ミヤBM(一般名:酪酸菌)は、胃腸炎や下痢・腹痛などに対して処方される整腸剤です。
その主成分は「酪酸菌(らくさんきん)」という生菌で、これは元々動物の腸内に生息している腸内細菌になります。酪酸菌はいわゆる「善玉菌」と呼ばれる菌で、腸内環境を正常に整えるはたらきがあります。
胃腸炎や下痢などといった疾患は、大人のみならず子供もかかりやすい疾患の1つです。そのためミヤBMは小児に処方される事もあります。
ミヤBMは安全性に優れるお薬ですが、子供が服用するに当たって何か注意点はあるのでしょうか。
ここではミヤBMを小児が服用する際の用法・用量や注意点について紹介させて頂きます。
1.ミヤBMはどのようなお薬なのか?
ミヤBMは子供が服用しても問題のないお薬なのでしょうか。小児に適応があるお薬なのでしょうか。
この答えを知るために、まずはミヤBMがどのようなお薬なのかを見ていきましょう。
ミヤBMは「宮入菌」という生菌を主成分とするお薬です。宮入菌は酪酸菌(らくさんきん)の一種であり、酪酸菌は腸内環境を整える作用を持つ「善玉菌」として知られています。
酪酸菌は主に小腸下部や大腸に生息している腸内細菌で、動物の腸内にも元々存在しています。そのはたらきは腸内にやってきた糖分を分解することによって酪酸(らくさん)や酢酸(さくさん)を産生する事です。
酢酸(さくさん)は腸内のpH(酸性・アルカリ性のバランス)を整える作用があります。また有害菌(悪玉菌)の発育を抑える作用もあります。「お酢」に静菌・殺菌作用がある事は良く知られていますが、それと同じです。
また酪酸(らくさん)は大腸の上皮細胞の栄養源になり、腸管上皮細胞の新生・増殖を促し、腸管の動きも活性化させます。
このようにミヤBMは腸内に酢酸や酪酸を産生する事によって、腸内環境を整えてくれるお薬なのです。
腸にウイルスや細菌が侵入して胃腸炎を発症すると、腸内細菌のバランスが崩れたり、腸管上皮細胞がダメージを受けたりして下痢や腹痛などが生じます。このような時にミヤBMを服用すると腸内細菌のバランスを整え、腸管上皮細胞を正常化させてくれます。
また腸内細菌のバランスの崩れによる便秘にも、腸内細菌のバランスを整える事で効果が期待できます。
2.ミヤBMを小児が服用しても大丈夫か
ではミヤBMは子供が服用しても大丈夫なお薬なのでしょうか。
ミヤBMは腸内で酢酸や酪酸を産生し、この酢酸と酪酸が腸内環境を整えてくれるというお薬でした。
酢酸も酪酸も私たちの身体にとって害のある物質ではありません。むしろ腸に良い作用の方が多い物質です。
またミヤBMの主成分である酪酸菌は元々動物の腸内に存在する腸内細菌であり、身体に害をきたすものではありません。食べ物で言えば「ぬか漬け」などに用いる「ぬか」には酪酸菌が含まれていますが、適量のぬかを食べても身体に大きな害が生じる事はありませんよね。
ここから分かるようにミヤBMはお薬ではありますが、人工的な化学物質というよりは元々自然界に存在する生菌から作られており、服用して危険のあるものではないのです。
- 元々、動物の腸内に存在する生菌である
- ぬかなどの食品にも含まれている成分である
- 腸内で酢酸と酪酸を産生するが、いずれも身体に害は来たさない
と、身体にとって非常に安全性の高いお薬になります。
そのため子供が服用しても問題となる事はほとんどありません。
実際、乳幼児や小児の胃腸炎や下痢・腹痛に対してミヤBMは広く処方されています。
3.ミヤBMを子供が服用する際の用量と注意点
子供がミヤBMを服用する際、小児用量と成人用量は同じでいいのでしょうか。また小児が服用する際の注意点はあるのでしょうか。
まず量については、ミヤBMの添付文書には次のように記載されています。
通常、成人1日1.5~3gを3回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
成人(大人)の用量についてのみ記載されており、小児(子供)については特に記載がありません。
しかしこれは小児に服用させてはいけないという事ではありません。
実際の臨床現場では、処方する医師がその子の状態に応じて量を決めており、決まった用法・用量があるわけではありません。しかし化学的な医薬品というよりは腸内細菌ですので、用量に厳密になる必要はありません。
例えば腸内細菌の一種である乳酸菌はヨーグルトなどに含まれていますが、「赤ちゃんのヨーグルトの摂取量は〇〇g以下じゃないと危険だ」と厳密に考える事はありませんよね。それと同じで酪酸菌の摂取量もそこまで厳密に考える必要はないのです。
とは言っても年齢や体重に応じて多少量を調整する事もあります。体重10kgほどの子供であれば成人の1/5程度の体重と考えて1日量0.3~0.4g、体重20kgであれば1日量0.6~0.8gなどと減らす事もあります。
ただし子供に大人と同じ量を投与して、大きな問題が起こる事はほとんどありません。
また元々腸内に存在する生菌ですので、子供が服用するに当たって特段に注意する事もありません。