オキサロール軟膏・オキサロールローション(一般名:マキサカルシトール)は病院で処方される塗り薬で、「角化症治療剤」という種類のお薬になります。2001年から発売されています。
オキサロールは角化症や角化異常といった角質(皮膚の表面)が厚くなってしまった時に、皮膚を柔らかくする作用があります。そのため角化異常が原因となっている皮膚疾患の治療薬として用いられているお薬です。
オキサロールはどのような作用機序があって、どのような効果が期待できるお薬なのでしょうか。
オキサロールの効果・効能や特徴、副作用について詳しくみてみましょう。
目次
1.オキサロールの特徴
まずはオキサロールの特徴をざっくりと紹介します。
オキサロールは、皮膚の角化異常を改善する作用を持つ塗り薬になります。
角化異常というのは皮膚の分化の異常が生じて、角質の肥厚や増殖が生じてしまうことです。
皮膚の表面を「表皮」と呼びますが、評価はケラチノサイト(角化細胞)がほとんどを占めます。ケラチノサイトは表皮の一番下にある基底層で作られ、一番上にある角質層に達するまでに徐々に分化していき、角質層に達すると角質細胞となります。この一連の過程を「角化」と言います。
【分化】
細胞が構造的・機能的に変化していくこと。
この角化に異常が生じるのが角化異常です。ケラチノサイトの分化が正常に行われないため、皮膚が肥厚したり、赤くなったりします。また角質の増殖によって、鱗屑(りんせつ:皮膚が剥がれ落ちて白い粉をふいたようになる)が出現することがあります。
オキサロールは、このような角化異常を改善する作用を持っています。
デメリットとしては、副作用として高カルシウム血症が生じる可能性があることです。特に元々腎臓の機能が悪い方では生じやすく、オキサロールを使用中は定期的に血液検査で血清カルシウム値を確認しておくことが望まれます。
以上からオキサロールの特徴を挙げると、次のようなことが挙げられます。
【オキサロール軟膏・オキサロールローションの特徴】
・皮膚の角化(角質の肥厚)を治す作用がある
・高カルシウム血症に注意(特に腎機能が悪い方)
2.オキサロールはどのような疾患に用いるのか
オキサロールはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。
【効能又は効果】
尋常性乾癬
魚鱗癬群
掌蹠角化症
掌蹠膿疱症
適応疾患として4つの病名が挙げられていますが、これらは全て「角化異常」によって生じる疾患になり、皮膚の表面にある「角質」の肥厚が原因になります。
通常、表皮のケラチノサイト(角化細胞)は1~2か月かけて徐々に生まれ変わっていきます。しかし角化異常が生じるとそのスピードが速まってしまい、短い時間でどんどんと皮膚が作られていきます。
すると角質がどんどんと肥厚していってしまうのです。
角化異常が生じると、見た目的な問題だけでなく、かゆみや痛みが生じたり、鱗屑(皮膚が剥がれ落ちて白い粉が落ちる)が生じたりといった症状が生じ、患者さんの生活に支障を来たします。
また適応外にはなりますが、オキサロールはイボ(医学用語としては疣贅)に使われることもあります。
3.オキサロールにはどのような効果・作用があるのか
オキサロールは、皮膚の角化異常に対して用いられますが、どのような機序で角化異常を改善させているのでしょうか。
オキサロールの主成分であるマキサカルシトールは、活性型ビタミンD3の誘導体になります。
活性型ビタミンD3は、角化異常が生じている表皮の角化細胞にあるビタミンD受容体にくっつくことで、細胞の増殖を抑える作用があることが知られています。
角化異常が生じている角化細胞は、細胞増殖のスピートが正常より早まっており、これによって皮膚がどんどんと厚くなってしまいます。活性化ビタミンD3はこれを抑えるはたらきをし、これによって角化細胞の増殖が抑制されるため、角化異常の改善が得られるというわけです。
また角化異常の原因としては、ケラチノサイト(角化細胞)の分化異常も指摘されています。
ケラチノサイトは表皮の一番下にある層である基底層で作られ、一番上の層である角質層に達する間に徐々に分化していきます。しかし角化異常ではその分化が正常に行われていないのです。
オキサロールは、このケラチノサイトの分化を促進するはたらきを持っていることが確認されており、ケラチノサイトの正常分化の指標となるインボルクリンmRNAの発現を促進することが確認されています。
またオキサロールは炎症を引き起こすサイトカインの1つであるIL-6(インターロイキン6)やリンパ球の増殖も抑制させることが確認されています。
角化異常では患部に炎症が生じていることも指摘されているため、オキサロールのこの作用も角化異常改善に役立っていると考えられます。
4.オキサロールの副作用
オキサロールにはどのような副作用があるのでしょうか。
副作用発生率は11%前後と報告されており、塗り薬としては少なくはありません。
副作用の内容としては、
- 掻痒感(かゆみ)
- 皮膚刺激
- 紅斑
- 湿疹
などの局所の副作用が多くを占めます。オキサロールは人によっては皮膚に対する刺激となってしまう事があるようです。
また、注意すべき副作用には
- 高カルシウム血症
があります。高カルシウム血症は、0.4%前後で発現すると報告されており、オキサロール塗布中は血清カルシウム濃度を定期的に測定するのが安全でしょう。
オキサロールの主成分は活性型ビタミンD3とお話しましたが、活性型ビタミンD3にはカルシウム代謝を調節する作用があるため、カルシウム濃度を上げてしまう可能性があるのです。
ちなみに高カルシウム血症が生じると、
- 口渇
- 倦怠感、脱力感
- 食欲不振
- 嘔吐
- 腹痛
- 筋力低下
などの症状が生じます。
また、高カルシウム血症に伴って
- 急性腎不全
が生じる可能性があります。そのため元々腎機能が悪い方などはオキサロールの使用は慎重に判断しないといけません。
5.オキサロールの用量・用法と剤型
オキサロールは、
オキサロール軟膏25μg/g(マキサカルシトール) 10g
オキサロールローション25μg/g(マキサカルシトール) 10g
と2つの剤型があります。
一般的に軟膏は身体に用い、頭部にはローションが用いられます。
オキサロールの使い方は、
通常1日2回適量を患部に塗擦する。なお、症状により適宜回数を減じる。
(1日の使用量はマキサカルシトールとして250μgまでとする)
と書かれています。
オキサロール軟膏・オキサロールローションともに25μg/gですので、1日に10gまでが塗っていい量となります。
このように塗る量の上限が定められているのは、オキサロールの副作用に「高カルシウム血症」であるためです。高カルシウム血症は特に高用量のオキサロールを使用した際に生じるリスクが高くなることから、上限量がこのように設定されています。
6.オキサロール向いている人は?
以上から考えて、オキサロールが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。
オキサロールの特徴をおさらいすると、
・皮膚の角化(角質の肥厚)を治す作用がある
・高カルシウム血症に注意(特に腎機能が悪い方)
というものでした。
ここから、
・角化異常(尋常性乾癬など)を持っていて
・腎機能に問題のない方
に向いている治療薬だと考えられます。