マーズレン配合錠ESの効果と副作用【胃薬】

マーズレン配合錠ES(アズレンスルホン酸ナトリウム・L-グルタミン)は2003年から発売されている胃炎・胃潰瘍治療剤になります。いわゆる「胃薬」です。

似た名前のお薬に「マーズレンS配合顆粒」がありますが、マーズレンS配合顆粒とマーズレン配合錠ESはまったく同じ成分のお薬です。

「S」や「ES」と異なる略語がついているため別のお薬かと感じますが、違いは錠剤か粉薬というだけで中身はまったく同じです。

胃薬の中でマーズレンは非常に古いお薬でありながら、現在でも広く用いられているお薬になります。効果は穏やかであるものの、副作用が少なく使いやすいというのが理由でしょう。

マーズレン配合錠ESはどんな作用のあるお薬で、どんな患者さんに向いているのでしょうか。

マーズレン配合錠ESの効果や特徴についてみていきましょう。

なお、この記事は同成分のお薬である「マーズレンS配合顆粒」の記事と共通した内容が多いことをご了承下さい。

 

1.マーズレン配合錠ESの特徴

まずはマーズレン配合錠ES(アズレンスルホン酸ナトリウム・L-グルタミン)の特徴について、かんたんに紹介します。

マーズレン配合錠ESは胃薬になり、主に軽症の胃炎・胃潰瘍に対して用いられます。胃炎・胃潰瘍の治療のためだけでなく、予防のために投与されることもあります。

マーズレン配合錠ESは「配合」という名前がついている通り、「アズレンスルホン酸ナトリウム」と「L-グルタミン」という2つの成分が配合されたお薬になります。

アズレンスルホン酸ナトリウムは、「アズノール軟膏」として皮膚科で用いられていたり、「アズレン点眼液」として眼科で用いられている「アズレン」という成分のことであり、これは穏やかに炎症を抑える作用や肉芽形成を促進する作用などがあります。

L-グルタミンはアミノ酸の1種で、潰瘍の保護・再生の作用があります。

またマーズレン配合錠ESにはペプシノゲンという物質の量を抑えることで、胃酸の量を抑えるはたらきもあることが報告されています。

これらの作用によってマーズレン配合錠ESは総合的に胃炎・胃潰瘍などを改善させます。

マーズレン配合錠ESの効果は全体的穏やかです。しかしその分穏やかに効くため安全性に優れるお薬になります。劇的な効果もありませんが、大きな副作用もないことから、使い勝手が非常に良く、現在でも良く処方されている胃薬になります。

以上からマーズレン配合錠ESの特徴として次のようなことが挙げられます。

【マーズレン配合錠ES(アズレンスルホン酸ナトリウム・L-グルタミン)の特徴】

・炎症を抑える作用(抗炎症作用)がある
・肉芽形成促進、組織修復作用がある
・胃酸の分泌を抑える作用がある
・作用は穏やかで副作用が少ない

 

2.マーズレン配合錠ESはどんな疾患に用いるのか

マーズレン配合錠ESはどのような疾患に用いられるのでしょうか。添付文書には、次のように記載されています。

【効能又は効果】

下記疾患における自覚症状及び他覚所見の改善

胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎

マーズレン配合錠ESは胃薬ですので、軽度の胃炎・胃潰瘍など主に胃の諸症状に対して用いられます。

また胃に対する負担が強いお薬を服薬する場合、胃腸系の副作用を予防する目的で投与されることもあります。

例えば、痛み止めや解熱剤としてよく用いられる「ロキソニン(ロキソプロフェン)」などの消炎鎮痛剤には副作用として胃潰瘍があります。

この胃潰瘍を予防するために、ロキソニンにあらかじめマーズレン配合錠ESを併用するという方法は臨床で良く用いられています。

 

3.マーズレン配合錠ESにはどのような作用があるのか

マーズレン配合錠ESは、どのような作用機序で胃を保護しているのでしょうか。

マーズレン配合錠ESには、

  • アズレンスルホン酸ナトリウム
  • L-グルタミン

の2つの成分が配合されており、これらがそれぞれ胃を保護するはたらきを持ちます。

それぞれの作用についてみていきましょう。

 

Ⅰ.抗炎症作用

マーズレン配合錠ESに含まれるアズレンスルホン酸ナトリウム(アズレン)には穏やかな抗炎症作用(炎症を抑える作用)があります。

炎症とは、

  • 発赤 (赤くなる)
  • 熱感 (熱くなる)
  • 腫脹(腫れる)
  • 疼痛(痛みを感じる)

の4つの徴候を生じる状態のことで、感染したり受傷したりすることで生じます。またアレルギーで生じることもあります。

みなさんも身体をぶつけたり、ばい菌に感染したりして、身体がこのような状態になったことがあると思います。これが炎症です。胃に炎症が起こることを胃炎と呼びます。胃炎も感染でも生じるし、ストレスなどで胃酸のバランスが崩れて胃が荒れることでも生じます。

どのような原因であれ、炎症そのものを抑えてくれるのが抗炎症作用です。アズレンは抗炎症作用により、発赤・熱感・腫脹・疼痛を和らげてくれるのです。

 

Ⅱ.肉芽形成促進・組織修復促進作用

マーズレン配合錠ESには、肉芽の形成を促進し、組織の修復を促す作用があります。

胃炎や胃潰瘍では、胃壁に傷が出来てしまっています。胃炎・胃潰瘍を治療するためには、この傷を修復しなくてはいけません。

肉芽は傷が治る過程で必要なものです。肉芽形成が促進されれば傷の治りも早くなります。

【肉芽(組織)】
腸管粘膜に傷が出来ると、そこに繊維芽細胞がきて同部は結合組織で補充され、更にそこに血管が新生されていきます。この毛細血管と結合組織からなるものを肉芽といいます。

肉芽は傷が治る過程において必要なものです。傷が治るにつれて肉芽組織は瘢痕組織となっていき、肉芽組織の上に表皮組織が形成されていき、傷は徐々に小さくなって治っていきます。

またマーズレン配合錠ESに含まれるL-グルタミンは、ヘキソサミンの合成に関係していると考えられています。

ヘキソサミンは胃粘膜上皮を構成する成分の1つですので、L-グルタミンによってヘキソサミンの合成が促進されれば、胃粘膜の再生が早まると考えられます。

ちなみに消炎鎮痛剤(NSAIDs)が胃を荒らしてしまう一因として、NSAIDsはヘキソサミンの合成を抑制してしまう事が指摘されています。L-グルタミンはヘキソサミンの合成を促進しますので、NSAIDsの副作用止めとしてマーズレン配合錠ESを併用するのは、この意味では理にかなっていると言えます。

 

Ⅲ.胃酸を抑える作用

マーズレン配合錠ESは、胃酸の元になるペプシノゲンの量を減少させる作用があることが報告されています。

ペプシノゲンは胃酸の構成成分であるペプシンの元ですので、ペプシノゲンが減れば、胃酸の量も減ることになります。

胃炎や胃潰瘍になっている時は、胃酸の量が過剰になっている事が多く、また強力な酸である胃酸が胃の炎症部や潰瘍部を刺激してしまいます。

そのため、胃炎・胃潰瘍がある時は胃酸の分泌を抑えてあげた方が傷の治りは早くなります。

 

4.マーズレン配合錠ESの副作用

マーズレン配合錠ESの副作用発生率は0.7%前後と報告されており安全性の非常に高いお薬になります。

可能性のある副作用としては、

  • 便秘
  • 下痢
  • 嘔気
  • 腹痛

などの消化器症状が主に挙げられます。いずれも重篤となることは少なく、ほとんどの例で様子をみている中で自然と改善してきたり、減量をすることで改善が得られます。

どうしても副作用がつらい場合は、マーズレン配合錠ESを中止すれば、後遺症などが残ることはありません。

また、血液検査にて

  • 肝機能の異常(AST、ALTなど)
  • 胆道系の異常(ɤGTPなど)

などが生じること頻度は稀ながらもありえます。

 

5.マーズレン配合錠ESの用法・用量と剤形

マーズレン配合錠ESには、

マーズレン配合錠0.375ES
マーズレン配合錠0.5ES
マーズレン配合錠1.0ES

の3剤形があります。また、同じ薬効のものとして、

マーズレンS配合顆粒 0.5g
マーズレンS配合顆粒 0.67g
マーズレンS配合顆粒 1.0g

と顆粒(粉薬)タイプもあります。

ちなみに豆知識ですが、配合錠の「ES」は「Easy to Swallow(飲みこみやすい)」の略です。実際マーズレン配合錠は速崩性であり、少ない水で速やかに溶ける錠剤です。

一方で配合顆粒のマーズレンSの「S」は「Strong(強い)」の略で、「強く効く」ことを期待して付けられたもののようです。

顆粒には「Strong」の「S」が付いていて、錠剤には付いていませんが、別に顆粒の方が強いということはなく、どちらも全く同じ作用になります。

マーズレンS配合錠ES中には、

(0.375ES)
アズレンスルホン酸ナトリウム 0.75mg
L-グルタミン 247.5mg

(0.5ES)
アズレンスルホン酸ナトリウム 1mg
L-グルタミン 330mg

(1.0ES)
アズレンスルホン酸ナトリウム 2mg
L-グルタミン 660mg

が配合されています。

マーズレン配合錠ES1.5とマーズレンS配合顆粒1gが同じ量になります。

マーズレン配合錠ESの使い方は、

通常、成人1日2.25ES~3.0ESを3~4回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する

となっています。

 

6.マーズレン配合錠ESが向いている人は?

以上から考えて、マーズレン配合錠ESが向いている人はどんな人なのかを考えてみましょう。

マーズレン配合錠ESの特徴をおさらいすると、

・炎症を抑える作用(抗炎症作用)がある
・肉芽形成促進、組織修復作用がある
・胃酸の分泌を抑える作用がある
・作用は穏やかで副作用が少ない

というものでした。

マーズレン配合錠ESは穏やかに効き、大きな副作用もないことから、主に軽症の胃炎・胃潰瘍に使いやすいお薬になります。

しかし一方で強力な作用は期待できないため、ある程度大きい胃潰瘍であったり、重症度の高い胃炎の場合は、マーズレン配合錠ESではなく、効果の高い胃薬の方が良いでしょう。

ちなみにマーズレン配合錠ESとマーズレンS配合顆粒はまったく同じお薬ですので、錠剤の方が良ければ配合錠、粉薬の方が良ければ配合顆粒にすると良いでしょう。