに使用されており、その分使用データも豊富にあります。

使用実績が非常に多いというのが、ロキソニン製剤に共通する特徴であり、これによって安心して使用できるというのは大きなメリットでしょう。

またロキソニンは鎮痛の強さとしては「中くらい」~「やや強め」という程度です(個人差があります)。

痛みを抑える作用はNSAIDsの中でもしっかりしている方であるため、効果もしっかりと期待できます。

テープ剤の特徴としては伸縮性と粘着性があることにより、関節など動く場所に貼っても比較的はがれにくいという事が挙げられます。また肌色のテープであるため、服から出ている部位に貼っても比較的目立ちにくいという事も挙げられます。

デメリットとしてはパップ剤と異なり、清涼感(ひんやり感)がないことです。別に清涼感がないから効かないという事は医学的には無いのですが、患者さんによっては「ひんやりしないと効いている感じがしないからイヤだ」と言う方もいらっしゃいます。そのような場合はロキソニンテープのようなテープ剤ではなく、水溶性のパップ剤が良いでしょう。

代表的なNSAIDsであるロキソニンを含むロキソニンテープは、肩・膝や腰の痛みを抑える際に、まず用いる第一選択のお薬として適しているのではないでしょうか。

反対に全身の広い部位に痛みを感じる場合は、湿布よりも痛み止めの飲み薬の方が全身にお薬が回りますので良いかもしれません。

ただしロキソニンテープはあくまでも炎症を抑えているだけで根本を治しているわけではない事は知っておく必要があります。

例えば骨折に痛みにロキソニンテープを貼れば、確かに痛みは和らぎます。しかしこれは痛みの原因である骨折を治す作用はありません。あくまでも骨折で生じる痛みを感じさせにくくしているだけになります。

そのため、痛みに何らかの治療可能な原因がある場合は、安易に痛み止めで痛みを抑えるのではなく、原因を突き止め、根本を治すような治療も並行して行っていく必要があります。