ミヤBM(一般名:酪酸菌)は、1968年から発売されている整腸剤です。
その主成分は「酪酸菌」という腸内細菌です。腸内細菌とは、元々私たちの腸内に生息している生菌の事です。酪酸菌はいわゆる「善玉菌」と呼ばれるもので、腸内環境を正常に整えてくれるはたらきがあります。
生活習慣の乱れやストレス・感染などによって腸内細菌のバランスが乱れると、下痢や便秘・腹痛・腹部膨満感などといった胃腸症状が生じます。ミヤBMはこのような時に善玉菌である酪酸菌を補う事によって、症状の改善が期待できるお薬になります。
ミヤBMは元々私たちの腸に生息している腸内細菌が主成分ですので、副作用の極めて少ないお薬です。しかし、副作用が全くないわけではありません。
整腸剤ですので副作用も胃腸系の症状が多いのですが、時折「ミヤBMの服用をはじめてからおならが多くなった」という相談を受ける事があります。
ミヤBMによっておならが多くなってしまうのはなぜなのでしょうか。またこの症状は様子を見ていれば自然と治まっていくものなのでしょうか。
ここではミヤBMの副作用である「おなら(放屁)」の原因および対処法について紹介させて頂きます。
1.ミヤBMのはたらき
ミヤBMで「おなら(放屁)」が生じる原因とその対処法について知る前に、まずはミヤBMがどのようなはたらきを持つお薬なのかを理解していきましょう。
ミヤBMは「宮入菌」という生菌を含む整腸剤になります。
宮入菌は酪酸菌の一種です。
酪酸菌は腸内環境を整える作用を持つ「善玉菌」として知られており、主に小腸下部・大腸に生息している腸内細菌で、腸内にやってきた糖分を分解することによって酪酸・酢酸を作り出すはたらきがあります。
そしてこの酢酸と酪酸が腸に良い作用をもたらしてくれます。
酢酸は腸内のpH(酸性・アルカリ性のバランス)を整える作用があります。また有害菌の発育を抑える作用もあります。「お酢」に静菌・殺菌作用がある事は良く知られていますが、それと同じです。
また酪酸は大腸の上皮細胞の栄養源になるため、酪酸が増えると腸管の上皮細胞は増殖し、腸管の動きも活性化します。
このようにミヤBMは酪酸菌によって腸内に酢酸・酪酸を産生する事によって、腸内環境を正常化してくれるのです。
2.おならはどうして生じるのか
前項ではミヤBMが持つ作用機序についてお話しました。
次に、おなら(放屁)はどうして生じるのかを考えてみましょう。おならは正常な方にも生じる生理現象の1つですが、これはどのようにして発生しているのでしょうか。
おならというのは、腸管にガスが存在し、それが排出される事で生じます。
そして、腸管内にガスが存在する主な理由としては、
- 口から入った空気
- 食べ物の栄養素を分解する過程で生じるガス
の2つが挙げられます。
食べ物を飲み込む時、どうしても空気も多少飲み込んでしまいます。その空気は腸管を通っておならとして再び体外に出るわけです。
実はおならを構成するガスのうち、もっとも多い成分がこの口から入った空気になります。
また胃腸は食べ物を消化・吸収する臓器ですが、その消化・吸収の過程でガスが発生する事があります。
基本的に食べ物中に含まれる栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質など)は、唾液や膵臓から分泌される酵素によって小さく分解され、主に小腸から体内に吸収されていきます。
このような原因によって腸管にガスが多くなればおならも多くなります。
しかし小腸で吸収されなかった栄養素は、そのまま大腸に送られていきます。大腸には栄養素を分解する事でガスを発生させる菌が存在しており、この菌によってガスが生成されるのです。
例えば野菜や果物に多く含まれる食物繊維は小腸で吸収されません。そのため大腸にまで到達し、ここで大腸の菌によって分解されます。この時、ガスが発生します。
また、本来小腸で吸収されるべきタンパク質(アミノ酸)が消化不良などで吸収されず大腸にまで到達してしまうと、大腸の菌によって分解されてガスが生じてしまう事もあります。このようなたんぱく質を分解して生じるガスというのは「腐敗臭(卵が腐ったようなにおい)」がします。
このような原因によって腸管にガスが多くなればおならも多くなります。
しかし、おならが増える理由は他にもあります。例えば、元々腸管の動きが悪い方は、腸管にガスがたまっています。何らかの理由でこのような方の腸管の動きが活性化すると、溜まっていた腸管ガスが排出されるため、一時的におならが増えます。
以上から、正常な方のおならが出る原因としては、
- 口から空気を飲み込んでしまうため
- 食物繊維・たんぱく質などガスを産生する栄養素をたくさん摂取するため
- 胃腸炎などで消化不良になってたんぱく質が大腸で分解されてしまうため
- 元々胃腸の動きが悪い方の胃腸の動きが改善する事でたまっていたガスが出るため
などが挙げられます。
3.ミヤBMを飲むとおならが増えるのは何故か
ではミヤBMを服用するとおならが増えるのは何故でしょうか。
おならが出る原因としては、
- 口から空気を飲み込んでしまうため
- 食物繊維・たんぱく質などガスを産生する栄養素をたくさん摂取するため
- 胃腸炎などで消化不良になってたんぱく質が大腸で分解されてしまうため
- 元々胃腸の動きが悪い方の胃腸の動きが改善する事でたまっていたガスが出るため
などがあるとお話しました。
そしてミヤBMの作用としては、
- 酪酸菌が作る酢酸が腸内のpHを整える
- 酪酸菌が作る酢酸が有害菌の発育を抑える
- 酪酸菌が造る酪酸によって腸管の動きが活性化する
というはたらきがありました。
ここから考えると、ミヤBMの服用をはじめてからおならが増えたという場合は、
- 今まで腸の動きが悪かったのが改善した事で、腸管に溜まっていたガスが排出された
- 腸内細菌のバランスが崩れ、かえって有害菌が増殖してしまった
という可能性が考えられます。
前者であれば、最初は腐敗臭のあるガスが出るかもしれませんが、だんだんと無臭のガスに変化していくはずです。またあくまでも溜まったガスが出ているだけですので、少し様子を見れば少しずつおならの頻度も落ち着いてきます。
一方で後者であれば、腐敗臭のあるガスは持続してしまう事になります。
4.ミヤBMでおならが増えた時の対処法
ミヤBMの服用をはじめてからおならが増えてしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
先ほど説明したように、ミヤBMを服用してからおならが増えた場合、その理由として考えられるのは、
- 今まで腸の動きが悪かったのが改善した事で、腸管に溜まっていたガスが排出された
- 腸内細菌のバランスが崩れ、かえって有害菌が増殖してしまった
という理由がほとんどです。そしてほとんどが前者になります。
ミヤBMは腸内環境を整え、また腸管の細胞の増殖を促す事で腸管の動きを活性化させます。ミヤBMを服用するような方というのは胃腸の調子が悪い方ですから、元々腸管の動きは低下している可能性が高くなります。
そのような方の腸管にはガスがたまっていますので、ミヤBMによって腸管の動きが改善すれば、溜まっていたガスはどんどん排出されていきます。
これは溜まっているガスが出ているだけですから、そのまま様子を見ていて問題ありません。ポイントとしては、最初は腐敗臭であったとしても、徐々に臭いが無臭に変わっていくようであれば、このような理由によって生じている可能性が高くなります。
ただし中には臭いは無臭だけど、いつまで経ってもおならが止まらないというケースもあります。このような場合はミヤBMによって腸管の動きがやや活性化されすぎている可能性がありますので、主治医と相談してミヤBMの服用量を調整してみても良いかもしれません。
また、「たんぱく質が多すぎる」「食物繊維が多すぎる」など腸管ガスが発生しやすい食生活なのであれば、食生活を多少調整してみても良いでしょう。
ただしこのようなガスは、悪い原因によって生じているガスではありませんので、おならがあまり気にならないようであれば特に何の対処もせずに様子を見ても構いません。
一方で後者であれば、悪玉菌がたんぱく質を分解する事で腐敗臭を伴うガスが発生しています。この場合はミヤBMが十分に腸内環境を改善できていないと考えられ、腐敗臭を伴うガスは続いてしまいます。
ミヤBMの服用をしてからおならが増え、数日経ってもその量や臭いの改善が得られない場合は主治医と相談して、ミヤBMの中止や変更など治療法の変更を検討してもらいましょう。